ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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人間のクズが英霊神霊をがっつり煽りながら才能でゴリ押しする話。


fate/kuzu
ふぇいと/ぐっだぐだおーだー


大阪府大阪市西成区北部。

 

通称、あいりん地区……。

 

ホームレス、薬物中毒者、住所不定の日雇い労働者、そして暴力団……、おおよそ真っ当とは言えない人々の住まう土地。

 

まさに、日本のスラム街。

 

……その街に住むには似つかわしくない、一人の女の子が、安アパートのドアを開け、声を上げた。

 

「に、兄さん!見て見て!これ!」

 

書類を片手に現れたのは、赤毛をサイドテールに纏めた可愛らしい、しかし、特筆するような大きな特徴はない女の子。その言葉の通り、自らの兄に書類を見せる。

 

「はいはい、凄い凄い」

 

それに対するのは、正しく異様。無精髭も髪も、碌に手入れをせず伸ばしっぱなし、死んだ魚のような目。元は妹に似て美形であろうその姿は地に落ちている。まさに、スラムの人間らしい、薄汚い格好だった。

 

「もう!ちゃんと見て!えーと、人理継続保障機関カルデア?からの呼び出し、だって!遊び半分で出したあの応募、当たったんだね!」

 

「いや、知らんけど」

 

「人々の平和を守るために、行かなきゃならないって書いてあるよ!」

 

「は?頭湧いてんじゃねーの?新手の詐欺かなんかだろ。良いから晩飯作ってくんない?」

 

「……私も、最初はそう思ったけど……、見てここ!給料がたくさん!住み込みオーケー!三食ご飯が食べられる!凄いよ!」

 

興奮した様子の女の子。いかに、この地の物価が安いとは言え、アルバイトのみで生計を立てることは難しいのだ。故に、女の子と、その兄の生活はいつも困窮していた。

 

「あっ!兄さん!またゲーム買ったの?!あれ高いからやめてよ!!タバコとお酒も!!」

 

……困窮の原因の半分以上は、この兄の金遣いの荒さによるものだが。

 

「チッ、うるせーな、反省してまーす」

 

してない。

 

「もー!……ま、いっか!ここのカルデア?ってところに行けば、生活はもっともっと良くなるんだから!お給料入ったら、高いお酒買っていいからね!」

 

「おー、行ってらっしゃい」

 

ひらひらと、振り向きもせずに手を振る男。目にはノートパソコンの画面しか写っていない。

 

「……何言ってるの?お兄ちゃんも行くんだよ!!」

 

「は?無理無理、俺、これから風俗行く予定だし。後は酒飲みに……」

 

「駄目だって!もう貯金もないし、来月の家賃も無いの!とっとと行くよ!」

 

そう言うと、妹は、兄を台車(折りたたみ式3600円税抜き)に載せ、キャリーバッグに少ない荷物を詰め込むと、兄と共に早々と部屋を出て行く。どの道、家賃は払えないのだ、出て行く他ない。

 

「……チッ、まあいいや、好きにしろ。ただ、歩くのはだるい、台車押してくれ」

 

「うん、好きにする!じゃあ、出発だ!」

 

 

 

妹の名を、藤丸立香。

 

兄の名を、藤丸凛太郎。

 

かくして、二人の「主人公」は、カルデアに旅立つのであった……!!

 

 

 

 

「……オイ立香」

 

「……いやぁ、私も、これはちょっと予想してなかったかなー……。もしも詐欺だったら兄さんが何とかしてくれる、とか思ってたんだけど……」

 

「ざっけんなやコラ!オメーここ何処だ?!クッソ寒いんだけど?!!」

 

「ご、ごめーん!!……で、でも、ほら!兄さんは魔法使いなんでしょ?!魔法の力でこう、何とか……、ねっ?」

 

「できねーよ!!」

 

……そう、カルデアは、極寒の雪山の上にあるのだ。着の身着のままで、対した防寒もせずに来れば当然、寒い。

 

「何でよー!兄さんあんなに強いんだから、何とか出来るでしょー?!」

 

「お前なぁ、魔法ってのは、アレだ、難しいんだよ!!」

 

『……はじめまして、あなた方は本日最後の来館者です』

 

と、言い争いを続ける二人にかかる声。……先程から、カルデアのゲートは、二人の認証をしていたのだ。それもそのはず、カルデアは人理継続……、つまり、平たく言えば、人々の平和を、文化を、歴史を維持する集団なのだ。人外のものをカルデア内部に入れる訳がない。

 

「あ"ぁ"?何だコラ、こっちは取り込んでんだよ後にしろ殺すぞ!」

 

