これから、「転移勇者を神視点で眺めてプチっと潰すゲーム」と言う、このssの本題に入ります。
次のゲームに備えて、各国の指導者を呼び出し、会議をする。
レムリアからフェンリル族のグラース。ついでにサンダーバード族のブリッツ。
アルカディアからユニコーン族のウーノ。
エデンからエキドナ族のピトーネ。
シェオルからデーモンロード族のサタナエル。
ヘスペリスからヘラクレスビートル族のスカラベオ、ハイフェアリー族のオーベロン、ユグドラシル族のアルベロ。
ジパングから天魔波旬族の鞍馬、九尾狐族の玉藻、鬼神族の酒呑。ついでに女郎蜘蛛族の八千代。
麗国から黄龍族の雷天。四神将軍、青龍族の翠英、朱雀族の紅芳、白虎族の空羅、玄武族の塔墨。宰相の、白澤族の雪音。
ビストロ・グリーズから、ホブゴブリン族のリィン、ハイオーク族のエーバー、ハイコボルト族のカーネ、レッドキャップ族のロッソ、ダークスライム族のアクア。
ハイエルフ族のエトワール、エルダードワーフ族のマルテーロ、ハーフリング族のリリィ。
アトランティスの王、人魚族のオセアン。
ジプティア改め、アアルの王、ラー族のシッチタ。
北方イエティ部族の国、キーテジの王、イエティ族のヴァランガ。
秘書のリッチ族、マリー。
人外国家全国の指導者プラスアルファを揃えた。
この三十年で官僚や政治家の育成も済んだが故に、指導者は割と自由にできる。
さて。
「今回集まってもらったのは他でもない。次のゲームが始まる時間だからだ」
「「「「はぁ」」」」
よく分からない、と言った表情。
マリーに説明させる。
マリーが前に出て、プロジェクターにパワーポイントで作成された資料を表示して、口を開いた。
「今回、サタナエルの協力の元開発した魔法は、『異世界召喚』の魔法、ディメンションゲート」
皆が頷くのを見て、続きを話す。
「知っていると思うけれど、サタナエルは時空間制御の魔法が得意。今回の魔法は、より良い空間制御魔法の開発途中に生まれた副産物」
「へー」
「私達のご主人様、ジン様が、異世界から来たことは周知の事実だと思う。この魔法は、そんなご主人様の世界、『地球』から、人間を転移させる魔法」
あらかじめその辺りのことは話してある。
俺の持つ技術の異質さからして、異世界のものだと言うと大体は納得される。
「主人様レベルの奴がこの世界に来んのか?!危ないんじゃねえのか!!」
と、グラースが吠える。
「無問題。ご主人様は元の世界でもトップクラスに強かった。しかし通常の人間の強さはこちらの世界の人間と大差ない」
「なら、良いけどよ……」
話を続けるマリー。
「今回は、この魔法を使って、地球から人間を召喚する」
「……それのどこがゲームなのだ?」
ウーノが尋ねる。
「肝は、『人間国家に、異世界の勇者を呼び出す魔法』として流すことにある」
「ほう……?」「成る程……」「それは確かにゲームになりそうだ」
「この魔法は、大量のリソースと大型の魔法陣を使えば、人間にも使用可能。黒骸骨を通して、異世界召喚魔法を人間国家側に流す」
「けどさ、ただの人間ならすぐに死んじゃうんじゃない?」
とブリッツ。
「無問題。この魔法は、あらかじめこちらで操作できるようにしてある。つまり、誰を送るかをこちら側が選べる」
「そっかー。じゃあ、それなりに強い奴を送るんだね」
「それだけではなく、術式に干渉し、武器を渡したり、知識を埋め込んだりすることが可能」
つまりこう言う仕組みだ。
まず、人間国家の連中がこの異世界召喚魔法を使う。
すると、こちら側に魔法の反応が出る。
その瞬間に、時間が停止した世界である、異空間に俺達が移動。
異空間にて、召喚する人間を選定、洗脳魔法の応用による知識の植え付け、武器を持たせるなどの下準備をする。
