ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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リアル系ロボットのパイロットは極力殺さないけど、たまに殺してしまうこともある感じ。


第2話 人間万事塞翁が馬

「で、今回の依頼についてだが……」

 

『ブラスタの持ち逃げは許さないからね』

 

「しねえよ、そんなこと」

 

異界の空からこんにちは。

 

旅人だよー。

 

今は、クロウと一緒に空の旅。

 

輸送機は俺の。工廠製で装甲もさることながら速さもある程度確保された輸送機。一番気に入ってるのは居住性だ。トイレシャワーキッチン付きの3、4部屋くらいある快適な小型輸送機。

 

勿論ジャンボジェット機も大型輸送機も戦艦も戦車も持ってるが、今回は少数なので小型輸送機に搭乗。

 

本来は輸送機のレンタルに経費がかかる予定だったが、経費がかからなかったので、その分は俺の取り分となった。

 

「クロウ、できたぞー」

 

「おう」

 

そしてその経費は、燃料代と食費に消える。

 

「特製ビーフシチュー、生ハムとレタスのサラダ、ロールパンだ。パンは焼きたてで、特にビーフシチューは俺の得意料理だからな、三つ星レストランにも負けないぞ」

 

「凄え自信だな」

 

「そりゃ三つ星レストランで働いてたこともあるし」

 

「あんたの経歴どうなってんだ?!」

 

いやまあ一般的な旅人のそれだけど。

 

「にしても、おごりとは気前が良いな、旅人さんよ」

 

「うん?経費から出したもんだし懐は痛まないよ。それに……」

 

「それに?」

 

「ご飯はみんなで食べた方が美味しいだろ?」

 

「……ははは、そりゃそうだな!」

 

さてと。

 

「「いただきます」」

 

「……〜っ、こいつは美味え!旅人さん、あんた、料理人として食っていけるぜ」

 

「並の一流並の腕はあるからね」

 

結局、クロウはおかわりまでして食べた。

 

「ふう、まともな食事は久し振りだぜ……」

 

「ん?ああ、借金で食費削ってんのか」

 

「おう、だからこんな良いもんが食えたのは嬉しいね、ありがとよ、旅人さん」

 

「いやね、今は俺が金に困ってないから気前がいいだけでね、金に困ってりゃ奢らないよ」

 

「そうかい……、ってそういや、あんたも借金あって、しかも踏み倒してんだよな」

 

「ああ、ギャンブルとか風俗とかでね」

 

「最低じゃねーか!!」

 

さて、何でも、今回の依頼は、AEUって国の新型ロボットのお披露目会に乱入、そしてその新型を撃破すること。

 

んー、そう言う無茶苦茶やるやつ好きよ。

 

驕り高ぶっているやつの鼻っ柱をへし折る、それが悪党だ。

 

経緯は、アクシオン財団の新型ロボットが、そのAEUの新型ロボットにコンペで負けたから、らしい。因みに、社長命令とのこと。

 

随分と器が小さいことするなあ、社長さんは。

 

『兎に角、ぶち壊してきなさい!』

 

とのこと。

 

「おうよ」

 

「トライアさんにお願いされたら何でもやっちゃうよ!」

 

 

 

現地に到着。

 

「あれがAEUの新型か……」

 

「へえ、色が綺麗だね」

 

「……なんつーか、もうちょっとコメントがあるだろ?色が綺麗ってよぉ」

 

ん?駄目?

 

じゃあ……。

 

「あれ、可変機だね。装備も見たところライフルと剣、盾、ミサイルとオーソドックスだ。まあ、正式採用ってんだから癖のない機体なんだろうね。でも、なんだか、ユニオンのフラッグを意識しているように思えるね」

 

「……なんだよ、まともなコメントもできるじゃねーか」

 

いや、考えようと思えばこれくらい思い浮かぶよ?でも考えなくても良いかなーって。面倒だし。

 

「さあて、二対一なんだ、囲んで棒で殴る!」

 

「おう、こっちが有利なんだ、とっとと終わらせるぞ」

 

と、二人して機体に乗り込んだところで。

 

空から青い機体が降ってきた。

 

『この辺ではロボットが降ってくるの?すごい気候だね』

 

『んな訳あるかよ』

 

うーん?

 

脳内の瞳を使って観測する。

 

『目標を駆逐する』

 

んー、16歳ってところか。

 

中東系の男だ。

 

『何だありゃあ…….』

 

クロウが呆気にとられる。

 

『乱入するタイミング逃したねえ』

 

『そうだなあ』

 

そして瞬く間にやられるAEUの新型。

 

『俺は!スペシャルで!2000回で!模擬戦なんだよぉ!!!』

 

『墜ちたねえ』

 

『そうだなあ』

 

ほのぼの。

 

『って、そうじゃねえだろ。AEUの新型はやられちまったんだ、とっとと離脱……、って、あのモビルスーツこっちに来』

 

『『あ』』

 

ステルスが切れた。

 

『どういうことだ?!』

 

『あの青いロボットの出している粒子が原因、じゃないかねえ』

 

『何者だ?』

 

青色のロボットが一瞬訝しんだその時。

 

『テロリストどもめ、武装解除して大人しく投降しろ!』

 

軌道エレベーターから、ロボットが多数現れる。

 

『やはりAEUは非武装と決められた軌道エレベーターの中にまで戦力を……』

 

成る程、こりゃいかんね。

 

軍隊様が規則を破っちゃあならないねえ。

 

『どうすんだ旅人さん、こっちまでテロリスト扱いだぜ』

 

『まあ、テロっぽいことする予定だったしね』

 

