午後。
担任の霧崎が教室に現れ、言った。
「皆、グラウンドに出なさい。魔法測定をする」
魔法測定?
「魔法測定って何ですか?」
生徒が聞く。
「魔法測定とは、魔法五系統を現在どのレベルで扱えているか測定するためのテストのことだ。ああ、これで結果が悪かったからと言って減点されたりはしないから安心してくれ」
僕のなんちゃらアカデミアではない、と。
「戦闘能力の測定も行う予定だ」
「へえ……」「腕がなるぜ」「面白いじゃん」
好戦的な生徒もちらほら。
さあて、どうなるか。
だだっ広いグラウンドに何十人かの教師。保健室の治恵もいるな。救護要員か。
それと、見学に来ている色々な学派の偉い人達。
さて、何をやるんだ、と。
「まず、魔法使いの基本の魔導書、『アルスマグナ』は知っているな?あれに記された、基礎の魔法をどれだけ使えるかを調べる」
あー、あれか。
俺が一番最初にダウンロードされた魔導書。
あんなもん、どれも簡単だろ。
「生命魔法の『回復』、時空魔法の『加速』、器物魔法の『錬金』、元素魔法の『火球』『水球』『土球』『風球』のいずれか、運動魔法の『倍力』、これらを使ってもらう」
え?
どれも楽勝だが?
しかし、全部の系統の魔法を使えたのは俺を含め数人だけだった。
特に、生命魔法と時空魔法は使える奴が少なかったな。
そして、戦闘能力測定。
生徒全員に一定ダメージを受けると警告が出る防護魔法のマジックアイテムを配り、これが破られたら負けって感じ。
相手は教員。
教員の数が多いので、待ち時間は短くて済みそうだ。
相性にもよるが、基本的に、研究畑の奴らは弱い弱い。
流石に一般人よりかは強いかもしれないが、銃を持った軍人相手じゃ負けるってレベルか。
だが、強いのも何人かいる。
それなりだな、って奴も結構いる。
さて、見てみるか。
まずは湊。
「『水のアルケー』!万物は流転するっ!!!」
水の元素魔法の使い手か。
近場に水がないのに、大体小さな銭湯くらいの量の水を生み出して戦っている。
「『流水削岩』!」
教師はそれを魔法で防ぎ、元素魔法を撃ち返す。
「『水盾』!」
湊もちゃんと防ぐ。
ふむ、基礎はできてるな。
だが、最終的には教師に打ち負けた。
次、空。
「『短距離転移』」
ほう、転移魔法が使えるのか。
「『倍力』」
それと基礎的な運動魔法を少々。
得物は小さな飛び出しナイフ。
教師の背後から暗殺者のように首を掻き切った。
しかしまあ、教師はあらかじめ防護魔法をかけていて、ダメージはなかった。
「あー……、これで倒せないなら降参だ。俺はそもそも戦いに向いてない」
とのこと。
次、芽衣。
「行くよ」
おお、珍しい。
銃器型のマジックアイテムか。
それも二丁。
二丁拳銃からはかなり弾速の速いレーザー弾が連続して発射されている。
遠距離では駄目だと教師が間合いを詰めてくると。
「『フォルムチェンジ:ブレード』」
二丁拳銃が変形して、レーザーブレードに。
まあ、だが、身体能力的には大したことがないので普通に負けていた。
次、夏希。
「『武神降臨』!!!」
ほー、かなりのバフだ。
身体能力は数十倍ってところか。
そんな感じで一撃、教師に大ダメージを与えるも、その後はアウトレンジから嬲り殺しに。
次、無限。
「ふふふふふ、はーっはっは!!!カードバトラーの真の実力を見せてやろう!ドロー!モンスターカード!『召喚:雷の剣士ダナン』!!!」
何だありゃ?
生命創造だけど……、ああ、そうか。
あれは、カードを媒体に即時召喚するのか。
だがコストがかかるんじゃねえのか?
