「そうだともそうだとも!アニマの弟子はやめておきなさい!アニマは基本的に、御伽噺の悪い魔法使いそのものだよ!」
「今は丸くなってるから!五十万年前ならいざ知らず、今はただの隠居生活だよ!」
「隠居するなら弟子は置いていきなさい!」
「やだ!志導君は僕の!」
うーん、男に取り合われても嬉しくないんだが?
「成る程、これでどうかな?」
師匠が女に化ける。
「どうかな?かな?」
うーん。
美人だが……。
「元が師匠だと勃起できないっすわ」
「そんなあ……、最初から女の姿で出会っておけば……!」
そんなことしてどうする気だよ、怖えわ。
「それと、この業界について話そう」
「おう」
「まず、さっきも言ったけど、生命魔法の使い手は多くが外道だ。命を何とも思ってないマッドが多く、他の魔法使いを攻撃したりされたりしている。危ない奴らさ」
テンプスはそう言った。
しかし、師匠は。
「まあ、多くは外道だけど、三割くらいはまともに医者とか整体師とかやってる子もいるから。むしろ生命魔法の使い手は必須だから、どこへ行っても大切にされるよ」
と、言い返した。
成る程、回復とか蘇生とか使えるし、生命魔法は脳に作用する幻覚魔法とかも治せる。また、生命創造で人手も増やせる。使える奴ってことだな。
「時空魔法の使い手は……。少数派だね。あんまりいないんだよね、時空魔法の使い手。少数派だし、使える人材だから保護されてる。ああ、それと、時間移動ができる魔法使いなんてほぼいないから心配しなくて良いよ」
「そうか」
「因みに、時空魔法の使い手はレアで、見つかると捕まって良いように使われちゃうから、こっそり隠れ住んでるんだよ。だから、表に出てる時空魔法の使い手は、それなりの腕があるか、ちゃんとした組織に属しているかの二つだね」
「でも、大体の時空魔法の使い手は、時間止めてスリとか窃盗とかしてその日暮らししてるから。時空魔法の使い手は大体ホームレスだよ」
と、師匠が茶々を入れる。
「……それで、次は元素魔法の使い手。元素魔法ってのは……、君、ゲームとかやる?」
「まあ人並みには」
「じゃあ、元素魔法って言うのはね、基本的に、属性魔法のことだよ。火とか水とか出したりするの」
「へえ、面白そう」
「でも、全然レアじゃないから!一番ありふれた魔法なんだ。『概念編纂』の君がやるならもっと凄い魔法の方が良いよ!時空魔法とか!」
「はいはい、で、元素魔法の使い手はどんな感じなんだ?」
「っと、そうだね。元素魔法の使い手は……、始まりの五人のうち一人の元素魔法の使い手、エレメントゥムって奴がいるんだけど、そいつが元素魔法の使い手を含め、多くの魔法使いを傘下に置いて『ウィギレス』って組織を作ってる」
「ウィギレス?」
「まあ、魔法使いの警察みたいなものかな?魔法を使って悪いことをする奴を捕まえたり殺したりする組織だよ」
と、なると。
「悪い生命魔法の使い手はウィギレスに消される訳だ」
「その通り。でも、ウィギレスがいるおかげで、魔法的な事件やら何やらの揉み消しとかがされてる訳で。魔法使いの業界にはなくてはならない存在なんだよ」
成る程、裏世界の警察組織か。
「因みに、ウィギレスは給料出るから、職業もウィギレスだよ」
「いくらぐらいだ?」
「下っ端なら月給二十万円くらい」
安くね?
「幹部だともっともらえるらしいよ」
ふーん。
「元素魔法の使い手は一番数が多いからその分、悪いことやってる奴も多いけどね」
と師匠。
「そうか」
「次に、運動魔法の使い手だね。運動魔法は……、物理的な力を操る魔法のことだよ。主にバフを使って物理で殴るみたいなことをする野蛮な連中さ」
「それで?」
「まあ、運動魔法の真髄は力の操作だから、極めれば山をひっくり返したり、パンチで地震を起こしたり、相手の攻撃を反射したりとかできるけど……、そこまでの使い手はまずいないから安心して良いよ」
ふーむ?
