あー?
あれですよね、ミニストップのプリンパフェが一番美味い。
さて、あの聖王国滅亡から、三十年が過ぎた。
三十年だ。
随分と、長い時間が経ったな。
聖王国滅亡は楽しかった……。
しかし、三十年も経ったのだ。
次のゲームを始めても良いだろう。
その前に、人外国家を見て回るか。
この三十年で何が起きたのか、人間国家はどうなったのか、俺の可愛い愛人達はどうなったのかを見ていこう。
まず、俺は。
正式に、人外種族全てを統率する、絶対の魔王となった。
今までの魔王の定義では、魔大陸の悪魔種達の王、という意味合いでしかなかったが、俺は本当の意味での魔王となったのだ。
教育が行き届き、俺の顔と名前は、人外国家の誰もが知っている。
ホブゴブリンのリィンと愉快な仲間達は……、ビストロ・グリーズの全国チェーン店展開により、忙しそうだ。たまに会いに行っては抱いているが。
寿命も、ヘスペリス産の果物で作った若返りの薬、『アムリタ』で問題なくなっている。
グラース達、ダンジョン攻略組、プラス魔大陸の元魔王サタナエルは、人外国家各国の指導者として活躍している。精力的に働いてくれているようだな。こちらも、たまに会って抱いている。
リッチのマリーは俺の秘書として、俺について回る。よく抱く。
元銃の勇者パーティの三人は、それぞれの部族をまとめ上げる指導者になった。こちらも、たまに会って抱く。
因みに、ヘスペリスのスカラベオ、麗国の雷天、ジパングの鞍馬もよく働いているらしい。
人間国家を裏から支配する黒骸骨の連中は、指示通りに動いているらしく、人間国家は特に発展していない。
それで……、各国の発展を見ていくか。
まず、どの国も、前提として、十分な食料自給率と、読み書き計算及び最低限の外国語の習得、大学の設立、明文化した法律、紙幣の普及、鉄道等流通網、独自文化及び他国との友好的な交流、映画やラジオなど……、近代的な国家になっている。
まず、レムリア。
地球で言う、ウクライナ周辺からロシアにかけての地域が支配領域。
フェンリル族を中心に、北方イエティ族を飲み込み、グリズリー、コボルト、オセロット、ハーピィ等の獣人の国家。
酒造と畜産が盛んで、スポーツが流行っている。
特に拳闘が盛んに行われており、六年に一度行われるスポーツの大会、『レムリンピック』には、国内外問わず多くの人々が観戦しにくる。
戦闘能力的には最も高い、戦士とスポーツの国だ。
次にアルカディア。
ついこの間、スパシアを滅ぼし、ヨーロッパ全域を支配するに至った国。
主な住民はユニコーン族を中心にミノタウルス、ケンタウロス、サテュロス、ワーシープ等、獣人が多く、エルフも住んでいる。
農耕が盛んな国だ。
美食にうるさく、飯が美味い国。
教養の一つとして、弓や銃を習う者が多い。
狩人と農耕の国だ。
エデン。
支配領域はアフリカ全土。
龍種が中心に爬虫人。ドワーフもいる。
知的階級が多く、日夜、新たな技術や芸術が生み出されている。
映画の本場で、技術と芸術のためならなんでもやる連中がゴロゴロいる。
エジプト付近に存在したジプティアという国も併合した。
ジプティアは……、ファラオと言う種族が支配する、古代エジプトのような国であったと言っておく。
文化の国だ。
魔大陸、から名を変えてシェオル。
デーモン、デビル、サキュバス等、悪魔の国。
元々魔法で栄えていた国で、知的階級も多い。
魔導師の国だ。
麗国。
国土は中国。
多種多様な種族……、妖怪系の種族が入り乱れている。
拳法が広まって、独自の進化を遂げている。
六年に一度の武術大会、『大拳帝武闘会』にも、多くの人々が観戦に来る。
拳法の国だ。
ジパング。
国土は日本。
こちらも、妖怪系の種族が入り乱れている。
職人と呼ばれる連中が、面白いものや貴重なものを作り出す。
武術と技術の国だ。
ヘスペリス。
国土はトルコを中心に中東全域。
植物人、虫人、妖精が生息、そこにハーフリングも少し。
特産品は果物やきのこなどの森や山の幸。
森の国だな。
他にも、太平洋のど真ん中の海中に、アトランティスという人魚の国を見つけたので、そこも支配下に置いた。
アトランティスは海の国だ。
各国の新聞を読んで、細々とした情報を得てみる。
『拳闘士兼レムリア軍大佐、フェンリル族、鉄拳のネージュ氏、今年もレムリンピック拳闘部門優勝』
あー、あいつか。
綺麗なアウトボクサーだな。何せ、あいつにボクシングを教えたのは俺だ。
蝶のように舞い、蜂のように刺す、と教えたが、それを実践できるのは才能と努力だろうな。
軍部での素行も良く、兵士としても優秀だと聞く。
ふむ、アルカディアのレスリングの王者、ミノタウルス族、剛腕のボヴァンとの異種格闘技戦を予定、か。
面白そうだな、マリーに試合観戦の手配をさせるか。
それと……?
