そうだ、折角だから、コラボ動画とかやりたい!
ツブヤイターも8000人にフォローされてるし、同じユウチューバーともやりとりしてるし、誰か誘ってみるか!
そうだな……、初期の頃からガチ応援してくれてたパンプーキンさんを誘ってみるか。
ツブヤイターのダイレクトメッセージで、と。
『パンプーキンさん、突然の連絡すいません。レイレイです。パンプーキンさん、コラボ動画やりませんか?』
『a.ty、まぢ』
『はい?』
『すいません、取り乱しました。本当にコラボしてくれるんですか?』
『初期から応援してくださっているパンプーキンさんとコラボしてみたいです。どうでしょうか?』
『喜んで!いつにしますか?月曜とかどうですか?』
『はい、いつも暇なのでいつでも大丈夫です。では、月曜で。待ち合わせ場所はどこにしますか?あ、どこでも良いですよ、転移魔法で連れて行くので』
『本当ですか?!なら、神奈川県の平塚の三丁目、大宮公園で待ち合わせでいいでしょうか?』
『分かりました。時間は午前九時くらいで良いですか?』
『はい、よろしくお願いします!何日くらい滞在して良いですか?』
『取り敢えず一週間くらいで。着替えとかは魔法で用意しますから手ぶらで大丈夫ですよ』
『はい!』
そういうことになった。
パンプーキンさんは、独身の女性ユウチューバーだ。結婚予定の彼氏がいるらしいので、俺の嫁が増えるみたいな事態はないです。
ビデオブログを中心に、ファンタジー系ゲームの実況もちょくちょくやる、可愛い系の二十代半ばの人。
動画の最中に飼い猫が乱入してくる『突然の猫』が代名詞のユウチューバーで、ファイナルファンタズマシリーズを死ぬほどやり込んでめっちゃ考察してる。
大学では考古学を専攻し、ヨーロッパの魔法使いについて研究していたらしい。つまりは、ファンタジーガチ勢だ。
そしていつもファンタジーっぽいコスプレ風の服を着ているのも特徴だ。
チャンネル登録者数は248万人、総動画数487本、総再生数2億1457万回。
俺は魔法で空を飛んで、指定された待ち合わせ場所に時間通りについた。服装は鎧だ。剣と銃は仕舞ってある。銃刀法。
茶髪のショートカット、ズボンとやたらとベルトがあるコートの女性。カバンを一つ持っている。
「パンプーキンさんですか?」
声をかける。
「は、はいっ!レイレイさんですねっ!レイレイさんがそ、空から現れました!凄い!」
パンプーキンさんは既に録画を開始していたようだ。
俺もカメラを浮かせて録画しているのでおあいこだな。
「あ、猫ちゃんは大丈夫ですか?」
「あっ、はい、うちのにゃー子は彼氏に預けてますから!」
なら大丈夫か。
「行きましょうか。はい、手を握ってください、転移魔法を使います」
「はいっ!」
はい、転移。
「……はっ?!す、凄い、本当にテレポした!」
「ようこそ、ここが機空城デモンズネストです」
カメラで色々なところを撮るパンプーキンさん。
「ほわぁ……、しゅごい……」
感動のあまりキャラ崩壊している。
「セロ」
「はっ」
「こちら、客人のパンプーキンさんだ。一週間ここに滞在する。ホムンクルスのニューロンネットワークに周知させろ」
「了解しました」
「ほわぁ……」
「パンプーキンさん、何か見たいものとかあります?」
「まっ、まっ、魔法!魔法を生で見たいですっ!」
「んじゃ、闘技場に飛びますか」
転移。
「まず、的を作ります。『クリエイトレッサーアイテム』」
「魔法!!!」
「『フォトンレイ』」
「コラプションだ!!!」
あー、確かファイナルファンタズマシリーズの魔法だっけ?
