ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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モツ鍋うめー。


56話 喫茶店での話

「「「「カツカレーうめー……」」」」

 

四人で色々なカレーを作ったが、日本風のカツカレーが一番美味いんじゃないかな?みたいな話になって落ち着いた。

 

エスニックなカレーも美味いんだけどね。

 

「八時間煮込んだカレーとかもう優勝でしょ」

 

「ヤバイね」

 

「そうね、時間をかけた分美味いわね」

 

「うむ……」

 

もちろん、どでかい鍋で作ったので、あまりのカレーはうちの喫茶店で出す。

 

煮物は一度にたくさん作るほど美味んだよ。

 

更に余ったカレーはカレーコロッケにして、方々に差し入れしよう。

 

 

 

喫茶店ディメンション。

 

いつもは、学生や女性客で席が埋まるのだが、最近は違う。

 

木製のシックな小物が、ごちゃごちゃと下品にならない程度に置いてある小洒落た喫茶店であるが、最近は来店する人間の顔ぶれが変わっていた。

 

昼のことである。

 

丁度、昼飯時であり、今日は店内からカレーの香りを漂わせているからして、それに釣られてきた客が多いのだが。

 

「うーん、やっぱり、君の淹れるコーヒーが一番美味いんだよねえ」

 

アーニーが、コミックブック片手にコーヒーカップを傾けていた。

 

アーニーの眼前には、俺特製のガトーショコラとオペラ、ザッハトルテがあった。

 

「そりゃあ、お前が好きそうなコーヒーを淹れてるからな」

 

「えっ……、何それ、一々覚えてるの?キモいね」

 

「は?殺すぞ?」

 

「いや……、そうなの?僕のこと好きなの?」

 

「いや、アメリカ人受けするコーヒーのレシピがあるんだよ。これ飲んでみろ」

 

「んお、これは濃いね」

 

「だろ?これは日本人向けのだ。アメリカ人は薄めが好きらしいんだよな。だから、お前には薄めに淹れてんだよ」

 

「へー、そうなんだ」

 

チョコケーキをパクつきながら、蜘蛛男のバックヤードを読むアーニー。

 

「あ、どうも」

 

「ああ、はい」

 

アーニーの隣には、アーニーの嫁であるローラが。

 

「夜分遅くにすみません」

 

「あ、日本は今昼間ですから」

 

「えっ……?あ、そうか、時差が……」

 

その隣では。

 

「美味いな……」

 

昼間っからウォッカをキメるシーマが。

 

シーマの眼前には、茹でたジャガイモ、ニシンの塩漬け、サーロ、そしてうちで漬けてるピクルスがある。

 

「やはりウォッカ……、ウォッカさえあれば生きていけるわね」

 

何言ってんだこいつ。

 

「トマトのピクルスが最高ね。このトマト、天海街のでしょう?」

 

「そうだぞ」

 

「甘みが強くて美味いわね」

 

つーか飲むペース早っ。

 

こんなのが嫁とか嫌だな……。

 

そしてテーブル席は、夜の八時頃にヴォルフが家族と飯を食いに来る予定だ。ああ、時差がな。

 

芋、ザワークラウト、ヴルストを出しておけば何にも言わんので、作る側としては楽だ。

 

ヴォルフの嫁であるフェイと、ヴォルフの母親と来る。

 

更に、カウンター席には。

 

「「「昼休憩です」」」

 

「僕はいつも休憩だよ」

 

俺の嫁四人。

 

このように、愉快なメンツが集まっている。

 

こいつらが店に常駐するなら、店を拡張しようかな……。

 

 

 

さて……、そんな感じで、喫茶店の仕事を朝から晩までする。

 

「「「お邪魔しまーす」」」

 

「はい、いらっしゃい」

 

「あの、マスターさん!今日の昼定食ってカレーですか?!」

 

「ああ、特製ビーフカレー、五百円。プラス百円でトンカツをトッピング」

 

「「「わーい!カツカレー三つ、大盛りで!!!」」」

 

「はいよ」

 

俺は、来店した女子高生を横目に、カツを揚げる。

 

その間に、女子高生の話が聞こえてくる。

 

「いやー、やっぱりお昼は喫茶店ディメンションだね!」

 

「肉屋のコロッケパンも美味しいよね、腹持ちいいし」

 

「肉屋っていつも冒険者向け干し肉作ってるイメージ……。コロッケパンとか売ってたんだ」

 

「来々軒も営業再開したよね。メニュー、醤油ラーメンと餃子と炒飯しかないけど」

 

「牛野屋もブラウンボアの肉で豚丼を食べられるようにしたよね」

 

「しろがね屋に行っても良いみたいだよ?」

 

「え?あそこ、旅館じゃないの?」

 

「お昼は食堂もやってるんだよ。メニューは日替わりだけど、崩壊前みたいな食事が食べられるんだよー!割高だけどね」

 

「やっぱり、崩壊してから、発酵食品とか貴重だもんね。長野からの輸入も少量だし……」

 

「でも、内陸の方は魚すら食べられないんだよ?それと比べれば、海に面した天海街は恵まれてるって!」

 

「でもやっぱり、スパイスとかあんまりないから、カレーとか食べられないもんねー」

 

「本当だよー!今日は久しぶりにカレー食べれるとか、楽しみだよね!」

 

「……何でこの崩壊世界でカレーみたいな複雑な料理が出せるのかな、ここ」

 

「何でだろうね……」

 

「ほんとにね……」

 

「カツカレー大盛りお待ち」

 

「「「わーい!いただきまーす!!」」」

 

ふむ……、天海街の現状。

 

麦、米はダンジョン農地で栽培中。

 

野菜類は比較的たくさんとれる。

 

魚は、海に面しているのでたくさんとれる。

 

肉は、モンスター肉がそこそことれる。ホーンラビットとブラウンボアが出る。

 

その他、スパイス類は暫定首都長野からの輸入に頼っている。

 

山も近いので山菜もとれる。

 

ダンジョン産の野草なんかも食べる。

 

日本人は食事にこだわるからな……。

 

ヴォルフが言うには、毎日、ヴルストとザワークラウトとジャガイモで構わないと言うし、シーマはウォッカがあれば死なない。アーニーも、アメリカ人はハンバーガーとポテトで生きていけると言っていた。

 

俺は違う。

 

俺は、朝はパンとコーヒーで良いのだが、昼と夜は色々な美味いものを食いたい。

 

大学ではアメリカに留学していたが……、アメリカの飯は不味いのだ。

 

いや、ハンバーガーとかは美味いのだが、全体的に大味でな……。

 

俺は幼い頃に親を失ってから、自分で料理してきたから、料理をすることは苦じゃない。

 

何年も続けてきたから、それなりに料理が上手いのだ。

 

実はこっそり、プロ主催の料理教室に通ったり、食べ歩きをして舌を鍛えたりなど、色々なことをしていた。

 

その後は、スキルの習得で、料理の腕前が上がり、今では何故か、本場のフランス料理から寿司まで握れるようになっていた。

 

その料理の腕を活用して、喫茶店をやっているのだ。

 

まあ、週に三日のだるだるペースでだが。

 

さて、明日の日替わり定食は何にしようかな……。

 

 




これから、ワールドワイド冒険者編を始めたいと思います。

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