次の日。
昨日は不知火沙織とお互い名乗った後、取り敢えず夜遅いから解散して明日会おうと約束した。
沙織はここから近くの不知火神社に住んでいるらしい。
まだ高校も始まらないし、暇だし、何より世界の裏側に首突っ込みたいし、行くかー!!
「行くぞ、イヴ」
「はい。……菓子折りでも持って行った方が良いのではないでしょうか?」
「……あー、そうだな。テンション上がってて気付かなかったわ。なんか買っていこう」
「やあ、こんにちは。昨日の出来事について話してくれるね?沙織さん。あ、これ、手土産と言うか何というか」
爽やかイケメンスマイルで、菓子折りを渡しながら挨拶した。
自分で言うのも何だが、割とヤバいレベルのイケメンだからなあ。
沙織も、少し頬を染めて、
「ん、ありがと。こっち来て」
と奥へと案内してきた。
俺とイヴは、応接間らしき和室の一室に通される。
すると、日本人らしい相貌の、武道家っぽいような、厳しいが知的な面構えの男が腕を組んで待っていた。眼帯に顎髭だ。キャラを盛り過ぎでは?
「……君達が、沙織が見つけた野良の異能者かな」
「野良と言われると犬猫みたいで嫌なんですがね」
「ああ、すまない。我々の業界では、どこの団体にも属していない異能者を野良と呼ぶのだよ」
さて、どうしたもんか。
「それで?」
「ふむ……、私の見間違いでなければ、君は、アスクレピオスの平衛斗さんと、その助手の銀の聖者、イヴ・マーティンさんではないかな?」
「いかにも、俺が衛斗だ」
「はい、イヴです」
返答する。
「やはり、か。聞けば、二人とも、武装段階まで異能を高めているらしいらしいな」
「武装段階?何のことだかよく分かりませんが?」
「はぁ、惚けなくても良い。野良で武装段階にまで達するなどあり得んだろう。どこの勢力の者だ?シャーマン同盟、エクソシスト連盟、陰陽仙人会なら良いんだが、煉獄会やカオスエージェンシー、黒教会、メッサーバーナーの連中なら……」
「何の話だか分かりかねますね。この超能力は二人で鍛えた。それだけです」
「……独学で武装段階まで異能を鍛えた、と?」
「俺とイヴは、二人で試行錯誤していたら、いつのまにか武器が出るようになりましたね」
「どの勢力にも気付かれずに、異能を鍛えた?にわかには信じ難い話だが……」
「超能力の訓練については、うちの土地である山の中や、地下室でやりましたね。誰にも気付かれなかったと思いますよ」
「確かに、それだけの資産はあるようだ。うむ、しかし、いや、これは……」
「信じられないのであれば、心を読む超能力者でも呼んでみては?」
「……それもそうだ。それで、結果は?」
隣の部屋から女が出てくる。
「はっ、嘘はついていません」
「成る程、な」
顎髭をさする沙織のパパ。
実際に心を読む異能者をあらかじめ隣の部屋に配置しておいた、ということか。
「……冗談のつもりだったのですが、本当に心を読まれるとは。不愉快ですね」
俺は不快感を滲ませて苦言を呈する。
「いや、すまない。スパイの可能性は潰しておきたくてね」
と、笑いながら言う沙織のパパ。
まあ、ネタバラシするとね、全知全能で認識阻害かけてるのよねー。
でも、スパイじゃないってのは本当だし、良いでしょ?ここで信用されなきゃ無用なイベント起きちゃうだろうし。
面倒事はスルー安定。
「改めて、疑って悪かった、衛斗君、イヴ君。私は、日本退魔師協会、五芒星が一人、不知火弦二郎だ」
「へえ、それは……、凄いんですか?」
「ふふふ、ああ、凄いとも。簡単に言えば、日本の退魔師の頂点の五人のうち一人なんだよ」
「それはそれは」
ふーん、アカシックレコード。
不知火弦二郎、異能は大規模異能、『焔魔大王』。武装段階では火を吹く赤い大太刀、超越段階では決して消えない黒い炎を出す。
黒炎の魔王とあだ名され、圧倒的な火力で全てを燃やし尽くす、退魔師協会の火力担当。
日本国内でも十人もいない、超越段階まで至った天才にしてベテラン。
こと戦闘においては最強であると言う声も。
成る程。
凄いんだな。
で?
