「で、どうなんだ?ソレスタルなんちゃらの宣言で世間様は大騒ぎか?」
『まさか。事が大き過ぎて、どこも本気にしてないよ』
モニタに投射されたトライアさんと話し合うクロウ。
何でも、あのソレスタルなんちゃらの、イオリア?なる爺さんは、二百年前の凄い人って事が判明したらしい。
俺は酒瓶片手にこの世界の歴史や学問、宗教、文化などを調べるため、ネットサーフィンしていた。
「おい、旅人さん」
「ん、どしたの?」
「そのだな、このままソレスタルなんちゃらを追うか、日本に行くかって話なんだが」
「んー」
そう、だねえ。
「日本がいいんじゃない?」
「その心は?」
「まあ、ね、今まで色々な騒動に巻き込まれてきたけど、大体、特異点になるのは日本だよ。騒動の中心にいれば、対応しやすい。そうだろ?」
「成る程、な。俺にとって、騒動ってのは飯の種だもんな……。よし、決めたぜ。日本へ行こう」
と、日本行きが決定。
え、この世界、日本が二つあるの?
すげーなー。
そしてまあ、トライアさんとクロウと光子力やブラスタの動力について話し合いながら、空の旅。
『そういや、あんたのアルトアイゼンって、動力はなんだい?』
「普通に核融合だけど」
「へえ、じゃあ、モビルスーツに近いのか」
「そうみたいだね。うちは基本的に、核融合炉、相転移エンジン、縮退炉、エイハブリアクターにコジマ粒子、ソウルドライブなんかが使われてるね」
『うち?』
「あ、あー、その、昔の部下に技術者がいてね。その子から聞いた話だよ」
『……あんた、何者だったんだい?』
「ちょっとばかし、世界を救った事があってね……」
到着。
熱海……。
熱海についた。
熱海ならもう、やることは決まっている。
「クロウ、温泉に行こう!」
「おう!」
まずは移動で疲れた身体を休める!!
くろがね屋という良さげな温泉宿を発見。
そこにゴー。
「ふぁあ……、いいなぁ、温泉ってやつは」
「あったまるな……」
クロウと温泉。
昼から。
いかんいかん、ブルジョワ癖が中々に抜けないな。
「おや、兄さん達、見ない顔だな。旅人さんかい?」
おっと、知らない、強面の爺さんに話しかけられる。
「俺はそうだけど、今は故あってビジネスマン、かな?」
「俺も世界を股にかけるビジネスマンだな」
だるんだるんにリラックスした俺とクロウは、気安い調子で軽くコミュニケーションをとる。
「はっはっは、じゃ、ワシは上がるとするか。熱海はいい街だぞ、観光でもするといい」
「おー、爺さんも達者でなー」
「おお、お前さん達もな!」
と、爺さんと別れた後、イタチの安と名乗る従業員(明らかにカタギではない見た目)に、女将が嫌な予感がするってんで仕事を早めに切り上げるんだと言われた。
ふむ?
厄介事か?
「なあ、旅人さん。早速厄介事の匂いがするんだが」
「そうだねえ、今晩は飲まない方が良いかもね」
「チッ、日本酒、楽しみにしてたんだがな……」
夜。
二人部屋で一緒に泊まったクロウと駄弁りつつ、俺はネットサーフィン、クロウはテレビを見ていると。
案の定、何かが起きた。
「クロウ」
「ん、何か起きたか?」
「外見てみ?」
「………………あー、ありゃ、ロボット、か?」
「あっちのロボットはアフロダイA、光子力研究所のロボットだ」
「はぁー、成る程な。行くか」
「おう」
俺の手持ちの車に乗って、機体を収納してある倉庫へ移動。
機体に乗り込む。
出撃。
ほんの五分十分ほどだ。
『聞こえるか、光子力研究所のロボット!そちらを援護する!』
俺とクロウは、機体からオープン回線でメッセージを飛ばす。
『誰ですか?』
『通りすがりのお節介達ってところさ!さあ、来るぞ!!』
『……分かりました、援護、ありがとうございます!!』
てな訳で戦う。
なんだあいつはァ……。
うーん、そもそもの設計思想がモビルスーツなどとは違う、堅牢そうな機体。
鈍間そうなのが狙いどころか。
ん?
脳内の瞳を使う。
………………。
な、なんだあの、半分こオバケ。
え?何あれ?半分男半分女?
え?
