ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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実際に世界中にダンジョンができてモンスターが出てきて人間を殺し始めたらどうなるか……。

多分こうなるんじゃない?みたいな意見あったら取り入れるかも。


16話 政治家はあてにならない

バタバタとうるさい。

 

折角のコーヒーが少し不味くなったように感じる。

 

人々の喧騒や、乗り物の音、動物や虫の声なんかを避けたくて、この田舎過ぎず都会過ぎずの天海街で喫茶店を開いたと言うのに。

 

ヘリコプターで上空から現れるとは。

 

本当にムカつくな。

 

「そして俺をムカつかせた上に、無償での協力をしろ、と?」

 

俺は無言の圧力をかける。

 

しかし……、まあ、世の中には信じられないレベルの馬鹿がいるんだ。

 

ほら、よくいるだろ?人が死ぬような病気でも反ワクチンだとか自然派ママだとか、ポリコレだとか私がエビデンスだとか反跡部総理だとか……。

 

何故こんな奴が世の中に野放しにされているんだ?みたいな、正気を疑うようなとんでもないアホがいるんだよ。

 

こう言うタイプのアホには何を言っても無駄だ。周りの無言の圧力だとか、世論だとか、そんなのを気にせず喚き立てる。

 

ああ、イライラする。

 

全くもってイライラする。

 

「君も日本の国民として、日本に奉仕する義務がある!特殊作戦群に渡したあの武器と防具の提供をしてくれるね?それだけでなく、日本の国土奪還のオブザーバー兼戦闘員として活躍できるんだ!これ以上に名誉なことはないよ!」

 

あー。

 

ぶっ殺しっちゃおっかなー。

 

「陸幕長ー?陸幕長聞こえますかー?もしもーし?」

 

端っこの方で気まずそうな面をしている陸幕長に話しかける。

 

「あ、あの、ですね……、××党の岡田議員たってのお話ということでお連れしたのですが……」

 

「つまり、日本は野党の議員を宣戦布告に送り出すんですか。中々にファンキーですね。惚れ惚れとしますよ」

 

ファンキーで、その上猿以下赤ちゃん以下だ。

 

「せ、宣戦布告などでは決して……!!」

 

「え?では日本ではこれが合法なんですか?」

 

「おい!聞いているのか?!」

 

「いや驚きですよ、こんなゴミクズを生かしておくだなんて。日本ってまだまだ平和なんですねえ」

 

「なんだと貴様!」

 

陸幕長は胃のあたりを押さえている。

 

今の世界では胃薬さえ貴重品だ。陸幕長がストレスで胃が痛かろうと、そうそう胃薬なんて飲めない。

 

「私達××党主導での東京のダンジョン攻略により与党の◯◯党政権を終わらせるのだ!」

 

十年近く前の××党政権はこの世の地獄だったんだがな。

 

「正直、ダンジョン騒ぎのどさくさに紛れて、こういう馬鹿は殺しておくべきだったと思いますよ、陸幕長」

 

「い、いや、そんなことは」

 

陸幕長は真っ青だ。

 

「さっきからなんなんだね、君は!失礼だとは思わないのか?!」

 

「失礼なことをされたら失礼なことを返してもいいと思わないか?」

 

「私がいつ君に失礼なことをしたというのかね?!」

 

あ、こいつ駄目だ。何が失礼なのかすら理解してねえ。

 

「陸幕長ォー!!!連れて帰ってーーー!!!俺が殺す前に連れて帰ってーーー!!!」

 

陸幕長は喚く馬鹿を連れて帰った。

 

あー、気分が悪い。

 

陸幕長には、次にあんなのがまた来たら東京のダンジョン乱立地区に案内すると言っておいた。

 

ってか、シーマが同席していなくて良かったな。

 

シーマは口より先に手が出るから、ぶっ殺してたかもしれない。

 

別に政治家一人が死ぬのなんて何も困らないのだが、親友が殺人事件を起こしたら流石に困る。

 

ただでさえ司法が機能していないのに殺人なんかやったら、報復に殺し返そう、目には目を、みたいな話になるかもしれない。

 

もちろん、シーマの力なら簡単に殺されることはないだろうが、数少ない日本人バーサス天海街なんて構図になったら目も当てられない。

 

天海街が独立、とかそんなのは望んでいないからな。

 

俺はコーヒーを飲みつつ、イタリア書院の女学生もののポップなエロ小説を読み耽る。

 

……ふむ、猫耳女子高生?アリだな。揚羽に制服着せてにゃんにゃんにゃーん。うむうむ。

 

 

 

三日後。

 

