ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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新作プロットねりねり。


65話 屑籠屋開店

「「「「わっはっはっはっはっ!!!」」」」

 

花見をしている。

 

連日、多くの人々で賑わうはずの桜の名所も、今なら人っ子一人いやしない。お得!

 

この桜の名所を俺達だけで独り占めだ!

 

 

 

「あのさー、思ったんだけどさー」

 

「んー?」

 

「金余ってるよね?」

 

「余ってるね」

 

「これで、天海ポータルの前にどどーんと何でも屋建てね?」

 

「なんで?」

 

「いやほら、思ったんだけどさ、冒険者って、自分の使わないアイテム拾わないのよ」

 

「つまり?」

 

「例えば、侍は、ダンジョンでレイピアを見つけても拾ってこないのよね、使わないから。でも、軽戦士からすれば、ダンジョン産のレイピアとか、高い金払っても欲しいじゃん」

 

これは、折角世界がローグライクなのにつまらん展開だ。

 

「あー」

 

「だからさ、冒険者からのアイテムをなんでも買い取って、なんでも売る店があっていいと思うのよ」

 

「なるほど……」

 

「やろうぜ」

 

「「「やるか」」」

 

 

 

問題はまず、冒険者の『どうぐぶくろ』はすぐにいっぱいになってしまうと言うことだ。

 

そして、いわゆる、『のろわれたぶき』の存在。

 

そこで俺達は、チームクズは一般人パーティと名乗りながらも、もう別に能力を隠すつもりはないので、色々な便利アイテムを野に放つことにした。

 

「まずはアイテムボックスだな」

 

「龍の探求風に言えば『ふくろ』だね」

 

ランクをつけよう。

 

「大きければ大きいほど高価。そして、内部の時間を停止させるモデルが一番高価で、遅くするものが次に高価、時間経過は変えられないものが比較的安価」

 

「まあ、そうなるね。現状では、内部の時間を停止させられるほどの『ふくろ』は見つかってないけどさ」

 

「俺達なら作れるけどな」

 

次。

 

「鑑定のスクロールと解呪のスクロールの量産」

 

「いやー、無理っぽくない?魔導書作成はレアスキルだよ?」

 

「じゃあ、回数制限ありのアイテムか?」

 

「そんな感じで」

 

次。

 

「ダンジョンからの緊急脱出スクロール」

 

「いやー、転移のスクロールは魔導書作成(中級)からだよ?キツくない?」

 

「いやいや、これは絶対に欲しい。冒険者に死なれると困る」

 

雑魚モンスター掃除もめんどくさいのだ。

 

雑魚モンスターを掃除してくれる冒険者は基本的に生かしたい。

 

次。

 

「武器と防具」

 

「まあ、適当に」

 

次。

 

「雑貨」

 

「適当」

 

オーケー、これでバッチリだ。

 

 

 

×××××××××××××××

 

俺の名前は伊藤和雄!

 

レベル二十五の冒険者だ!

 

司祭の水樹、魔法使いの恵、騎士の暗子とパーティを組んで、仕事に励んでいるぜ!

 

まあ、冒険者だから、毎日仕事って訳じゃなくって、週に一、二回くらい依頼を達成すれば食っていけるかな。

 

大体、一回の依頼で四十万円くらい稼げるから、四人で割って一人十万くらい。

 

俺達は、上を目指すとかじゃなく、ただ生活できればそれでいいから、そんなに強敵に挑んだり、連続して戦ったりはしない。

 

街を攻めてくるゴブリンやオークを退治したり、可食モンスターを仕留めたりして生きているのだ。

 

貯金もそれなりにあるし、この調子で金を貯めて悠々とした老後を過ごすんだ!……年金、多分もらえないだろうしな。

 

さて、今日は駅前の広場に行って、直売所で飯にするかな!

 

ん……?

 

んんー?

 

んんんんんー?!!!

 

「な、なんだこりゃ?!!!」

 

駅前広場に、突然でかい店が生えてる!!!

 

ええと、『屑籠屋』……?

 

まさか本当に屑籠を売っている訳じゃねーよな。

 

店構えからしてそんな訳ない。もっと立派なやつだ。

 

まるで、石切場からそのまま切り出してきたかのような白亜の石壁。黒い石の装飾。

 

芸術家の家のようにも見えるが、外には屑籠屋と看板が出ているから、何かしらの店なんだろう。

 

店の前側には、上等なショッピングモールのように、マネキンが並び、武器や防具を展示している。

 

と、とりあえず、入ってみるか。

 

「お、お邪魔します」

 

「む、いらっしゃいませ」

 

「う、うわあ!《アルマトゥーラ》だ!」

 

何故ここに?!

 

……いや、例の、世界最強のパーティ『廃棄物』の息のかかった店なのか?!

 

『廃棄物』はいつもそうだ、遊びと称して世界を引っ掻き回す!

