「傭兵になりました!」
「「「「わー」」」」
「よーし、ノってくれるようになっただけありがてえよな、うん。できればお前らもっとテンションあげような?」
「よく分からないけど僕はいつでも元気いっぱいだよ!」
「よーし!偉いぞジェミニー!」
でも、こいつらも、本当は感情や情動なんてなくって、俺が喜びそうな動きを再現してるだけなのかもな。
「大丈夫だよ、本当にテンションは高いからね、僕!みんなは呆れてるだけだよ!」
「はっはっは!それはそれで寂しィー!!!そうなのかアリエス?」
「いえ、まあ、私達にも多少はプライドがありますし、見た目が子供のジェミニならまだしも、私達が本気ではしゃぐのもどうかと」
うーん、正論!
こいつら、見た限りでは、ここ数年で自己ってもんが形成されてきたかのように思える。
アリエスは読書が好きで、敢えて紙媒体の本を好んで読んだりするし、紅茶の淹れ方に凝ったり、ティーセットをデザインしたり、文化的な活動を好んでやるようだ。
タウルスは運動が好きで、ナノマシンで常に肉体は最良の状態に保たれるのにも関わらず、トレーニングをして、酒を飲み、肉を好んで食う。レオと模擬戦もする。
ジェミニはゲームが好きらしく、その頭脳を駆使して様々なゲームのハイスコアを狙ったり、フルコンプしたり、RTAしたりして遊んでいる。ジャンクフードも大好きで、ハンバーガーとポテトとナゲット、コーラを好んで食べ、アリエスから野菜を食べろと叱られている。
キャンサーはアリエスと紅茶を飲んだり、お菓子を食べたりしつつも、宝瓶宮に再現された街を見て回ったりしている。高級な天然物を好み、料理がやたらと上手いビルゴに三食作ってもらっているそうだ。あと、イケメンなアンドロイドを侍らせてホスト遊びみたいなこともしてて笑った。
レオは飽きもせず戦闘訓練をやる。もっと強くなりたいらしい。いや、十分だと思うぞ。この前は宝瓶宮のジャングルでサバイバル訓練してた。蛇とか食ってたよ。何がしたいんだお前は、何を目指してるんだ。
ビルゴは料理が得意で、やたらと凝ったフランス料理だか何だかを作ってくれる。それと、手芸やら縫い物やらが好きで、少女漫画を読んでいたりも。乙女かよ。
ライブラは機械いじりばかりしている。天秤宮で機械をいじって、発明をするAIと発明だなんだとしているらしい。そして晩酌をする。度数が高い酒が好きなようだ。
スコルピオはアニメや漫画が好きなようだ。ライトノベルとか、堅苦しくないものが好きなんだとさ。お菓子も大好きで、スナック菓子を食べまくってビルゴやアリエスに叱られてる。
サジタリウスは動物が好きだ。特に馬が好きらしく、宝瓶宮で乗馬したり、狩猟をしたりしている。この前は弓でライオンを仕留めて、剥製を作って人馬宮に飾っていた。それと武具の類も好きらしく、獅子宮に出入りし武具いじりをしたり、レオと模擬戦と言う名の殺し合いをしたりなどしている。
カプリコーンはドラマやら時代劇やらが好きなようだ。それと、観測システムで宇宙を見て、適当な人々の生活を見てみたりなどしている。それと和風なものを好む。他にも、宝瓶宮で釣りをしたり、レオと模擬戦をしたりと色々やってるらしいな。
アクエリウスは絵を描いたり歌を歌ったりと、芸術活動を好んでする。宝瓶宮の私室には美術品が沢山あるそうだ。陶芸やら彫刻、ダンスまでやる。アンドロイドを使ってオペラをやったりするが、すまんな、俺は何がいいんだかさっぱりだ。
ピスケスはマフィア映画やハードボイルド小説を読む。他にもクレー射撃やサジタリウスと狩猟をしたりなんかも。普段は双魚宮の私室でウイスキーとともに葉巻を吸ってだらけている。
うーん、AIに心はない、みたいに言う奴もいるけど、人間と同じ機能を持っていれば、心らしきものは生まれるように思える。
あとは恋でもすればなあ。
んー、どうなんだろう。
恐らく性欲はあるらしく、部屋に異性のアンドロイドを置いているのを見た。多分やることはやってると思うんだけどな。
まあ、AI故に、自己保存本能が薄くて、その辺がネックみたいだ。
だが、思ったより品性もあるしな。
これで、実は全部俺のご機嫌取りで演技でしたー、って言われたらどうしようもないが……、こいつらにも心はあると思う、思いたいな。
さて、傭兵ギルドにて色々と見る。
依頼は……、オッ、宙域警備。
良いねえ。
「これやります」
「ほ、本当に傭兵をするんですか?」
受付ちゃんが聞いてくる。
「うん」
良いんだよ、ちょっとやるだけだ。
「わ、分かりました」
海域警備は、その宙域の巡回だそうだ。海賊船が出れば交戦するかも、尚、海賊船の積荷は全部貰える、とのこと。
ほんほんほーん?
