実家……。
あー、良かった、まだあるな。
俺がいない十年の間になくなってましたとか言われたら困ってたぞ。
兎に角、身分証明書が欲しい。
質屋にも行きたい。
身内にも心配かけたし、一言謝っておきたい気持ちもある。
「た、ただいま〜?」
「「「………………?!!」」」
でもまあ、驚かれるよなあ……。
「れっ、嶺二か?!」
「はい」
「嶺二!」
「はい」
「兄ちゃん!」
「はい」
すまん。
「ただいま」
おふくろが泣く。
「嶺二ぃ〜!!!良かったわ!ママ、ずっと心配してたのよ!」
おふくろ、鎧(旧姓、兜)真波。
「お、お前、今までどこにいたんだ?!警察にも探偵にも、捜索をたくさんしてもらったんだぞ?!」
親父、鎧遼河。
「兄ちゃん……、マジでどこにいたの?!私もめっちゃ探したんだよ?!」
妹、鎧舞香。
「異世界にいました」
「「「……待って、今救急車を」」」
「あーあーあー、良いから良いから」
「じゃあ、何か?十年前に突然誘拐されて、鉄砲玉にされて、悪の親玉を倒した後はポイッてことか?」
「うん」
「な、なんて酷い奴らなんだ、その王侯貴族って奴らは!父さんはそう言うの許さないやつだぞう!」
「大変だったのね、嶺二」
「兄ちゃん可愛そう!」
「あ、まあ、その、でも今は、嫁さんと城で楽しく暮らしてるから……」
「まあ!そうなの!お嫁さん連れてきて!嶺二のお嫁さんに会いたいわ!」
「後で呼んでくるから……。その、沢山いるし」
「な、何だと!ま、まさかハーレムか?!凄いな嶺二は……。父さんはもう歳で助平心も減少しつつあるぞ……」
「あとその、身分証明書とか欲しいから、警察への届出とか……」
「分かったぞ!父さんが捜索届出とか引っ込めてくるからな!」
「あと当面の資金が必要だから手持ちの貴金属とか売りたいんだけど……」
「なら私が車を出すよ!」
うちの家族は……、ちょっと苦手だ。
俺は自分で言うのも何だけど賢かった。
まあ、品性は下劣だけど、知能自体は世界的にもトップクラスだと、IQテストをした病院の先生は言っていた。
もしも異世界に誘拐されなかったら、海外の大きな大学に行くつもりだったんだよな。
その上、サヴァンシンドロームでもあり、一度見たことは忘れない。
そんな俺から見たら、吹けば飛ぶようなサラリーマンの親父も、パートしながら主婦やってるおふくろも、偏差値52の私立大学に行った妹も、馬鹿っぽく見える。
俺と違って底抜けに明るい性格なのも、馬鹿っぽさに拍車をかけるよね。
正直、異世界に誘拐されるまでに俺は大量の知識を蓄えていたからな……。
その上、異世界では、各国の最高レベルの魔導師に師事して、更に知識を蓄えた。そして、魔力運用による演算速度、知能の更なる向上。
見下している訳じゃないが……、その頭空っぽにして毎日楽しそうにしているテンションの高さについていけないことが多々ある。
「お嫁さん、沢山って、どれくらいなの?」
「その、十二人かな……」
「まあまあまあまあ!十二人!凄いわ嶺二!嶺二は昔から賢くてスポーツもできてカッコよくて、でも性格は悪かったものね!モテモテよね!」
ん?なんか今悪口言わなかった?
「じゃあ、今晩連れてきて!お寿司頼んじゃいましょ!」
「おっ!じゃあ、父さんは警察に行ってくるからな!」
「はい」
「行こう!お兄ちゃん!」
「はい」
妹に貴金属や宝石類を売らせる。
書類やらマイナンバーやら確定申告やらで大変なようだが、任せておこう。
税金で半分くらい分捕られるが、貴金属や宝石『程度』幾らでも創り出せる。
むしろ、俺的には貴金属といえばオリハルコン系の合金の方が、金の何百倍も貴重だし、魔力的なコストがかかる。
そうやって質屋を転々とし、税金を抜いて五百万程度の資金を調達。
でも、俺の嫁は基本的に王女やら魔導師やらで金食い虫が多い。
あいつらは金があると好きなだけ使うからな……。自分で稼ぐから文句は言えないが。
だがこの世界だと、身分証明書のない嫁達は稼げないだろう……。
その分、俺が稼がなきゃならない。
めんどい!
