ヤベーヤベーヤベーよ。
顔合わせた女の子のうち殆どを抱いたわ。
どうすっかなこれ、バレたら崩壊するわ。
ま!何とかなるなる!!
ある日、道を歩いていたら空から突風が下りてきた。
「おやおや!本当に噂通りの色男ですね!彫りが深めで西洋風ですが、こんな色男を見たのは数える程ですよ!」
烏の羽根……。
この気配は天狗、だな。
「烏天狗さんですか。お、これまた美人さんだ」
「あやややや、褒めても何も出ませんよー?」
少し照れた様子を見せる天狗さん。
可愛いじゃねえか。
「では、自己紹介をば。私、文々。新聞の、清く正しい烏天狗、射命丸文と申します!」
「ふむ、素敵な名前だね。俺も名乗ろうか。俺は清くも正しくもないが、旅人の新台真央だ。旅人と呼んでくれ」
「はあい、旅人さん!今、お暇ですか?」
「暇じゃなくても、君ほどの美人相手なら幾らでも予定を空けるさ」
「あらあら、口が上手い、と」
文さんは、手元のメモ帳に口が上手いと書き込んだ。尚、字は汚い。
「それでは、私のインタビューを受けていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろん、良いとも」
屋台を開いて、インタビューを受ける。
その前に。
「つかぬ事をお伺いしますが、昼飯は済ませましたか?」
「実はまだなんです。もしかして?」
「ええ、折角なので何か食べて行って下さい」
「おお!よろしいんですか?」
「ええ、もちろんですとも。俺の奢りですよ」
美人に美味いもん食わせるのはやめらんねえよ。
それで、一番人気のものをと言われたのだが、どれも人気だと伝えると、唐揚げを頼んできた文さん。
鶏肉だけど大丈夫かと聞いたら大丈夫だって。
「では、まずは、噂の外の世界の料理をいただきましょうか。いただきます、と」
箸をつける文さん。
「……おお、これは、確かに!どこに出しても恥ずかしくない料理ですね!いやあ、流石に外の世界の料理は凄い、進化してます!それと、料理人の腕も良い!」
これなら、大天狗様のところで料理人をやることもできますよと笑いながら完食した文さん。
「しかし、どう作ったんですか?揚げたにしては色が濃いですね」
「まず、醤油とニンニク、酒と生姜で下味をつけて」
「ちょ、ちょっとちょっと!調理法は料理人の命でしょう?そんなペラペラ喋っちゃ駄目でしょうに!」
「いや?料理人の命はここだよ、ここ」
俺は腕を叩いてみせる。
「レシピが知られても、自分の中に黄金比がある、と?」
「そこまで言う訳じゃないが、俺は一流の腕があるから、レシピを知られても困らないんだよね」
「成る程!凄い自信ですね!」
まー、並の一流料理人並、ミシュランで言えば星二つから三つの間くらいの腕はある。
和食はそこまで上手くないけどね。
「これ、外の世界の料理の本ね。新聞のネタに困ったら載せてみたらどうかな」
「い、良いんですか?!ありがとうございます!!いやー、最近は平和ですからね、ネタがなくって」
「そうなの?まあ、そろそろ何か大きいこと起こりそうだから、俺か……、霊夢のことを見てたらどうかな?」
「?、何か起きるんですか?」
「うん」
「……へえ、何で何かが起こると分かるんですか?占いか何かですかね?」
「いや、俺、ちょっとだけならふんわりと未来予知できるから」
「またまたぁ、冗談ばっかりー」
本当だぞー?
