旅人東方は反響が大きいんで続き書きたいんですが、暫くはこっち。
1話 転生
神様転生。
諸君らなら知識として知ってはいるだろう。
ポックリ逝って、神様と出会い、他の世界へレッツゴー、と。
平たく言えばそんな感じ。
そしてそう、神様転生には。
転生特典が付き物だ。
諸君らも妄想したことがあるんじゃないだろうか?
◯◯◯◯の能力を持って無双とか、ハーレムとか。
望むのはアレかな?ゲートオブなんちゃらとかアンリミデットなんちゃらか?はたまたトリプルSランク魔力?スーパーな才能や肉体、不老不死、変わりどころでスマホとかかな?
だが、どれも、俺に言わせりゃ甘いね。
俺はこう願うのさ。
「全知全能で」
とね。
いやあ、まさかね。
オッケー出るとは思わなかったね。
手に入れたのは超強力な現実改変能力。
これは、よろしくない。
神によって、異世界で転生を果たした俺の自我が覚醒したのは、温かい暗闇であった。
幸いにも、俺は予想外のことがあると、パニックにはならずに唖然とするタイプであった。
数秒ほど、頭の中が真っ白になっていたと思う。
だが、再起動するのに時間はそうかからなかった。
そう、まず、ここはどこだ。
温かい。
暗い。
それしか情報がない。
待てよ、あの神。
神は言った。
転生だと。
ならば、可能性として考えられるのは。
母親の胎内、ではないだろうか。
それなら、目が見えないのも納得だろう。
耳を澄ませてみる。
『……元気に……って……、男の子……名前……』
『衛斗……、良い……ろう』
男の声と女の声が聞こえる、と思う。まだ不鮮明だが、何度も、何度も、語りかけるように、衛斗と呼ばれている。俺の名前だろうか?
奇しくも前世と同じ名前だ。
字も一緒だと良いが。
さて……。
つまり、そう言うこと、か。
転生、と。
そう、か。
ならば、転生特典はどうだろうか。
俺は、全知全能を願った。
……全知全能とは、どのようにして使うのか?
そう思った瞬間、脳に情報が流れ込んでくる。
成る程、こう使うのか。
全知全能とは、即ち、何でもできるということ。
ならば、まずは観察から始めよう。
千里眼、のようなもので俺は周囲を見渡す。
直接、目を使って見るのではなく、概念的な観測装置を展開することにより、観る。
もちろん、その観測装置は誰の目にも見えない。
さて、まずは自分。
胎児、以上。
いや、他に言うことないし。毛も生えていない胎児だよ。ちょっぴりグロテスクに感じる。
次、母親。
外国人だ。
金髪の、可愛いよりは美人な感じの、もっと言えばカッコいい感じの美人。
今は俺を妊娠していて、プロポーションは崩れているが、そうじゃなければ抜群のスタイルの美女だったであろうことが伺える。
実際に過去視してみると、それはそれは素敵なスタイルの、それこそハリウッドで主役になれるほどの美女であった。
過去視と、それに付随するデータを見たらこれまたびっくり。
その通りなのだ。
つまり、俺の母親はハリウッドスター。
どうやら、バイオハザード的な、ゾンビパニックもののアメリカ映画の主演女優をやったことがあるらしい。
過去視では、沢山の賞を表彰され、記者会見を受ける姿が見える。
成る程、勝ち組か。
父親はどうだろう。
黒髪黒目のアジア人。日本人、か?多分そうだ。過去視……、うん、日本人だ。
美人な母親にお似合いのハンサム男。背も高く、適度なスポーツによって鍛えられた身体は、嫌味にならない程度に筋肉がつき、余計な脂肪はない。
職業は……、実業家か。所謂セレブってやつだな。
あれ?俺これ勝ち組ルートでは?
俺氏、勝ち組ルート確定。
過去視と千里眼で観た限りでは、両親共にセレブ。金持ち。
未来視は、あ?
安定しないな、いくつかの分岐は見えるが、まあ、概ね幸せに暮らす感じかな?
思いがけず最高のドローを見せた俺。人生ガチャSSRの大当たりか。
なら、次は俺自身のスペックだな。
取り敢えず、身体能力、頭脳共に人類最高レベルに……、ぐ。
頭が痛い……。
吐き気がする……。
身体も痛い……。
ああ、そりゃそうか、脳味噌弄った訳だしな。
でも、これくらいの痛みで済むものなのか?
まあ良い、これで最高のスペックを得たと思って良いだろう。
人間以上のスペックを付加したらどうなるんだろう?
未来視。
成る程、人間じゃなくなるのか。
流石に、人間じゃないものが産まれてきたら、外見は赤ん坊でも、検査されたらバレるな、やめておこう。
次は……、肉体に障壁でも張っておくか。
どれくらい丈夫なのかは分からん。
が、主要臓器には厳重に障壁を張った。
まあ、これで、死にはしない、と良いなあ。
……産まれるまでやることがない。
端的に言えば暇だ。
いや、そうだな。
全知全能を活かして情報収集するか。
……全知全能のこの、過去視や千里眼で見えるデータ、見づらいな。これ、表示を弄れないのかな?お、弄れる。
俺は、この脳内何でもWikiを、アカシックレコードと名付けた。
厨二病全開だが、他に例える言葉が見つからなかったからだ。
さて?
こちとら赤子の身体、すぐに眠くなる。寝ないでいることも可能だがなるべくは寝るべきだろう。
千里眼で辺りを見回すのもなあ。
さっき街中を見回してたら、丁度、豚みたいなおっさんが中途半端に不細工な女に緊縛されて鞭で打たれてアオオー!っとかって喜んでたシーン見ちゃって軽くトラウマ。
まあ、ざっと見た感じでは、前の世界と変わらん変わらん。
だから俺は外側に目を向けるより、内側を見た。
つまり、脳内実験室で様々な研究をしたり、アカシックレコードで色んな分野の論文や本、映画を見たりして楽しんだ。
それと、未来予知に制限をかけた。
前、映画を見ようとしてその映画のこと考えてたら間違って未来予知してしまって、ネタバレを食らい、何とも言えない気持ちで映画を見る羽目になったからだ。
全知全能を願っておいてなんだけど、全知はちょっとつまらんな。
まあ、全能なんで、自分の能力にロックをかけることもできるっぽいし、どんどん制限していこう。
解除はいつでもできるし。
そろそろ出産かなー?みたいな話になってきている。
外部の話を聞いていたし、見ていた。
母上様は今のところ病院暮らしだ。
設備がいい病院だな、流石金持ち。
いやー、胎児も大変だ。
声をかけられたら反応しなきゃならないし、そうでなくとも生きてますよアピールをしなきゃならない。
おっ、押し出される。
産まれるやつじゃね?
ママンが産まれそうだとナースコール、院内は慌ただしく動き出す。
おーおー、てーへんだてーへんだー。
ってか、産まれるってどうやるんだ?
本能に身を任せたら行けた。
『奥様、元気な赤ちゃんです!』
『ああ、私の赤ちゃん……。何で泣かないのかしら?』
『泣かない子もたまにいるんです。そういう子は大成しますよ!』
と、ナースと母上の話を聞きつつ、俺は。
産まれるのって疲れるんだな、と思いつつ、寝た。
モバマスとかも書きたいし、大魔導師ニキも書きたいし。