 

しかし、冒険者の原型になったのも、他種族との交流の足がかりになったのも、全てはチーム『廃棄物』のお陰だ。

 

一概に悪いとは言えない。

 

となると、この店でも、何かでかいことをやるつもりなんだろうな……。

 

冒険者の始祖にして亜人と手を取り合った最初の交渉人、チーム『廃棄物』パーティ。

 

彼らの悪質な遊びとは……?

 

「………………」

 

「あの……」

 

「何だ?」

 

「ここは……?」

 

「む、屑籠屋だ」

 

クソっ!駄目だ!

 

俺も割とコミュ障だが、《アルマトゥーラ》もコミュ障だった!!!

 

「な、何のお店なんでしょうか?」

 

「何でも屋だ。冒険者に役立つものは何でも売っている」

 

何でも屋……?

 

「そこにある鑑定眼鏡を好きに使え」

 

「あ、はい」

 

えーと……。

 

店内を見回す。

 

明らかに外見と不一致な広さだ。

 

建物の大きさはブティックくらいなのに、中に入るとショッピングモールより広いくらいだった。

 

恐らくは《ムンドゥス》の空間操作だな……。《ムンドゥス》は空間を支配するらしい。

 

取り敢えず、目につくのは両開きの黒い扉。ここは入り口だ。ガラス張りの黒い縁で……、シックで大人っぽいオシャレさだな。俺とは縁のない世界って感じだ。

 

レジは四つ、入り口の横にある。このご時世に電池式じゃない、コンビニで使われるような大型レジを使うだって?

 

レジ前にはガムや飴、魔石なんかが置かれている。

 

入り口から見て、右が食品、中央が雑貨、左が武具のようだ。

 

武具コーナーから見ていこう。

 

武具コーナーは……、まあ、武具コーナーだ。

 

借りた鑑定眼鏡で見たところ、レベル六十帯までの様々な武具が揃っている。

 

うわうわうわ!これ魔剣じゃん!値段は……、五千万円ッ?!!高い!でも魔剣は冒険者の憧れだよなあ。

 

片手剣に中型シールド、メイス類に投げナイフ、弓矢などのメジャーどころから、三節棍、ジャマハダル、ランタンシールド、チャクラム、ガンブレード、魔力駆動式レーザーブレードのようなものまで。

 

試し切り、試し打ちコーナーも完備。

 

………………。

 

「す、すいません、このレーザーブレード、試し切りしても良いですか?」

 

「む、どうせ買わんのだろう?まあ、五分くらいなら構わんが……」

 

「ありがとうございます!」

 

おおー!ぶぉん!ぶぉーん!たのしー!

 

 

 

中央の雑貨コーナー。

 

キャンプセットや調理器具……、おおっ!レアなアイテムボックス袋に……、マジックスクロールまである!

 

俺のパーティはダンジョンアタックとかしないから、この緊急脱出のスクロールとかはいらないけど、アイテムボックス袋は欲しいな!

 

五十万円、時間停止機能なし、容量三トンか……。

 

これがあれば可食モンスター狩りが捗るぞ……。よし!

 

「これください」

 

「五十万円、ミスリル硬貨でも紙幣でも構わない」

 

「じゃあ、十万円ミスリル硬貨を5枚」

 

「む、確かに」

 

へ、へへへ、アイテムボックス袋買っちまったぜ!

 

じゃあ、最後に食料品コーナーから何か買っていこう。

 

「うおお、なんだこりゃ?!」

 

惣菜コーナーが黒い闇に包まれている?!

 

あ、注意書きだ。

 

ええと、何々……?

 

『食料品コーナーは時間停止結界の中にあるので、この中にある食料品は賞味期限が無限です。ここから持ち出した時に食料品の時が進むので、手に取った商品は棚に戻さないでください』か……。

 

なるほどな、ここの食料品コーナーが、時間が止まっているとすれば、賞味期限切れによる廃棄は出ないってことだ。

 

ご丁寧にイートインスペースまでありやがる。

 

何か食ってくか。

 

『カレーうどん 500¥』

 

カレーうどん……。

 

久しぶりにカレーうどん食いたいな。

 

よし。

 

「あと、これもください」

 

「五百円だ」

 

「はい」

 

よしよし。

 

おっ、イートインスペース、ドリンクバー無料じゃん!

 

リアリティゴールド飲もう。

 

……うめー!久しぶりに炭酸ジュース飲んだぜ!

 

カレーうどんは……、熱々で美味い!

 

この器……、材質はポリエステルか。

 

ダンジョンで使い捨て出来るみたいだな。

 

ダンジョンは生き物以外を吸収するから、ゴミとか捨てても平気なんだよ。

 

でも、例外的に、魔力の多く含まれた物質は吸収されにくい。だから、宝箱とかがある訳だな。

 

崩壊前の物質や死体なんかはダンジョンに吸収されるけど、崩壊後の魔法的な物質やアイテムは吸収されない。

 

つまり、ダンジョン内ではポイ捨てオーケーだと思ってもらえれば。

 

 

 

はあ、美味かった。

 

またぞろ凄え店だなあ……。

 




そういや今日誕生日なんすよ俺。

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