ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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空挺ドラゴンズ、面白いな。


86話 冒険者対BIG4 中編

私、五条院椿は、『黄昏の魔女』である。

 

けれど、そんなものは、BIG4の前では何の意味もありませんわ。

 

「『黄昏の魔女』、五条院椿さんか。とても素敵な人だね、驚いたよ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

私の相手は、『アルスマギカ』、アーノルド・ガルシアさんだった。

 

究極の大魔導師……。

 

 

 

何より恐ろしいのは、その力が全く読めないところです。

 

私達、魔導師は、ステータスには記載されていませんが、相手を見ればどれ程の魔力を持つかを察することができるのです。

 

魔力は万物に宿ります。

 

老人から小さな子供にも一定の量の魔力があり、草木や動物、虫にすら魔力はあるのです。

 

あまり大声では言えませんが、私ほどの魔導師にもなれば、相手の得意とする属性や、苦手な属性なども何となくわかります。

 

しかし……、BIG4からは、魔力が一片たりとも感じられないのです。

 

草木や虫にすら宿る魔力が、全く、一切感じられない。

 

それが、本当に恐ろしい……。

 

「あの、もしもーし?」

 

「へあっ?!あっ、あ、はいっ!」

 

「そろそろ始めようか、かかっておいで」

 

「い、行きますっ!」

 

ああ、始まってしまう。

 

こうなったら仕方がありませんね、せめて、無様な姿を晒すことのないように、力を出し切りましょう。

 

「焔火よ、燃えよ!『ファンクション:リムファイア』!!!」

 

三千度を超える熱線ですわ!

 

これで様子を見る……、なあっ?!!!

 

「ふん」

 

す、素手で弾いた……?!

 

「おいおい、様子見はやめなよ、全力でやった方が良い」

 

「〜ッ?!!『ファンクション:コロナボム』!!!」

 

軍用プラスチック爆弾を超える威力の爆轟を放つ!!!

 

「目眩しかな?」

 

効いてないのは想定内ですわ!

 

「太陽よ、遍くものを照らすものよ、地に墜ちたまえ、焼き尽くしたまえ!『ファンクション:プロミネンス・ノヴァ』ッ!!!!」

 

魔法で作り出した小さな太陽をぶつけます……、殺す気で。

 

殺す気でやらないと、殺されるかもしれませんから。

 

死んでも恨まないでくださいね……!

 

「へえ!やるね!じゃあ、僕も少し見せようかな。『プロビデンス:クリエイトマジック』、『プロビデンス:燎原の火』」

 

「なっ……?!!!」

 

黄金の火球……?!!!

 

ああっ?!!!

 

アーノルドさんの黄金の火球は、みるみるうちに膨れ上がり、私の太陽を『燃やした』!!!

 

火を燃やす炎?!あ、あり得ないっ?!!!

 

でも、どの道、もう打つ手がないわ……。

 

「こ、降参です!」

 

「素晴らしい、黄昏の魔女とは名前に負けてなかったね!グッドゲーム!」

 

は、ははは……。

 

グッドゲーム。

 

ゲーム、ですか。

 

最強の魔導師にとっては、この程度、ゲームなんですね。

 

ああ、本当に……。

 

「恐ろしい……」

 

 

 

次の試合です。

 

劉飛龍(リィウ・フェイロン)……、中国の、『九頭龍』と呼ばれる冒険者。

 

「BIG4最強の剣……、是非味わいたいところデス、一手、稽古を頼みまス」

 

狐のように細い目、爬虫類のように大きな口、黒の長髪を後ろで一つに結び、中華風の赤い服を着た小柄な男性。

 

飛龍さんの膨大な魔力が稲妻のように迸ると、飛龍さんの手には、片刃の中華剣が握られていた。

 

噂に聞く、『九頭龍』の『武器創造』スキル……!

