ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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エロ!グロ!


79話 移動中

適当に、恐らくは東にあるであろう港町のライアン領を目指してざっくりと移動する。

 

車も適当な四駆。

 

ざっくりでも、途中で人に道を聞くなりすれば良いだろう。そもそも、地図も正確なものはない、衛星写真も測量もない世界で、ざっくり移動するのは普通のことだ。

 

たまに、馬車とすれ違うが、四駆を見た馭者はモンスターか何かだと思ったのか、驚いて逃げ出すようなこともあった。

 

移動するのは午前の間。

 

午後はソフィアの訓練に回す。

 

夜はアイテムストレージのコテージで休む。

 

そんな風にして、一日を過ごす。

 

 

 

「朝ごはん美味しかった〜。歯磨きしたら移動だねえ」

 

「ああ」

 

歯磨きをしたら、車を出してコテージをしまって移動する。

 

運転するのは流石に俺だが……、運転というのも割と面倒だからな。こんな時に八千代辺りがいると楽なんだが……。いや、無い物ねだりしても仕方がないか。ソフィアにそのうち運転を教えりゃ良いだろ。

 

俺はカーステレオに往年のロックナンバーのCDを入れて、音を流す。

 

ロックは良いな。

 

俺はやはり古い人間でな……。ああいや、既に人間ではないんだが。

 

俺が若かった頃はロックが最高に流行っていた時期でな。

 

音楽はいいぞ、文化的だ。

 

戦場ではしばしば、文化的な生活ってやつを忘れちまうからな。

 

「今日もゴキゲンだねえ」

 

「ん、ああ。バカンスだぜ?楽しまなきゃ損だ」

 

煙草を吸いながら、車を飛ばす。

 

まあ、速度はそれ程でもないが。

 

ロックを垂れ流しながら移動。

 

途中、正面から馬車が来るが。

 

「退けろオラァ!!!」

 

「ひいぃ!!!」

 

クラクションを鳴らしてやるとビビって道を譲ってくる。

 

良いねえ。

 

「ご主人様、乱暴だよお〜」

 

「良いんだよ、俺の前を走る奴が悪いんだからな」

 

道に左側通行やら右側通行やらしなきゃならねえような法律はねえんだ、前からくる奴が退けりゃいいだろ。

 

 

 

ん。

 

移動の最中に、気配を感じた。

 

あそこの木の上、茂みの中……。

 

野盗の類だな。

 

車を止める。

 

「どしたの?」

 

「野盗だ」

 

「ええ、大変!どうするのお?」

 

「殺す」

 

「あのー、ほら、野盗じゃないかもしれないから、警告するとかしない?」

 

ふむ……。

 

油断はしてはならないものだが、少なくとも俺は魔術でも弓矢でも鉄剣でも傷つかず……、正直に言えば、寝てる間に枕元に核ミサイルを落とされても死なない。

 

人間だった頃ならいざ知らず、今この魔人の身体ならば、態々野盗に先制奇襲をする必要はない、のか。

 

しかし……、それこそ、態々警告してやるほど俺は優しくない。

 

殺す価値はないが、生かす価値は尚更ない。

 

ミニミ軽機関銃を呼び出し、引き金を引く。

 

「ぎぃあ」「ああ」「がっ」

 

鋼鉄のドラムを響かせながら、森の緑を赤く染める。

 

木々は抉れ、人体が穴だらけになり、野盗は小さな悲鳴と共に蜂の巣になっていく。

 

「ひいい〜!!!」「ば、化け物だ!」「痛えよお、痛えよお」

 

「これが俺流の警告だ」

 

「……あ、うん」

 

 

 

ソフィアは貧農の子らしく、飢えで死んだ兄弟姉妹の姿や、モンスターに食い荒らされた親族の死体を見て育ったらしい。

 

故に、死体を見ても顔を顰めるくらいで、大袈裟に泣き喚きはしない。その点は良いだろう。

 

魔剣の勇者は、それは酷いもんだった。ちょっとしたモンスターの死骸でゲロ吐いて泣き喚きやがったからな。

 

そうこうしているうちに、俺の魔人としての超越的な嗅覚が海の匂いを捉えた。

 

海が近い、魚の生臭い匂いがする。

 

やはり、港町があるようだな。

 

車を走らせ……、すると、門の前に並ぶ馬車の列。

 

車を見た列の人々は何だあれはと騒ぎ立てるが、俺はそれを無視して車を降りる。

 

「な、何だ?!」

 