『兎に角、弁明のしようがねえ。やるしかねえぜ』

 

『そうだね、行こうか』

 

クロウのブラスタと俺のアルトアイゼンはブースターを吹かせた。

 

同タイミングで遠距離から狙撃が。

 

今度は、青のロボットと恐らくは同系統であろう緑のロボットだ。

 

『緑は青の味方っぽいね、暫定お仲間って事で』

 

『そうだな、AEUを先に叩くぞ!』

 

アルトアイゼンで、確かリーオー、だったかな?の、両腕をへし折る。コクピットは極力狙いたくないよね。

 

『行くぜ!!』

 

クロウも凄い技量だ。ハンドガンのような武装でAEUのヘリオン、だったかの手足を撃ち抜く。

 

そうこうしてるうちに黒のロボットが参入。

 

『聞こえてるか?そちらを援護する』

 

『お前さん、何者だ?』

 

『見ての通り、死神だよ。三大国家にとっちゃな』

 

三大国家……、AEU、ブリタニアユニオン、人革連のことだ。

 

いやあ見ての通りって言われましても。

 

『俺が知ってる死神はもっと可愛かったんだけどな』

 

小町って言うんだけど。

 

『はあ?あんた、死神に会ったことがあんのかよ?』

 

『ああ、昔ちょっと何度か死んでね。三途の川でよく死神と逢引したもんさ』

 

『ハッ、面白いジョークだな』

 

マジなんだけどなあ。

 

『取り敢えず、こいつらを片付けるぜ!』

 

と、黒いロボットがビームの大鎌を振るう。コクピットは狙っていない。

 

青と緑も、コクピットは極力狙わずにAEUの機体を処理していっている。

 

うん、死者を増やさないのは良いことだよ。

 

まあ、あくまで極力殺さない、だから、何人かは死んでるっぽいけど。それはしゃーない。全員助けようみたいな綺麗事は言わないよ。できるだけ殺さない主義ってだけだよね。

 

相手の数は十数体。

 

一人二、三体倒せば良いんだ、すぐに終わる。

 

『しゃあ!うりゃあ!』

 

回し蹴り、踵落とし。

 

このアルトアイゼンには、俺のKARATEをある程度覚えこませてある。

 

『ちぇすと!』

 

リーオーのメインカメラを叩き割り、

 

『はああ!』

 

片腕をとって背負い投げ、その後腕を引き千切る。

 

パイロット殺してないよねこれ。

 

大丈夫、かな?

 

『クラッチスナイパー!!』

 

クロウが相手の頭を吹っ飛ばす。

 

コクピットは腹部みたいだから大丈夫っぽいね。

 

さて、全滅したところで。

 

『どうする?戦勝祝いに飲みに行くかい?』

 

『ははは、遠慮しとくぜ』

 

そう言って消えた黒いの。

 

『帰還するぞ刹那』

 

『ああ』

 

何にも言わず消えた緑と青。

 

『……どうやら祝杯は二人であげることになったらしい』

 

『フッ、そうだな。帰るぞ旅人さん』

 

まあ、しょうがねえか。青いのと黒いののパイロットは未成年っぽかったし。

 

 

 

自動運転の輸送機の中で、トライアさんに今回のことを報告。

 

どうやら、俺達が戦っている間に、宇宙でも、青と緑と同系統のロボットがテロしたらしいこと、黒のロボットはこの前のドラゴンのロボットと似てるっぽいことが分かった。

 

「テロリストですってよ奥さん。世も末ですわね〜」

 

「何だそのノリは……。でもまあ、世も末ってのは確かだな」

 

『あんた達、テレビを見な!』

 

と、トライアさんから急に声がかかる。

 

「え、あ、はい」

 

テレビをつけると……。

 

『……全ての人類に報告させていただきます』

 

んー?

 

イオリア、なる人物が、ソレスタルビーイング、なる組織の、ガンダム、と言う兵器で戦争の根絶、を目指すんだって。

 

んんんんんー?

 

「突っ込みどころ満載ですな」

 

「確かにそうだが……」

 

「まず武力を以って武力を制した時点で戦争なんじゃないかな」

 

「そりゃそうだな」

 

「でもあのガンダムって機体はカッコよくて男のロマンが刺激されたから俺は許す」

 

「許すのかよ!」

 

まあ、いいんじゃないかと思う。

 

「取り敢えず飲もうぜ」

 

「ほんっとに自由人だなあんたは……。これから世界がひっくり返るかもしれないんだぜ?」

 

いや、良いじゃん。別に。どうでも。

 

「クロウ、あんたは本当にひっくり返った世界を見たことがあるか?」

 

「いや、ないが……」

 

「中東なんて酷いもんだよ。年中戦争やって、子供までライフル銃持たされて。食べるもんもなくて、病気が蔓延して」

 

「そうか、あんたは、そう言う世界も見てきたんだな……」

 

「でも、でもな、そうなっても、人間は逞しく生きて行くもんなのさ。俺も何度も死にかけたけど、今生きてここにいるだろ?世界がひっくり返ったなら、ひっくり返ったなりの生き方をすりゃあいい」

 

「成る程な、そう言うものの見方もできるな」

 

「つまり、人間万事塞翁が馬なんだから、その場その場で考えりゃいいのよ」

 

「ある種の真理だな……」

 

「さあ、乾杯だ、取り敢えず飲もう」

 

「フッ、そうだな。世界はなるようにしかならないってことか。飲もう」

 

「「乾杯」」

 




デュオ
面白いやつだな、と思っている。

クロウ
旅人の経歴は半信半疑だが、能力は認めている。

旅人
KARATEを繰り出すアルトアイゼン。

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