ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

198 / 1724
ブラジャー氏のお兄様シリーズめっちゃ良かった。


68話 修行の終わり

三十層をクリアした私達は、次に四十層に挑む。

 

パーティメンバーの平均年齢は16歳、まだ時間はある。

 

冒険者は、四十歳になる前には大体引退するらしい。老いには勝てないんだって、やっぱり。

 

そもそも、この世界の人達は四十歳まで生きられるのは稀みたいだけど。

 

まあ、と言う事で、このマーレ領のダンジョンで、あと一年は訓練するようだ。

 

一年後には、フェッソ伯爵が船を出してくれるそうだ。

 

それまでに修行、頑張ろう!!

 

 

 

四十層ともなると、結構辛い。

 

インドキロスというアドバンテージがあっても、敵の強さは目に見えて違う。

 

確かに、インドキロスなら、急所に当てれば一撃だけど、素早い攻撃や多彩な魔法で、怪我が増えた。

 

五十層にもなると、骨にヒビが入ったり、たくさんの血が流れたりと、ダメージは大きかった。

 

本当に痛かったけど、カリーナさんに治療してもらって、なんとか治すことができた。

 

五十層では苦戦も苦戦。

 

かなり強いモンスターとの連戦を重ねた。

 

五十層のボス、ギガントバジリスクは物凄い力と、石化の魔眼があり、倒すのに十分もかかった。

 

物凄い攻撃力のインドキロスがあってなお、それほどの時間戦ったと言えば、どれほどの激戦だったか分かるだろう。

 

 

 

そして……。

 

 

 

「船の準備ができやした」

 

フェッソ伯爵のその一言を聞くと、私達は動き出した。

 

「ついに、この時が来たね……」

 

「ああ、訓練は終わりだ」

 

「旅出の時」

 

「全ては、魔王を倒す為……」

 

みんな、行こう。

 

 

 

旅の始まりの前夜。

 

みんなと、お酒を飲みながら話をする。

 

「にしても、カリンは頑張ったな、本当に」

 

「イザベル……」

 

私達の仲も、相当良くなってる。

 

私も、コミュ障だなんだと言っていたけど、流石に一年もすれば慣れてくるものもあり、今ではどもらずに話せるようになった。

 

「イザベルが、みんなが私を支えてくれたおかげだよ」

 

「最初はね、カリンは頼りなかったもんさ。オドオドしててちっこくてね。でも、今はどうだい?誰に対しても物怖じしない度胸もあるし、剣だって上手くなった。あんたは一人前だよ、カリン」

 

「えへへ、ありがと、イザベル」

 

エールの味にも慣れたものだ。

 

最初は飲めなかったけど、慣れてみると美味く感じる。

 

「カリン」

 

「何?シンシア?」

 

「魔王を倒したら、どうする?」

 

魔王を倒したら、か……。

 

「元の世界に帰りたい?」

 

「……分からない、かな。元の世界に帰って、読みたい本とかあるけど……、それより、みんなと離れたくないな」

 

「私達は、仲間」

 

「うん、一緒にいたい」

 

「それでは、この世界で生きる?」

 

「うん、多分ね」

 

「そうしたら、カリンは王族に?」

 

カリーナが言う。

 

「何で?」

 

「魔王を倒せば、きっと王族との婚姻の話も来ると思いますよ?」

 

「結婚かあ、そういうのはちょっとまだ分かんないかな」

 

「そうですか?」

 

そうだなあ。

 

「魔王を倒したら……、隠居して本屋さんになろうかな?」

 

「ははは、そりゃいい!」

 

「面白い」

 

「まあ、素敵ですね」

 

 

 

×××××××××××××××

 

「人工ダンジョンの実験はこんなものか」

 

A4数十枚にまとめられた論文を読み終えて、目の前のピトーネに返す。

 

ピトーネはその論文をアイテムストレージにしまう。

 