「兄さんそれ多分機械だよ!」

 

『申し訳ありません、入館手続まであと180秒です』

 

「んだと?このクソ寒い中で三分待たせんのか?!覚えとけよテメー、責任者半殺しにしてやっからな!!」

 

「兄さん、来て早々クビは嫌だよ?!」

 

『その間、模擬戦をお楽しみ下さい……。英霊召喚システム「フェイト」、起動します』

 

するとどうだろうか……、辺りの極寒の雪山は、緑の平原へと塗り変わっていったのだ。

 

「な、なにこれ?!凄い!これが魔法?!」

 

「……あー、多分そうだろ。知らんけど」

 

そして、塗り変わった風景の中に、平原に似つかわしくない何かがいる。

 

『ガオオォォォォォ…………ン』

 

「……あれとやり合えってか?」

 

「……うわー、本当に魔法なんだ……」

 

顕現したのは、ゴーレム。訓練用とは言え、それなりの戦闘能力を持つ巨人だ。罷り間違っても、人間が生身でどうこうできるものではない。

 

「オイオーイ、めんどくせーんだけどー?」

 

「まあまあ、良いじゃん。兄さん、喧嘩好きでしょ?あんな強そうなの中々いないよ!ほら頑張って!!」

 

無邪気、あまりにも無邪気だ。まるで、「兄が勝利するのが当然」と言わんばかりの言動。

 

「はぁ、あんなもんじゃ三分いらねぇよ、ったく」

 

こちらも、あまりにも、余裕だ。まるで、「自分が勝って当然」と言わんばかりの態度。

 

ポケットに手を突っ込んだまま、ゆっくりと、大きなゴーレムの元に向かう。

 

そして……。

 

『ガオオォオォォン!!!』

 

ゴーレムから放たれた、文字通りの鉄拳は。

 

「んだぁ、こりゃ?そんなもんかオイ?良いか、パンチってのはな」

 

その巌の様な拳は。

 

「こうやるんだよォ!!!!」

 

無惨に、砕け散った。

 

無造作に放たれた、凛太郎の大振りの拳は、ゴーレムの巨大な拳を腕ごと破壊した。

 

『オォォォォォ…………?!!!』

 

「くたばれやカスがオッラァーーー!!!」

 

『ーーーーーー!!!!!』

 

そして、鍛え抜かれた武技でも何でもない、ただの喧嘩キック。素早さで劣るゴーレムは、それをモロに受け……、跡形もなく吹き飛んだ。

 

「はん、こんなもんかよ。虚仮威しじゃねーか」

 

 

 

「見て見て兄さん!何か鎧着た綺麗な女の子が……、消えちゃった」

 

「あ?いねぇじゃねぇか。……ヤクはやめとけとあれほど」

 

「い、いや!いたんだって!さっきそこにいた!!」

 

 

 

 

 

所変わって、カルデアの内部。

 

「わー、凄い!まるでSFだね、兄さん」

 

「だなぁ、スター○ォーズみてえだ」

 

などと、軽い会話を交わしつつ、勝手にそこらを歩き回る二人。

 

妹の方は、「怒られるだろうけど、兎も角、誰か職員に会って指示を聞きたい」と、至極当然なことを思っているが。

 

問題の兄の方は、と言うと。

 

「いやー、台車持ってきて正解だったわー。こんなクソ広いところ歩きたくねーもんよ」

 

台車に乗って、妹に台車を押させて、楽していた。歩くことすらめんどくさい、エゴの塊、人間のクズである。

 

「ん?何だこの綿毛」

 

「フォウ?」

 

「あれ?兄さん、何それ……、って、猫?」

 

いつの間にか、台車に乗っていた白い小動物。「フォウ?」などと、おおよそ猫らしからぬ鳴き声で鳴いている。

 

「……キャッチ!」

 

「フォウ?!!フォーウ!!」

 

「……何やってるの兄さん。可哀想だから離してあげなよ」

 

「バッカ、オメー、どう見たって新種の生物だろ!売り飛ばして金にすんぞ!」

 

「…………優しい飼い主を探してあげるからね!」

 

「フォウ?!!フォーーーウ?!!!」

 

 

 

そこに、一つの人影。

 

「ま、待ってくださいフォウさん。……あ、こんにちは」

 

白衣に眼鏡、長い前髪の美しい少女だ。年の頃は、立香よりも少し下と言ったところだろうか。

 

「こ、こんにちは。……その、ここの職員さん、かな?」

 