……バタバタうるさい。ヘリコプターの羽音だ。

 

またか。

 

正直、政府とは関わり合いになりたくないんだが。

 

天海街は千葉県の端っこにある。

 

そこまで寒くもなく、極端に暑くもない。

 

冬、暖房がなければ死んでしまう、と言った北海道や東北程じゃない。

 

ダンジョン農地では木の伐採もやっているので、木炭なら沢山ある。

 

つまり、燃料もそこまで必要ではない。

 

だがしかし、全くいらないという訳ではなく……。

 

トラクターの燃料だとか煮炊き用のガスだとか……、そういうのは必要だ。

 

電化製品も、燃料を入れて動かす発電機なんかで動かしている。

 

まあ、嫌でも燃料のために取引が必要な訳だ。

 

もちろん俺自身には完全複製があるため、誰とも取引をする必要はないのだが、それが他人にバレたらまずい。

 

この状況で、無尽蔵の資源を持っていることになる訳だからな。

 

スキルについては徹底的に秘匿する。

 

……元々、日本という狭い国に住む以上、世界が崩壊したら、必ず政府の干渉はあるとは思っていた。

 

故に、最初は良い印象を与えるために、情報を無償で提供したり、軍隊の訓練に手を貸したりしたのだが。

 

甘くし過ぎたか?

 

舐められても困るな。

 

 

 

陸幕長がこの前来た防衛大臣と一緒に現れた。

 

「三日前の件は誠に申し訳なかった!これからの日本には羽佐間さんの力が必要なのです、あれが日本の総意だとは思わないでいただきたい!」

 

「はあ」

 

防衛大臣は、俺の顔を見るなり謝ってきた。

 

陸幕長もげっそりしている。

 

いやあ、真面目な奴は損をする世界だからな。ちゃんと働いていると評判の防衛大臣はかなり損しているんだろう。

 

現在進行形で損しているな。自分の半分ほどしか生きていない若造に頭を下げる羽目になっている訳だし。

 

俺もなー、野党の議員にだったらなってもいいかと思っていたんだがな。

 

俺も国会で揚げ足を取ったり言葉狩りをしたり野次を飛ばしたりして何百万という給料を貰う仕事をしたいと思っていたことがある。

 

さて。

 

「用がないなら帰っていただきたいのですが?」

 

「いえ、今回は交渉しにきたのです」

 

「ほう、交渉」

 

「実はですね、中東の石油産出国との国交が回復して、石油や天然ガスに余裕ができ始めたんですよ」

 

余裕?

 

ふむ……、確かに、人口が数分の一くらいに減った今なら、単純に石油の必要量も数分の一な訳か。

 

「羽佐間さん、天海街と日本とで、貿易をしませんか?」

 

「貿易ですか」

 

「はい。日本が、石油や天然ガスを中心に、天海街で手に入らないものを、天海街が食料やダンジョン原産の道具などの、今の日本にないものを。交換し合うのです」

 

へえ。

 

「俺に言われましてもね。責任者は俺じゃない。ですがまあ、個人的な意見としては良いと思いますよ」

 

「で、では!」

 

「詳しい話は俺にしないでくださいね。俺は別に天海街の王様でもなんでもありませんから。それと、天海街も日本の一部ですよ、貿易ってのは違いますよね」

 

「……ええ、しかし、今の日本においては、政府は国民に何もできませんから。ある程度の力を持った人々は自治という形に」

 

「自治?困りますねえ……、日本は国としての責任があるのでは?確かに今は余力がないかもしれませんが、そのうち、天海街も支援していただきたいのですがね」

 

「なっ、し、支援などと!とてもそんな余裕は!」

 

「そんなことを言われましても。一国民として、緊急時に国に縋りたいと思うのは当然では?」

 

「い、いえ、自治権を与えるので……」

 

「自治権は要らないので、国で支援してもらいたいと思っています」

 

馬鹿かテメエ?

 

民主主義国家の施政者なんて何も利点がねえよ。

 

独裁者ならまだしもな、政治家なんぞ人の顔色を伺う仕事だ。

 

俺は資本家でありたいのだ。

 

義務はなく、権利だけが欲しい。

 

「兎に角、自治とかはするつもりがないので、支援をお願いしますね。なあに、余裕ができたらで良いんですよ。だけど、俺は日本は国民に優しい国だと信じていますから、数年もすれば日本各地に支援物資やインフラ整備、エネルギー資源の配布なんかをやってくれると考えていますよ」

 

「ぐ、わ、分かり、ました……」

 




まあ、野党はこれくらいのアホいるんだろうなー、と予想。

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