『映画、「メリティの空」、興行収入四億ドラ突破』
ふむ……。
脚本はエデンの有名小説家の、ペンネーム「ランスヘッド」とか言う女。
この女は、ラブロマンスを書かせたら右に出るものはいないと評判で、「愛とは何か?」という問いかけを投げかけつつも、このような愛の形もあると可能性を示す、らしい。
映画の内容は、エデンの華やかな一番街の一区画、通称メリティと呼ばれる地区での恋物語、ってところか。
愛よりも金持ちの男と結婚したいと願う主人公のメリンダが、失恋やなんだと色々な経験をして、やがて真実の愛を見つける話、だったな。一応観た。
内容は……、まあ、女受けする話だな。これを見に行ったピトーネは最高だったと泣きながら言っていたな。
主演女優のエキドナ族、アダーという女は、俺の目から見ても良い演技だったな。
何か賞でも作って送るか。
ああ、因みに、四億ドラの「ドラ」はエデンの貨幣の単位だ。
1ドラ=100スネク、価値は大体、1ドラで瓶のビールが二本買えるくらいか。
ジパングでは……、ほう。
『アニメ「ハイカラ道中記」、大人気』
少し見たが、烏天狗の旅人がジパングを旅する途中で、世直しをするというアニメだな。
子供の情操教育になっているらしい。
さて、人間国家の方はどうだ?
黒骸骨からの報告書を読む。
最初は報告書も拙い出来だったが、三十年も書いてると手慣れてくるのかね?分かりやすい報告書だ。
あいつらには全員魔族語を教えてあるから、報告書が外部に漏れても読まれたりはしない。
で、内容は?
姉を殺された復讐に燃えるアルフリート王子……、いや、今はもうアルフリート王だったな。そいつを適当に操って、利益を上げている、と。
何でも、あの時、ちゃっかり王侯貴族の脱出を手伝った黒骸骨のメンバーは、そのままお上に気に入られ、表の権力も得たらしい。
やるな、フルボ。有能だ。偉いぞ。
それで、メリカ公国に元から存在していた裏組織、暗殺教団と縁を結び、その教団を黒骸骨の幹部にしたらしい。
つまり、黒骸骨に新たに暗殺部門ができたことになる。
暗殺者、アササンって男と……、フルボが見込みがあると言って拾ってきた奴、ドローグとか言うガキが……、ああ、いや、今はもう大人だな、兎に角そいつが麻薬担当に、フルボは密輸担当になったらしい。
まあ、フルボの仕事は多かったからな、働く奴を用意するなら別に文句は言わねえよ。
それに俺は、黒骸骨の連中を気に入っているからな。昔を思い出す、愉快な下僕共って感じで。
フルボからの提案では、元聖王国を荒地のままにしておいて、人口ダンジョンを作り、古代からありました、ってな感じにするらしい。
つまり、元聖王国ダンジョンから、適当に俺達人外が作った物を置いておいて、それを取ってきて、「古代文明の遺産だ!」とする、と。
となると、人間を制御できる、な。
面白いな、採用。
と、新聞や報告書、雑誌などを読んでいると。
「ご主人様」
「ん、マリーか。何だ?」
「朗報。貴方好みの面白い魔法の完成」
ふむ?
「貴方がいた世界……、地球から、人間を召喚する、『異世界召喚魔法』の開発、終了」
ああ、それは……。
「面白そうな話だなァ?」
三十年飛びました。
文化レベルは20世紀初頭くらいです。