ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

433 / 1724
作文四百文字とか、ほぼ毎日三千文字書いてる身からすると余裕なんだよなあ。


16話 ユウチューバー開始

「よし、と……」

 

機空城デモンズネスト。

 

北海道以上の面積の空飛ぶ島と城である。

 

モンスターの養殖場、各種生産プラント、機動兵器庫、工廠など、様々な施設を持つ、巨大要塞である。

 

大体なんでもあるが……、一つだけ不満があった。

 

ネット繋がらねえ!

 

そう、折角の現代社会。

 

ネットが使えないのは辛い。

 

十年前、俺が異世界に転移する前はまだまだ黎明期だったネット文化も、今では極めて栄えている。

 

俺の頃は、フラッシュ動画というものが流行っていたが、今では廃れているらしい。

 

代わりに、今流行っているのは、動画配信サイトのユウチューブというものだそうだ。

 

しばらく、このユウチューブと言うものを見ていたが、中々に面白い。

 

俺達もやってみよう。

 

という訳でデモンズネストにネット回線を繋いだ。

 

そもそも、俺の研究は、使い道の分からない古代兵器の解析と言う、工学と考古学を足して魔法学で割ったみたいなことをしていた。

 

現在は、大抵のものは解析が終わったので、実験と、魔導具の開発、異世界の超古代文明について研究している。

 

しかし、現在は、現代日本に戻されてしまったので、超古代文明についての研究はできない。

 

その分、時間が大きく空いてしまって、暇だ。

 

 

 

なので、流行りに乗ってユウチューバーとやらをやってみようと思う。

 

 

 

実際問題、中卒の二十六歳だからな、俺は。

 

コンビニバイトですら雇ってくれるか怪しいぞ。

 

だから、表向きの仕事を作っておきたい。

 

何でも、ユウチューバーは現在、子供のなりたい職業として人気らしいからな。

 

土井中村の近所の子供達も、ユウチューバーは凄いと言っていた。

 

アマチュア芸能人みたいなものらしいからな、目指してみよう。

 

目指せ、百万再生。

 

 

 

まずは、数十万円かけて、最新のビデオカメラやマイク、パソコンを買う。

 

OSが新しく、最初は戸惑ったが、数日練習すれば使いこなせるようになった。

 

そして、有料の動画編集ソフト。

 

これも、マニュアルが分かりやすかったので、すぐに使い方は覚えられた。使い道の分からない兵器を使うために色々と研究してきた俺からすれば、現代日本の道具やネットは親切過ぎるくらいだ。

 

それと、数日かけて人気のユウチューバーを研究する。

 

成る程、名前は偽名で顔を出すんだな。

 

それで、奇抜な格好をすると良いようだ。

 

やるか。第一弾。

 

『自己紹介』だ。

 

 

 

デモンズネストの玉座にて、カメラを回す。

 

「えー、こんにちは。『鋼の勇者』のレイレイです!異世界で勇者をやってました!よろしくお願いします!」

 

軽く自己紹介。

 

服装は、旅をしていた時の鎧を着てきた。

 

革のマントに、アマルガムの部分鎧、ゼンドラ布の服。長い髪は紐で縛る。

 

1m50cm程の長い魔剣『セレネ』に、ロングバレルの魔導式ハンドガン『ヘリオス』の二つ。

 

それとエリクサー二本。オリハルコンのナイフ一本。

 

「えー、今回はですね、色々あって不本意ながら日本に帰ってきちゃったんでね、今流行りのユウチューバーやることにしました」

 

字幕もつける。

 

「やっぱりね、中卒じゃまともな仕事に就けないからね……。勇者時代に稼いだ宝石やら金塊やらを売り飛ばして、五十億円くらい手に入れたので、それを使って日本の田舎で、十二人の嫁と隠居してます」

 

ところどころ赤文字で強調。

 

「今いるここは、勇者時代に手に入れた空飛ぶ城で、デモンズネストって言います。デモンズネストは太平洋の上を飛ばしてます」

 

それと……、そうだな。

 

「好きなものは嫁と研究、嫌いなものは王侯貴族、特技は古代兵器の運用です。これからの動画は……、まあ、ゲームやったり、作った魔導具の実験をしたり、なんか食べたりします。レイレイチャンネルをよろしく!」

 

こんなもんか。

 

さて、投稿してみるか……。

 

ツブヤイターにも動画のURLを貼り付けて、と。

 

どうだろうか。

 

 

 

一週間後。

 

再生数:1574

 

ま、まあ、初回だからね、そんなもんよ、そんなもんよ!