いや……、それはあえて、『1分間につき一枚、四十枚の山札から一枚を引く』『最初の手札は五枚だけ』『手札にある魔法しか発動できない』という厳しい制約を自分に課すことによって、コストを下げてるのか。
おもしれえこと考えんのな。
雷を纏った剣士が教師に突っ込む。
だがまあ、魔法生物使いなら、本体を叩くのがセオリーだよな。その通りに、教師は無限本体を殴りに行く。
「ふはははは!馬鹿め!トラップカード発動!『カウンターバリア装置』!!!」
しかし、無限はこれを防ぐ。
「俺のターン!ドロー!これが俺の無敵のタクティクスだ!『召喚:魔王ディアボロス』!!!行け、ディアボロス!『ゼロフラグメント』ォォォ!!!!」
おお、教師をぶっ飛ばして勝った。
馬鹿だけど強えな、こいつ。
次、小春。
「『召喚:がしゃどくろ』『召喚:天狗』『召喚:猫又』」
管みたいなものから魔法生物を召喚して戦うようだ。
「『韋駄天降臨』『毘沙門天降臨』」
それと、かなりのレベルの運動魔法。
刀一本と仲間の妖怪で大暴れして、教師を倒した。
次、道長。
教師の先制攻撃。
「『身代わりの術』」
あれは……、マジックアイテムを触媒にした元素魔法での幻覚か。
「『分身の術』」
ほう、光を操って分身を見せる魔法か。
「『火遁:大火流の術』」
火を吹いた。
「『力王の術』『速足の術』」
運動魔法も使えるか。
「『紅蓮手裏剣爆轟の術』」
んー?
あれは……、火でできた手裏剣を投げて、着弾点を爆破するのか。
教師は吹っ飛んだ。
……忍者?
次、レオ。
「『来いっ!ヴァンライン!』」
えぇ……、なんかスーパーロボット呼び出したぞ。
そして乗った。
「行くぞ!『ヴァンソード』!!」
胸のV字のエンブレムから剣が出てくる。
「『必殺Vの字斬り』!!!!」
斬った。
そして振り返り、スーパーロボットが決めポーズをすると、斬られた教師が爆発して倒れた。
何だこれは……、何だ?
最後に……。
「では、叢雲志導君」
俺の番だ。
相手は担任。
「手加減はするが、怪我はしないように」
「は?」
舐めてんのか?
「『セフィロトドライブ』即時解放!」
現在、セフィロトとクリフォトは四つまで解放できるが……、こいつにはそこまでいらん。
俺の身体能力は数千倍に増加し……。
「なっ……?!!!」
「死ね」
ぶん殴る。
担任が縦に三十回転して吹っ飛んだ。
死んだか?
「救護班ー!!!」
軽めに殴ったんだが。
担任は全治四ヶ月の怪我(魔法で治されたので大丈夫らしい)だとよ。
俺の魔法は、秘伝の大魔法みたいな扱いをされた。
運動魔法の使い手からモテモテ。
以上。
放課後。
「何だい、さっきのは!」
夏希に詰め寄られた。
「あんた、生命魔法の使い手じゃなかったのかい?!」
「あれは生命を活性化させてるから生命魔法だぞ」
適当に答えた。
因みに、魔法はその辺アバウトだ。
生命を活性化させて身体能力を上げる生命魔法もあれば、運動エネルギーを増やして身体能力を強化する運動魔法もある。
拡大解釈すれば、体内の火(熱量、エネルギー)を増加させることで身体能力を上げる元素魔法もある。
魔法はいくらでも応用が利くってことだな。
「それにしたってあれは凄いよ……。グラウンドは吹っ飛んでソニックブームで校舎一部損壊……」
「軽くやったんだがな」
「あれでかい?!」
化け物認定された。
ふむ、困るな。
「まあ、あんまりビビるなよ。仲良くしようぜ」
「あ、ああ……」
ふーむ……。
「そうだな……、なら、クラス全員で親睦会と行こうぜ。そうすりゃ少しは仲良くなれるだろ」
「三十人もいるのに、どこでやるんだい?」
場所?
あー、そうだな。
「ウィギレス本部」
「「「「………………え?」」」」
雪女に冷やして欲しい。