「はい、まあ、職員と言えば職員ですね。……その、一つ質問しても良いですか?」

 

「?、何ですか?」

 

「……先輩は、どうして台車で運ばれているんですか?」

 

至極当然な疑問である。

 

「あ、あー……。歩くのがめんどくさいから、だって。いつものことだから、気にしなくて良いよ」

 

「は、はあ……」

 

「あ、オイ、お前。籠か、もしくは紐とか持ってないか?」

 

「え?い、いえ、すみませんけど、持っていませ……、って、その、フォウさんを離して下さい!」

 

「フ、フォウ……」

 

脱いだ上着に包まれ、その上から押さえつけられているフォウさん。逃げ出そうとしているが、いかんせん、この男の力はかなりのものだ。

 

「は?フォウ?何の話だ?Ζガンダムか?」

 

「いえ、フォウさんは、先輩の上着に包まれているその白い生き物のことです!は、離してあげて下さい!」

 

「……なんだ、お前のペットかよ。しゃあねえな、ほらよ」

 

「いえその、そうではないんですけど……、ありがとう、ございます?」

 

「い、いえいえ!勝手にこの子を捕まえようとしちゃってごめんね!」

 

立香は非常に人当たりが良く、初対面の人間とも仲良くなれるタイプの、明るい性格だ。いきなりの先輩呼ばわりも華麗にスルーである。

 

「先輩って何だよ」

 

タバコに火をつけながらも、質問を打つける凛太郎。銘柄はセブンスターだ。

 

「そ、その、ここは禁煙で……」

 

「あ"?」

 

「い、いえ、すみません……」

 

対して、それと正反対の凛太郎は、この通りである。この少女、「マシュ・キリエライト」にとっては初めて会うタイプの悪人であった。当たり前だろう、このカルデアにチンピラはいない。

 

 

 

「ああ、そこにいたのかマシュ。だめだぞ、断りもなしに移動するのはよくないと……」

 

「だっひゃっひゃっひゃっ!!!なんだこのもみあげジャングル大帝!!!クソダセェ!!!」

 

「な、なっ……!!し、失礼だな君は!ま、まあ、良いさ。見ない顔だし、新人だね?私は……」

 

と、現れた瞬間に早速煽られたのはこの男、「レフ・ライノール」……このカルデアの技師顧問、と名乗った。

 

曰く、君達は選ばれた48人のうち最後の二人だと。

 

曰く、君達は一般採用枠であるが、必要な人材だと。

 

そして最後に一言。

 

「じき、所長の説明会がはじまる。君達も急いで出席しないと」

 

「おっし、立香、フケるぞ」

 

「……君、私の話を聞いていたのかい?」

 

「あぁ?何だ、話聞いて欲しかったのかジャングル大帝。俺、話が長い奴嫌いなんだよねー」

 

タバコを大きく吸って、肺の中の煙をレフの顔に吹き付ける凛太郎。非常に柄が悪い。人の良さそうな微笑を浮かべるレフにも青筋が浮かんだ。

 

「す、すいません!ほら、行くよ兄さん!」

 

「あっ、馬鹿、台車押すな、説明会なんざかったる……、まあ、良いか。寝てよ」

 

流石にヤバイと思ったのか、立香は大きく頭を下げて、台車を押して、「さあ、早く説明会に行きましょう!遅れたら大変です!」などと、場を和ませていた。必死に。それはもう必死に。

 

 

 

……こうして二人は、レフと言う男と、マシュと言う女の子に、中央管制室まで案内された。会話を切り上げてまで急いだせいか、何とか、ギリギリには時間が間に合ったようだ。そこでは、所長……、「オルガマリー・アニムスフィア」と名乗る女の演説が、今まさに始まるところだった。

 

「……何よ、その、台車?そして、ここは禁煙よ?」

 

「んだよ、文句あんのか?」

 

「大有りよ!タバコを消して!台車から立ちなさい!!」

 

「良いからとっとと話せや。十秒以内でな。はい、いーち」

 

「……あ、な、た、は、ねぇ!おふざけもいい加減にしなさいっ!!一般採用枠といえど、この人理継続保障機関カルデアの一員なのよ!!貴方一人の醜態のせいで、このカルデアの、ひいてはアニムスフィア家の名に……」

 

「はい、十。終了。帰れ」

 

「な、な、な、なぁ?!!こ、この!!」

 

顔を真っ赤にして怒りを露わにするオルガマリー。魔術師の名門アニムスフィア家を継ぐ者である彼女は、このようにおちょくられた経験はまるでない。だからだろうか、言葉を失うくらいの激怒だ。

 

「こ、のぉ!!!……痛っ?!!頬硬っ?!!あ、貴方一体何で出来てるの?!!」

 

「うわ、殴られたわ。さてはブラック企業だなオメー。起訴確定、お前金持ってそうだし死ぬほど搾り取って……」

 

「兄さァーーーん!!!すみません所長ーーー!!クビだけは!!クビだけはーーー!!!」

 

 

 

 

 

×××××××××××××××

 

にしても、なーんでこんなところに来ちまったんだ俺は?