 

コメントを見る。

 

『こーれはまた強烈な奴がエントリーしてきましたねえ』

 

『おっ、小説家になれるかな?』

 

『イかれてる』

 

『でもあの剣は本物だぞ』

 

『私は信じます!』

 

あー、あれかな?

 

偽物かと思われているのか。

 

よし、第二弾。

 

『メイド長呼び出してみた』だ。

 

 

 

「どうも、レイレイです。なんか疑われてるっぽいんで、デモンズネストの内部を紹介します」

 

カメラを持つ。

 

「まあ、デモンズネストはね、あんまり見せ過ぎるとね……、あとあとネタがなくなってきたときに使う予定だから……」

 

実際困る。

 

「まあ、デモンズネストは北海道よりでかいんですけど、殆どはモンスターの養殖と生産プラントだから……。見るところないよ?」

 

軍事施設みたいなもんだから特に面白いようなもんはないんだよなあ。

 

「あ、メイドでも見ます?たくさんいますよ。ホムンクルスだけど」

 

セロを呼びつける。

 

「はっ」

 

「セロ、メイドホムンクルスの総数は?」

 

「六百七十万八千人です」

 

「主な仕事は?」

 

「わたくし、総括メイド長セロを頂点に、十五人の部門メイド長が存在し、警備用戦闘メイド百万、残りは均等に十四の部門メイド長の隷下として様々な職務を遂行しております」

 

「お前達の使命は何だ?」

 

「偉大なる創造主であるマスターの為に働くことです」

 

こんなもんか。

 

「……ホムンクルスって人権とかどうなってるんでしょうね?一応、うちのホムンクルスは手分けさせて一人一日八時間働いてますけど」

 

さて、投稿してみるか。

 

 

 

一週間後。

 

再生数:2191

 

ちょっと伸びた、ちょっと伸びたから!

 

『仕込みは上々だぜ』

 

『鋼の勇者(笑)』

 

『風俗嬢でも雇ったのかな?』

 

『勇者なら証拠見せろよ』

 

『ホムンクルス凄い!』

 

勇者の証拠って何だよ!

 

俺は選ばれし者とかじゃないんだよ、勇者はあくまで称号だから。

 

次だ!第三弾!

 

『魔法使ってみた』だ!

 

 

 

「はい、レイレイです。なんか、まだ疑われてるみたいなんで、魔法でも使ってみましょうかね」

 

デモンズネストの闘技場に来た。

 

「まずは的を作ります。『クリエイトレッサーアイテム』」

 

弓道の的のようなものを出す。

 

「まずは基本中の基本、マジックアローから行きます。まあこれ、威力が弱いんで、雑魚にしか効かないんですけど。俺と嫁にも効かないです。はい、『マジックアロー』」

 

光の矢が的を貫く。

 

「これ、大体弓矢くらいの威力で、魔法に耐性があると効かないんですよねー。相手に一定レベル以上の魔力があれば、魔法抵抗で消えちゃうんですよ。マジックアローは、要は、魔力を固めて飛ばしてるだけなんで」

 

俺はまた的を作る。

 

「でも、マジックアローは魔力の収束と言う基礎中の基礎が学べるんで、攻撃魔法の使い手にならないとしても練習するべきですね。まあ、詳しい魔法の使い方は危ないんで教えないですけど。んで、まあ、魔力の収束をちゃんと使えるようになると、こんなことができます。『マジックレイ』」

 

魔法の光線で的を吹き飛ばす。

 

「今のはマジックレイ、まあ、見ての通りレーザーですね。魔力量が多ければ多いほど威力が上がるんで、魔力量が多い種族は多用してきます。次は、魔力に属性を付与してみましょうか。はい、『ファイアーボール』」

 

火の玉を飛ばす。

 

「はい、これがファイアーボールですね。火属性の基礎です。まあ、実戦ではあんまりなんですけど。燃えやすい奴には結構効きます。けどまあ、魔法戦闘だと、やっぱり魔力抵抗にかき消されちゃうんですよねえ。まあ、今日のところはこれで」

 

どうだ?

 

 

 

一週間後。

 

再生数:20543

 

おおー!伸びてる!

 

コメントは?