正直言って気持ち悪い。
「「行くのだタロス像達よ!」」
なんだあれ、声が二重になってる。怖っ。
あれがこの、灰色の彫刻っぽい、鈍間そうなロボットに命令してんのか?
威嚇射撃しとこ。
「「何?!あのロボットはこちらに気付いたと言うのか?!」」
あっ、避けた。
うーん?
でもあれだな、指示出してんのはあの半分こオバケマンだろうけど、この操られてるロボット達が完全に指示待ちかどうかは分からんからな。
下手に司令塔を潰して、暴走されたら厄介だ。
大人しく戦おう。
『くっ、こいつは、硬えな!!』
苦戦するクロウ。
『クロウ!こいつらはAI搭載型の、指示されて動くタイプのロボットだ!それにどうやら、動きは鈍間みたいだし、多少隙が大きくても威力がでかい攻撃をぶつけた方が良い!!』
『おう!!』
と、言う訳で俺も火力を重視する。
俺の乗機、アルトアイゼンは加速力と頑丈さが魅力だ。
なら、それをフルに活かして……!!
『うりゃあ!!!』
加速して、蹴る!!!
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ー!!!』
おっ、中々のダメージになったんじゃないの?
『トドメだ!バンカー!!!』
腕部のパイルバンカーを叩き込む!!!
『◾︎◾︎◾︎◾︎ー!!!!』
よし、倒した!!!
……んだが、まだ10体近くいる。
『こりゃ、ちと劣勢だな』
と、愚痴るクロウ。
と、そこに。
「来い、甲児!!!」
『おじいちゃん!!』
ん?なんだ?
……ロボット、か?
『パイルダーーー!!!オォン!!!!』
『な、何だ?』
『ドッキングした?』
ふむ……。
その姿は、神か悪魔か。
「「おお!おお!あれは、ゼウス!」」
半分こオバケマンがゼウスと称する、鉄の城は。
『ロケット!!パァァァンチ!!!』
片方の拳を飛ばした。
はっ?
い、いやいや、人型なのに片腕飛ばすのはアドバンテージ潰れて駄目なんじゃ?素直に物理弾頭を撃った方が、って?!!
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!』
タロス像の胸に直撃した「ロケットパンチ」は、堅牢なタロス像の外部装甲をいとも容易くぶち破った。
は、はぁ?!
『何だそりゃ?!!』
『ふざけた威力だな……!!』
正に、スーパーロボット、だな。
『行くぞォ!マジンガーZ!!』
その、鉄の城、マジンガーZの活躍もあり、敵は退けられた。
かのように思ったその時。
「「ゼウス!ゼウス!ゼウス!!!オリンポスの裏切り者めええええ!!!!」」
半分こオバケマンが生身でマジンガーZに殴りかかってきた。
お、おおう、凄えな。昔会ったBF団の人達みてえだ。
『馬鹿な、生身で……?!』
クロウの驚愕も無理はない、こんなこと、まともな人類にはできない。
つまり、あいつはまともな人類じゃねーってことよな、逆説的に。
……まあ、俺もやろうと思えばできないことはないけど。
「やめろ、あしゅら!!!!」
「「こ、この声は……!!」」
次はなんだ?
「「Dr.ヘル様!!!」」
うっわーーー!!!
あ、あからさまに悪の科学者っぽいやつだーーー!!!
もうむり。
確実だもん……、確実に悪党だもん……。
肌が青いなんてもうその時点で悪党でしょ、デスラー総督と一緒だもんよ。
それで、十蔵……、あ、あの爺さん、昼に会った強面の爺さんじゃん、科学者だったのか。それと、その、Dr.ヘル?とか言う人?が言い合いをして、Dr.ヘルが世界征服が目的だと宣言。
『いや、それは良いけどさ、あんたが世界を征服しても、人々が幸せになるビジョンが見えてこないんだが』
「何だと?人々を幸せに、だと?馬鹿め!!そんなことのためにこのDr.ヘルが世界征服を目指すと思うか?!!」
俺も世界征服っぽいことしたけど、みんな幸せになれたよ?
『いや知らんけど……、展望が見えてこないんだよね。世界征服しようってんなら、みんなが幸せになれなきゃ駄目じゃん。世界征服をして何をしたいのか、って目標がちゃんとないといけない訳でしょ?良い歳なんだからその辺ちゃんと考えたら?世界征服はカッコつけでやることじゃないんだよ?』
「グヌヌヌヌ!!貴様ァァァ!!!ええい、やってしまえ、ガラダK7!!ダブラスM2!!」
そう言って、機械獣を嗾けてくるDr.ヘル。
ええー?
