1話 幻想入り
「ゆうぐーれのっ、かなーたからっ!!!」
早朝、セクシーな歌を歌いながら、日本国内を自転車で移動。
今日は気分が良い。
清々しいモーニング。
「おおーっと?!うぇいうぇいうぇい!俺の美少女スゥエンサーがビンビンにjust go on!!場所はァ?トゥルルルルルル、ティン!!!こっこだぁーーー!!!」
山奥の廃神社に突撃。
博麗、神社か?ボロボロの鳥居には、博麗と書かれているのが分かる。
考古学でダイスロォール、成功。
少なくとも、明治より昔。人の手は加わっていない、近くに村はなしということから、かなり昔に廃棄された神社だと分かる。
ふーむふむふむ!
だがだがだがだが!!!
「俺の目は誤魔化されないぜっ☆」
脳内の瞳を使えば、目の前に強固で複雑な結界があることが見て取れる。
「解析……、っと、ここが、こうだから……、ふむ、人一人通る分の穴を開けるくらいならできるな。えい」
空間が裂ける。
「イェア!」
突撃ラブハート。
やったれやったれ。
「ッフゥ、結界を抜けると、そこは森でした、と」
森の中ー。
くまさんでも出るのかァ?!
『ギャオオオオオ!!!』
「おおーっと、くまさんよりタチ悪そうなのがわんさか!びっくりしたぜ!」
見たところ大百足かぁー。
まずは唾液を、召喚した弓矢の鏃につけて、と。
「南無八幡大菩薩!!!」
『ギャギャーーー?!!!』
次、ぬりかべ。
その辺で拾った棒で足元を払う。
『オオオーーーン!!!』
次ィッ、見越し入道!
「見越し入道見越した!!」
『アアアアアーーー!!!』
っと、完全攻略!
妖怪は弱点が多いしなあ。
まあ、弱点が突かれなければほぼ無敵だけど。
「ハヒィ〜!ホハァァァ!!!」
やがて、鳥居に博麗と刻まれた神社に到着した。
「ふむ?ここは?」
んんんんんー。
おやおやおやおや?!
「ふぁ……。今日も平和ねえ」
美少女ォ。
美少女ォ!
美少女ォ!!!
AAA級スーパー美少女!しかも脇が見える!
その上ェ、変則的とは言え巫女さぁんだ!!
巫女巫女ナース巫女巫女ナース!
ナースではないが。
俺は白スーツを召喚、早着替え。
「お嬢さーーーーーん!!!」
「え?な、何?」
バラの花束を取り出して、渡す。
「君はとても美しい!」
「そ、そう?ありがとう?」
見てくれ。
艶のある美しい黒髪。日本人らしい造形の、少し鋭い相貌。
見てくれ。
未成熟ながらも、将来が期待できる、少し細めの肉体。
見てくれ。
どこか浮世離れした、クールな雰囲気。
「綺麗だね、君は。本当に美しいよ」
跪いて手の甲にキスをする。
「も、もう、褒めても何も出ないわよ?それで、貴方は誰かしら、色男さん?」
「俺か?俺は、そう……」
旅人さ。
「旅人、ねぇ。外の世界から来たの?」
「そうだね、山奥の神社で、強力な結界を見つけたんだ。好奇心の赴くままに結界の一部を緩めてここへ」
「そう……。あのね、知らなかったなら怒らないけれど、あまり結界はいじらないで欲しいの」
「んん、そうだね。どうやら、あの結界は、この世界と外を隔離する結界みたいだしね。でも安心してくれ、俺の力では、どんなに頑張っても、あの結界を破ったりはできないから」
「……そう、みたいね。色々と異質な力を感じるけれど、力の総量は並ね」
博麗霊夢。
この、結界を維持する、巫女さんだそうだ。
そーんで、とってもkawaii。
美少女の上に巫女とかもう、もうね。
そんな可愛い可愛い霊夢ちゃんに、この世界のことを聞いたところ、ここは幻想郷と言うらしい。
んー、なんか聞いたことあるな。
忘れられたものたちの楽園、だとか。
確かに、この辺りの神秘の濃度はかなりやばいレベル。
なるほどなあ、そういうものなのか。
で、話をした結果、今晩はここに泊めてくれるとか。
「あのね、霊夢ちゃん、女の子の一人暮らしで見知らぬ男を家に泊めるのはね、よろしくないよ?」
「あんたは、変なことするつもりなの?」
「しないよ?そういうのは合意の上でやるからいいんでしょ。無理矢理やっても嫌な思いをして終わりだよ」
「なら、いいじゃない」
良いのかね……?
