ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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最近ピザにハマってます。

トマトは生だとクソ不味いのに熱すると美味くなるのは何故なのか。


閑話 迷い人達 前編

春が始まる頃。

 

私、長澤夏希の世界は壊れてしまった。

 

突然現れた、ファンタジー小説の中から飛び出してきたかのようなモンスター達が、人を殺して回った。

 

私達、人間は逃げた。けど、どこへ逃げてもモンスターがいた。

 

なので、隠れた。

 

幸い、私の通っていた学校は、災害に備えた避難地になっていて、食料も水もあったし、なんとかなっていた。

 

けど、最近は……。

 

「食料が、もう殆どない……」

 

お父さんが言った。

 

もう、終わりだと。

 

 

 

大人達が話し合った結果、都市部の方がモンスターが多いとの情報が。

 

ビル街から命からがら逃げてきたという人が言うところでは、都市部には大きなモンスターが多く、とてもじゃないが太刀打ちはできないとのことだった。

 

逆に、少し田舎の方だと、小さめの、倒せるくらいのモンスターが多いとのこと。

 

政府は、自衛隊は、助けに来てくれなかった。

 

きっと、世界中がこうなってるんだと思う。

 

自衛隊も、多分、殆どやられちゃったんだと思う。

 

政府の支援はもう期待できない。

 

自分達で行動するしかない。

 

 

 

人間が活動するのに必要なのは、やっぱり水が一番大事だ。

 

ということになって、川を下って移動することになった。どの道、水道が出ないんだから、川の水を飲むしかない。

 

この街の近くには、利根川という大きな川がある。

 

そこで水を補給しながら安住の地を探すことになった。

 

他にも、ラジオの言葉を信じて、自衛隊の基地を目指す家族や、他の避難所を目指す家族もあったが、私達と十家族くらいは、とりあえず利根川を目指すことに。

 

最近は暑くなってきたから、水の近くにいれるのは嬉しい。水の近くは涼しい気がする。

 

私達は、利根川を目指して移動した。

 

 

 

利根川はとても綺麗なところで上流の方なら、携帯浄水器でろ過すれば飲めないこともないらしい。

 

綺麗に見えても、川の水をそのまま飲むことはできないんだって。

 

いやまあ、できないってことはないのかもしれないけど、何が入っているかわからない訳で、やめた方がいいのは確かだ。

 

水を浄水器を通して、ポリタンクに入れる。

 

因みに、携帯浄水器はホームセンターから拝借したよ。もう、お金とかそういう話は関係ないしね。

 

ポリタンクとか、登山用の靴や鞄、ナイフなんかも拝借。

 

それを背負って、長い距離を移動する。

 

今年で四十歳になるお父さんやお母さんは、普段そんなに運動しないから、かなりきつそうだ。

 

けど、娘である私の前で弱音を吐かないように、しっかりしてくれている。

 

お父さんなんて、タバコを沢山吸っていたから、階段をちょっと登るくらいで息切れしちゃうのに、頑張って歩いている。

 

それで、その上で、私を心配してくれている。

 

私は、まあ、陸上部でそれなりに体力に自信はあるし、靴も登山用の丈夫なものだから、歩くだけなら平気だ。

 

私がしっかりしないと……。

 

 

 

みんなで利根川の上流を歩く。

 

この辺りにはモンスターは少ないみたいで、襲撃もなかった。

 

避難所の学校にいた頃には、たまにゴブリンとかが現れて、襲いかかってきて、男の人達が協力して追い返すことがあった。

 

私達、長澤家と、他に十家族くらいが集団で移動している。

 

いつ、強いモンスターが現れて襲われるか分からない緊張感で、みんなストレスが溜まっている。

 

夜なんかは野宿で、しかも交代で見張りをしなきゃならない。

 

こんなの、長くは続かないよ……。

 

でも、モンスターの襲撃は少ないのは助かるね。

 

それにさっき、幸運にもコンビニを見つけることができたから、食料はどうにかなりそうだ。

 

「おーい、コンビニのバックヤードに、カロリーメイドがたくさんあったぞ!」

 