 

業務内容が謎だわ。なんだよ、人理継続って。日本語喋れや。

 

こんなかったるいことしなくても、バイトなんざ、ヤクザから「中身を開けるな」って言われた怪しいアタッシュケースを運ぶ仕事とかやった方が楽だろ。

 

でも、まあ。

 

「あの所長ってやつ、結構いい奴だな。初っ端から休みくれるなんてよ」

 

「いや、あれは多分、嫌がらせだと思うんだけど?」

 

「ま、まさか、あの所長にあんな態度をとるなんて……。先輩は大物ですね。あ、ここが先輩達の部屋です」

 

「案内ありがとう、マシュ!これからマシュのいるAチームは、管制室でファーストミッション(?)なんでしょ?頑張ってね!」

 

「はい、ありがとうございます、立香先輩。それでは、わたしはこれで。運が良ければまたお会いできると思います」

 

「うん、またね!」

 

「なんかアレだよな、Aチームっつうと特攻野郎しか思い浮かばねーわ。戦車で空中戦でもやんのか」

 

「兄さんはちょっと黙ってて?」

 

んだよこの野郎、一丁前に反抗期か?

 

「それじゃ、部屋に入ろうか。……あ、相部屋なんだ、良かった」

 

オイオイ、ブラコンかよ。引くわー。

 

「兄さん、私がいないと掃除も洗濯も何もやらないんだから!」

 

違った母親だ。

 

「さーて、この、もらった教本で魔法の練習を……」

 

「はーい、入ってまー、……って、うぇええええ?!!誰だ君達は?!!」

 

部屋ん中になんかいた。

 

……成る程、空き巣か?俺もよく空き巣にやられたからなぁ。

 

「死にたいらしいな?」

 

「過激!!せめて会話しようよ!!」

 

「えーっと、誰ですか?私達、ここが部屋だって案内されたんだけど……」

 

「何者って、どこからどう見ても健全な、真面目に働くお医者さんじゃないか!」

 

ウッザ、なんやこいつ。

 

「そ、そうですか。私は藤丸立香、こっちは兄の藤丸凛太郎です、よろしく、えーっと」

 

「ああ、僕は、このカルデアの医療部門のトップ、ロマ二・アーキマンだよ!みんなと同じようにDr.ロマンと呼んでくれて構わないよ!……あ、あと、その、タバコはちょっと遠慮してもら」

 

「あ"?殺すぞ?」

 

「ひぃ!なんでもないです!!」

 

 

 

まあ、その後は、何故か部屋に居座ってるこの優男……、名前は聞いてなかったな、このクソキモい、オカマ臭え髪型の奴、こいつと立香は楽しそうにお話していやがる。

 

まるで興味がねえもんだから、聞いてないんだが、どうやらここ、カルデアなる場所の説明を受けているらしい。企業説明かよ。んなもんはな、本当のことを言う訳がねえだろ?サビ残休日返上ありますって自ら告白するブラック企業はねーんだよ。

 

今も、この男の癖にペラペラ喋ってばかりの優男は、俺の台車にさっきの綿毛がいて珍しいだの、ボクも所長に叱られてここにいるだの、兎に角やかましい。

 

すげえな立香は。こんなどうでもいい話、三秒も聞いてらんねーもん、俺。

 

終わったドラクエのレベル上げの方がまだマシだわ。

 

……寝てよ。

 

 

 

 

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!』

 

「んだよこの野郎!今寝ようとしてただろうが!!」

 

「今のは爆発音か?!一体何が起こっている……?!」

 

オイオイ、何だよ?何爆発してくれちゃってんの?寝れないじゃん?放火か事故かは分からねえけどよ、いきなり人の勤め先(予定)を爆破だぁ?犯人取っ捕まえてボコるか。

 

「酷い、管制室がボロボロだ……!!君達は早く逃げるんだ!良いね!」

 

あっ、走り去って行ったぞあの野郎。……足遅いな、オイ。

 

「私達も行こう、兄さん!!」

 

おっと、立香もやる気だな。

 

「おうよ!」

 

「(あのマシュって子が心配だから)管制室に行くよ!」

 

「(犯人を半殺しにするから)急ぐぞ、俺が走るから負ぶされ!」

 

「うん!」

 

「フォウ!」

 

なんだこの綿毛。まだいたのか。まあ、良い。全員付いて来いや!!

