「オリヴィエちゃんも働き者だあ」
「んだな、あの子はええ子だ」
「本当に助かってるわ」
漁師達が口を揃えて蛸人族のオリヴィエを褒め称える。
「キレーな黒いドレスのまま海にざっぱー!っと潜って、魚を網に追い立てるんだ」
「ありゃ凄えぞ、その上、海流を操って魚を引き寄せてるって言っとった」
「この前は新入りの沢村んとこの小坊主が海さ落っこちたんだけんども、オリヴィエちゃんはさっと拾って、海ん中からジャンプして船に飛び乗んだ」
「ありゃ凄えんだ、何故か、勢いよく船に飛び乗っても、船が揺れたり壊れたりはしないんだからな」
大体魔法でどうにかしている。
「んでもよ、最初に会った時はそりゃたまげたぞ」
「んだな、ありゃたまげた」
「あん時は、沢村んとこの小坊主がヒーヒー泣いとったなあ」
そんな漁師達とオリヴィエの出会いは、こうである。
×××××××××××××××
夏のある日、漁師の熱海弘(54)は、海の上で憔悴していた。
「ヒロさん、やべーっす!嵐が……!」
沢村麗央(19)が怯えた声を出す。
「黙って手ェ動かさんかいレオ坊!」
「船を安定させろ!」
「やり過ごせ!」
朝は快晴だった。
しかし、出港してから雲行きがおかしくなり、ヤバいと思った時には大嵐。
土井中村の漁師達は、夏の大嵐に飲み込まれていた。
「うわー!やだー!童貞のまま死にたくねえー!」
「レオ坊!気張れや!」
熱海弘の漁師としての生活が始まってから、三本の指に入るくらいのピンチである。
皆の命を預かっている漁師のリーダーとして、仲間を生かして返す義務がある。
特に、いつもは厳しくしているが、最年少の麗央だけは生かして返してやりたいと強く願った。
「神様よお、海神よお、レオ坊はまだ19になったばかりだぞ。ガキを殺すってのかよ、畜生!」
悪態をつきながらも船を必死に操作し、何とか安定させる。
だが、どこか一つ歯車が狂えば、即座に転覆してもおかしくない状態だ。
風と波が荒れ狂い、漁船の甲板に海水がビシャビシャかかる。
船は左右に大きく揺れて、荒れた波により操舵もままならない。
「誰でもいい、助けてくれ……、レオ坊だけでも……!!!」
そんな時。
「「「「………………ん?」」」」
「……ん、こんにちは」
なんか……、黒いドレスの美女が海の上にいるんだけど?
「あー……、幻覚か」
弘は幻覚だと思った。
荒れ狂う波を、風を無視して、海の上から上半身だけ出している絶世の美女。
極限状態に見える幻覚だと。
「ん、困ってる?」
「幻覚め、声まで出しやがるか。でもどうせなら、若い頃の俺の嫁でも見せてくれりゃいいものを……」
「私、幻覚じゃないけど」
弘は困った。
幻覚が語りかけてくる。
思わず、周囲を見回すと。
「な、何で海の上にドレスの女が?」
「お迎えってやつか……」
「ん?んんー?」
なんか……、全員が見えてるっぽいことに気づいた。
「んー?んんんー?」
「幻覚じゃない」
弘は、じゃあ逆に何だよ……、と思った。
「取り敢えず、転覆しそうだから、助ける?」
「助けられるもんなら助けてくれ……」
藁にも縋る気持ちで言ってみた弘。
「ん、分かった」
どこからか取り出した、動物の骨で出来た杖を振るうオリヴィエ。
すると、魔法のように……、まあ、実際魔法なのだが、狙ったかのようにこの船の半径十メートル辺りが、台風の目のように、凪いだ。
「「「「んんんんんー?」」」」
漁師達は理解不能状態であった。
「あの」
「お、おう?」
「船、乗っていい?」
「あ、ああ、浮き輪を」
「必要ない」
オリヴィエは水中からジャンプし、弘の漁船に飛び乗った。
「「「「た、蛸?!!!」」」」
弘達は、オリヴィエの姿を見て酷く驚いた。
何せ、下半身が黒い蛸なのである。
ひたり、ひたりと音を立てながら、甲板の上を歩くオリヴィエ。
因みに、麗央君は泡を吹いて倒れた。
「ああっ!レオ坊!」
「しょうがねえよ、俺もできるならぶっ倒れてえ」
「物の怪か……?」
「いや、海神様に違えねえ!」
一人の漁師が言った。
「海神様が助けて下さったんだ!」
「拝め拝め!」
「有り難や有り難や……」
そういうことになった。
弘は、流石に海神様であるとは思わなかったが、明らかに人ではないので、詳しく話を聞いてみようと思った。
「その……、あんたは誰だ?」
「私は、蛸人族のオリヴィエ。神様ではない」
「そうか……」
「土井中村に引っ越してきたヨロイと言う一家の嫁の一人。ご覧の通り海が得意なので、この辺りの海を散歩していた」
まあ……、海が得意、と言うのは見れば分かる。
そう言えば、最近、鎧とか言う若いのが、外国から嫁を十二人も連れて引っ越してきたとは聞いているが……、それだろうか?
「何で助けてくれたんだ?」
「ご近所さん付き合いは、大事」
「は、ははは、ははははは!そうか!そうだな!ご近所さん付き合いは大事だな!ははははは!」
弘は、そんな理由で命を助けてくれたオリヴィエを、本当に偉いと思った。
確かに物の怪の類ではあるようだが、命の恩人であるオリヴィエは悪いことをするような女には見えなかった。
「オリヴィエちゃん、ありがとな、助かった」
「ん、構わない。このまま帰る?」
「ああ、頼む」
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「いやあ、あん時のオリヴィエちゃんは女神に見えたな」
「実際女神みたいなもんだろ」
「旦那さんの嶺二さんもそりゃあ男前でなあ、この前は船の上で網引き手伝ってもらったが、とんでもねえぞありゃ」
「二十人で引く網を、一人で、それも片手で引っ張り上げちまったからなあ」
「まあ、オリヴィエちゃん程の女の旦那さんだ、それも納得できるわな」
土井中村青年団は長話をする……。
あー?
あれだなー、傭兵の続きも書きたいなー。
帰還勇者の今書いてるところは、野党のトチ狂った馬鹿政治家、松本史郎が、政治パフォーマンスのために土井中村に押し入ってきて、「跡部政権を終わらせよう!」みたいなことを言って、土井中村に迷惑をかけて、そのシーンがマスゴミの偏向放送で良いことみたいに撮られるシーンを書いてます。
しかし、ここから、ユウチューバーの主人公が、ユウチューブに松本史郎の本性や、どれだけ土井中村に迷惑をかけたのかを公開して、物議を醸すという感じです。
オールドメディア対SNSや新しいメディアって感じですかね。