……あなたは7時間眠った。
夢の中で、あなたは偉大なる者の穏やかな威光に触れた。
《うみみゃあ!調子はどう?どう?》
……どうやら、この『ハルケギニア』でも、神の威光が届くらしい。
基本的に複数の神に鞍替えしてきた浮気性なあなただが、信仰の気持ちは本物だ。
そして、今あなたの信仰する神とは、降臨させて料理を振舞ったりスパーリングをしたりなどする仲だ。
だが、あなたは最早神よりも強い。
なので、基本的には孤独だ。
あなたに寄り添うのは愛するペット達くらいのものだ。
たまに、知り合いの、白髪の旅人が現れることもあるが、これは余談だろう。
「んぅ……」
ふと、隣を見ると、ピンクの少女、貴族の『ルイズ』がベッドに潜り込んでいるではないか。
ふむ、友好度を上げた覚えはないが……。
そんなに気持ちいいことがしたいのだろうか?
知り合いの旅人が言っていた、ピンクは淫乱とはこのことか。
取り敢えず起こしてやろう。
あなたは手持ちのホイッスルを吹いた。
「ほえっ?!何?!何事?!」
ルイズは、間抜けそうな顔をして跳ね起きた。
あなたは、フランクに、やあ、と声をかけてあげた。自分の紳士さに涙がちょちょぎれそうになる。
「えっ、えっ、誰?」
驚いた、もう契約内容を忘れたのだろうか?
「あ、そうね、そうだったわね、使い魔よね」
しかし、ルイズはすぐに正気を取り戻したようだ。『混乱』状態だったのか、『朦朧』状態だったのだろう。
ホッとしたあなたは、早速気持ちいいことをしてやろうと酒を取り出した。
「ねえ、水」
すると何故か、寝ぼけたルイズは水を要求してきた。
しかし、水は貴重品である。ポーションでも良いだろうか。と、あなたは提案する。
「は?いやいや、飲むんじゃなくて顔を洗うのよ」
成る程。しかし、流石は貴族の子供だ。貴重な水を気安く使えるとは。
「井戸があるから、桶に汲んできて」
井戸?
良いのだろうか、井戸の水なんて十中八九汚染されているのに。
「汚染?何それ、あんたのいた街では疫病でも流行っていたの?」
疫病……、あの忌まわしいエーテル病を疫病と言い切って良いのかは分からないが。
「そ、大変なのね。でも、トリステインではそんなとこないから安心なさい」
何ということだろうか。この国では汚染されていない水が気安く手に入るそうだ。
あなたは、後で空き瓶に目一杯水を詰めようと心に決めた。
「ん、次は着替えね」
着替え?
この各種耐性を揃えた軽鎧が悪いのだろうか?自慢の一品なのだが。
「あんたのじゃなくって私のよ」
成る程、装備が欲しいのか。と、あなたは理解する。
確かに、駆け出し冒険者のようなゴミ装備しか持ち合わせていない模様。
護衛するにも最低限の自衛はしてもらわないと面倒だ。
あなたは、余り余ったゴミ装備の中から、ある程度耐性が揃ったものを取り出し、ルイズに着せた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!何よこれ!」
何と言われても、装備品だが。
「こっちの服を着せなさいって言ってるの!!」
そのようなエゴ付きですらないゴミ装備に一体何の価値があるのか、あなたには分からない。
「性能じゃないの!制服なのこれ!」
制服?そのゴミが?
「ゴミとか言わない!」
ところで、脱がせて欲しいというのは直訳して気持ちいいことをしたいということで良いのだろうか?