 

「キターイェツ(中国人)、貴様、稽古などと思うな。殺しに来い」

 

対するは、セラフィーマ・ポチョムキナさん。

 

少し癖のある黄金の美しい髪、大きな胸、背も高い、抜群のプロポーションに、凛とした佇まいの美女。

 

一瞬だけ放たれた魔力、そこから、様々な剣を創り出して、周囲に滞空させる。

 

あれが、最上級レアスキル、『剣操術』……?

 

「行きまス」

 

……っ!

 

は、速い!

 

私の目には、殆ど捉えられませんでした!

 

「ちぇえいやぁ!!!!」

 

あまりにも速い踏み込みから、身体ごと回転させ、遠心力を込めた強烈な一撃を放つ飛龍さん。

 

「『ファンクション:護衛剣』」

 

それに対して、太めのグラディウス二本を即座に創造して、ハサミのように交差させ、飛龍さんの一撃を受け止めたセラフィーマさん。

 

返す一撃で、音速ほどの勢いで短剣数十本を飛ばすセラフィーマさん。

 

まあ、音速ほどの攻撃であれば、我々冒険者ならば簡単に対処可能です。

 

「『ファンクション:六尺棒創造』」

 

鉄棒を生み出し、回転させ、短剣の弾丸を防いだ飛龍さん。

 

「『ファンクション:武装変幻』」

 

そして、棒の先端に穂先を創り出して、槍にする。

 

「しぇい!はあっ!」

 

鋭い突き……、私のような術師タイプでは、あそこまで接近されれば打つ手はない。

 

当たった!

 

「『ファンクション:肋剣』」

 

と、思いきや、恐るべき速さで、肋骨のように剣を創造して、突きを防いでいたセラフィーマさん。

 

「バカな!早過ぎル!」

 

そう……、創造のスピードが余りにも早過ぎるのだ。

 

飛龍さんが武器を創造するのに必要な時間は大体二、三秒。

 

しかし、セラフィーマさんの剣の創造は、反応できないほど早い。

 

「オオおっ!!!」

 

飛龍さんが吼える。

 

そして、武器を槍から三節棍に変化させ、セラフィーマさんの頭上から襲いかかる。

 

しかし、セラフィーマさんは、それを、迫り来る三節棍ごと蹴り上げる。

 

「があぁっ!!!」

 

ステラダイトの三節棍はへし折れるが……。

 

「まだだッ!『ファンクション:武装変幻』!!!」

 

折れた三節棍を即座にトンファーに変形させ、今度は低い位置からすくい上げるように打撃を放つ飛龍さん。

 

「よく動く……」

 

けれど……、その打撃も、まるで足蹴にされるかのように、足の裏で受け止められる。

 

否、セラフィーマさんは、打撃を踏んで後ろに飛んだ。

 

そして、セラフィーマさんが着地した時には、飛龍さんは既に、武器を戟に変化させていた。

 

「はあああああっ!!!『ファンクション:崩龍突破』ァ!!!!」

 

す、凄い……!

 

古来から、中国では、龍は権力者の象徴であり……。

 

「水神、か」

 

水神でもある。

 

相当量の……、それこそ、船舶を転覆させるほどの大瀑布を降らせて、水を集め、ぶつける。そう言う技だと思います。

 

こんな圧倒的な質量……、剣を即時に創造しても防ぎきれない!

 

「ほう、やるな、キターイェツ。ならば、私も少し力を見せようか。『プロビデンス:地獄のオルフェ』」

 

その瞬間、巨人が大瀑布を切り裂いた。

 

いえ……、あれは、ただの巨人ではありません。

 

膨大な、それはそれは膨大な数の剣の集合体!剣で作られた巨人!

 

五百メートルはあろうかと言うそれが腕を振ると、大瀑布はズタズタに斬り裂かれ、霧散しました。

 

セラフィーマさんは葉巻に火をつけて、一言。

 

「まだやるか?」

 

飛龍さんは、倒れたまま、一言。

 

「……降参デス」

 

 

 

恐ろしい戦いでしたね……。

 

あ、次の試合が始まるようです。




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