ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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テンプレの踏襲を意識。


15話 勧誘

「サイモン男爵の使いの者だ!クラン、アナーキーインザミドガルズを率いる者はここか!」

 

んー。

 

Bランク冒険者に昇格されてからと言うものの、毎日のように貴族の使いを名乗る者が現れる。しかも全員男。

 

「いや、そいつなら出かけましたよ」

 

「むう、そうなのか?では出直すか」

 

まあ、スルー安定よな。

 

「む、アナーキーインザミドガルズは私達だ。リーダーはこいつ」

 

「馬鹿っ、なんで言っちゃうのヴィオラ!」

 

「ん、貴族は面倒だから放っておく予定だったな。すまない」

 

「き、貴様!私を無視しようとしたのか?!」

 

「あ、あー、いや、違うんすよこれは」

 

あーあ、めんどくせえ。

 

「栄えあるサイモン男爵様に召し使えられる良い機会だと言うのに!!」

 

でもまあ、まあね、偉い人に頭を下げられない奴は社会不適合者だからね。

 

社会不適合者は駄目だってヴィオラにもちゃんと教えたから。

 

俺は大人だしね?

 

「あーそーですかー、嬉しいなー、けどこちとら下賎な冒険者なんでー」

 

「ふん、分かっている。所詮は冒険者だろう。男爵様の領地でチマチマと魔物退治でもしておれば良いのだ。それに、あのモーントリヒト様までついてくると言うのだ、多少は許容してやる」

 

「……いやー、うちも忙しいんでー」

 

「男爵様のお言葉よりも重要なことがあるか?!」

 

「チッ、クソが。大変申し訳ございませんがー、お断りしたいかとー」

 

「貴様、まさか断るなどとは言わないだろう?男爵様に逆らったらどうなるか分かっているんだろうな!」

 

あ、無理。

 

「おとといきやがれ豚野郎!!!」

 

「なっ、なんだと貴様ぁ!お、覚えておれ!!このことは男爵様に報告するからな!!!」

 

ふー、やっちまった。

 

「よう、社会不適合者」

 

「黙っとれヴィオラ」

 

 

 

そんなこんなで貴族からのお誘いは全ツッパ。

 

すまねえ、すまねえ……。俺も社会不適合者なんだ……。

 

研究者時代も、「それなんの役に立つの?」と心無い言葉をスポンサーからぶつけられて、それに対してマジギレ。顔面に熱々のカレーをぶちまけるなどの前科があるからな。

 

研究はなぁ!社会の役に立つかどうかじゃねぇんだよォ!!

 

俺は半分以上趣味で研究してたんでね。

 

そんなこんなで貴族に睨まれながらもいつも通りの生活を続けていたんだが……。

 

「そろそろ勧誘もウザくなってきたな」

 

「どこかの傘下に入れば終わるらしいぞ。リヒトが言っていた」

 

「気楽な日雇い労働者がいいんだがな俺は」

 

その時、半ば溜まり場と化している泊まっている宿屋の一階の酒場に男が現れる。

 

「ぶひひ、お邪魔しますよぉ……」

 

「うおっ……」

 

その男の見た目といったらもう。

 

体重百キロは超えるであろうぶくぶくと太って突き出した腹、太すぎてどこが首だかわからない下ぶくれの顔、海外のAV男優みたいないやらしいヒゲと油らしきもので固められた髪。これまたいやらしい目つきの……、総評して豚のような大男だ。

 

「ぶひっ、アナーキーインザミドガルズのシグナル君だね?」

 

声もいやらしい。

 

「お、あ、はい……」

 

あまりのインパクトに素直に答えてしまった。マジで?こんなん現代社会で見ねえもん。そりゃビビるでしょ。正直モンスターよりビビった。

 

「ぶっひひ、お初にお目にかかる。私はアーク・ワルバッド侯爵だ」

 

まあ……、見るからに悪そうだが。色々と。

 

「は、はあ、侯爵様で」

 

「おっと、身構えないでくれないかな?ぶひ、私はそんなに大物ではないのだ」

 

お、おう?

 

「えっと、何かご用で?」

 

「ふむ、私の領地でお抱えの冒険者にならないかね?」

 

「あー、いや、ご足労いただいて申し訳ないんですが、そういうのは断ってるんですよね」

 

「おや、どうしてかね?貴族は嫌いかな?ぶひひ」

 

いや、権力者ってなんとなく嫌いだけど。

 

「いやほら、そういうのじゃなくって、元々自由を求めて冒険者になったって言うか」

 

「ふむ?そうなのかね。だが、私の領地は海と森に面していてね。常に戦力が必要なのだよ。ぶひぃ」

 

「そう言われましてもねえ」

 

「辞めたくなったらいつでも出て行って構わないよ。欲を言えば、私の領地の冒険者を鍛えて欲しいことくらいだ」

 

んー。

 

他の貴族の連中が上から目線で突きつけてきた条件よりマシ、ってかこっちに有利だな。

 

いつ辞めても良い、か。

 

「分かりました、ちょっとみんなと相談しますわ」

 

「おお、良い返事を期待しているよ」

 

と、贅肉を揺らしながら帰って行くワルバッド侯爵。

 

凄えな、あの身体。

 

 

 

夜、酒場にて。

 

「と言う訳なんだけどさ、どう思う?」

 

と、俺が問いかけると。

 

「私は、どうなろうとシグについて行くだけだ」

 

「僕的には楽できればなんでも良いよ」

 

「ワルバッド侯爵家……?ああ、あそこは貴族にしてはましな方だぞ」

 

と、返ってくる。

 

リヒトの言葉が気になるな。

 

「どう言うことだ、リヒト」

 

「貴族内での評判は最悪だが、善政を敷き、税は安く、贅沢をしない男だ。人が良過ぎるきらいがあるがな」

 

え?

 

あの見た目で真人間なのかよ。

 




テンプレしつつも一風変わった感じを出したい。

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