そんな感じなのね。
よし、やろうやろう。
俺達は十二宮に戻り、操船開始。
「宙図はダウンロードしたな!俺達はトムソーヤ宙域を警備する、が……、海賊船を片っ端から落としていきたい!根切りじゃ!」
「人を殺してもよろしいのですか?」
「うーん、その辺はまあ、海賊なんてやる方が悪いんじゃない?生かして捕らえても処刑されるか強制労働からしいよ。なら殺しても構わんだろうさ」
「えっ、ドライですね。現代人とは思えないです」
「いや、そんなもんじゃね?刃物渡されて人刺せって言われたら絶対嫌だけど、大砲で撃ち殺せってんなら割とみんなやると思うよ」
必要に迫られれば。
「そうですか。では、私達トゥエルブサインも必要な時は殺人を許可されると?」
「そりゃあね。ロボット三原則なんざ知らねー。敵は殺せ」
「了解しました」
と言う訳で海域の警備。
十二宮を巡回させる。
亜光速くらいのゆっくりとしたスピードで移動したんだけど……。
「え?もう終わった?」
「トムソーヤ宙域を二十周しました」
「ごめん、寝てたわ。海賊は?」
「五百三十三隻捕捉しました」
「サジタリウス、やれるか?」
「どこを撃ち抜く?」
んー、そうだな。
「ブリッジだ」
「おお、残酷だな」
「いやあ、エンジンとかは高く売れそうだし。ブリッジを撃ち抜けば一撃で終わるだろ?」
「賞金首は良いのか?」
「良いって。人の首一つより宇宙船のエンジンの方が高く売れるよ」
「そうか。では、撃つぞ」
「ああ、やれ」
「イチイバル、五百三十三門開放。照準合わせ。撃てぇ!!!」
サジタリウスの号令に合わせて、人馬宮から五百三十三本の光の矢が目にも留まらぬ速さで飛んでいく。
コンマ一秒もしないうちに、発射とほぼ同タイミングで着弾を確認。
五百三十三隻の宇宙船のブリッジに穴が空く。
「はい、回収!」
「天秤宮で回収する」
ライブラが一日かけて海賊の宇宙船を回収。
これをロドリスへ持ち込む。
「か、買い取れません」
「なんで?」
「その、量が……」
「多いって?」
「は、はい」
ほーん?
「いくつなら買い取ってもらえる?」
「査定次第ですが、百隻分程ですかね……。その、それより、貴方が捕まえた海賊船の中に、賞金首が乗っている船が五十隻程あるのですが」
「あー、賞金首?いらないから殺しちゃった」
「こ、困ります……」
「うーん、脳さえ残っていれば処女宮で再生治療できるんだけどねえ。チリ一つ残さず消しとばしちゃったから……」
「な、何故ですか?高額な賞金首もいたのですが……」
「そいついくらぐらい?」
「十万リッチくらいですが……」
「確か、宇宙船のエンジンは小さいのでも売れば百万リッチはするでしょ?たった十万リッチ程度ならどうでも良くない?」
「そ、それは、そうですけど……、人命ですよ?」
「でも、海賊は処刑か強制労働なんだろ?なら殺しても良くない?」
「それを決定するのは司法であって貴方ではありません……!!」
そんなこと言われても。
「傭兵なら、海賊を殺しても良いんだろ?何か悪いことしたか?」
「程度の問題です!確認できるだけで一万人近くの海賊が死んでるんですよ?!!」
「へえー、そんなに殺したんだ。なんかもらえる?トロフィーとか」
「貴方は……っ!!」
うーん、これって俺が悪者なのか?
普通にテロリストを退治しただけじゃん。
「まあ、確かに量は多いかもしれないけどさ、海賊をそれだけ仕留めたんだから賞賛されて然るべきじゃないの?」
「他の傭兵さん達も、海賊が壊滅したので仕事なくなっちゃいましたよ!」
あー?
「バウンティハンターギルドからも苦情が来ています!」
ほーん。
「え?俺が悪いの?」
あらかじめ規約には海賊は殺せみたいなこと書いてあったのにね。
意地悪な言い方かもしれないが、海賊を全滅させちゃ駄目なんて聞いてないってこと。
「と、兎に角これは問題に……、え、ギルド長?ぐ、軍から人が?!わ、分かりました、代わります!!」
ん?
なんだ?
暫くはやる夫スレ見てます。