ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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アル中カラカラさん復活しとるやんけ!!!


閑話 一般通過冒険者のお話

俺の名前は伊藤和雄!

 

レベル二十五の冒険者だ!

 

司祭の水樹、魔法使いの恵、騎士の暗子とパーティを組んで、仕事に励んでいるぜ!

 

因みに俺は盗賊だ。

 

あらかじめ言っておくが、犯罪行為はしたことがない。

 

噂に聞くと、連続殺人犯が殺人鬼ってJOBになったりしたそうだ。

 

だから、盗賊である俺も、盗賊ですと素直に名乗ると、若干差別の目で見られてしまう。

 

まあ、あんまり気にしてねーけど。

 

そんなことより、今日も仕事だ。

 

アイテムボックス袋を手に入れたから、これでモンスター狩りだな!

 

 

 

冒険者ギルドに入る。

 

「割のいい依頼はー、っと」

 

「和雄ー、これなんてどう?」

 

「んんー?」

 

水樹が差し出してきたのは、ミューカストードの小規模な群れの退治依頼だった。

 

「おお、良いんじゃねえか?依頼料は低めだが、ミューカストードの肉と皮は高く売れるしな」

 

「じゃあ決まりね!」

 

ミューカストードはレベル二十ほどだ、俺達でもやれる。

 

 

 

街の城塞の外に出る。

 

ミューカストードは、天海街に面した川の上流にいるらしい。

 

盗賊は、斥候と似たようなJOBなので、敵の探知もできる。

 

いた……、ミューカストードだ。

 

 

 

まず、冒険者ってのは、大きなふるいにかけられる。

 

確かに、冒険者の中には、冒険者免許だけとってあとは街の中のお使い程度の仕事をこなす奴もいるが……、俺達のようにモンスターと戦う冒険者ってのは、まず、洗礼がある。

 

俺はまあ、冒険者になる前、世界崩壊前はニートだったが……、つまりは一般人。

 

最初の冒険者の洗礼は、モンスター殺しに慣れることだ。

 

モンスターは生き物だ。

 

見た目は、動物とあまり変わらないケースが多い。

 

攻撃すれば、痛がり、悲鳴を上げ、血を流す。

 

そんなモンスターに、元一般人が暴力を振るえるか……、と言うのが第一関門だ。

 

心優しい甘ちゃんやら、血が駄目なビビリ君はここでドロップアウトだ。

 

魔法や銃なんかで間接的に殺す奴はそんな辛くないらしいが、刃物や棍棒で殺すとメンタルがやられる。

 

俺は、自分で言うのもなんだが、ゲーム脳の元ニートだから、モンスターの血がドバドバ出ても「うわこのゲーム、グラヤベェな!」くらいにしか思わなかった。

 

 

 

「行きますよー!『ファンクション:ウィンドカッター』!!!」

 

やったか。

 

敵を探知するってのは大事だ。

 

最初に奇襲できると、戦い全体が楽になる。

 

盗賊にランクアップする前、俺は斥候だったが……、その時に『敵探知』スキルを習得していた。

 

JOBのランクアップは大体、20レベルごとに発生するらしい。

 

それはともかく、敵探知を使った結果、ミューカストードの数は五体と分かった。

 

今、奇襲して一体倒せたのはプラスがデカい。

 

『ゲコッ!』『ゲコゲコ!』『ゲコゲ!』『ゲコ!』

 

こっちに気付いたな。

 

だが、その射程なら……。

 

「恵、やれっ!」

 

「『ファンクション:ウィンドカッター』!!!」

 

『『ゲェ!!』』

 

更に二体仕留めた!

 

残り二体がこっちに到達したが……。

 

「私に任せろ!」

 

騎士、タンク役である暗子が盾で受け止める。

 

「良いぞ暗子!そのまま抑えてろ!オラァ!」

 

俺はアムドライトのバゼラード……、つまりはショートソードを抜く。

 

『ゲェッ!』

 

「次ぃ!」

 

『ゲァッ!』

 

即座にミューカストードの首筋を斬り裂いて倒す。

 

こんなもんか。

 

さて、解体だ。

 

 

 

冒険者に立ちはだかる第二関門は、倒したモンスターの解体だ。

 

生き物の皮を剥いだり、臓物を掻き出して肉を切り分けたりしなきゃならない。

 

殺すことはできても、死体をグチャグチャと解体しなきゃならないってのは厳しい。

 

俺も、まだ慣れない。

 

ただ、倒した時点でレベルは上がるので、単純にレベルを上げて警邏隊なんかに入るってことは可能だ。

 

しかし冒険者なら、解体はできなきゃならない。

 

 

 

俺は、戦いでは弱い分、解体が上手いんだ。

 

手早く解体して、先日買ったアイテムボックス袋に皮と肉を詰める。

 

それを背負う。

 

「暗子、怪我したでしょ、ほら、『ファンクション:ヒール』」

 

「ああ、水樹、ありがとう」

 

 

 

そして、冒険者への洗礼、第三関門は、自身への怪我である。

 

俺は盗賊なので、大きな怪我はしないが、それでも、モンスターとの戦闘をする冒険者は怪我をしやすい。

 

タンクの暗子は、いつも生傷が絶えない。

 

打撲や切り傷は当たり前、骨折や内臓破裂も。

 

そんな怪我をした時に冷静でいられるか。

 

また、次の戦場へ赴くことができるか。

 

このようにして、冒険者はふるいにかけられる。

 

 

 

三つの関門にてふるいにかけられた冒険者はもう、よくあるファンタジー小説のように、新入りにちょっかいをかけるような根性の曲がったバカはいなくなる。

 

他人の足を引っ張るような奴とは、誰も組んでくれないし、そう言うふざけた奴は他のまともな冒険者に淘汰されるからだ。

 

新人いびりだとか、そう言う素行の悪いことをしようとする奴とは、誰も組みたくないと仲間外れにするし、そう言う奴が命のかかった土壇場でちゃんと役割をこなせるとは思われない。

 

モンスターと戦える冒険者とは、グロ耐性とメンタルの強さがある。その上で、冒険者は、他人に信用されることも重要になる訳だ。

 

だから、不良ぶってるような奴や、極端に性格の悪い奴は、冒険者としてやっていけない。そんな奴らは即座に干されるからな。

 

 

 

冒険者ギルドに帰ってきて、依頼達成による依頼料と、ミューカストードの素材を売って、その代金を受け取る。

 

大体、俺達がやるような仕事での報酬は、依頼料とモンスターの素材料で、四十万円程か。

 

一人頭五万円で分け合う。

 

二十万円はパーティの運用資金として、貯金する。

 

そんな感じで週に二日活動。

 

贅沢しなけりゃ金は貯まる一方だ。

 

老後は高等遊民になるぞー!

 




ちなみに僕は飲めません。

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