ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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地獄を作ろう2!頼れる建築士!




81話 海の平和をお買い上げ

俺は、水面に駆逐艦を浮かべる。

 

ズムヴォルト級ミサイル駆逐艦……。

 

良い船だ。

 

一概に言えることではないかもしれんが、基本的に兵器は新しければ新しいほど性能が高い。

 

例えば、第二次世界大戦時にビッグ7と讃えられた巨艦も、現代の新型のイージス艦なら即座に沈めてくれるだろう。

 

まあ、戦艦とイージス艦では運用方法がまるで違うので比較対象にはならないかもしれないが、砲艦をイージス艦が艦載機で囲んで殴ると考えるとな……。

 

そして、現代最高のイージス艦も、十年二十年先の新型には敵わなくなっているだろう。

 

何にせよ、古代ギリシアの木製の船が相手なら、最新式の駆逐艦一隻でこの海域から根絶やしにできるだろうな。

 

単装砲、機関砲、VLS……ミサイル発射装置と艦載機。

 

実に素晴らしい船だな。

 

因みに、俺は兵器オタクの傾向にあるとミカエルに窘められた。詳しい話はしなくていいだろう。

 

そもそも、ソフィアにこの船がいかに素晴らしい戦闘機械か語ったとしても、5パーセントも理解されないだろうしな。

 

だが、俺は兵器が好きだ。

 

人間はいくら面倒を見てやっても平気で裏切るが、兵器は面倒を見てやれば絶対に裏切らないのだ。

 

さあ、蹂躙しよう。

 

 

 

「こんなに大きい船を持ってるなんて、ご主人様は凄いなあ」

 

「駆逐艦だから小さい方だ。空母ならもっと大きい」

 

「へー」

 

「艦載機を飛ばして偵察させる」

 

艦載機はヘリだ。

 

対地ミサイルと対艦ミサイルのもの、両方を用意した。

 

「わわわ!バタバタバタバター!うるさいよー!」

 

「そういうものだ、我慢しろ」

 

「飛んだーーー!!!」

 

「ヘリだぞ、飛ばなきゃおかしい」

 

「凄い凄い!あれ、どうなってるの?」

 

「お前のようなアホに航空力学を語っても無意味だろう。あの形をした乗り物は空を飛ぶとだけ覚えていればいい」

 

「うん!」

 

行け、艦載機、周囲の偵察をしろ!

 

俺が脳内でそう命じると、艦載機はひとりでに飛び出していった。

 

『武器庫』には、召喚した兵器に対する、遠隔命令権がある。

 

武器庫から召喚した兵器は、その兵器にできる範囲の機能であればなんでも、手を触れずに動かすことが可能だ。

 

つまり、操縦桿を握らずとも、離着陸可能、攻撃可能という訳だ。

 

脳内に偵察の結果が次々と表示される。

 

……見つけた。

 

「撃て!」

 

艦載機から、光と煙の尾を引いたミサイルが、海賊船や海賊島に突き刺さり、大爆発を起こす。

 

ズドン、大気を揺るがす爆音が腹の底に響く。

 

たまらねえな、おい。

 

股座がいきり勃っちまう。

 

海賊は、何が起こったのか理解する前に、トマホークミサイルの爆轟により全身の骨を砕かれ、挽肉になって、炎に包まれて死んでいった。

 

海賊の砦も、対地ミサイルの斉射により吹き飛ばされ、逃げようとした海賊とその家族も機銃で撃たれて死んだ。

 

消えていく命の灯火の感覚に気持ちよくなりながら、海賊を追い立てる。

 

魔人の人間よりもずっと高い聴力により、遠くの音が拾える。

 

人の悲鳴!

 

なんと官能的な音楽だろうか。

 

俺は指揮者だ。

 

火器と言う名の指揮棒を振り回して、人間と言う名の楽器を鳴らす。

 

素晴らしい、人間とはこのように鳴けるのかと、何度殺しても新たな発見がある。

 

 

 

素晴らしいオーケストラも半日で終了。

 

ずっと聴いていたかったものだが……。

 

今回はこれで良いだろう。

 

主要な海賊のボスは直接船に乗り込み殺害し、首を斬り取ってある。

 

これを町長に提出してやるか。

 

「おい、町長はいるか?」

 

「これはこれは、何でも屋様!町長に何か?」

 

禿頭に白い髪が少し残った使用人が俺を出迎える。

 

「町長はどこだ?」

 

「し、執務室でございますが……?」

 

「案内しろ」

 

「は、はあ」

 

町長の館の執務室に入り込む。

 

「おや!これはこれは何でも屋殿!貴方の売って下さった毛生え薬は実に素晴らしいですな!見てください、ほら、髪が」

 

俺は町長の言葉を無視して、執務室の机に海賊の長達の首を置く。

 

「とわっ、た、は、はひぃ?!!な、何だこれはあ!!!」

 

「お前は言ったはずだ、海の平和になら金貨五千枚は出せる、と」

 

「へぁっ?!!あ、あれは冗談で……!!」

 

「知らんな、払うと言ったはずだ。払わないなら、金貨五千枚分の価値のあるものをもらっていくぞ」

 

「ま、ま、待ってください!何か別のものを」

 

「金貨五千枚分の価値のある、別のものを用意するか?」

 

「商人なら理解していらっしゃるでしょうが、富とは流動するものなのです!急に金貨五千枚など、町中の金貨を集めなければとても払えません!」

 

「なら、町中から金貨を集めろ」

 

「なぁ?!ふ、不可能です!そんなことは言わずとも分かるでしょう?!」

 

そりゃあ、そうだろうな。

 

「ならば、一週間待とう。町中にお前の名前で布告を出せ。金貨五千枚で俺から海の平和を買った、だから金貨を徴収するとな」

 

「そ、そんなことをすれば私は破滅だ!晒し上げられて干されてしまいます!」

 

「知らねえよ。お前は俺から海の平和という商品を確かに買ったんだ、払うもんは払ってもらおうかァ?」

 

「そ、そんな、無理です!」

 

「うるせェんだよ、金がねえならてめえのガキを奴隷商に売ってでも作れ。どの道、この取引については公開するからな」

 

「あ、ああ、終わりだ……!」

 

 

 

まあ、もちろん、一週間待ったが、金貨五千枚など集まる訳がない。

 

金貨を千枚しか集められなかった町長。

 

「契約違反だな」

 

「も、もう無理です!家財も殆ど売り払って、必死で金をかき集めてこれなのです!」

 

家族揃って頭を下げる町長。

 

「まだ売れるものがあるだろ?」

 

俺は、町長の一人娘を指差す。

 

「……そ、んな」

 

「歳の頃は二十そこらか?年増だが、金貨十枚くらいにはなるだろうなァ?」

 

「い、嫌だ、娘は、娘だけは」

 

「それとこの家……、娘のガキも売れそうだな!なんだ、資産はまだまだあるじゃねえか!」

 

「や、やめろ、やめてくれ!!!」

 

俺は、町長を殴り飛ばし、悲鳴を上げる町長の娘と孫を奴隷商人に売り払い、そして町長の家の権利書を不動産屋に売り払って、合計で金貨千二百枚を得た。

 

「いやあ、俺も優しくなったなもんだ。契約違反でも命を取らないなんてな。聖人デビューか?クハハハハ!」

 




この時の傭兵はレジライみたいな顔してたんやろなあ……。

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