主人公がイケメンの方が書いてて楽しいですよ。
この物語の主人公である傭兵は、毎回言ってますけどモデルがアリーアルサーシェスですから、ワイルドイケメンです。
えっと、それで、装備を揃える予定なんだけど。
「鎧は……、これが良いね」
イザベルさんが、飾られている鎧の一つを指差す。
「お、お目が高いねえ。そりゃケルピーの革の鎧だ。水に強いしかなり丈夫だ」
おー!
モンスターの素材から鎧を作るんだ!
某モンスターをハントするゲームみたい!
「あの、ケルピーってあの馬みたいな?」
「ああ、ケルピーってのは、水棲モンスターの一種でな。馬と魚を混ぜ合わせたみたいなやつさ。人の肉が大好物で、水場から飛びかかってきては人を食うんだ」
怖っ。
ケルピー……、私のファンタジー知識に間違いがないなら、馬っぽいモンスターだった気がする。
ってことは、馬の革の鎧かぁ。
確かお父さんの財布が馬の革でできてるって、丈夫で綺麗だって自慢してきたっけ。
それに、水属性に強そうだね、水棲モンスターの革なんだし。
「その、モンスターの素材で鎧を作るのは普通なんですか?」
「ああ、そうだな。上位の冒険者になればなるほど、モンスターの素材や稀少な金属を装備に使うんだよ」
へあ。
なるほどー。
「因みに、アタシの革鎧はバジリスクの革とアダマンスティールで出来てるんだぜ」
へー。
「さ、早速採寸しなきゃな。おい、リナ!採寸を頼む!」
「はーい!」
女の子の店員さんに、紐とか物差しみたいなので採寸される。
「まだちょっと身長が伸びるかもしれないからね、調節できるように余裕を持たせておくれよ?」
「はい、分かりました」
採寸が終わって、前金に銀貨三十枚を払った。
残りの代金は、鎧を来週までに作っておくから、その時に払えとのこと。
「さ、次は雑貨屋だ。ナイフとポーチを買うぞ」
「アッハイ」
ナイフ……、サバイバルナイフ的な?
怖いからあんまり刃物を持ち歩きたくないんだけど、異世界だしねー。
「らっしゃい」
うわー、愛想が悪い店員!
現代日本ならまず見ないよね!
「ナイフとウエストポーチを探している、あるか?」
「んあ、あるよ、ナイフは解体用か?」
「いや、万能ナイフで頼む」
「おう、万能ナイフはちょっと値は張るが、良いのを仕入れたんだ」
「これは……、鉄じゃないな、ウルフバートか?」
「ご名答、ウルフバートの万能ナイフだ。解体も料理もこれ一本、ってな」
「よし、ナイフはそれにする。ポーチは何がある?」
ぽんぽん決まっていくなあ。
「ほら、嬢ちゃん!こっち来な、ウエストを測らなきゃポーチは発注できないんだよ」
「アッハイ」
おじさんにウエストを測ってもらい、また来週に来いと言われる。
前金に銀貨三枚を払って、それプラスナイフ代銀貨八枚を払った。
ウエストポーチは牛の革で出来ていて、飲み水や薬草、虫除け、手拭い、そして宝石なんかを入れるらしい。
薬草は……、この世界にはポーションのような便利グッズはないとのこと。ハードコアだね。
宝石とかは、何かがあって荷物を捨てて逃げた時なんかに換金できる、かさばらない貯金みたいな扱いらしい。
「えっ、その、銀行とかは?」
「あんなもんは貴族が使うやつだぞ」
成る程。
そっか、そうだよね、身分証明書がないんだから、銀行とか難しいよね。通帳もATMとかもない訳だし。
「でも、あの、長期のお仕事の時とかって、ポーチだけじゃ足りませんよね?」
「そういう時はバックパックと荷馬を連れていくんだよ」
「森とか、馬が入れないところとかでは?」
「そんなところに依頼は出ないさ」
ええー。
「ほ、ほら、森のオークを倒せ、とか」
「何でだ?森にオークがいるのは当たり前だろ。わざわざ殺す必要あるか?」
「え、えっと、その、そうだ、ま、間引きとか」
「そういう時は、荷物持ちを何人も引き連れて、大規模依頼ってのが始まるんだよ。大規模依頼なら、荷物は荷物持ちに任せて、何人もの冒険者で一斉に間引きするんだ」
