エリーは取り敢えず、うちの居候ということにした。
正直に言って、エリーにできることは何もない。
いや、俺も何もできないけど。
トゥエルブサインが有能過ぎる。
あいつら何でもできるから、俺が何かする必要はないのよね。
エリーの栗毛の長髪を撫でる。
手入れされてふわふわだ。
痩せこけた身体にも程よく肉がついて良し。
「エリー」
「はい?」
「俺さあ、ハーレムを作りたいのよね」
「ハーレム、ですか」
エリーが複雑な顔をする。
「エリーには悪いけど、可愛い女の子をいっぱい集めたいんだよ」
「トゥエルブサインでは駄目なんですか?」
「あいつらは部下だしな」
そう、俺は女の子を集めて、超銀河ハーレムを作りたいのだ。
噂によると、稀少な種族とかなんか色々いるらしいじゃん?
獣耳少女とか欲しい。
色んな種族を集めてハーレムを楽しもうって魂胆だよ!
いやほら、探せばいるんじゃね?
なんかこう、未開の惑星に住む神秘的な種族とかさ。
「エリー、俺、猫耳とか好きなんだけどさ、猫耳生えてる人種とか知らない?」
「猫耳……、ビスト人のことですか?」
ビスト人。
「ビスト人の人達は、テクラノーツ共産同盟に沢山いるらしいですよ」
「へー!」
同盟か。
「ええと、確か、ビスト人は遥か昔は人間だったんですけど、他の生き物の力を取り入れて進化しようと思い、自分達の遺伝子を書き換えて、動物の力を手に入れたそうです」
「ほー、あるあるだな。その後は、何だかんだで文明が衰退して、人間をビスト人にする技術は失われた、とかだろ?」
「はい、その通りです。……その、ですね?実は、噂なんですけど、ビスト人は同盟で奴隷のような扱いを受けているらしいそうです」
「そうなのか?」
「はい。元々同盟は、連邦から離脱した共産主義の人々が作った国なんですけど……、テクラノーツ共産同盟の首都星はテクラノーツ星と言うんですけど、テクラノーツ星は元々、ビスト人の住処だったそうです。つまり、そこを侵略して……」
「成る程なあ、原住民なのか。原住民じゃあ、大切にされないだろうな……」
インディアンみたいな感じだろうか。
よし。
「じゃあ、次の目的地はテクラノーツ共産同盟だ!ビスト人を拾ってこよう!」
俺は十二宮に指示して、テクラノーツ共産同盟の工業惑星『ルーバー』にワープアウトした。
テクラノーツ共産同盟軍にはやんわりと文句を言われたが、適当に受け流して着陸。
検疫を受けて、ゲートを通る。
検疫の際、身体データを普通の検疫より詳細にとられたとジェミニが耳打ちしてくるが、まあ、それくらいなら構わない。
究極的に言えば、ジェミニにハッキングさせればいくらでもデータは破壊できるんだからな。
それに、遺伝情報に直結するようなデータはとらせてないしな。
そしてエリーは十二宮に置いてきた。
何が起きるか分からんしな、危ないことはしないように。
今度いつか、連邦や帝国の惑星に行った時には降ろしてやろうと思う。
それと……、両替もした。同盟の貨幣は『ゾル』で、電子マネー化はあまり普及していないらしい。
さて、行こうか。
ルーバーは、寒い惑星だ。
気温は零度を切っており、かなり肌寒い。
建物の中は暖房が効いていて暖かいが、外は極めて寒く、例えるなら冬の北海道と言ったところか。
建物の外には雪が見える。
植物は殆どなく、スクラップの山に降り積もる雪が退廃的と言うか……。
まあ、つまりは、ぱっと見は終末の世界ってところだな。
寒く、緑はなく、アスファルトが続く道の端に鉄屑の山。
人々の顔もどこか暗いように見える。
ソビエト?って感じだ。
いや、ロシアに行ったことはないよ?
けど、創作で語られるような典型的な悪い共産党ってイメージのまんまでさ。
「ハアックション!!!」
くしゃみも出ますわそりゃ。
「寒ぃー!!」
俺は股引にヒートテックとモコモコのジャンパーの上下に飛行士帽子、マフラーを巻いて完全防備。
しかしそれでも、顔に触れる大気の刺さるような冷たさに震える。
兎に角、寒い。
トゥエルブサインも同じような格好をしている。
「防寒を怠れば生命維持に支障が出ますね……。マスター、マスターのバイタルは常にチェックしています。しかし、それでももし問題があれば言ってくださいね」
「ありがとう、アリエス」
いや寒ぃ!
