ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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いやいや、吉野家よりすき家の方が美味いって。


32話 アーノルド・ガルシアの場合 その4

「アーニー!」

 

「ただいまローラ、僕はお腹が減ったから何か食べ」

 

「馬鹿っ!こんな時にどこ行ってたの?!!」

 

ローラに頬を叩かれる。

 

「ご、ごめんって、ちょっと家に用事が」

 

「貴方の命より大切なものなんてないのよ?!馬鹿なことはしないで!!」

 

「悪かったよ、ごめん、反省する」

 

「……はぁ。それで、どうしたの?この局面で何を?」

 

「周りを見回りして、モンスターを倒して……、これを持ってきた」

 

「……これは?」

 

ローラに生活魔法の魔導書を渡す。

 

「読んでみてくれ」

 

「良いけど……、これ、何語かしら、全く読めないわよ」

 

「良いから、全てのページに目を通して」

 

「まあ、分かったわ………………、はい、読み終わっ……、ッグ?!!」

 

魔導書を取り落として、頭を抑えるローラ。

 

「な、何よ、これ……?頭の中に知識が入り込んでる……?」

 

「やはり……、僕以外が読んでもそうなるのか……」

 

僕は神妙な雰囲気で頷いておく。

 

「アーニー、これは何?」

 

「ローラ……、聞いてくれるかな。まず……、今回のこのモンスター騒ぎだが、モンスターはダンジョンから出てきているんだ」

 

「ダンジョン……?」

 

「そうさ、穴蔵から繋がる……、恐らくは別の世界にね」

 

「そんなものが……」

 

「そして、これはダンジョンから見つかった……、恐らくは魔導書だ。書いてある内容は全く理解できない、謎の文字の羅列だけど、全てのページを見ると魔法が覚えられるみたいだ」

 

「何よそれ……」

 

「納得はできないだろうけど、そういうものだと理解してしまった方が早いよ。この服や槍もダンジョンから得たものさ」

 

「魔法使いみたいな格好だけど……」

 

「まさにそう、僕は魔法使いだよ」

 

「……アーニー、ふざけないで」

 

「ふざけてなんかいないさ、ほら」

 

火の玉を作って手のひらに浮かせる。

 

「な、何よ、それ……」

 

「魔法……、魔導書を読むか、ダンジョンを攻略するかで得られる力さ」

 

「そんなの……、おかしいわよ……、あり得ない……」

 

「ローラ、早く認めた方がいい。世界はとっくにおかしくなっている」

 

考え込むローラを放っておいて、僕は食料庫へ向かう。

 

ローラはショックを受けると、問題を解決しようと考え込むタイプだ。しかし、今回ばかりは考えて解決する問題じゃない。

 

割り切ってもらわなきゃ困るね。

 

 

 

食料庫から真空パックのハンバーグとフリーズドライのトマトパスタ、桃の缶詰、そして高カロリーなブロックビスケットを持ってくる。

 

ハンバーグは袋を裂いてそのまま齧り付く。

 

三人前のパスタはお湯につけてふやかして、缶に口をつけてスープを啜る。先割れスプーンで具も掻き込んだ。

 

桃缶三つはシロップを飲んで果肉を備え付けのプラスチックフォークで食べる。

 

そして、海で遭難した時に食べるような、高カロリーなビスケットを3食分お腹に入れる。

 

これで腹八分目かな。

 

どうも、魔力や体力を使うとお腹が減る。

 

大学時代の頃より食欲が増した気がするね。

 

さて、僕は上品さのかけらもなく昼ご飯を早食いして、腹を満たした訳だね。

 

そろそろ昼の12時、食料の配布をしなければ。

 

ゴミを片付けて、その辺の社員に声をかける。

 

「ああ、マックス君、今大丈夫かい?」

 

「あ!ボス!どこ行ってたんですか、心配しましたよ!」

 

「その件については詫びるよ。それで、どうだい?」

 

「どうって……、まあ、数十人くらい医者もいますし、春ですから気温も天気も悪くないので、体調を崩している人はあまりいません。薬も沢山あるので、暫くは保つそうです」

 

「そうか、それは良かった。そろそろ昼だ、食料庫のFと書いてある棚に真空パックのハンバーグがあるから、それを配って。それと、Gの棚にパンの缶詰、Tの棚にフルーツの缶詰、昨日と同じところに豆のスープのフリーズドライの缶詰があるから、水のペットボトルと一緒に配ってくれ」

 

「分かりました」

 

「フリーズドライの缶詰には水を注いで食べるように指示して……、それと念のため、危ないから街には戻らないように指示してくれ」

 

「了解です」

 

「それと君、銃は持ってる?」

 

「いえ……」

 

「それじゃあ、洋館の地下に武器庫があるから、そこから適当に持って行くんだ。もう警察も軍隊もないんだ、自分の身を守れるのは自分だけだよ」

 

「了解です、あとで借ります」

 

「最後に、四時頃になったらみんなの前で話したいことがあるから、人々を洋館の前に集めておいてくれるかな」

 

「はい、伝えてきます」

 

社員と別れて、僕は演説用のバッテリー、スピーカー、マイク、台を用意して、洋館の前に設置する。

 

人々が食事を終えて、集まり始めた時、僕はマイクを使って話す。

 

人々は……、ざっと五、六千人はいるだろうか?

 

コンサート会場のように人だかりができている。

 

さて……、一つスピーチかまそうか。

 

『僕はアーノルド・ガルシア。皆さんにお話があります……』

 

まあ、その後は、口から出まかせ六割、真実四割くらいの演説……。

 

世界にダンジョンが溢れて、モンスターが湧いて出たこと、モンスターには独自の生態系があり、場合によっては人間を殺すこと、モンスターの中には食べられる奴もいることなどを話した。

 

また、一年前にダンジョンを偶然発見して、いくつかのダンジョンを破壊した経験があること、ダンジョンの中には色々なお宝があり、尚且つ、ダンジョンを破壊すると魔法やスキルが得られることも提示しておく。

 

そして言い訳……、ダンジョンの存在は知っていたが、人には信じてもらえないと思い言わなかったこと、そのまま一年間ダンジョンを破壊して回っていたこと、こんなこともあろうかと色々な備えをしておいたこと……、などなど嘘をついた。

 

まあ、僕、こう見えてもそれなりの規模の会社の社長だし、演説かますくらい簡単なんだよね。

 

そして、まあ。

 

人々は僕の演説を信じ、アメリカの再建を目指して頑張ろう!みたいな流れになった。

 

 

 

倉庫いっぱいの食料からして、数年は保つことが分かったため、全員に仕事を割り振り、簡易的な学校も始める。

 

幸い、農地は広いし、広げる余地もまだまだある。

 

手すきの男性には開墾と農作をやらせる。

 

大工や電気工事士などの職人には、仮設住宅の設置やバリケードの設置などをさせる。

 

僕はローラに細かい指示を任せて、二、三週間に一回くらいのペースで数日の間外出して、ダンジョンで見つけたと偽ってスクロールや魔導書を持ってくる。

 

その他にも、周りからの報告を受けて、大まかな指示を出したりもする。

 

それと、元軍人、元警察官などの腕っ節に自信がある人々を集めて自警団を結成、ローラも連れて、近隣のダンジョン……、資源もモンスターもあまり旨味のないところを十個ほど潰した。

 

そして、この街の裏ボス的な立ち位置を難なくゲット。

 

 

 

いやー、まあ、表立ってボスになるのは嫌なんだけど、裏ボスならやるよ。

 

休めそうだしね。

 




からくりサーカスは漫画で読めって俺100回くらい言っただろ!!!!

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