「ですが、今話題の何でも屋、旅人と呼ばれる男については、とっても興味アリ!ですよー!色々教えて下さいねー!」
と、取材を受けた。
「そ、それで?!スネークはどうなったんですか?!」
「最後はメタルギアの上でリキッドと殴り合って……」
「ここで俺がウェスカーのことを押さえ込んで……」
「よく死にませんでしたね?!」
「覇王ウォルニールは強かった。絢爛な装飾を付けた骸骨でな。吐く息は黒く、それに触れると焼け死ぬんだ」
「おおお……!!」
「……っと、もう夜だ。取材にはこのくらいで十分かな?」
「はい、ありがとうございます……。で、でも、すごく面白い話でした!その、良ければ、また、お話を聞かせて下さい!」
「ああ、いつでも話すよ」
話すネタはいくらでもあるしな。
てな訳で文さんは、うちの常連となり、俺と色々な話をする。
まあ、夜に、酔った勢いで襲われたけど。
「旅人さん、個人的に貴方が気に入りましたよ。どうです?天狗になって、私の助手として生きていくのは?」
「い、いやあ、それはちょっと」
「ふふ、そうですか?気が変わればいつでも『こちら側』に来てくれて構いませんから❤︎」
んー。
いや……、いや、俺これ、悪くないから。
悪くないから。
あっちはほら、妖怪だから、気に入った男とヤることだってあるだろ。長い人生、そういうことは何度かあったはずだ。
だって、文、処女じゃなかったしな。
まあ、うん百うん千年生きて処女な訳あるまい。寧ろ処女なら逆におかしい。
文は久し振りに満足できたと喜んでいたよ。
まあ、セッ◯スは身体の相性と上手さだからなあ。無闇矢鱈にナニがデカければ気持ちいいって訳でもないのよ。
さあて、お次は?
「こーんにーちはー❤︎」
「えー……、なんて言うか……、大ボスに挨拶が遅れてしまい、申し訳ありませんでした」
「あ、あらあら?なんで急に土下座?!こ、困るんだけど?!」
いやもう、本当にもう。
「大妖怪にして幻想郷の管理者である八雲紫さんに挨拶が遅れたのは大罪」
「?、面識ないのに何で私が紫だと分かるのかしら?」
「貴女の古い知り合いから話を聞いていましてね」
「へえ」
「紫色の、金髪の、胡散臭い女に気をつけろ。幻想の中に引き篭もったのだ、と」
「あらやだ、大分悪意がある紹介ね。それじゃあ私が悪者みたいじゃない❤︎因みに誰に聞いたのかしら?」
「長飛丸」
「んな、長飛丸ですって?!!!アイツ封印されてなかったかしら?!」
「最近、解放されたんですよ」
「あいつめ……!!一生封印されていれば良いものの!!!」
あー、これ、過去になんかあったんだろうなー。
紫さん、プライド高そうだし。
長飛丸、今の名前はとらだが、あれはもう本当に強い化け物だ。
「ふぅ、ちょっと取り乱したわ、いけないいけない……。そう、それで貴方はどこまでやるつもりかしら?」
ふむ。
紫さんは笑った。
その微笑みは美しい。
表面上は。
しかし、その裏側には、秩序を乱すものを許さないという強力な意思が感じ取れた。
「貴女の幻想を壊さない程度に、ですかね」
「その加減が貴方に分かるのかしら」
「旅の最中、壊された幻想はたくさん見てきましたよ。そういう調整なら得意でしてね」
「ふぅん」
少し、目を細める紫さん。
そして。
「まあ、良いわ。もしも私の幻想を壊すなら、その時は……」
ああ、これは。
「貴方を壊すだけだから」
ヤベーな。
マジモン、だわ。
まともに戦ったら秒殺だわな。
格が違う。
この殺気、流石は大妖怪、か。
「それはさておき、注文は?」
「………………は?」
「いや、うちは飯屋なんで。奢るんでなんか食べてって下さいよ」
「あは、は、はははははは!!!面白いわ貴方!死ぬのが怖くないのかしら?!!」
「慣れてるんで。あと、それと」
「それと?」
「貴女みたいな美人になら、殺されたって良い」
「うふふ、それはそれは……!最高よ、貴方。貴方が妖怪なら、私の式にしていたところよ❤︎」
「褒め言葉と受け取りますよ」
あ、紫さんは、天ぷら蕎麦を頼んで帰った。
美味かったので、今度は式を連れてきてやる、とか。
まあ、その式に手を出して話がこんがらがるのは別の話だよね。
あと一二話適当な話したら紅魔異変。