「それより、晩御飯の時間よ、ほら、手伝いなさい」
「ああ、いや、それなら俺が作るよ」
「あらそう?それじゃあ、何か外の世界のものを作ってよ」
外の世界のもの……。
どうやら、この世界の文化レベルは、戦前レベルで止まっている。
ならば洋食がいいだろう。
洋食は、日本人の口に合うように改編された外国の料理ってことだ。
これなら、外の世界の料理でありつつ、この世界の嗜好にも合うのでは?という目論見。
「ふむ、嫌いな食べ物とかある?」
「ないわよ」
「宗教上食べられないものとかは?牛肉とか大丈夫?」
「ええ、大丈夫。でも、うちに牛肉なんて高価なものは置いてないわよ」
「あ、大丈夫、手持ちがあるから。じゃあ作るね」
「ちょっと待ちなさい、手持ち?」
「空間系の魔法をちょっとね」
「ああ、なるほど。あんた、凄いのね。空間系の魔法ってかなり難しいのに。ひょっとして、力を隠した凄腕の魔法使いだったりする?」
「いやいや、空間系の魔法は、旅に使えるから必死に覚えただけだよ。魔法も護身術程度だしね。食料は千トンくらい持ち歩いてるよ」
「千トン?」
「あー、三千万貫くらい?」
「……馬鹿なの?」
いや、馬鹿ではないけど。
「これ何?」
「ハンバーグとエビフライ、ポテトサラダにかぼちゃのポタージュ。あと、ガーリックライス」
「へー……。あ、美味しい!」
一口ハンバーグを食べると、夢中になって食べ進める霊夢ちゃん。
ああ^〜、ご飯を食べる女の子はかわええ。
食が細い子もそれはそれで可愛いんだけど、自分が作った料理をお腹いっぱい食べてくれる女の子は特に好き。
「もぐもぐ……、あら?あんたは食べないの?」
「ああ、いや、霊夢ちゃんに見惚れてた」
「そ、そう?しょ、しょうがないわね」
照れた様子の霊夢ちゃん可愛い。
いや、もうね、可愛いんだわ。
いや、どっちかって言うと美人系かな?
年齢的にも、抱こうと思えば抱ける年頃。
でも邪な念は出さない。
「あんた凄いのね……、また料理してくれる?」
「はっはっは、霊夢ちゃんの為なら何だってするよ!」
「……あんた、そうやって安請け負いしちゃ駄目よ?悪女とかに騙されるタイプかしら」
「実は、割と」
身包み剥がれたりはよくすると言ったら、馬鹿ねえ、と怒られた。
「でも、美人にだったら、騙されたり、お金を取られたりしても良いかなーって」
「はぁ、私が今までに見たことのないタイプの馬鹿ね、あんたは」
その晩は霊夢ちゃんの家の博麗神社に泊めてもらって、普通に寝た。
次の日、霊夢ちゃんに、人里に案内してもらう。
そこで、手持ちの貴金属を金に換える。
そして、幻想郷で遊び歩くことにした。
幸い、金はかなりの額がある。
金塊が効いたな。
その上、貴金属の手持ちは幾らでもあるし、他にも、ポーションや魔道具だったりなど、売れるものは沢山ある。
金には困らなそうだな。
取り敢えず、博麗神社と人里の間辺りの土地を借りて、住み心地の良い家の権利書で家を建てる。
うん、この幻想郷、非常に面白そうな匂いがする。
と言う訳で、年単位で腰をすえようと思う。
おっと、遊びに行く前に、人里の取りまとめ役の、上白沢さんに会った方が良いな。なんか、霊夢ちゃんが挨拶しとけって言ってたな。
次、人里アルバイト編。