「それとジュースとかもあったぞ、乾麺とか缶詰とかもある!」

 

良かった、これでひとまずは安心だね。

 

このまま利根川を中心に活動する感じにしていきたいな。

 

でもやっぱり、肉とかは狩らなきゃいけないだろうし……。

 

いや、頑張って生き延びれば、いつか自衛隊が復活したりとか……。

 

 

 

兎に角、希望は捨てちゃ駄目だ。

 

 

 

そう思っていたのに。

 

「ウルル……」

 

「ひっ?!あっ、ああ……!!」

 

見つかってしまった。

 

 

 

狼人間……!!!

 

きっと、強いモンスターだ……!!!

 

に、逃げなきゃ!みんなに知らせなきゃ!

 

「ウルル、ウォーーーン!!!」

 

「ひいっ!!!」

 

「ルアァ」「ウルグルア」「ルルア!」

 

あ、ああ……!

 

こんなに、たくさん……!!

 

「ウルァ……」

 

逃げなきゃ、逃げて……!

 

……逃げて、どうするの?

 

囲まれている、きっと逃げられない。

 

大人しく殺されるくらいなら……!!!

 

「お前が、死ね……っ!!!!」

 

私はナイフを抜いて、狼人間に突き立てた!

 

しかし。

 

「ワオン!」

 

腕を掴まれて、刺せなかった。

 

「クソッ!死ね、死んじゃえ!!!」

 

私は暴れた。

 

殴ったし、蹴ったし、噛み付いた。

 

そして、疲れて動けなくなった。

 

ああ、終わりか。

 

生きたまま食べられるのは、きっと痛いんだろうな、なんて考えた。

 

すると……。

 

「ミトェゥ」

 

「え……?」

 

「オマエ、ユウカン。センシ、ミトェゥ」

 

そう言うと、狼人間達は、私を抱えて、奥へと向かう……。

 

「だ、駄目っ!私のことは食べていいから、お父さんとお母さんは助けてっ!!!」

 

『なんて言ってんだ?』

 

『分かんねえ。毛無しの言葉がちゃんと分かるのは、毛無しの街へ行った女賢人のルリャだけだ』

 

『こいつ、まだ暴れようとしていやがる!毛無しとは思えないくらいに勇敢な戦士だな』

 

 

 

そして、私達が隠れていた、川の管理倉庫を見つけた狼人間達。

 

「駄目!お父さん、お母さん、逃げてー!!!」

 

「夏希?!!」

 

「そ、そんな、モンスターめ!!」

 

すると、狼人間達は、お父さんに言った。

 

「ォンスター、チガウ!」

 

「ワレワレ、ワーウルフ」

 

ワー、ウルフ……?

 

「ワーウルフ、ニンゲン、クワナイ」

 

「ほ、本当か?」

 

「?ワウ!」

 

 

 

ワーウルフ?達は、どうやら、あまり言葉の意味は分かっていないみたいだけど、最低限の日本語は通じるように思える。

 

「シュウラク、コイ」

 

「ケンジン、ハナス、ニホンゴ、スコシ」

 

けんじん、賢人かな?

 

「その、貴方達は話せないんですか?」

 

「?ワフ!」

 

うーん……。

 

「よ、よく分からないが、娘を返してくれ」

 

お父さんが言った。

 

「?」

 

「娘を、その子を返してくれ!」

 

「ルゥ……?ユウカン、センシ、ォテナス」

 

「ニンゲン、シュウラク、コイ」

 

少なくとも、その、集落?には、日本語が話せるワーウルフ?がいるのかもしれない……。

 

「お父さん、行ってみよう」

 

「し、しかし……」

 

「ここにいても、何も変わらないよ。兎に角、行ってみよう」

 

他の家族の人達も、ワーウルフに捕まって、集落に連れて行かれた……。

 

 

 

「その、ワーウルフさん」

 

「?ワン!」

 

「何で、人間を連れて行くんですか?」

 

「?ワウ!」

 

「……はぁ」

 




スペースオペラ書くのが楽しい。

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