「気の測定だ。この水晶玉に気を込めてくれ。これの光り具合で気の総量を測定する。気の扱いは分かるな?」
広い道場のような一室に案内され、気の測定、能力の評価、軽い組手をやるそうだ。
異相結界という、この辺りを隔離して別世界にする結界も張っているから、暴れても大丈夫らしい。
沙織も気になるのか、見に来ている。
他にも、何人か見に来ている人がいる。
「イヴ、先にやって」
「はい」
「ああ、あとその玉、予備はありますか?」
「む?あるが?」
「いや、イヴは壊してしまうかもしれないんでね」
「ははは、心配するな、その玉は私が全力で気を込めてもヒビを入れるので精一杯なのだ、か、ら……?!!」
玉は、光り輝きながら、ぴしり、とヒビが入る。
「ヒビ、入りましたね」
「馬鹿な……!!イヴ君は私並の気を持つのか?!」
「あり得ん!」「まさかそんな!」「当主様と並ぶ力だと?!」
方々から驚きの声が上がる。
「さて、次は俺の番ですよ」
「あ、ああ。替えの水晶玉だ」
俺は、指一本で水晶玉に触れ、気を流し込む。
すると、水晶玉は、閃光を放ち砕け散った。
「……んな馬鹿な」
道場は静まり返った。
「あれれー?俺なんかやっちゃいましたー?」
後ろに(笑)が付きそうな態度で告げる。
「衛斗君、君の気の総量は間違いなく日本一、世界でもトップクラスだ」
「へえ、それはそれは」
「余裕の態度をとっていられるのも今のうちだぞ?それほどの力があれば、どこでも引く手数多だからな。さあ、次は能力を見せてくれ」
「良いでしょう。イヴ」
「はい、これが私の、『エクスカリバー』です」
西洋剣を喚んだイヴ。西洋剣には、金色のエネルギーの燐光が迸っている。
「ふむ……!エネルギーを創造する系統か!火力の高さが特徴だろう。さあ、ターゲットに攻撃してみてくれ」
鉄でできている木人のようなものが複数設置されている。
「はい……、エクス……!カリバー!!!」
剣からビームは浪漫。
膨大な破壊のエネルギーを込められた剣の一振りは、道場の屋根や壁をぶち破って木人の全てを薙ぎ払った。
因みに、これでも手加減している。
「なんて威力だ……!超越段階異能に匹敵するぞ!」
イヴは更に、エネルギーを盾状に展開することで防壁にすること、背中や足から放出することで推進力を得られることもできると説明した。
「むうう、これは……、極めて強い異能だ。大規模異能は異能者の中でも十分の一ほど、その中で更にこの若さで武装段階まで至っているのは数える程だろう」
十人に一人か大規模、三人が中規模、六人が小規模の異能だそうだ。
「木人を用意しろ、次は衛斗君の異能テストだ」
不知火家の家の人々が、即座に木人を用意する。
どうやらこの木人、気を込めれば再生するようだ。便利アイテムだな。
「では、衛斗君。異能を見せてくれ」
「ええ、どちらにしますか?」
俺は、アスクレピオスとヒュギエイアの両方を出す。
「何、だと……?!!!」
はい強キャラムーブ。
「二つの武装だと?!!馬鹿な、あり得ない!!異能は一人一つのはずだ!!」
周りがざわざわする。
くふー、たのちい。
「へえ、普通はそう言うものなんですか。でも、何事にも例外はあるでしょう?」
ドヤ顔を堪えながら、涼しい顔でそう言う俺。
「あ、ああ……。普通なら、異能は一人一つなんだ、普通は。だが……」
「俺は二種類持ってますね」
「前代未聞だ、こんなことは」
「そう言われましてもね。さて、まずはアスクレピオスから見せましょうか」
「う、うむ。どんな異能なのかね?」
「手術をする能力です」
「……それは、まあ、なんとも」
「試してみましょう。切開、切除、摘出、縫合」
杖を振ると、周囲の木人が一斉にバラバラになり、パーツ毎に分けられ、滅茶苦茶な形にくっつけられた。
「これは……、また、恐ろしい……」
恐れ慄くギャラリー。
「次にヒュギエイア。こちらは、薬を作る能力です。これは……、こうすれば分かりやすいですか、ねっ!」
ヒュギエイアの杯に薬液を生み出し、それを弦二郎の顔面にぶっかける。
「わぷ?!!な、何のつもりだ?!!」
「眼帯、外してみては?」
「何を……、?!ま、まさか、これは?!!」
恐る恐ると言った様子で眼帯を外す弦二郎。
「……お、おお?!み、見える!失った瞳が再生した?!!」
「ええ、回復薬を作りました」
「欠損部位の再生が可能、だと?!そんな異能者は世界に三人といないぞ?!!」「まさか、そんな!」「なんて異能だ!!」
フゥー!!外野からの声気持ち良いー!!