さて、実家に嫁達を呼ぶ。
まあ、実家は結構広いし大丈夫だろう。
人外である嫁に会った家族は、案の定びっくりしていたが、全員物事を深く考えていないのですぐに受け入れた。
その辺りは本当に尊敬するよ。
顔合わせを済ませて、身分証明書の類を得てから、俺は城に帰った。
さて……、嫁達にはまず日本語やら文化経済風俗やらの勉強をさせる。色々と本は買ってきてある。
その間に俺は身辺の整理をする。
「お、そうだ嶺二。お前、友達に会ってやれよ!みんなお前のこと心配してたし、未だに探してくれている人もいるんだぞ!」
「あー……、うん」
いや……、俺の友達とか……。
え……?
そんなに心配されてた?
てか……。
「……俺って友達いたっけ?」
「嶺二!お前、嶺二か?!」
「"久しぶり"じゃネーか、"嶺二"よォ……!!」
「嶺二じゃねーか!うおお!久しぶりだな!」
「嶺二君!君は今までどこにいたんだ?!」
「嶺二君!嶺二君なの?!」
「れい君ー!」
あっれー……?
友達なんかいたか?!
誰だ?!
や、やべえ、本格的に名前が分からん!
真名看破の魔法使おう!
最初から……、
桐山雄一
武見沢龍太郎
熱海猛
榊丞
石田美月
水瀬真帆
だな。
「おい!今日は色々と聞かせてもらうからな!」
「"酒"でも飲みながらオ話シ、しようぜェ……!」
「れい君ー!行こっ!いいお店予約してあるんだー!」
そのまま連行される。
あーれー……。
「……と、まあ、このように、俺は異世界に誘拐されていた訳だ」
「ヤクザの鉄砲玉みてえだな!」
「"嶺二"程の男を鉄砲玉で使い捨て……?そいつら、"人を見る目"がねェな……?」
「れい君可哀想ー」
さーて?
「俺達は今……」
話を聞くところによると……。
桐山雄一は大手出版社勤務。俺とは友達だそうだ。
武見沢龍太郎は大手建築家。元不良だったが、俺に勉強を教えてもらって更正したらしい。
熱海猛は若手トップの弁護士。俺とは友達らしい。
榊丞は大手薬学会社勤務。いじめられっ子だったが、それを俺が助けたらしい。
石田美月は宝石、貴金属、アクセサリーなどを扱う大手商社の営業。元々はギャルだったが、俺に勉強を教えてもらったお陰で大学合格、大手商社に入社できたらしい。
水瀬真帆は若手トップの女優。俺の元カノらしい。
んー……?
サヴァン脳の俺が覚えていないってことは……、いや!
違う!
確かにやった!
こいつら、背格好が変わり過ぎてたんで分からなかったってのもあるけど……。
でもそんなに、言うほどやった訳じゃねえぞ?!
ただ、チョーシ乗ってる不良やコギャルに、理詰めで、いかに将来困るか語って勉強させたり、いじめられっ子にお前のような奴は社会でやっていけねえだろうなー、みたいなこと言ったり、あとは人並みに、最低限の人付き合いはしようと、無駄に広い実家を溜まり場として提供したり……!
そうか、それでか!
俺は大したことやってないと思うんだが……。
こいつらは俺に恩があると思ってるのか。
んー……、とすると、利用できるな。
「石田」
「ほいほい?何?」
「お前、宝石貴金属を取り扱う大手商社なんだな?」
「うん!世界に羽ばたく宝石商、『ラグジュアリー』って商社!」
「買取はやってるか?」
「もちろん!」
俺はカバンから持ってきた天然物の宝石類、貴金属類を出す。
「これは……!ちょっと待って」
即座に懐からルーペと紫外線ライトを出す石田。
「うん……、うんうん!精密な検査はまだだけど、多分本物だよ!これだけのものなら、値段は合計で億単位、オークションにかければもっと……!」
特に、人の眼球ほどもあるピンクとオレンジのダイアモンドは、オークションに出せばうん十億円は固いとのこと。
確かに、透明度の高い、最高級のピンクやオレンジのダイアモンドは、一カラットにつき二億円くらいするなんて話を聞いたことがあったな。
「売りたい」
「良いの?!!これだけのものを売ってもらえると、うちとしてはかなり儲かるし、私の社内評価もうなぎのぼりだよ!」
「そのかわり、税金関係やらの面倒ごとはそっちでやってくれ」
「もちろん!会社の人呼ぶね!」
そう言って電話をかける石田。
居酒屋に現れた黒服が俺の宝石類を回収、同時に、俺に契約書を書かせた。
よし、取り敢えずこれで金の問題は解決した。
ほんへが書けないよう。