ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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一風変わったファンタジーをお届けしたい。


16話 ワルバッド領にて

「ぶっひっひ、よく来てくれたね、歓迎するよ。ようこそワルバッド領へ!」

 

王都から北東に、馬で二週間ぐらい、空飛んで数時間。

 

ワルバッド領、ワルバッド侯爵の館を訪ねたところ……。

 

手を開いて歓迎の意を示すワルバッド侯爵。

 

あーうー、えーと?

 

「よろしくお願いします?」

 

「ぶひ、よろしく」

 

手を握られた。うおおむちっとしてる豚足みてえだ。

 

「それで、ここに来たと言うことは、ワルバッド領で働いてくれるのかな?」

 

「まあ、今のところはそのつもりですけど」

 

「それは有難い!さあ、長旅で疲れただろう、今日はご馳走にするよ。詳しいことは明日決めよう。取り敢えず休んでくれ。ぶひひ」

 

そう言って奥へと消えるワルバッド侯爵。

 

まあ、疲れてもいねえけど言われた通り休むか。

 

うーん、そうだな、そこらのメイドさんに話を聞いてみるか。

 

「なんでしょうか?お部屋はこちらですよ?」

 

「ああいや、そうじゃなくって、ワルバッド侯爵ってどんな人なんすか?」

 

「旦那様はそれはそれは素晴らしいお方です。寛大でお優しい上に、公平で正義感が強く、そしてとても賢いのです。素晴らしい治政を以ってこの領を治める賢人ですわ」

 

お、おおう。そうなの?

 

「でも評判悪いらしいじゃん」

 

何でも、噂によると、奴隷を買い漁っているとか。

 

「それは根も葉もない噂です。全て、他の貴族からのやっかみですわ。旦那様は関税を低くしているので、この領地の港には他国からの商人がそれはそれは沢山来るのです。それにより領地が潤うので、このワルバッド領はサングリア王国でも有数の豊かさなのです。それを妬んだ他の貴族が悪評を流しているだけなのです」

 

成る程。

 

「奴隷を買い漁っているのは?」

 

「旦那様はとても慈悲深いお方なので、止むに止まれぬ事情で奴隷になった人々を買い取り、自分の領で教育し、解放しているのです」

 

ほー。

 

「実はこの私も昔は、村の食い扶持を稼ぐために売られた奴隷でした。物好きな金持ちのペットにされるか、死ぬまで馬車馬のようにこき使われるかと思っていましたが、旦那様に買っていただけて、今はこうしてメイドとして給金までいただけております。旦那様には感謝しても感謝しきれません!」

 

おやおやおやおや?

 

ワルバッド侯爵、聖人では?

 

この後も何人かの執事やメイドに話を聞いたところ、多くの人間がワルバッド侯爵に感謝していることが分かった。

 

「おいおい、ワルバッド侯爵凄えな、聖人かよ」

 

「いや、奴は甘過ぎる。政敵を積極的に排除しないところがな。付け入られることが多い。まあ、奴の息子はその点では有能だが」

 

隣のリヒトが口を挟む。

 

ワルバッド侯爵、息子いるんだ。

 

「皆さん、食事の用意ができました」

 

メイドさんにお呼ばれ。

 

「うっす」

 

じゃあ、行こうか。

 

 

 

「ではみんな、手を合わせていただきます」

 

「「「「いただきます」」」」

 

まさかの食堂だった。

 

貴族ってもっとこう……、アレなんじゃないの?下々の者と一緒に食事するもんなの?

 

「?、ぶひ、どうしましたか?」

 

「あ、いや、貴族様が下々の者と一緒に食事するもんなのかなと思いまして」

 

「シグナル君、人間に上も下もないのだよ。エルフも獣人も皆同じさ。ぶひひ、平等なのだよ」

 

お、おぉお。

 

なんかいいこと言ってる。

 

「私の館では使用人も主人もない。皆平等に食事を摂るのだよ、ぶひ、おかしいかね?」

 

「貴族としてはおかしいんじゃないですかね」

 

「ぶーっひっひ、確かにそうだね、私は貴族としては三流だね」

 

ああ、そう……。

 

「それでも、人の道は踏み外したくないものだ。ぶひひひひ」

 

人道を説かれた……。

 

メニューは、と言うと、アイリッシュシチュー的なもの、ローストされた鳥っぽいの、なんかのソーセージ、サラダ、ロブスター的なのなどなど。

 

味は……、うーん、中々だな。貴族の食う飯だけあってハーブの香りが効いていて、塩気も十分だ。

 

「美味いじゃないか。おかわりだ」

 

遠慮せずにどんどん食うヴィオラ。

 

「ぶひひひひ、いいとも、いいとも、沢山食べるといい」

 

俺も特に遠慮せずに食う。

 

リヒトも……?

 

「ってかお前エルフだろ、肉とか食うの?」

 

「エルフは元々狩猟民族だぞ」

 

成る程。

 

カインは?

 

「これ美味しいねえ」

 

普通に食ってる……。

 

ワルバッド侯爵は……。

 

「ぶっひっひ、この身体はどうにも燃費が悪くてね。沢山食べないと頭が回らないのだよ」

 

がっつり食ってた。

 

 

 

食後、ワルバッド侯爵はデザートも出してきた。

 

デザートはワルバッド侯爵オススメの甘さ控えめの焼き菓子だった。なんでも、貴族のお菓子は暴力的に甘いから好きじゃないらしい。

 

分かる分かる。アメリカのお菓子とかバターと砂糖の味しかしねえもんな。

 

その後。

 

「ぶひ、では、アナーキーインザミドガルズの諸君には、近海の海獣退治とゲリュンの森から湧いた魔物退治を依頼したいのですよ」

 

「ゲリュンの森?」

 

「ええ。このワルバッド領は西が王都方面に続く平原、東がサンクトス連合国がある海があります。そして北には魔物が出るゲリュンの森、南には平原があるのです」

 

ふーん。

 

「ゲリュンの森は深く、奥地にはバジリスクやサーペントのような強い魔物が出ます。ワイバーンや……、グリーンドラゴンが出たこともあります」

 

ドラゴン……、Aランクの代表的な魔物。Aランクパーティ四人で互角、らしい。

 

「あの時は領内の冒険者の皆と、私の息子が指揮をとって追い返しましたが……、また現れたらどうなるのかと……」

 

「へえ、息子さん。強いんで?」

 

「ええ、Bランク冒険者並だと本人は言っていますが、親の贔屓目で見ても一流並ですよ。まだ十六歳だと言うのに、頑張っています」

 

ほう。

 

「息子の名前は、ゲド。ゲド・ワルバッドです。今は王都の学院で魔法を学んでいます」

 

ん?

 

ゲド?

 

どこかで聞いた名だな……?

 




ああ〜、文章力ほしい〜。

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