俺、寒いの苦手なんだよね。俺、南の方の生まれでさ。
東京に来て初めて雪を見たタイプの人だから……。
「しかし……、いるな、ホームレス」
「はい」
さっきからちらほらとホームレスの方々が見られる。
ボロい服を着て、ボロい毛布に包まった年寄りとか……。
街の中はいかにも良い国です!みたいな雰囲気を出して、街頭のテレビからは嫌ってほどプロパガンダが流れているのに、路地の裏を覗けばちょっとした地獄だ。
「酷え国だな、オイ」
「確かに……。しかし、人的資源は連邦や帝国よりも大分多いらしいですよ」
「まんまソ連じゃねえか。兵士は畑から取れるのか?」
「今では白兵戦はあまり重視されないようですので、工員などに使われているようです」
「工員ねえ……、オートメーション化すりゃ人いらないんじゃないの?」
「十二宮のような完全なオートメーション化は人類には不可能ですよ。それに、この世界の人々はAIの反乱を警戒して、オートメーション化を控える傾向にあります」
「ほーん、確かにAIは怖いわな」
そんな話をしつつ、あえて裏路地を行く。
痩せた子供を抱く母親に一万ゾル程くれてやったところで、色々とアリエスに聞く。
「そういや、日本語で通じるんだな」
「はい、どうやらこの世界の共通語らしいですね。宇宙共通語と言うそうです」
「ほーん、一ゾルっていくらくらいだ?」
「約十円程です。連邦の通貨『リッチ』の十分の一程ですね。物価は大体連邦の半分程ですから、一万ゾルもあれば一月それなりの余裕を持って生活できます」
ほーん。
そうかい。
そんな話を聞きながら、夜の貧民窟へと出向く。
その間も、女の人限定で物乞いに金を渡して歩く。
金?
いやー、さっきこの前沈めた海賊船のエンジン売りまくったらかなりの金になってさー、百隻分売れたわ。
大体一億ゾルくらい手に入れたかな?
金持ちが金をばらまいて肥大化した自尊心を満足させるあれにチャレンジ中だが、特に気分は良くない。
うーん、俺は基本的に、自分さえ良ければいいと思っているから、他人に感謝されても別に気持ちよくないんだよね。
その分、他人から文句を言われても何も感じないし。
むしろ、バッシングされたなら愉快な気持ちになる。もっと掻き回してやろう、と言う気持ちに。
俺は他人が驚いて慌てふためき最後にトチ狂うのを高みの見物するのが何より好きなんだ。
オタサーの姫と付き合ってサークル崩壊させたり、嫌いな上司の机の上に児童ポルノ置いておいたり。
お茶目な悪戯が好きなんだよね。
っと、そんなこんなで。
「あの……、恵んで下さい……!もう何日も食べてないんです!」
「お」
猫耳少女だ。
銀髪猫耳猫尻尾、金の瞳の瞳孔は猫のように縦に割れている。
ボロ服で着膨れしていて体型はわからないがスリムな印象。
顔は可愛い系。
「お願いします……、何でもしますから!」
「ん?今何でもするって言ったよね?」
「え……?は、はい、恵んでもらえるなら、何でもします。働きます、ブーツを舐めろと言うなら舐めます、エッチなことも……、経験はありませんけど、頑張ります。だから、だから何か食べるものを……!」
ほーんほーんほーん!
「君、家族は?」
「いません、お父さんもお母さんも、飢えて死んでしまいました……」
実に都合がいいなあ。
俺はカバンに手を突っ込んだと見せかけて小型の転送装置を起動、処女宮のバッグヤードから紙に包まれたハンバーガーを出す。
「名前は?」
「私の名前はマイアです……、あの、食べ物を……」
「ああ、ほら、食べなよ」
取り出したハンバーガーを渡す。
「あ、ありがとうございます!はむ、はむ……、美味しい……!」
ハンバーガーを四分の一に割って食べたマイア。
しかし、残りは懐に入れた。
「どうしてそれだけしか食べなかったの?」
「あ……、残りは、他の子に分けてあげようと思って……」
ほーん。
可愛くて心優しい。
救われるだけの価値があるな。
「全部食べていいよ」
「え?」
「君の友達にも、何か食べるものをあげよう」
「ほ、本当ですか?!」
「それだけじゃない、働き口も紹介しよう」
「な、なんとお礼を言っていいか……」
「ほら、君の友達のところに案内して」
さて、ビスト人。
何人か連れて帰ろう。
やることが山積みー。