スパシアに到着した。
この世界基準では大きな港町だ。
聖王国からの船が何十隻も行き来している。
まあ、じきにここも侵略する予定だが。
統治はせずに滅ぼして、土地だけ利用するつもりだからな、虐殺予定だ。
三十年以内にヨロパ地方制圧ってところか?
今、人外国家は異例のベビーブームで人口が増加しているらしい。
なぜ分かるのか?そんなもの、あらかじめ戸籍管理をしているに決まっているだろう。
俺が統治している人外国家は、戸籍管理を徹底しているぞ。
教育も欠かしていない。
俺は人外国家においては、神のように崇められている。
それは洗脳だと?
逆に聞くが洗脳と教育の違いは何だ?
馬鹿の一つ覚えみたいに道徳だなんだと下らない事を覚えさせるのも立派な洗脳だろう?
権力者にとって都合が良いように洗脳することを教育ってんだよ。
それに俺は、俺は自分の使える命を無駄にはしない。使い所を見極め、しっかりと使い切る。無駄に尊い人命を使うことはない。
どんなに弱くても、馬鹿でも、命の使い道はいくらでもある。
自爆テロとか。まさに鉄砲玉ってか?
人外共は俺の為なら喜んで死んでくれるってよ!!
それで……、俺達は魔王を倒す冒険に出る訳だが。
俺の予定では二、三年でやるつもりだ。
陸路と帆船でスペインからオーストラリアまで移動すんだ、年単位はかかる。
俺の顔を知られている、と言う訳で、人外国家には顔を出せねえ。避けて通るしかねえな。
移動は車で、泊まる場所はキャンプ。
退屈で死ぬかもなァ。
それだけが心配だ。
まあ、このアホそうなメス三匹くらい、幾らでもだまくらかせる。
暇があれば転移魔法で人外国家に帰って仕事しなきゃな。
「ジン君、買い出し、終わったよ。……本当に何も買わなくて良かったの?」
「うん、必要なものはアイテムストレージに詰めてあるからね」
「馬車も要らないの?アテがあるって聞いたけど」
「心配は要らないよ、リリィ」
「そうかな?じゃあ、信じるよ」
「それで?街が見えなくなるくらい遠くに来たけど。次は何をやるの?」
高機動車を出す。
「「「………………」」」
高機動車、ってのは、陸自の人員輸送車だ。まー、ハンヴィーのパクリみてえなもんだな。
でもまあ、天下のメイドインジャパン様だ。心配はないだろうよ。
俺もテロ組織に中古の日本車を横流ししてなあ。すっと、テロリスト共は面白おかしく改造すんだよ。幼稚園の送迎バスにマシンガンがつけられていたのを見たときは流石に笑ったね。
「……これは?」
「馬車のようなものさ」
「……馬は?」
「必要ないよ」
「えぇ……」
全員、車の後ろに乗せる。
リリィは隣に乗りたがったので、乗せてやる。
全員が乗り込んだのを確認すると、キーを回してエンジンをかける。
「なんだなんだ?!」
エンジンの音に驚いて騒ぐマルテーロを他所に、高機動車は走り出した。
「わあ〜……!!凄いね!速いし馬車みたいに揺れないし!」
リリィが話しかけてくる。
「これも科学の産物だよ」
「へー、凄いなあ。僕より年下なのに、僕よりずっと強くて賢いんだもん」
「強さや賢さなんて大した価値はないと思うよ。大切なのは、その人の本質だと思うな」
「……そうだね、うん、その通りだ」
「リリィは素敵な女の子だよ。リリィには、リリィにできることがあるさ」
「うん!」
あー。
もちろん嘘だ。
強さこそ全てだ。
単純な腕力だけでなく、武力、知力……、力だ。
俺の考えなんて知らずに、頬を赤らめてはにかむリリィ。
ふむ、そうだな。
二、三年かかる旅、女三人。
口説いてみるか。
まあ、男と女がいて、特に娯楽もないとなると、やることは限られてくるよなァ?
三人を口説き落とし、痴情の縺れが起きて、再びまとまって……。
三人とのセックスが日常化するのは、おかしな話じゃなかったな。
「ジン君〜、今日は僕の番だからね〜?」
「リリィは一昨日してもらったろ!次は俺だ!」
「マルテーロさんだってこのところ何度も……。私に譲って下さいよ!」
「あはは、喧嘩はしないようにね?」
まあ、暇だしな。
わざと大きな街を避けて、モンスターを狩っては移動するだけの退屈な毎日。
時間のある夜中なんかは、セックス以外にやることはない訳で。
移動して、食事をして、モンスターを狩って、野営して、セックスする。
そんな退屈な日々を一年と半年。
やっと、魔大陸に到着した。
「ここが、魔大陸……!」
「魔王さえ倒せば……!」
「よし、頑張ろう……!」
さて、魔王とやら。
楽しませてくれよ?