『クロウ、俺、なんか間違ったこと言ったか?』
『正論は時に人を傷つけるんだぜ』
成る程なー。
『『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!!』』
『うおおおお、待って待って、強えぞこいつら!』
『くっ!行くぞマジンガー!!!』
『『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!』』
『効かない?!』
不味いな、マジンガーでも駄目か。
「来い、甲児!!!」
その時、十蔵爺さんがマジンガーZのパイロット?を呼ぶ。
何でも、レクチャーするとのこと。
『じゃあその、練習時間は俺達が稼がないとな』
と、クロウ。
『時間も金も稼がなきゃならないなんて大変だねクロウ君』
『あんたも戦うんだよ!!』
はいはい、わかってるよ、ジョーダンジョーダン。
何でも、マジンガーZには、まだ隠された力があるらしい。それをレクチャーされている間に、俺達が時間を稼ぐ訳だ。
『で?ええと、ガラクタ?だっけ?』
「「ガラダK7だ!!!貴様はDr.ヘルがお創りになった機械獣を侮辱する気か?!!」」
『ああ、いや、このアルトアイゼンも直訳すれば古い鉄って意味だしな。つまりこう言うこと。ガラクタ同士仲良くしようぜ!!!』
「「くうっ?!!ちょこまかと!!!」」
『クロウ!ガブラスとか言うのは任せた!!』
『おう!!』
俺もクロウも、機動力で撹乱した。
機械獣ってのの攻撃は大振りで早々当たらねえなァ?!!
そうしている間に、事態は好転する。
『やはりテロリストがここに……』
『これが、ヴェーダでも不確定要素とされた、Dr.ヘルか……』
例の、ソレスタルなんちゃらのガンダムだ。
『ありゃ、ガンダムってやつか?味方なのか?!』
クロウが言うが……。
『多分大丈夫じゃね?あらゆる戦いに武力で介入するんだろ?じゃあ、手ェ貸してくれんでしょ、っと掠ったァ!!』
『成る程、なぁ、おっと危ねえ!!』
回避しながら会話。
我ながら器用な真似してるなと思う。
そして、数分時間を稼ぐと。
『待たせたな!さあ、行くぞ!ブレストォ!!ファイアアアアア!!!!』
『『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!!』』
「「ぬうっ?!ガラダK7とガブラスM2がっ!!お、おのれ、ここは退くしかない!!覚えておけ、マジンガーZ!!!」」
っと、撤退してくれた、かぁ。
『任務完了、撤退する』
『行こう、ティエリア』
ガンダムは撤退。
『ふ、ふぅ、終わったよ、おじいちゃん!おじいちゃん?……おじいちゃん?!』
マジンガーは……。
観たところ、爺さんが亡くなったようだ。
怒りに燃えるマジンガーのパイロットは、奴らを追うと言っている。
『まあ待ちなよ、今のまま行っても勝算はあるのか?無駄死にするのが一番、おじいちゃんは悲しむんじゃないのか?』
と、説得してみたが。
『あんたがおじいちゃんを語るんじゃない!黙っていてくれ!俺は行くぞ!!』
聞く耳持たず、か。
だが、ここで行かせちゃ確実に死ぬからなあ。
みんなで説得。
『くそっ、くそぉぉぉぉぉ!!!』
何とか、思いとどまってくれた、か。
その後、宿で。
「ところでクロウ。その、さっきの爺さんを生き返らせるのとかって反則?」
「……旅人さん、あんた、言っていい冗談と悪い冗談が」
「よいしょ」
ブルーシートを敷いて、自分の心臓を取り出してみせる。
「うおおおおおおお?!!!」
「かっは、これで……」
『エリスの癒し』
魔法で回復。
「と、このように、俺は魔法が使えるんだけど」
「は?……はぁ?」
「だから、魔法で生き返らせることが」
「………………にわかには信じられねえが、分かった。でも、駄目なんじゃねえか?そういうのは、生命の冒涜だ。死んだ人間が生き返るなんてこと、あっちゃならねえよ」
「……成る程、そういうものの見方もある、か。じゃあ、仮にクロウが死んでも……」
「ああ、そのままにしておいてくれ」
「……分かった。蘇生も一種の治療、インフォームドコンセントが大事」
ということになった。
あー、早く艦娘出したい。