衛兵が槍を向けてくるが、それを無視して車を『武器庫』にしまって、列の先へ向かう。

 

「お、おい!町に入るにはここへ並んで待て!」

 

「ふん」

 

俺は、衛兵に金貨を渡す。

 

「俺は少々せっかちでね。商売のためにもとっとと町に入りたいんだよなあ」

 

「むっ!これは!よし……、ああ、そうだな!こちらに来い」

 

良いね、適度に腐敗していると話が早くなる。

 

因みに、これは人外国家では通用しない手だ。人外国家では収賄は厳罰に処される。

 

政治献金は有りだが。

 

因みに……、今の人外国家の与党はレムリアならフェンリル族多数の狼皇党(民主党に近い)、アルカディアならユニコーン族多数の共和党、ジパングも共和党、シェオルなら共魔党(共和党に近い)……、それぞれ違う。

 

政権交代もたまにあるようだな。

 

アルカディアとシェオル、ジパング、アトランティスには貴族院があり……、ヘスペリスは共和制に近い。

 

そんなことを考えつつ、門の前に。

 

「むっ?何だ?貴族でもないのに列を抜かすのは……」

 

俺は金貨を渡す。

 

「むっ?……まあ、そうだな、二人なら良いだろう、通れ」

 

関所を通り抜けた。

 

金貨十枚……、大体千〜一万ドルくらいの価値があるようだな。

 

この程度で職務を投げ出すのであれば、その程度しか金をもらっていないのだろう。

 

末端にまで金をかけるのが大切なんだがな。

 

 

 

港町……、『ポート・ロミール』は、人外国家から見ればちっぽけだが、人間の街にしては大きな町だった。

 

門をくぐって大通りを歩く。

 

大通りは広めに作られているようだが、そこら中に屋台やらが建ち並び、結果として手狭な印象になっている。

 

「ウィークフィッシュとトマティアのスープだよー!」「シーバスが安いよー、たったの銅貨10枚!」「アンバーフィッシュの大安売りだ!銅貨10枚のところ8枚で売るよ!」

 

「凄いねえ、人がいっぱいだよー」

 

「そうか?道が狭いから人が多く感じるだけで、実数は少ないと思うぞ。精々数千人くらいか」

 

「ご主人様の国にはもっといっぱい人がいるの?」

 

「国の面積にもよるが、俺の支配下には三十億を超える民がいる」

 

「わ〜、凄いねえ」

 

人口ピラミッドも若年層が非常に多く……、そもそも、要介護レベルで動けなくなる頃には寿命で死ぬからな、人外は。

 

そこそこ早く成長して、長い間労働力になり、老いると死ぬ。

 

種族によって違いはあるが、多くは長命だ。

 

人間とは違い、全盛期が非常に長く、成長しきるまで十数年間、全盛期が数百年間、老いて死ぬまでが百年間程……。

 

全く、人外とは便利なものだ。

 

「何か買う?お魚食べる?」

 

「いらん、わざわざ買わずとも俺が持ってる」

 

「アイテムボックス持ちは便利で羨ましいなあ」

 

「アイテムボックスは時空魔法の初歩だ。これを覚えなきゃ話にならん。うちの国なら初等教育で必ず習う」

 

掛け算みたいな扱いだ。

 

流石に、掛け算よりは難しいだろうが。

 

まあそれでも、人外国家においては、基礎的な数学、科学、文学、外国語、魔法、地理、世界史などについて学ぶ。

 

大学においては各分野の詳細な研究を行なっている。

 

人体実験や生命倫理などという下らないものは存在しない故に、本気で不老不死を目指す研究や、より簡単な死者蘇生法、BC兵器の開発なども発展している。

 

「初等教育?」

 

「俺の国では、幼い子供は皆、学校に通うんだよ」

 

「学校って?」

 

「識者を集めて教師にして、子供に勉強を教える施設だ」

 

「凄いねえ、私は、勉強は村の長老に習ったなあ」

 

この世界には学校はないようだ。家庭教師や、その他識者に学ぶらしい。

 

まあ、そんなものだろう。

 

いや、もしかしたらソフィアが知らないだけで、大きな街には学校があるかもしれねえがな。

 

「あ、そうだ、私、海が見たいなあ」

 

「一人で見てこい」

 

「一緒に見てこようよ〜」

 

「……まあ、良いだろう」

 

この世界の海にも多少は興味がある。

 




ほか弁のカットステーキ丼美味い。

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