「なぁに言ってんのよこのバカーーー!!!」
何故か逆上したルイズは、近場にあった鞭で殴りかかってきた。
そして、ルイズの近接攻撃がヒットした瞬間。
「痛っ?!」
ルイズの腕に切り傷が現れた。
「血、血が……!何よ、これ?!」
あなたは、あなたの装備は『相手に切り傷を与える』と説明した。
「くうっ、その鎧もマジックアイテムって訳ね」
さて、それで気持ちいいことの件についてだが。
「バカ!もう良いわよ!着替えさせなくて!この変態!とっとと保健室に行って薬でも……、いや、あんた、メイジなんでしょ?治して!」
あなたは、メイジではなく冒険者だと宣言し、その後癒しの手の魔法を唱えた。
「……うん、傷跡も残ってない!あんた、意外と腕のいいメイジね!」
それで、気持ちいいことの件についてだが。
「うるさい!自分で着替えるわよもうっ!」
おおっと、部屋から締め出されてしまった。
「あら?あなたは……?」
外に出ると、赤髪の女に話しかけられた。肉付きも良く食べてよし犯してよしと言った見た目だ。
そう言えばそろそろ空腹だな、よし、今日はステーキにしよう。
「なっ、何よぉ、何で急に武器を抜くの?!」
あなたは、自分が空腹であることを伝えた。どうせなら恐怖を煽り嬲り殺しにした方が楽しいと思ったからだ。
あなたは、強者と戦うのも好きだが、弱者をいたぶり殺すのも大好きだ。
「?、あなたが空腹なことと、武器を抜くことに何の関係があるの?」
え?と、間の抜けた声が出てしまった。
もしかしてこの女は、自分が解体されて食べられると思っていないのか?と、あなたは考えた。
「……あっ、もしかしてこのフレイムを食べるつもり?!やめて!」
赤髪の女は火蜥蜴を庇うように前に出た。
最初からあなたのターゲットは女の方なのだが……。
「全く、あいつは……」
「あ!ルイズ!あんたの使い魔がうちの使い魔を食べようとしてるんだけど?!」
「……は?」
そんなことをしていると、ルイズが部屋から出てきた。
「何やってんのよあんたは……」
あなたは、『火蜥蜴には』危害を加えるつもりはないと告げた。
ただ、そこの赤髪の女を食べたいだけだと、しっかりと主張したのだ。
「は?あんたねぇ!!!」
「あーら、お目が高いわー!ヴァリエールなんかより私の方が良いってことねー!モテる女は辛いわー!辛いわー!!」
大騒ぎだ。
「ぐぐ、さっき私を襲おうをしたのは何だったのよ!!」
それは誤解だ、そちらが先に犯してくれと擦り寄って来たのだろう。あなたの世界では、寝床を共にして遺伝子を残すには相応の友好度がなければできない。
それなのに、このルイズは、いきなり同じベッドに入ってきたのだ。これは犯してくれと言っているようなものだ。
「うわぁ、大胆ねヴァリエール。殿方と同衾だなんて」
「ち、違っ、それは、その、こいつのベッドがふわふわだったからつい!寝ぼけて!」
「ヴァリエールのスケベー」
「う、うるさーい!」
取り敢えず、食事にしたいのだが。と、騒ぐ二人に告げる。
「食事ぃ?まあ、良いわよ、ついてらっしゃい」
そう言えば食事はルイズが手配してくれる、だったか。
好物である人間の少女の肉は出るだろうか?
結論:出なかった。
あなたの目の前に出されたのは粗末なスープとガチガチのパンが一つ。
それを床の上に置かれたのだ。
「いい?あんたみたいな傭兵崩れが、この誉れ高き『アルヴィースの食堂』で食事ができること自体を感謝して……」
あなたは、懐から、世界最高の上品なテーブルと★ボスチェアを出した。
「え?」
あなたは、懐から、世界最高のバーベキューセットを出した。
あなたは、グリーンドラゴンの肉を調理し、ドラゴンステーキを作った。
さて、いただきます。
「っちょ、待ちなさいよ!!」
何だろうか、食事の邪魔はしないで欲しいのだが。
「何よそれ!」
グリーンドラゴンのステーキだ。あなたの料理の腕前はパルミア一番、失敗などしない。
「どこに隠し持って……、いや、マジックアイテムね?!」
何か問題でもあるのだろうか。
「しかも、ドラゴンの肉ですって?!今日日貴族でも手に入らない高級品じゃない?!」
高級品?ネフィアに潜ればドラゴン程度そこらにいるだろう。
「いないわよ!」
いないのか。
まあ、しかし、ドラゴンの肉程度。少女の肉と比べるといささか劣る。
あなたは人肉が食えるならどうでも良いのだが。
「使い魔がっ!ご主人様よりっ!高級なものを食べるんじゃないわよ!!!」
?
あなたには、何が悪いのか分からない。
冒険者である自分が貴族のルールに従う必要はあるのだろうか、甚だ疑問に思う。
大体にして、そんなことを言ったら、人のベッドに潜り込むのはルール違反ではないのかとあなたは問いただした。
「そ、それは、今関係ないでしょ?!」
この淫乱め!とあなたは罵倒した。
「ななななな?!なぁ?!だっ、誰が淫乱よ!!!」
さて、あなたは万色フルーツパフェをデザートに平らげ、満腹になると、食堂から出て行った。ここにはもう用がない。
……「クスクス、淫乱だって」
……「エロのルイズ……」
……「ははは、面白いじゃないか、あの使い魔」
「ぐぬぬぬぬ!!あんのバカ犬ーーー!!!」
あいつはエヘカトル信仰です。