 

「いや、何してるんだキミ!出口は向こう……、って速っ?!!」

 

なんか途中で優男とすれ違ったが、気のせいだな。

 

 

 

「ここが管制室か」

 

「……酷い、こんな……、こんな……」

 

まあ、確かに酷えな。ぱっと見、生きている奴はいない。

 

「誰か!誰か無事な人は?!」

 

立香もビビってんなありゃ。まあ、俺も、そこら辺にこびり付いた血痕とか転がってる死体は見たくねえな。うへえ、グロっ、あいつなんて身体が潰れて、潰れて……、なんかあいつ、どっかで見たような?

 

「マシュ!!!」

 

あー、そうそう、そんな感じの名前だったわ。

 

「立香、先輩……?」

 

「大丈夫、大丈夫だからね!今、今助けるから……!!」

 

「いい、です。……助かりません、から……」

 

まあ、なぁ。

 

その傷じゃどうやったって無理だわな。

 

「兄さん!魔法!」

 

「……あー、待て、回復魔法、回復魔法……」

 

「ま、まさか、忘れたの?!は、早く思い出して!!一刻も早く!!!」

 

バカ、この、揺らすなや!!今思い出してやってんだろーが!!

 

えーと、えーと……。

 

 

 

……『もうダメデース、空腹で歩けまセーン……』

 

……『おー?なんだテメー行き倒れかー?俺よぉ、さっき麻雀で大勝ちしてよー?めっちゃ機嫌良いんだよねー!奢ってやるわ!付いて来いや!!』

 

……『ホントですか!日本人、優しいデース!カルロス、メキシコから出稼ぎに来た甲斐がありました!!』

 

 

 

……『は?魔法使い?……大麻か?あれ、使い過ぎると幻覚が……』

 

……『ノー!ドラックノー!クスリ違います!カルロス、実家は魔術師でした!でも、魔術師じゃお金稼げないから、日本に出稼ぎに来たんデース!!ご飯のお礼に、貴方に魔術を教えてあげマース!!』

 

 

 

……『オー、凛太郎、ちょっとヤバいレベルの才能ありマース!魔術回路が多過ぎて、神代クラスの魔術師みたいデース!!魔術師として一生困りまセーン!!』

 

……『え?じゃあこのフワフワしたやつ、魔力的なもんなの?ドラゴンボール的な、気とかそんなんだと思ってたわ』

 

 

 

……『ガントは、こう!治療魔法は、こうデース!』

 

……『霊丸!!!』

 

……『ノー!霊丸ノー!!それ別の漫画デース!!』

 

 

 

「……思い出した!おおおおお!ホイミ!!!」

 

「兄さん?!!」

 

「早く、逃げ」

 

「うるせえ黙れ、集中してんだよこっちは!」

 

「あ、はい」

 

やりづれえな、回復魔法!一気にドバーッと流すと駄目だってカルロスが言ってたしな、こう、ゆっくりと……。

 

「ああ!マシュの傷が段々……!」

 

「マジか?よし、このまま……!!」

 

『アンサモンプログラムスタート。霊子変換を開始します』

 

「あ?何だ?」

 

『レイシフト開始まであと3』

 

何のカウント?ロケットとか?

 

「何?何なの?!よく分からないけど、治療を急いで、兄さん!」

 

「今やってるから」

 

「もっと早く!なんか嫌な予感がする!早くここから逃げなきゃ!!」

 

『2』

 

「いや、無理だって、これ。慣れてねーんだよ」

 

「ていうか、せめてベホマにしてよ!効率が悪過ぎる!!」

 

「うるせーな!俺は遊び人なんだよ!遊び人にホイミの技術を求めんじゃねーよ!!」

 

『1』

 

「凛太郎先輩……、最期に、手を握ってもらっても、良いですか?」

 

「何諦めてんだオイ?今ホイミかけてんだろ。手でも何でも握ってやるから黙ってろ」

 

「……ふふ、凛太郎先輩は、優しいんですね」

 

「いや、単に集中できねぇからだし。マジで黙ってろ」

 

「あ、はい」

 

 

 

『全行程、完了。ファーストオーダー実証を開始します』

 




書いておいて何だけども、俺、fateの設定が難し過ぎてあんまり理解してません。

なんか間違ってたら教えてね。

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