人間国家に俺達が選んだ人間を送る。
と言うプロセスだ。
では、話し合うか。
「早速、誰を転移させるかを決める。手元の資料を見てほしい」
マリーが地球で調べて回った、転移候補者のデータを見る。
「やっぱり、最初はこのくらいの子が良いのでは?」
八千代が、一枚の資料を指差す。
『矢島花凛 女 14歳』
ふむ……。
「日本の、ミドルスクールの学生か。夢見がちで、ファンタジーの世界に憧れている、とあるな。保有魔力量も多く、エルフ並だ、だとよ」
そりゃあ良い。
「ご主人様のことだから、最終的には犯すのでござろう?なら、見た目が良いものを、と思いまして。それに、メリカからシェオルまでには数年はかかるでござる。つまり、この少女がご主人様のところに来ることには食べごろという訳でござるな」
分かってんじゃねえか、八千代。
「良し、こいつで決定だ。何を持たせる?」
「最初から使えもしない武器を持たせるのは変じゃないか?」
「黒骸骨で貴族になったと言う男がいたな、そいつに適当な魔剣でも渡して、勇者に渡すのはどうだ?」
「その魔剣に面白い機能をつけたらどうかしら?」
と、鞍馬達が言う。
ふむ……、魔剣に面白い機能か。
「あ、はーい、エデンでの研究なんだけど、最近はインテリジェンスソードって概念が提案されたの」
ピトーネが言った。
「なんだそりゃ」
「知性ある剣のことよ。自分で魔法を使って、使用者をサポートするの」
あー、どっかで見た気がするな、そのインテリジェンスソードってやつ。確かストーム……、いや、いいか。
確か手元にステラダイトが有ったな。
取り出して、と。
「フォーミング」
三十年も過ぎたんだ、俺の魔法の腕も上がっている。
究極魔法、オリジナルの魔法含めて、千を超える種類の魔法を習得済み。
「うわ……、それ、ドワーフが食いっぱぐれちまうから勘弁してくれよ……」
と、マルテーロが呟くのを無視して、一瞬で魔剣を作る。
隕鉄由来の魔法鉱物、ステラダイトから作られた魔剣に、更にエンチャントを。
不壊、軽量化、守護、霊体斬、雷属性、幸運、魔法斬を永続化させた、人間の基準なら伝説級の剣。
ステラダイト特有の黒い刀身に、金にアダマンタイトを混ぜ込み強度を上げたアダマンゴールドの柄頭と鍔。
鍔の真ん中には、魔力発生装置の高純度魔石を埋め込んでおいた。
形は両刃の西洋剣で、女からすれば大きめ。
重心の位置を調節して……。
生命創造の術式を使用。
『……おはようございます、マスター』
カースソード、完成、と。
教育は後でするとして……。
「名前は……、そうだな、インドキロスだ、クハハ、インドキロスにするか」
御誂え向きだなァ?
「魔法はどうする?」
「適当に攻撃魔法と防御魔法を覚えさせれば良いんじゃない?」
いや、そうだな。
「良いか?地球の人間……、それも日本人なんざ、ぬるま湯みてえな生活してんだよ。生活魔法は絶対に必要だ」
「そうなのか?……いや、戦場に出たことのない民などそんなものか」
雷天が納得する。
「魔法は三十種類程度で良いか」
決定。
「身体能力の向上は?」
「肉体改造の魔法をかける。これはエデンとシェオルが共同開発した最新の魔法でな。最大で十倍くらいまで身体能力を上げられるんだ」
「人間国家の根回しは?」
「教会の連中は黒骸骨とべったり癒着している。簡単に操れる」
「そうですか」
「さあ、他にもお前らの勇者に対するアクションも決めておけよ」
「「「「はい」」」」
と、会議が終わる。
「では、明日にでも黒骸骨にこの魔法を渡す。勇者が来たら打ち合わせ通りに動くようにな!」
「「「「はい!」」」」
さあて。
ゲームスタートだ。
魔剣の勇者編、始まります。