「凄いなー、良いなあ!魔法、カッコいいなあ!」
「パンプーキンさんも魔法使いたいですか?」
「それはそうですよ!」
「教えましょうか?一週間もあれば、パンプーキンさんなら二つくらいは覚えられますよ」
「えっ、えっ、えっ、ほ、本当ですか?!!!」
「マジです。じゃあ、この時間は魔法の練習にしましょうか」
「はいっ!で、でも、魔力とか、私にあるんですかね?」
「魔力って何にでもありますよ?人間亜人だけじゃなく、モンスターから、自然、大気の中にもあります。パンプーキンさんは人間にしては多い方ですね!」
「おお……!」
「でも、魔力の使い方を学ぶのが一番難しいんですよねえ。魔力操作の訓練だけで数年かかります」
「え?じゃあ、どうやって一週間で?」
「裏ワザがあるんですよね。魔力操作がめちゃくちゃ上手い奴の中でも、他人の魔力に干渉できる奴がいます。そいつに体内の魔力を弄って貰えばあら不思議、魔力操作がすぐに覚えられるって訳ですよ」
「ほへー」
「実際、俺と嫁が住んでいる田舎の子供達に魔法を教えたところ、大体みんな一ヶ月で六つほど覚えました」
「でもそれ、危なくないですか?」
「危険はないです。まあ、例え何があっても、蘇生魔法は使えますし」
「おおー」
「あ、でも、パンプーキンさんが他人に魔法を教えるのは無理だと思います」
「え?何故ですか?」
「この訓練法はあくまで魔力操作の取っ掛かりを得られるってだけで、他人の魔力に干渉して魔力操作の手伝いができるようになるまで鍛えるとなると、数年は必要です」
「ははあ……、そんな感じですか」
「さ、じゃあ、魔力に干渉しますよ、はい!」
「ふにゃ?!にゃあ?!」
「ほら、魔力の流れに乗って!」
「あ、う?ああ!こうかな?」
「そうです、そんな感じです!」
昼まで、魔力操作を教えた。
なんとか、魔力による肉体の部分的な強化を覚えたパンプーキンさん。
そして昼。
「じゃあ、食事にしましょう。リクエストはありますか?」
「あ、じゃ、じゃあ、コカトリス、食べてみたいです!」
「嫌いなものとかあります?」
「特にないです」
「では、コカトリスの肉を蒸して、適当な野菜を茹でましょうか。野菜も異世界のものを食べますか?」
「はい!」
「でも、正直な話、品種改良されてる現代の野菜の方が異世界の野菜より美味いですよ。異世界は、日本ほどバリエーション豊かな野菜はありませんでした。肉はたくさんありましたけど。それに、食べ慣れない味だと思うんで、無理そうだったら残して大丈夫ですからね」
「はい、大丈夫です!」
「分かりました、では。『コール』お狐様ー、料理頼む!」
「はーい!お狐様じゃぞー!」
カエデを呼んだ。
「ほっ、ほああーっ?!!お、お狐しゃまだぁ……!!!」
「お主が旦那のお友達かえ?妾はお狐様じゃ!よろしくなのじゃ!」
「はいっ!あ、あのっ!尻尾触って良いですかっ?!」
「んー?構わんぞ?同じ女じゃしな」
カエデの尻尾を触るパンプーキンさん。
「ひゃわあもふもふもっふ……!!!」
とても喜んでいるようだ。
「前に絞めたコカトリスの肉が余っておるから、それで蒸し鶏を作るのじゃ!ああ、もちろん、異次元倉庫に仕舞っておったものじゃから、鮮度の問題はないぞ!」
そう言って、蒸し鶏のトマティカソースかけ、茹で野菜、シパタのポタージュ、メトロ麦と牛乳のクッキーを作ったカエデ。
「「「いただきます!」」」
うーん、やっぱり、異世界の野菜はあんまり好きじゃない。
けど、パンプーキンさんは好きなようだ。
大根と人参を足して割ったようなキュロリア、芋っぽいカブのメタナン、里芋っぽい質感なのに味はサツマイモのワナヤ芋……。
俺はあんまり好きになれなかった。
「そんじゃ、晩飯までデモンズネストを見て回りましょうか」
「はい!」
「そうだ、パンプーキンさん、魔法の装備とか、欲しくないですか?」
「えっ?!くれるんですか?!!」
「流石に武器とかハイレベルな鎧とかは法に引っかかりそうなんで駄目ですけど、危険な時にバリアを張るアクセサリーとか、壊れない服とかなら良いですよ!」
「く、下さいっ!」
「じゃあ、今から作りましょうか。デザインどうします?」
「セフィラスみたいな感じが良いです!」
セフィラスってのは確か、ファイナルファンタズマ7のラスボスだったな、知ってるぞ。
黒いコートにベルトを巻いて、肩に紋章を入れて……、こんなものかな?
コスプレっぽく、かつ、ギリギリこれで外を出歩いてもヤバくない程度には抑えた。
「どうですかね?」
「か、かっこいいです!」
「着てみて下さいよ」
「はいっ!」
「念じれば勝手にベルトが締まるんで」
「わあ!本当だ!」
「それと、破けたり色が落ちたりすると再生しますし、かなり丈夫です。材質はアイスドレイクの革なんで、防寒もバッチリですし、魔法で周囲に空気の膜を張って暑くも寒くもない温度に調整されますから、季節を問わず着れます」
「しゅごい……」
「後これ、危ない時にバリアを張るネックレスです」
「カッコいい……」
そして、晩飯を食べた後に、客用の宿泊室に案内した。
こんな感じのサイクルで一週間過ごした。
結局、パンプーキンさんは二つの魔法を覚え、服を三着とアクセサリー二つを持たせて帰した。
死ぬ程喜んでいた。
そのコラボ動画を投稿!
題して、『パンプーキンさんとコラボしてみた〜デモンズネスト一週間滞在〜』だ!
一週間後。
再生数:315549
コメントは、と。
『ファーwww』
『こマ?』
『草』
『なにこれは』
『パンプーキンです!今回はありがとうございました!心から感動しました!またいつかコラボしましょう!』
『嘘乙』
『ファンタジーガチ勢のパンプーキンさんが嘘つく訳ねえだろ!』
『パンプーキンさんはファンタジー好きすぎてファイナルファンタズマ14オンラインの公式プロモーターになった人だぞ、ファンタジー関連で嘘をつくはずがない』
『言うてCG以外に何か説明できるか?本当に空飛ぶ島があるとでも?』
『でもパンプーキンさんだぞ?』
『パンプーキンさんの動画も見てきたが、この動画と全く同じものが別の角度で映っていた。数百万円クラスのCG動画一週間分を二本も作るだろうか?作れるだろうか?』
『俺は信じてたぞ』
『魔法の道具売ってみろよ、そしたら信じてやる』
上々だな。
胡散臭さがファンタジーガチ勢であるパンプーキンさんによって補強され、現実感を出している。
よし、良い調子だ!
最近何も良いことがない。