「それで、こっちが、人工ダンジョンによる農耕地拡張実験よ」

 

論文を読む。

 

内容は、人工的に作った巨大ダンジョンを、農耕、畜産、養殖などに利用すると言ったもの。

 

「ふむ……、実験室レベルでは成功しているのか」

 

「そうね」

 

「よし、この研究に関わった人員には十万ドラのボーナスを支給しておけ。そして国営事業にするぞ」

 

ダンジョンは別世界。昼夜はあっても季節はない。

 

今、人工ダンジョンは研究が進み、好きな広さの、好きな階層、好きな環境、好きなモンスターのダンジョンを作れるようになった。

 

つまり、無限の土地があるということだ。

 

それを利用し、農耕、放牧、魚の養殖などに利用するということになっている。

 

やがては、ダンジョンの中に街を作り……、などとは考えてある。

 

「にしても、魔空間学の研究も大分進んだな」

 

「デーモン族とエキドナ族が頑張ってるもの」

 

「ふん、頑張る?結果が全てだ」

 

「でも、結果が出てるんだから、頑張ってるってことじゃないかしら?」

 

「ふむ、そうだな、そう言えるだろう。まあ、結果さえ出せば予算や給料は適切に出す。それだけだ」

 

 

 

俺はワイングラスを傾ける。

 

ふむ、香り良し。

 

一口、口に含む。

 

味も良し、か。

 

「ファーティマー一級の高級ワイン、『マールス』よ」

 

「火星か」

 

「そう、火星みたいに少し淡い色合いでしょう?これは『フランソワ』って言う特別な葡萄で作ったワインなのよ」

 

「ほう」

 

「『フランソワ』は品種改良でできた葡萄で、アルカディアのファーティマー地方でのみ育てられているの。ファーティマー地方の土壌と、妖精による促進栽培法で、今までのワインとは画期的に違う、新しい方法で作られたの」

 

「成る程な、新しいもの好きのお前が好む理由はよく分かった」

 

「まあ、新しいもの好きなのは自覚してるけど。それだけじゃなくって、味も香りも良いじゃない?」

 

「確かにな。これのヴィンテージものが十万ユニコで取引されていたな」

 

「ええ、ヴィンテージものはウチにいくつかあるけれど、当たり年のものなんて十万ユニコを軽く超えるわよ」

 

ふむ……。

 

どこの世界でも、良い酒にはいくらでも払うやつがいるってことか。

 

「ふむ、この味のためなら、十万ユニコくらいは惜しくはないな」

 

因みに、俺や各国の指導者の収入は莫大なものになっている。

 

酒なんざいくらでも飲める。

 

それに、指導者が贅沢をするのは義務だぞ。

 

清貧な指導者の下では、民も清貧に過ごすしかないだろう?

 

過度な浪費は良くないが、適切な消費は経済の活性化に繋がるのだ。

 

俺は末端の使用人にまでしっかりと給料を払うし、時間外の過度な労働もさせない。休暇も出す。

 

故に、使用人達までもが、プライベートにて適切な消費活動を行う。

 

例え吹けば飛ぶような小作人にも、適切な給料と休日を出させるように徹底してある。

 

この労働法を破れば犯罪だ。割と大きな罰金になる。

 

故に、資本家達も高額な罰金を恐れて、過度の労働を課すことはない。

 

また、資本家達も、バカンスだパーティーだと、大きく消費してくれる。

 

それにより、人外国家の景気は良い。

 

どれくらいかと言うとジャズエイジのアメリカくらいの好景気だ。

 

人工ダンジョンにより、無限に増える資源がある。

 

富の分配は公平であり、信用取引も制限、相場も調整してある。

 

そもそも、人外国家は、どこか一国が栄えるのではなく、相互に貿易し合い、富を流動させている。

 

世界恐慌は人外国家には来ないだろう。

 




イタチ兄さんのメガテンも良かった。血の気の多いペルソナも良し。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。