ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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風邪だこれ。


5話 街へ

「ただいま」

 

「おかえり、なさい?」

 

現実逃避の昼寝からただいま。

 

さーて。

 

「もうなんだよこれもう……、クソでしょ……」

 

頭を抱える。

 

ジパングの昔話の、タロー・ウーラシマみたいだ。

 

その上、世界が滅んだあと、復興してきた世界ときた。

 

「でも、ずっとここに引き篭もってる訳にもいかないしな……」

 

それはない。

 

研究室に籠るだけでは良い発明はできないと断言する。

 

外に出て、あるいは気晴らしをして、インスピレーションを得ることが大事だ。

 

まあ、今更何を作るんだって話だが。

 

いや、そうだな、アレだ。

 

邪神こと、異星人の襲来に備えなくては。

 

また来るかもしれない。

 

と、なると、世界を守れるのは俺だけかもしれん。

 

うわっ、重っ。

 

重荷。

 

でも、もし、あの時にタイムスリップせずにいたら、俺がなんとかしてた、と思う。

 

あの時は色々あって追われてたから厳しかったかもだが、それでも、世界の危機なら、みんなと協力してどうにかしていたし、きっとどうとでもできたはず。

 

それを考えると、昔の仲間に、重荷を押し付けて、この時代に来てしまった俺は、悪いことをした、のかもな。

 

その責任を取って、また異星人が攻めてきたときは、俺が対処しなきゃならないような気が、しないでもない。

 

「それに、隠居にはまだ早い、よな」

 

不老不死だが、まだ隠居する予定はない。

 

まだやりたいことはある。

 

研究もしたい。

 

遊びたい。

 

逆に考えてみよう、今なら誰にも追われていない。

 

なら。

 

「イリス、外に行こう」

 

「下界に降臨なさるの、ですか?お供、します!」

 

外に出て行こう。

 

 

 

森を歩く。

 

衛星ネットワークシステムで地上を見て、街を見つける。そして脳内のデバイスにガイドさせる。

 

さあ、行こうか。

 

俺の装備は普通に、耐刃耐衝撃防弾の白衣と、黒の耐刃耐衝撃防弾シャツ、そしてズボン。合成繊維製だ。そこにVIP用の個人防護装置を複数インプラント。有料の格闘や杖術のダウンロードもした。

 

武器は拳銃に、ナイフ、さっき合成木材で作った杖。

 

杖は軽く作った魔力増幅器だ。

 

補助制御装置も兼ねている。

 

全力戦闘となると、ツールズを出すが、まあその必要はないと思える。

 

イリスもだいたい同じだが、イリスの服はズボンとシャツ、ジャケットにしたらしい。

 

神の時代に生きた人々と同じ格好をすることで、より巫女として相応しくなる、とか。

 

武器は拳銃にナイフ、高周波ブレード。

 

流石に何が起きるか分からないからな、それなりに備えていかないとな。

 

と、アウトドアセットにVIP用の個人防護装置群を組み合わせ、武器を持って出かける。

 

武器もお遊び程度だがな。

 

俺の杖は合成木材のフレームの湾曲したところに赤い玉がついた見た目で、三重立体構造魔力回路による演算補助、周囲の滞空魔力を吸収しつつ、自ら魔力を生み出す魔力発生装置、自己修復機能、補助AIを取り付けた原始的なもの。

 

イリスの高周波ブレードもステラ合金製の軍用モデルをちょっといじったくらいのもん。形は一般的なロングソードだ。

 

もらったイリスは、神器とか受け賜るとかなんか言ってたが、それはそれとして。

 

「入門料が払えないなら、街には入れられないな」

 

「えー、そこをなんとか」

 

「規則だからな」

 

街に入れない。

 

世界共通通貨のドグラマで払おうとしたが、まあ、もちろん、既に使われていないそうだ。

 

まあ、ドグラマは仮想電子通貨だからなー。

 

硬貨でのやり取りに退化しているみたいだし、仕方ないだろう。

 

しかし、この世界の硬貨のデザインが分からない。

 

「じゃあ、これで払おう」

 

と、皮袋を取り出す。

 

「これは?」

 

「砂金だ、あー、えーと、故郷の、村?で採れた」

 

嘘。

 

物質生成装置で今創った。

 

「砂金か……。おい、誰か鑑定魔法が使える奴はいないか?」

 

そこに、恰幅のいいヒゲの生えた男が現れ、言った。

 

「何事ですかな?」

 

「む、商人か?」

 

「ええ、そうですが。何やら鑑定魔法の使い手を探している様子だったもので」

 

「良ければ、この袋の中身が本当に砂金か見てくれるか?」

 

「ふーむ、それがもし本物だった場合、私に売ってくれるのであれば良いですよ」

 

成る程、そう来る?

 

「このくらいの砂金なら、それなりの額になるはずだよね、適正価格で買い取ってくれるならそれで良いよ」

 

と、俺は言う。

 

「商談成立ですな。それでは、『ディテクト』!」

 

鑑定、ディテクトは簡単な魔法だ。

 

階位にして二階位ほど。俺の知るアース民なら子供でも使えるものなんだが……。

 

「……確かに、これは全部砂金ですな。この量であれば金貨五枚で買い取りましょう」

 

「うむ、それくらいが適正価格だろうな」

 

と、門番が言っていたので、俺もそれを了承。

 

砂金と引き換えに金貨五枚を手にする。

 

銅貨十枚で大銅貨、大銅貨十枚で銀貨、銀貨十枚で大銀貨……、と、大白金貨まであるらしい。

 

銅貨十枚、即ち大銅貨一枚でしっかりした食事ができるくらいだそうだ。

 

つまり、銅貨一枚は約百ドグラマってところか。

 

百ドグラマが最低単位って、株取引とかで困ると思うんだが……、いや、株取引なんてものはない、か。

 

まあ良いや。

 

入門料は銀貨一枚。

 

イリスの分とで二枚。

 

お釣りを貰って門の中へ……。

 

 

 

街の中は、それなりに賑わっているんじゃないかな?

 

うわ、木の家なんて久しぶりに見た。ジパングの文化財と自然を感じたい人向けのキャンプ施設以外で見たことないぞ。

 

道もアスファルトじゃなくて土だし。

 

コンビニもAR用の広場もないのか。

 

そして、観光案内所や交番のようなものも一切ない。

 

どうするか……。

 

「イリス……、俺達はどうすれば良いのかな」

 

「え、と、まずは冒険者ギルドで冒険者になるのが良いかと思います。私の村にも、街に行って冒険者になった人がいますから」

 

成る程。

 

金を稼ぐ、か。

 

一瞬、金貨を物質生成装置でコピーすりゃ良いんじゃないかなと思ったが、それはバレたら怒られるだろうしな。

 

そうじゃなくても、身分証明書代わりに冒険者になるやつもそれなりにいた。

 

車だのエアバイクだのの免許は教習所に通わなきゃならないし、安い金を払うだけでなれる冒険者は楽で良い。

 

「取り敢えず、登録だけでもするか」

 

「はい」

 

と、言う訳で、冒険者ギルドに向かうことにした。

 




傭兵書けてるんで、傭兵の続きそろそろ上げます。

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