運動魔法ってのは力学的な力を操るってことか。
「運動魔法の使い手も、大体はウィギレスにいるね。ウィギレスは色んなタイプの魔法使いを集めているよ」
「何でだ?」
「うーん、大体、ウィギレスに所属する魔法使いは、魔法使い全体の三割くらいなんだ」
「多くね?」
「でも、その中で戦えるのは半分もいないよ?」
ん?
「警察なんだろ?」
「そうだよ?だけど、警察にも、公安とかマル暴みたいな武闘派がいても、大半は一般の警察で、中には事務仕事とか鑑識とかもいるだろう?」
ふむ。
「だから、ウィギレスは色々なタイプの魔法使いを必要としているのさ。それ以外にも、稀少な固有魔法の使い手の駆け込み寺のような機能もある」
ほー……。
「運動魔法の使い手も元素魔法の使い手と同じ。母数が多いからその分悪い奴も多い」
と、師匠。
「じゃあ、残りの七割の魔法使いは何やってんだ?」
「それは、次の話、器物魔法の話になるね」
「ほう」
「器物魔法って言うのは……、マジックアイテムを作ったり使ったりする魔法だよ」
マジックアイテム……。
確か、俺も一つ師匠にもらったな。
「この、器物魔法の使い手は大体、『ギルド』と言う組織に所属していてね。ギルドは……、まあ、魔法について熱心に研究している人達、かな?それとマジックアイテムの流通管理とか……、マジックアイテム全般の管理をしているね。まあ、これが魔法使い全体の一割くらいかな?」
「工業組合みたいなもん?」
「んーまあ、近いのであれば、JISみたいなものかな……?」
マジックアイテムに規格とかあんのか?
「まあ、そんな感じで、器物魔法の使い手は、基本的にはギルドで働いているよ」
「給料は?」
「部署によって違うみたいだけど……、プロなら何百何千万って稼ぐよ。税金とかで天引きされないから、表の世界の科学技術者よりずっと儲かるみたいだね」
ほー。
「まあ、基本はギルドってだけで、人体実験とかやってる器物魔法の使い手も多くて、そう言う奴らは裏のマーケットとかにいるよ」
と師匠。
成る程なあ。
「まあ、こんなものかな」
「大体わかった。始まりの五人は敵対してて、派閥があるんだな?」
「……え?私達、仲良いけど?」
ん?
「五十万年前から仲良しだよ?」
「そうなのか?」
だって、ウィギレスにギルド、悪い奴ら多数……。
生命魔法の使い手は大抵悪い奴で、ウィギレスと対立している。
魔法を悪用して盗みをやる時空魔法の使い手。
ギルドに属さない、裏マーケットの器物魔法の使い手。
その他、どんな魔法を使っても悪い奴多数。
対立してるんじゃ?
「いや……、対立する理由がないし」
「だから、自分の信奉者である、自分と同じ分野の魔法を修めた魔法使い同士が争ってるんだろ?対立してるだろ!」
「え?なんで信奉者が争ってるから、トップも争わなきゃならないんだい?」
……は?
「いや……、自分の信奉者だぞ?」
「どうでも良くないかな?」
「どうでも良いよね?」
んんんんんー?
こいつら、自分を信奉している一般魔法使いのこと、どうでも良いと思ってやがるのか。
「あと、基本的に、専門分野の魔法とは別に、他の分野の魔法を修めることもあるから、派閥とかあんまり……」
「元素魔法の使い手だけど長生きしたいんで生命魔法覚えましたー、みたいな子も多いしねえ」
あー……。
そんな感じか。
「あくまで、生命、時空、元素、運動、器物の五系統から、好きな分野を好きなだけ学んで、他人に迷惑をかけない程度に好きに生きましょうね、と言うのが私達、始まりの五人の提示するスタンスなんだけれど……」
「まあ、中には、魔法を隠すべきって言う人や、広めるべきって言う人もいるし……。僕個人は……、別に広まっても隠してもどっちでも良いかなあ」
「私は広まって欲しいかな、時空魔法の使い手が増えるとちょっと嬉しいですね」
そんなもんかあ……。
「まあ……、私から言うことは、君の固有魔法は本当にレアだから、悪い人には気をつけてね、と言うことかな。あと、私の弟子に……」
「はいはい、後でちょっと貸してあげるから。今日のところは帰りなさい!」
「ああ〜……」
あ、追い出された……。
頭も痛い。