ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ダイエットするか。


104話 グリーンベレー

「隊長〜!冒険者の連中、美味そうなもんを食い始めましたよ?!」

 

この小隊で一番のお調子者のマイクが、トーマス小隊長に陳述する。

 

それは、やたらと芝居がかっていて、一昔前のハリブット映画に出てくるお調子者の黒人のような大袈裟さがあった。

 

マイクは、見た目は厳つい黒人で、自分の見た目にコンプレックスがあるようだ。

 

別に、ゲイのオカマって訳じゃないんだが、小動物と甘いものが好きで、日本のテレビゲームなんかが好きだそうで、厳つい黒人の自分があまり好きじゃないんだろう。

 

子供にも、少し近づくだけで怖がられてしまう。それが相当に嫌みたいだな。

 

だからあえて、道化を演じて、人当たりを良くしている。

 

マイクはそんな男だ。

 

悪い奴じゃない。

 

だが、模範的軍人のトーマス隊長にそれを言うのは迂闊だった。

 

「マイク一等兵、お前は一般市民の物を欲しがるのか?」

 

「いや、そういう話じゃないですよ?!ただ、俺達はここで、冷めたレーションを齧りながら見張りをしてるのに、冒険者の連中は……」

 

「マイク一等兵」

 

「……はい」

 

「彼らは、守るべき市民だ」

 

トーマス隊長はそう断言した。

 

しかし、この言葉には、マイクだけじゃなく俺も、他の皆も異議があった。

 

「市民?戦場に来た以上、彼らも兵士として扱うべきだと思いますが」

 

そう言ったのは、この小隊の唯一の女性隊員、クレアだった。

 

クレアは、軍人に、それもグリーンベレーに進んでなるような、気の強い女だ。

 

美人ではあるが、彼女と付き合えば確実に尻に敷かれる。それを分かっている俺達は、彼女にアプローチをすることはなかった。

 

だが、それは彼女の人格を否定している訳ではなく、良き同僚であり、良き友人であることは間違いない。

 

「クレア一等兵……、君もか」

 

「彼らは謂わば、PMC(民間軍事企業)のようなものでしょう?見張りにも参加せずに酒盛りを始めるだなんて、軍紀の面から見れば最悪です!」

 

そう、俺もそれを言いたかった。

 

兵士として戦場に来た癖に、民間人として振る舞う。

 

都合の良い時だけ民間人だなんて、正義に反する行いだ。

 

「それは……」

 

隊長が口籠る。

 

当然だ、今回の主張は俺達の方が正しい。

 

グリーンベレーの俺達が、PMC未満の連中と共同戦線?

 

冗談じゃない、俺達にだって兵士としてのプライドがある。

 

「お前らはグリーンベレーの栄ある兵士だ。兵士が、上官の、ひいては大統領の指示に背くことなどあってはならん!」

 

「……ッ!」

 

それを言われたら、何も言えなくなる……。

 

 

 

と、その時。

 

「なんだか、随分と冒険者を舐め腐ってるようだが、守ってもらっているのはお前らの方だぞ?」

 

声が響いた。

 

俺の真後ろからだ。

 

俺が勢いよく振り返ると、そこには……。

 

「ヨシタツ・ハザマ……!!!」

 

生ける伝説、最強存在、チーム廃棄物のリーダーにして、時空の全てを支配する者。

 

ヨシタツ・ハザマがそこにいた。

 

……手には、たくさんのハンバーガーを抱えて。

 

「ほら、そこの小隊長。あんた宛の命令書だよ」

 

そう言って、目の前の空間が蜃気楼か何かのように歪み、そこから飛び出た書類が、トーマス隊長の顔面に張り付いた。

 

「っぶ?!……なるほど」

 

隊長は、顔に張り付いた書類を引き剥がし、目を通す。

 

それを、隊員全員に見せる。

 

「大佐からの指令書だ。我々が殺害したモンスターの素材の一部を、冒険者ギルドに譲渡する代わりに、屑籠屋での飲食権や一部の物資の融通をする契約を結んだそうだ」

 

それって……!

 

「じゃあ、ここに置いていくから。赤い包みがエビカツサンド、黄色い包みがチーズバーガー、緑の包みがベジミートバーガー。こっちはポテトとコーラ」

 

Mr.ハザマは、料理を籠ごと俺に押し付ける。

 

「へへっ!やったぜ!チーズバーガーいただきぃ!」

 

マイクは、すぐにチーズバーガーを手に取って齧り付いた。

 

だが、それより、俺は気になっていた。

 

Mr.ハザマの最初の言葉についてだ。

 

「Mr.ハザマ、先程の言葉は?」

 

隊長が訊ねる。

 

「ん?ああ、ほら……」

 

すると、Mr.ハザマは、放棄された自動販売機に近づいて……。

 

「おらっ」

 

蹴りを入れた。

 

何を……?