へー。
「まあ、どうしても少人数で遠くに行くってなると、アイテムボックスの魔法が使えるやつを連れていくしかないな」
そうなんだ。
×××××××××××××××
「なまじっか魔法なんてものがあるせいで、流通やインフラがいつまでたっても整備されねえんだよ」
マルテーロと飲みながら話を続ける。
「でも、インフラって言ったって、誰がその金を出すんだよ。城塞都市なんかでは、城壁を維持するためにかなりの重税が課されるって言うぜ?」
「ふん、貴族共の余計な消費や悪徳商人の脱税、削れるところはいくらでもある。その上、公共事業など、経済や技術の向上を目指す行動をとれば……」
「でも、あのフルボって奴が、それをやろうとした貴族を暗殺してんだろ」
「そうだが」
「それじゃどうやったって無理じゃん……」
そうだな。
「それで、勇者の防具はあんなんで良いのか?」
「ふむ、本音を言えば、もう少しマシなものをくれてやりたいところだったが……」
「だったが?」
「フルボの領地は、別にダンジョンや強力なモンスターがいる訳ではないからな。あの辺りにドラゴンの革などは流せない。流石に不自然だ」
「そりゃ、そうだな」
「しかし、最近はダンジョンの発生を操作する方法が研究で解明された。フルボの領地に、今日の昼頃に発生させるという話になっている」
「ダンジョンか……。ダンジョンは資源の宝庫だからな。モンスターが湧き過ぎるダンジョンは危険だから壊されるけど、殆どの場合はその領地で維持されるからな」
「ふむ……、それでダンジョン発生のメカニズムだが……、大気中の魔力濃度が150マギカを超える土地の魔力溜まりが……」
「あーあーあー、良いよそういうのは!聞いても分かんねーし!」
そんなんだからお前は馬鹿なんだよ。
分からないことを分からないままでいるから、進歩しないんだ。
あらゆることに疑問を持ち、解決するために頭を捻ることが大事なんだよ。
「兎に角、ダンジョンができるんだな?」
「ああ」
「また儲かるのか、フルボの奴」
「そうだな……、と言っても、貴金属や美術品、不動産に換えると言っているぞ。使い道のない人間国家の金が増えても嬉しくないとさ」
「そりゃあなあ。人間国家の金ってことは、人間国家でしか使えねえもん。人外国家では今紙幣だしな」
「それで……、装備はあんなもんで良いのか?」
「ああ、あんなもんだ」
「あ、そう言えばさ……、各国の指導者に配った武器だけど、あれは?」
「あれは武器じゃねえよ」
「嘘つけ、俺のにくれたこれなんて、斧じゃねえか。その上、適度に重くて切れ味抜群、ばっちり丈夫。良い武器じゃねえか?」
「それは『直結器』だ」
「はあ?」
「前に神託能力持ちの実験で、アカシックレコードとの接触はやったな」
「あ、ああ」
「そこで、莫大な魔力を使えば、アカシックレコードを一時的に編纂できることを発見した……。ここまでは話した筈だ」
「そ、そうだな?」
「そこで新たに生まれた概念は……、魔力による現実改変。アカシックレコード……、つまり、世界の法則の改変。『魔導』の誕生だ。お前達に渡したそれは、魔導の補助演算と出力供給、アカシックレコードとの直結の為の、言わば鍵だ」
魔導の副産物に、魔法をオートマチックにデチューンした『魔術』も誕生した。
「魔術を人間に普及させ、魔導を人外の上位層に使わせる」
「また人間が弱くなるのか……。因みにこれ、何でできてるんだ?」
「ミスリル、アダマンタイト、ステラダイト、オリハルコン、ヒヒイロカネを混ぜ合わせて作った超合金、超硬ゼノ・オリハルコニウム合金を六万層に重ね合わせたものだ。それに二十四のエンチャントを施した。理論上は究極魔法の直撃でも傷一つつかない上に、時空間すら斬り裂く」
「やっぱ武器じゃねーか!!!」
愛なんて所詮粘膜が作り出す幻想(ギニアス並感)なんだよ。