「ふーむ……」
なんか、俺以外の奴らは大体倒れたみたいだな。
「『範囲回復』『時間回帰』」
人と建物を直して、クラスメイトを起こす。
「よう、帰ろうぜ」
「「「「(暴君だ……)」」」」
解散。
俺も家に帰る。
俺の家?
普通に安アパートだけど。
木造二階建て、築五十年以上、駅から微妙に遠い。
いや、昔は普通の家に住んでたんだけど、母親の借金でな。
まあ、家なんて広くても意味はないしな。
どうせ俺は一人暮らしだし。
魔法的な防犯はバッチリにしておいてあるが、それだけだ。
漫画の単行本が本棚に沢山、それと安い机と椅子。タンスとどでかい冷蔵庫、テレビとゲーム機。一応ネット環境もあるし、パソコンも持ってる。
それ以外は特にない。
洗濯は近場のコインランドリー、トイレはあるが風呂がないので銭湯。シャワーがあるのでめんどくさい時はシャワー。
コンロはある。シンクも水道もある。電子レンジとオーブンもある。
家賃?事故物件だから三万だな。
それでもワンルームで12畳もあるんだぜ?得してるぅ。
因みに、この部屋で今までに六人自殺したらしいぜ。笑えるな。
んでまあ、怪しい安アパートって訳で、隣人は変な奴ばっかりだ。
俺は自室のドアを開ける。
「ただいま」
「アミーゴ!オカエリ!シド、ガッコ、スクールライフかい?」
「ん、ああ、クラスメイトと遊んできた」
「グッド!ユウジョー、大切!ベンキョー、いらない!大切なのは、燃えるハートだね!」
謎のメキシコ人、カルロス。
ジーパンに謎の日本語が書かれた(例えば、胸に「冷奴」「六本木」「武士道」など)白いシャツ。いつもギターを持っている。黒髪のアフロ。
カルロスは……、よく分からん。
多分不法滞在だと思うが……、たまに謎の外国人に追われているのを助けている。
カルロスは元々、メキシコの歌手だったらしいんだが、ひょんなことからマフィアの麻薬取引現場を見てしまい、追われる身になったそうだ。
まあ、半分くらいは嘘だろう。
だが、マフィアから追われているのは確かで、外国人に追われているのも本当。
俺はカルロスに借金取りやヤクザからの逃亡方法やら、楽器やら歌やらを習った。
その代わりに、カルロスの逃亡を手助けをしている。
「おぉ、帰ったか、志導。この前のカレー、美味かったぜ。また作ってくれや」
「ああ、分かった」
この人は霧島豪。
ゆるめのジーパンに黒のノースリーブ、その上に革のジャケットを羽織る。明らかに作画が石◯賢の野性味溢れる男。
喧嘩屋だ。
ヤクザの用心棒をやったり、ストリートファイトをやったり、格闘ジムでバイトしたりして生計を立てているらしい。
滅茶苦茶強えんだよな。
基本的に戦うことしか頭にねえんで、たまに喧嘩の相手をしたり、飯奢るから手伝ってくれと追ってくるヤクザや借金取りと戦わせることも。
喧嘩のやり方はこの人に習った。
その代わりに、飯を奢ったり、酒を渡したり、逆に喧嘩の加勢に呼ばれたりする。
「あー、志導君お帰りー!お姉さんにただいまのチューは?」
「ほらよ」
「あ、本当にするんだ」
「今更遠慮するような仲でもねえだろ」
「まあそうだけど……。お姉さん寂しい!初めの頃はもっと初々し……、くもなかったわね。まあいいわ」
この女は蜂須賀綾音。
スウェットのズボン、だるだるのTシャツ。スタイルはそこそこで痩せ型、胸もあんまりないが、顔は良くて雰囲気がエロい。
売女だ。
水商売やってる女で、昼間から呑んだくれたたり寝てたりする。
この女の勤務先である、『スナックかおり』は俺もちょくちょく顔を出している。
割と人気らしく、週に二、三回出勤して残りはダラダラ休んでいるらしい。
セックスが上手いんで、ちょくちょく相手をしてくれと強請られる。
女の扱い方はこの人に習った。
その代わりに飯やら酒やらセックスの相手やらを要求される。
たまに、面倒な客を追い出させるのにも使われている。
「おかえりなさい、志導君。学校はどうだったかな?」
「んー?まあ、期待したほどのもんはねえよ」
「そうか、それは残念だ」
この男は渡良瀬雄二。
いつも白スーツに眼鏡の色男。
世界にその名を轟かす財閥、渡良瀬グループの御曹司……、のはずなんだが、実家の干渉が嫌になったらしく、ここに逃げてきたらしい。
フリーの弁護士をやっているらしく、法律関係に滅茶苦茶詳しい。
普段は株やらFXやらで稼いでいるらしいが……、何でこんな安アパートにいるんだ?
そこら辺は謎だ。
金の稼ぎ方やら勉強やらはこの人から習った。
その代わりに、弁護士として働く時の護衛や助手、書類仕事の手伝いなんかをしてる。
「おかえり、志導君。お酒買ってきたよ、一杯やろう」
「おー」
この女は和泉麗華。
黒色の髪を清潔感のあるハーフアップにまとめて、青色のシャツと黒いズボンの、一見するとキャリアウーマンに見える格好のキリッとした女だが。
職業は探偵だ。
若干アングラなことも平気でやる、『裏』に強い探偵。
この人からは変装やら鍵開け、交渉術、調査術などを色々と習った。
代わりに、探偵としての仕事を手伝わされたり、荒事を押し付けられたりされる。
「お邪魔してますよ志導君。あ、今回も洗濯頼みます」
「分かった、やっておく」
この男は宮沢昭人。
黒いシャツにカーキーのコート、裾の長いジーパンにサンダル。伸ばしっぱなしの黒髪を紐でまとめ、不気味な雰囲気をしている。
しかし、こんな見た目でも、世界屈指のゴーストライターだ。
日本語だけでなく、英語、ラテン語、フランス語、ロシア語、イタリア語、スペイン語、中国語、韓国語に精通しており、各国の文学に異常なほどの知識を持ち、歴史や伝統にも詳しい。
この人からは主に語学を中心に勉強を習った。
代わりに……、家事やら護衛やらをやっている。
……で。
何でこいつらが俺の部屋にいるかと言うと……。
まず、俺の部屋の鍵は壊れている。
管理会社に連絡しても、俺がすぐ鍵を壊すから自費で直せと放置されている。
実際に壊しているのは豪だが。
俺もいい加減直すのがめんどくさいんで、放置している。
そもそも、このアパートに盗みに来るような奴はいない。
よって、素通り状態。
俺の部屋は駄目人間の溜まり場になっている訳だな。
いつだったか……、九歳くらいの頃ここに引っ越してきて、母親の無理心中に巻き込まれそうになって、上手い具合に合法的に母親が消えたんだよな。
それから、小学校はろくに行かないで、こいつらに勉強やら何やらを習って、知識を得た後は、何とか中学に入って……。
中学もほぼほぼサボりで、こいつらに付き合って色々やって、毎日楽しく暮らしていたところ、魔法使いにスカウト、って訳だ。
さて、アパートあかね荘。
七人のメンバーで酒盛りだ。
次回からは異世界帰還勇者モノが始まります。
めっちゃ書き溜めあるんで、暫くは異世界帰還勇者モノを投稿します。
あと、個人的に、ヴァリエール君と平賀ちゃんの続きも書きたい。