 

俺達が、彼のその行動を訝しんだ、その瞬間。

 

「い、痛ーーーッ!!!何するんですか、羽佐間さん?!!!」

 

その自販機は、煙と共に、一人のニンジャになった。

 

「ニンジャ?!ニンジャナンデ?!!」

 

マイクが驚きの声を上げた。

 

変わり身・ジュツ?!ニンポーってやつか?!

 

「こいつは、あんたらのお守りだよ」

 

Mr.ハザマはそう言って、日本人らしきニンジャの襟首を、子猫を運ぶ母猫のように吊り、こちらに見せつける。

 

「ちょっ、それは秘密なんですが?!」

 

「良いじゃん別に」

 

「いやいや!グリーンベレーの皆さんもプライドがあるでしょ?!素人である我々に守られてたとか……、あ?!」

 

そんな……、まさか……?!

 

俺達はずっと、このニンジャに見守られていたのか?!

 

「それだけじゃねえぞ、今も、最前線でまだ戦っている奴が何人もいる」

 

「そ、そんな訳」

 

「いやいや、おかしいと思わねえのか?モンスターが夜に攻めてこないとでも?」

 

「そ、それは……」

 

「夜は忍者部隊が前線で戦ってるんだよ。あんたらは、それに気付いてないだけだ」

 

「だったら!あいつらはなんなんだ?!酒盛りをしてるんだぞ?!」

 

マイクが指を刺しながら叫んだ。

 

彼の指先には、酒盛りするアジア人の集団がいる。

 

「ん?ああ!お前らは知らないのか」

 

そう言うと、Mr.ハザマは、酒盛りする奴らを呼び寄せる。

 

「何デス?」

 

「火行煉丹について聞きたいらしいぞ」

 

「オ、ご興味がお有りデスか?」

 

細い目を更に細めて笑うチャイニーズ。

 

「コレは、『火行煉丹』言いマス。我々、『武侠』や『道教師』『功夫師』なんかが使うスキル、『煉丹術』デスね」

 

レンタン?

 

「まあ、簡単に言えば、『気功』デスよ。我々は、食い溜めができる訳デシテ。更に言えば、酒は効率の良いエネルギー源で、それでいて『火行』の力が強いのデスよ」

 

つまり……。

 

「まあ、飲み食いするのも仕事の内ってコトデス。ワタシの場合、食事を三十キログラムと、酒を二十リットル飲みました」

 

そんな馬鹿な……。

 

「あ、私は『巫女』です。『巫女』『神主』『修験僧』『侍』『忍者』辺りのジョブは、身体に神を降ろす『神降ろし』と言う系統のスキルがありまして」

 

神降ろし?

 

「神降ろしは、日本神話の神々の力をお借りして、自己を強化するスキルなんですけど、その為にはお神酒……、お酒を奉納する必要があるんです。そして、奉納の仕方は、私達が美味しくお酒を飲むことなんですね」

 

そんな、馬鹿な!!!

 

「い、いえその、本当なんです。私は今日、たくさん神降ろしをしましたから、その分たくさん飲まなきゃいけなくて……。十リットルくらいは飲んだかなあ?」

 

 

 

「さて、こんなもんでいいか?」

 

Mr.ハザマは、携帯端末を弄りながら言った。

 

「あんたらは、冒険者をPMCと称したが、冒険者からすればあんたらがお荷物なんだよ。お荷物のあんたらがここにいる理由は一つ」

 

一息ついて……。

 

「『アメリカ』の国体の為だ」

 

と言い切る。

 

「冒険者に全部任せた方が早いのに、正規軍のあんたらがいるのは、『正規軍と冒険者が協力して土地を奪還した』という大義名分の為。あんたらは、戦力としては一切期待されてないんだよ。だから……」

 

Mr.ハザマの姿が消える……。

 

それと同時に一言。

 

「精々、邪魔しないようにしろよ」

 




今、クッソ雑に技術チートしながら亜人ハーレム作る話書いてます。つまりはいつものですね!

言語学部卒のおじさんが異世界転生する話。

世界観は、五歳になるとユニークスキルを一つもらえるのと、亜人が少数民族で見つかり次第奴隷にされるのを除けば、十二世紀前後のヨーロッパって感じ。

そこで主人公は、知りたいことを何でも知れる『回答者』というスキルを授かり、それを使って技術チートしていく……、みたいな。

技術チート!領地運営!なろうの定番だよなあ?

なお、この世界の人間は古英語を話す。そして亜人はドイツ語やロシア語などを話す。それにより、人間は亜人のことを言葉が喋れない家畜と思っている。だが、言語学部卒の言語に自信ニキである主人公は亜人の言葉を理解していて……?みたいな。


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