 

『CG乙』

 

『作者はプロのCG編集者かな?仕事しろよ』

 

『でも、このレベルのCGをわざわざ作るか?』

 

『本物な訳ネーダロ、騙されんな!』

 

『魔法って本当にあったんですね!かっこいいです!流石勇者ですね!』

 

『いやいや、あり得ないって!』

 

『ハリウッドレベルのCGをこんな弱小動画でやるとは思えない。もしかしたら、もしかするかも』

 

『CGじゃない証拠を見せろ!』

 

ふむ……、段々と波が来てるな!

 

さあ、次だ!

 

 

 

第四弾の動画!

 

題して、『コカトリス食ってみた』だ!!!

 

 

 

「はーい、レイレイでーす」

 

「レイレイの嫁の一人、お狐様じゃぞ!」

 

カエデも呼んでみた。

 

だって、カエデは料理が上手いから……。

 

俺は料理は人並みにしかできないし。

 

「今日は養殖してあるコカトリスで水炊き鍋作ってみんなで食べまーす」

 

「コカトリスはバジリスクの近縁種であり上位個体なのじゃ!二メートルほどの鶏に蛇が生えた見た目をしておるぞ!」

 

「あ、呪いは動画越しじゃ発動しないから安心して見てね」

 

はい、コカトリスの養殖場に移動。

 

「ここで放し飼いにしてます。あ、いたいた」

 

『クエェーッ!!!』

 

「襲いかかって来ましたね、あ、今更ながらグロ注意です」

 

「えい」

 

カエデがコカトリスの首を斬り落とす。

 

「『テレキネシス』」

 

魔法で宙吊りにして血抜き。

 

「このまま暫く待ちます」

 

動画のロゴマークを表示して、待ち時間をカット。

 

「はい、血抜き完了です!今からバラして調理します!」

 

「『クリエイトレッサーアイテム』」

 

特大の刃物を用意して、解体する。

 

「ここが毒腺ですねー、これ、破るとヤバイですよー。試しにここで破ってみますね、えい!」

 

毒が零れ落ち地面を溶かす。

 

ホムンクルスメイドも来て、解体の手伝い。

 

早送りで流す。

 

「はい、解体できました!」

 

「次はこれを鍋にするのじゃ!」

 

まあ、普通に水炊きを作った。

 

そして、嫁を集めて。

 

「では、いただきます!」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

食事風景をカットしつつ流す。

 

「「「「ごちそうさまでした!」」」」

 

「はい、今日はここまで!ありがとうございましたー!」

 

さあ、どうだ?!

 

 

 

一週間後。

 

再生数:170452

 

うおっ?!跳ね上がった!

 

コメント欄は?

 

『CGだ!あり得ない!』

 

『合成だろ!』

 

『撮影地はどこだ?』

 

『嘘に決まってる』

 

『お嫁さん達も素敵ですし、料理も美味しそうでした!凄いです!』

 

『仮にこの動画がフルCGだとしたら数百万円単位の金がいるだろう』

 

『モンスター娘、だと?』

 

『これ、本物では?』

 

『ちょっとこの動画見てくれ、四ヶ月前の新宿に現れて突然消えたコスプレ集団の動画だ』

 

『これ、動画の女達じゃねーか!』

 

『え?え?おい、おい』

 

『オイオイオイ』

 

『マジもん?』

 

『これ、ガチなやつ?』

 

『日本始まったな』

 

よしよし、いい感じだ。

 

 

 

その後も、ギアを上げて三日に一回のペースで適当な動画をアップする。

 

第五弾、『デモンズネスト大図書館に行ってみた』を皮切りにして続々動画をアップ。

 

『ハーピィ嫁と空飛んでみた』

 

『ユニコーン嫁の背中に乗ってみた』

 

『ドラゴン嫁に龍変幻してもらってみた』

 

『魔導具ヒートサーベルを作ってみた』

 

『ミミック開けてみた』

 

をアップ。

 

結果、チャンネル登録者数28000人、総再生数180万達成!

 

面白くなって来たぜ……!!!

 

編集は多少手抜きでも頻繁に投稿することにより認知度を上げることが重要らしい。

 

ぶっちゃけ、無職なんでやることがないし、三日で一本くらい余裕だ。

 

喋るのも得意だし、台本なんざなくとも話せる。

 

だって俺、勇者よ?

 

社交パーティーやら民衆の前でのスピーチやらやってたんよ?

 

十二人も嫁を口説いたんよ?

 

台本なんざいらんいらん。

 

アドリブでゴーよ。

 




高校時代から20キロくらい太ったゾ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。