「どうやら、何も分からないのは本当らしいな。なら、少し長くなるが、異能者について話そう」
と、俺が知っている情報プラス、世の中には妖怪やら悪の異能者やら何やらが実在して、それを倒している秘密組織が色々あるんだよと説明された。
「それで?」
「それで、とは?」
「用がないのであれば帰りますが?」
「い、いやいや、君達はこの話を聞いて帰れると思うのかね?そもそも、知る気がないなら何故ここへ来た?」
「それは沙織さんに呼ばれたからですよ。美人の誘いは断らない主義でね」
「……ふは、ふはははは!!面白い男だな、君は!そうかそうか!」
一頻り笑った弦二郎は、真剣な顔をして言う。
「しかし、君なら分かるんじゃないか?自分の力がどれだけ異質であるかが。どこかの組織の庇護下に入らない限り、状況は好転しないと言うことも」
「俺は別に、この能力を隠して生きても構いませんがね」
「使わずに生きられると?」
「ひょっとして、異能がなければ執刀できないとでも思われていらっしゃる?異能はあくまで緊急手段でしかありませんよ」
「そうか……。だが、世界の裏を知って、ただで帰す訳にはいかないな」
「へえ、どうします?息の根でも止めてみますか?できるものなら、ですが」
「できないと思うかね?」
「させると思いますかね?」
少しの間、睨み合う。
おーおー、凄え殺気。でも、俺の方が強えからな、なんてこたぁないよー。
「ふむ、私の殺気を受けて身じろぎひとつなし、か。これは将来有望だな」
「はあ、それは光栄ですね」
「だが、さっきも言った通り、君ほどの人物が野良ではいられないんだよ。それは理解できるね?悪しき異能者達に利用されるより先に、こちら側へ来て欲しい」
「へえ……」
「もちろん、タダでとは言わないとも。金はしっかり渡す。それに、退魔師協会に入れとも言わない。伝手があるシャーマン同盟、エクソシスト連盟、陰陽仙人会に入ってもらっても構わない、推薦書でも何でも用意しよう」
「それ以外の組織は?」
「ないことはないが、どこも中小組織だな。資料を渡そう」
既に、新規の異能者向けのマニュアルがあるのだろうか、文書を渡された。
速読で全部読む。
日本退魔師協会、日本の退魔師の組織。妖怪や悪の異能者のホットスポットである日本を守る。
シャーマン同盟、アメリカ付近およびアフリカのシャーマンの組織。アメリカは悪の異能者が多い傾向にあるそうだ。
エクソシスト連盟、ヨーロッパから中東にかけて存在するエクソシストの組織。ヨーロッパは特に怪異が多いらしい。本部はバチカン。
陰陽仙人会、中国からロシアにかけて存在する陰陽師の組織。日本と同じく妖怪も悪の異能者も沢山出るらしい。
それぞれに色々と特色があるらしいが……。
「ふむ、では、退魔師協会に仮入会しましょう」
「仮入会だと?」
弦二郎は片眉を上げる。
「ええ。こんな資料を用意していても、貴方達が絶対に正義の行いをしているとは限らないでしょう?……俺が赴任した病院でこんなことがありました。表向きは最新設備の整った善良な病院だが、実は裏で薬の横流しや臓器密売をやっていた、と言うケースです。つまり、そう言うことですよ」
「む……、それも、そうだな。いや、疑り深いことは悪いことではない。考える頭があると言うことだからな。では、仮入会を認めよう。イヴ君はどうするかね?」
「私は衛斗様に従います」
「ふむ、そうかね。では、早速、気の測定と能力の確認をしよう」
はーいー。
来ました。
俺つえームーブの見せ所!!!