「間違いなく、双方共に大規模異能……、しかも両方が武装段階だと?私より強いんじゃないか……?」
最後に組手をすることになった。
まずはイヴにやらせる。
「言っておきますが、イヴは俺ほどじゃないですけど、強いですよ?」
「ははは、私は剣術の免許皆伝と柔道空手八段だ。そうそう簡単にやられんよ」
はいフラグ。
「イヴ、やっておしまい」
「はい、衛斗様」
イヴが木剣片手に踏み込む。
「速……ッ!!!」
それを木刀でいなす弦二郎。
「速い、な。それに重い。すまんが、手加減はできそうにない。本気で行くぞ!!」
………………
…………
……
三分で決着。
弦二郎の剣術は実戦的で、途中に蹴りなども交えてきた。
対するイヴは、見惚れるほど綺麗な剣技。弱点らしい弱点はなく、全てが総合的に強いと言った印象。
嵐のような打ち合いが続いたが、最終的にイヴが木剣を弦二郎の首に突きつけて、終わった。
「くはははは!!負けるのはいつぶりだ?いや、驚いた。その歳でよくぞここまで練り上げたものだ。やはり、天才というものはいるのだなあ」
自分の半分も生きていない女の子に負けたにも関わらず、弦二郎は笑った。
「よし、次は俺だな。休憩はいりますかね?」
「いや、不要だ。これくらいでへばるような柔な鍛え方はしていない」
と言う訳で次は俺。
木杖を借りる。
「ふむ?珍しいな、杖使いか」
杖は強武器なんだよなあ?!
「突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀……」
「ほう……」
構えた俺を見て、気を引き締めた弦二郎。
視線が交差した一瞬、互いに踏み込む。
「おおお!!」
俺は弦二郎の袈裟斬りを払って、突く。
それを避けられたのを見て、半歩身を引いてからの薙ぎ払い。
「読んでいたか!!」
見なくても分かる、俺がいた位置に弦二郎の木刀が通り過ぎる。
弦二郎は、俺の薙ぎ払いを木刀を戻して弾いた。
しかし、これも読んでいた。あえて弾かれ、その反動で一回転し、薙ぎ払い。
「おおおお!!!」
何度か打ち合いを続けるが、俺には弦二郎の動きが手に取るように分かる。
あ、未来予知は使ってないよ?
ただ、単純に、俺の思考速度が人外なだけ。
それで、段々と押されていた弦二郎は、木刀を弾かれ、喉に杖を突きつけられてフィニッシュ。
「……ははははは!!強い、強いなあ君達は!!」
どうやら、弦二郎は、清々しく負けられて嬉しいようだ。
あ、別に心を読んだ訳じゃないけどね、そんな雰囲気だってだけ。
「楽しいな、全く。まさかこんな使い手が世の中にいるとは。世界は広いな!」
満足そうな弦二郎。
決着まで一分ほどだった。
「それで?このテストで何が分かったんですかね?」
「ふむ、このテストは、異能がどれだけ使えるか、どれだけ役に立つか、どれだけ戦えるかのテストだ。合格不合格という話ではないが……、君達二人は既に、一流の腕があると認めよう!」
で?
「しかし困ったな、訓練の必要がないぞ、これでは」
「仕事は?」
「暫くは組織内の案内や顔合わせをしよう。スケジュールの方は大丈夫かね?」
「ああ、学校始まるまで暇なんで問題ありませんよ」
医学界の偉い人との対談?そんなもんキャンセルだキャンセル。
「む?学校?高校生かね?」
「ええ、桜山高校というところに」
「なんと、沙織と同じ高校か!……ふむ、ではこうしよう、一通り顔合わせが済んだら、沙織と共に仕事をしてもらおう!沙織、問題ないな?」
さっきから近くにいたが、一言も喋らなかった沙織が、はい、と一言。
ついでにちらりと俺の顔を見ると頬を染めていた。
何だろうな?
続きはガンガン書きたいです。