魔大陸を移動する。
どうやら、魔法技術が発展した都市国家のように見える。
魔道具が普及しており、魔石採掘用のモンスターが家畜として飼われている。
街で見られる主な種族は、デーモン、サキュバス、インキュバス、インプ、デビル、バフォメットなど。
知能は高く、知識も豊富なようで、理知的であり、会話も人語で通じた。
そこら辺の住民から、魔王城の位置を聞き、攻め入る。
『何だ、貴様?魔王城に何の用だ?』
門番が二人。警戒しているようだ。
俺は腰の銃に手を伸ばすと同時に、門番のデーモン二体は防御魔法を短く唱えた。下級の魔法なら無効化できるであろう障壁の魔法だ。
ほう、人間国家の間抜けな兵士と比べると上等だな。
そして、片方の門番は俺を無力化しようと掴みかかってくる。
俺はそれを殴り飛ばすが。
『応援を頼む!』
もう片方が応援を呼んでいた。
ほうほう。
出来がいいな。
続々と現れる応援。
「ここは任せろ、ジン!」
「先に行って下さい、ジンさん!」
「あとは頼んだよ、ジン君!」
とのことなので、俺は城の奥へと向かっていく。
そして、玉座の間にて。
「よく来たな、勇者よ」
「へえ……」
青い肌、長身、蝙蝠の羽、尖った尻尾、尖った耳、黒い眼球に赤い瞳、そして角。
長い黒髪に大きな乳房と尻、肉感的な太ももと引き締まったウエスト。
肩と背中を露出した黒と紫のドレスに、長い黒手袋。
「数千年生きているが、ここまで来た勇者は久し振りだ。……名前を聞かせてくれないか?」
「ハヅキ・ジングージ。ジンと呼べ」
「ふむ、よろしく、ジン。私は魔王。魔王サタナエル。デーモンロードだ」
ほう。
デーモンロード。
聞いたことはあるが見たことはなかったな。
「サタナエル、か」
「おやおや、君のような魅力的な男性に名前で呼ばれると、少しドキッとするね。それで?私を殺すのかな?」
「ああ、まあ、そうだな。一度は死ぬくらいまで追い詰める予定だ」
「それは怖いな。話し合いで解決できないかい?」
「クハハ、安心しろ、死んだら蘇生魔法を使ってやる」
「そもそも、私が悪いことをしていると誤解して……」
「分かってるっての」
「何……?」
「モンスターの被害はお前のせいじゃない、人外種全体に指揮する権限はない、悪いことは何もやっていない。ただ、人間の目の敵にされているだけだ」
「そこまで分かっていながら、何故……?」
決まってんだろ。
「お前は俺のものにする。だから……」
武器庫、解放。
「格の違いを教えてやらなきゃなァ?!!!」
46cm砲、四十門、斉射。
「ッ……?!!プロテクション・フォートレスッ!!!」
ほお、防ぐか。
「分かった。そちらがそのつもりなら、私は全力で立ち向かうよ」
「そうしろ」
「……時に、魔法には等級があることは理解しているね?」
ふむ。
「生活魔法を最下位に、初級、下級、中級、上級、超級……、と続く」
「それで?」
「その上があるとしたら?」
その瞬間、サタナエルの後方に大小含めて五十程の魔法陣が展開。
「究極魔法……、サタン・レイ!!!」
サタナエルの翳した手元に、魔法陣が集中し、赤黒い光線を発する。
その瞬間に、俺の本能が警鐘を鳴らした。
あれは、ヤバい。
俺も消し炭になる。
即座に防御エンチャントをかけたシェルターを召喚し、設置。
光線を受ける。
しかし、圧倒的な威力でシェルターを溶かす光線。
俺は、武器庫から五十門の対空砲を出して弾幕を張りつつ、自己強化魔法で強化されたスピードで移動する。
「タイムストップ!!!」
お次は時間停止か!
放たれた弾丸が空中で静止する。
「ディメンションブレイク!!!」
空間がガラスみたいに割れたぞ。どうなってんだありゃ。
クハハ、久々の命の危険に心が躍るなァ?
「俺からも一つ、研究結果を教えてやる!」
「何かな……ッ?」
「テーマは、科学と魔法の融合だ!!!」
魔法加工対空砲、解放。魔法加工弾頭、装填……!!!
「喰らえ!!!」
「ぐぅっ?!!!こ、れは!!!」
サタナエルの防御魔法が破れる。
「貫通、硬化、爆裂、炎熱……、強度のエンチャントを施した、魔法的鉱物を混ぜ込んだ弾頭を、同じく魔法的加工を施した砲で放つゥ……」
「が、はっ……!!」
「それだけじゃねえよ」
魔法式レールガン、魔法式レーザーカノン、解放。
「ぐ、う、うあああ!!!」
防ぎ切れず身体を焼かれ、吹き飛ぶサタナエル。
「終わりだ」
「う、あ、やめ……っ!!!」
その綺麗な顔面を、殴りつけてやった。
最近はクソMADでも作ろうかなと動画編集ソフト導入しました。