ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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デブだから北斗の拳の悪役みたいな感じで骨付き肉を齧ってる。


97話 アメリカ、動く

色々ありまして、世界崩壊から一年と三ヶ月。

 

今は五月だ。

 

この三ヶ月で、運送会社ガーベージを開業したり、天海街のマスメディアを牛耳ったり、魔法インターネットを作ったりと色々やった。学院も作った。

 

まあ、暇は潰せた。

 

永遠の命を持つものとして、無聊を慰める手段は多ければ多いほど助かる。

 

故に俺は、冒険者の支援をして、冒険者の生活を良いものにして、冒険者が戦うのをこっそり魔法で見て暇つぶしをしている。

 

週に三日の喫茶店も、無心で料理するのは楽しいから好きだし、休日に街で遊ぶのも楽しい。

 

天海新聞社に命じて様々な本を書かせるのも楽しいな。

 

ここ最近は、ダンジョンの出現も落ち着いてきていて、超高レベルダンジョンの間引きも月一で充分になってきた。

 

俺達、チームクズのレベルも100でカンストしたらしく、最近はレベルが上がらない。

 

チームクズは、人間のままレベルを100まで上げて、人間の上位種である『超越者』になって、超越者レベル1に転生したのだが、超越者のレベルが100になるとそこで打ち止めみたいだ。

 

ところで、話は変わるが、今の貨幣制度がどうなっているか話したいと思う。

 

今の貨幣制度は、全世界が、金本位制ならぬ、『ミスリル本位制』になっている。

 

日本円で例えれば、十万円で百円玉ほどのミスリル硬貨一枚と同じ価値を持ちますよ、と言う制度だ。

 

このご時世、国よりもミスリルの価値の方が信用できるって訳だな。

 

各国、暗黙の了解というか、水面下の会議と言うかで、ミスリル硬貨はデザインは違えど重さは一枚4.0gで、その価値は大体十万円くらいと定められている。

 

一般家庭では、トレントから作った紙に印刷された紙幣が世界各国それぞれで利用されているが、紙幣は一万円まで。

 

高額な取引では、ミスリル硬貨やミスリル延べ棒を使うことになっている。

 

ミスリルの量により通貨の発行量が左右されるから柔軟性に欠けるし、貿易で赤字を出すと不味い……、のだが、ミスリルはダンジョンで無限にとれる。

 

しかし、ミスリルは、最高ランクの冒険者が高難度ダンジョンから拾ってくるレアメタルなので、実質的には有限と見て良いだろう。

 

ええと、つまり何が言いたいのかと言うと、『ミスリルがあれば、高ランク冒険者に依頼ができる』ってことだ。

 

『ミスリルの価値は万国共通』だからな。

 

ああ、すまない。

 

回りくどかったな、俺はついついそう言う……、何というか、遠回しな話をしてしまう。

 

今何が起こっているのか?

 

それを簡潔に話そう。

 

 

 

事の始まりは五月中頃のある日。

 

日本は全国的に暖かく、晴れ模様。

 

春も終わり頃、適度な日差しと涼風の吹く日に、ミスリルランク冒険者に向けた依頼が張り出された。

 

報酬はミスリル延べ棒一本、日本円にして約二千五百万円の仕事だ。

 

戦闘が入る仕事は十万円から、一流冒険者への指名依頼は百万円から、と言うところに、指名依頼でもないのに二千五百万円とは驚きの値段って訳よ。

 

しかも、移動にかかる費用、食事代、全てが支給される。

 

こんな依頼を受けたら、そりゃあ「ぼろ儲け」ってやつだ。

 

だが……、大抵は、悪魔は天使の顔をして現れるもの。

 

そんなうまい話はないだろうと、当然、みーんな警戒していた。

 

しかし、そう、しかしだ。

 

その依頼の依頼主のサインを見て、誰もがぶったまげた。それと同時に納得もした。

 

依頼主の名前は『ハロルド・チェス』……、アメリカ合衆国大統領、だ。

 

大統領閣下直筆のサイン!

 

そして、依頼内容は、『ヒューストンにある石油プラント及び加工施設の奪還』とある。

 

どういうことか?

 

簡単な話だ。アメリカ人がだーい好きな黒い液と言えば、コーラか石油の二択なのは小学生でも知っている話だよな?

 

ヒューストン。ヒューストンには、石油採掘プラントがあるんだよ。

 

こんなご時世、政情が不安定な石油産出国は、光の速さでぶっつぶれた。

 

なんとか、アラブの王族が独裁政治で国家を支配しているが、それもいつまでもつのやら……、って感じらしい。

 

つまり、石油は今後、手に入るかわからないって訳だ。

 

けどよ、アメリカだぜ?

 

あの広大な国土では、ラスプーチンのペニスのように長い道路を移動するのに必要なのは車だ。

 

車の燃料は?

 

石油だな。

 

それだけじゃない。

 

中西部に広がる広大なグレートプレーンズを耕すための耕運機の燃料は?

 

石油だ。

 

ミシガン州、イリノイ州、ウィスコンシン州。厳しい寒さの土地を暖めるのに必要なストーブの燃料は?

 

当然、石油。

 

挙げればキリがない。とにかく、アメリカの大地で生きるには、石油が必要不可欠なんだ。

 

ヒッピーのようにインディアン的な生活をしようったって、今更無理さ。

 

とまあ、なんだかんだ言ったが、つまりは石油。アメリカは石油が欲しいんだ。

 

欲しくて欲しくてたまらない!

 

アソコが濡れ濡れの未亡人みたいに欲しがってるのさ。

 

 

 

さて……、そんな依頼が、どうして日本の天海街に張り出されているのか?

 

答えは簡単。

 

天海街は、冒険者世界の中心地だからだ。

 

天海街は……、いや、日本は、外国で現れるはずのモンスターも、亜人も、全てがそこにある。

 

日本では、ありとあらゆるモンスターが出現するのだ。

 

傾向があるんだ。アジアではアンデッド系、ヨーロッパでは爬虫類系、アメリカでは獣系……、と言った風な。

 

もちろん、百パーセントそうって訳ではない。

 

アメリカにも爬虫類系は出るが、まあ、六割くらいは動物系なんだ。

 

しかし、日本では、狭い国土に圧倒的なダンジョン数があり、アンデッド、獣、爬虫類、竜種、巨人、悪魔……、とまあ、なんでも出る。

 

なんでも出る、となると、素材が集まりやすいってことだ。

 

さらにもう一つ。

 

天海街には、天海ポータルゲートがある。

 

天海ポータルゲートは、天海街と世界各地を結ぶワープゲートだ。

 

これがあるから、好きなところに移動できる。貿易の中継地なのだ。つまりは国際ハブ港だな。

 

故に、冒険者以外にも人が集まるわ集まるわ……。

 

とにかく、天海街は世界の中心と言っても過言じゃないんだわ。

 

現在の世界の中心地に、元世界の中心地からのオファーが来た、ってこと。

 

実に面白い話だな。

 




しばらくヒューストンの話。

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