土井中村はど田舎だが、割と人はいる。
小学校と中学校もある。ただしクラスは一学年につき一つずつしかないが。
高校は電車で二時間行った先の渡海町って言う都会の街にある。
渡海町は北海道でもかなり栄えてる方の街だな。
まあ、それはさておき、土井中村は田舎だが、夏祭りをするくらいの人はいるってことだ。
今日は土井中村の夏祭りだ。
前も言及したと思うが、土井中村の守護神は狐。
お狐様である。
この祭りも、お狐様を讃えるためにやるらしい。
興味は全くないので詳しくは聞かなかった。まあ、傷付いた狐を助けた善良な農民がこの村にいて、実は助けた狐は神様で、その年から村は豊作になった……、とか、そう言う系の伝承があるらしい。
神社の神主さんがお神酒をたくさん作って、村の若い衆が神輿を倉庫から引っ張り出す。
子供達が軽トラの荷台に乗り、太鼓と笛を鳴らしながら、若い衆の神輿と共に商店街を回る感じらしい。
あれだな、規模が小さくて、テキ屋とかは出ない感じだな。
別段、村の外部から人を呼んだりもしないらしいし、平和な祭りになりそうだ。
ぶっちゃけ、俺も若い衆にカウントされるのかもしれない。
だが、男達に混ざってクソ暑い夏の夜に神輿を担ぐのはごめんだ。
なんで、先手を打って、「俺、魔法で花火あげます!」と言っておいた。
今後も末永く使えるように、ボタンを押すとランダムな打ち上げ花火が出る筒を作っておく。
手抜きだ。
花火は無事上がった。
俺は夏祭りをサボれて嬉しい、住民は花火が見れて嬉しい。
ウィンウィンである。
因みに、その打ち上げ花火生成機の製作過程はユウチューブにアップした。
二十万再生された。
うーむ……。
まだ伸びないな。
コラボで他人に頼り過ぎるのもどうかと思うし……。
何かないかな……?
あ、そうだ、グッズの販売……!!!
チャンネル登録者数は今、十万人を突破した。
それを口実にグッズの販売を開始しよう!
ヤホーのオークションサイト、ヤホオクで、定額でちょっとした魔導具を売るか。
売れたらデモンズネストの物質生成器のラインを一つ使えば良いし。
そうと決まればグッズの紹介動画だな。
『チャンネル登録者数10万人突破記念!グッズ作ってみた』
投稿だ!
「はいどうも!レイレイです。なんか気付いたらチャンネル登録者数10万人突破してました!ありがとうございます!」
短いファンファーレ。
暗転。
「と言う訳でしてね、今回はね、ドワーフ嫁のSと、レイレイチャンネルの公式グッズを作っていきたいと思います!」
「はーい、僕だよー!なんか作ってヤホオクで一万円くらいで売るよー!」
さあ、どうするか。
ノープランである。
「そして俺、自分で言っておきながらノープランだから」
「え、僕が考えるやつ?」
「頼んだ」
「んー……、ネックレスとかどう?」
ネックレス……。
「良いんじゃない?」
「視聴者さんは魔法的なアレコレを期待してるみたいだし……、エアーコントロールの魔法をエンチャントしたネックレスとかどう?」
「良いと思うよ」
暗転。
デザインを決める。
「革紐に鷲眼石でどう?」
「シンプル過ぎない?」
「あんまり凝ったの作ってもね……」
「一万円分のコストならもうちょっと凝ったの作れるでしょ?」
「うちの動画はファンタジーがウリなんで。あんまり凝り過ぎると工業製品感が出ちゃうでしょ?」
「まあ、それもそっか。これがウケたら次のグッズはこんな感じにしない?」
ふむ、ブレスレットか。
バルカン鉄とバーゲストの革の黒いブレスレット……。ファンタジー味を出しつつも、現代社会でも通用するオシャレ感。
イエスだね。
「いっそこれも今販売しようぜ。値段は一万円な」
「エンチャントはどうする?」
「うーん、『スタミナアップ』で」
暗転。
実際に作っているシーンを流す。
「プロトタイプはこんな感じ。一回作っちゃえば魔法で複製できるからね」
「うん、良いんじゃないかな?デザインは男女どちらでも行ける感じだし」
「じゃあ、これで完成か」
「ヤホオクで一万円?」
「そうだね、ヤホオクで一万円。鷲眼石のネックレスは暑さや寒さから守られる。バルカン鉄のブレスレットはスタミナが増える」
「具体的な効果はどれくらい?」
「ネックレスは外気の温度に合わせて、寒いなら最大プラス十度くらい、暑いなら最大マイナス十度くらい。ブレスレットはスタミナが三割くらい増えるよ!」
「え?そんなもんでいいの?」
「あんまりやり過ぎてもねえ……。最初はこんなもんでしょ」
「まあ、下手に効果の高い魔導具を流通させたら怒られそうではあるよね」
「と言う訳で、今晩から販売開始します!買ってね!」
こんなもんか。
再生数:381994
コメントは、と。
『ついに化けの皮が剥がれる時がきた』
『盛大な自殺』
『まあフレーバーよフレーバー』
『面白けりゃ良い気がしてきた。頑張ってくれ』
『買います』
『一万もとんのかよ』
『まあ、本物なら転売すりゃ良いだろ』
『実は応援している俺だが、今回のグッズ発売で偽物であると発覚したら炎上しそうで嫌だ』
『まあ、多分、他のユウチューバーが面白がって買うでしょ』
ふむふむ。
まあ、見てろよ。
取り敢えず、グッズは一週間で100個ほど売った。評判が良ければ再販する。
………………ん?!
これは……!!!
『MERIKENチャンネル:魔法のアクセサリー買ってみた』
メッ……、MERIKEN?!!!
か、買ったのか……。
まあ、MERIKENは金持ってるだろうしな。
動画見てみるか……。
再生、と。
『ピーピロリーピロリー……、MERIKENチャンネルー!』
軽快な口笛と共に笑顔で現れるMERIKEN。
『えー、今回はですね、今話題の勇者系ユウチューバー、レイレイさんが発売している公式グッズを買ってみました!』
レターパックをカメラに映す。
『何で今回このグッズを買ったかと言いますとですね、なんとこれ、魔法のアクセサリーらしいんですよ!』
レターパックを開封するMERIKEN。
『おお、雰囲気ありますね、これは……、羊皮紙、ですかね?羊皮紙に包まれています。中身は……、ネックレスとブレスレットです!商品名はイーグルアイネックレスとバルカンブレスレット!』
カメラに映す。
『んー……?これ、凄いですね。今まで色んなもの買ってレビューしてきましたけど、こんな模様の石、見たことないです。あ、説明カードが入ってる……、よ、読めない。これは異世界文字なのかな?ああ、もう一枚の説明カードは日本語ですね、何々……?』
説明カードを読むMERIKEN。
『ネックレスはジャッカロープの革紐と鷲眼石でできています。ブレスレットはバーゲストの革とバルカン鉄でできています。……何だか分からない単語が出てきましたね!あ、補足があります。ジャッカロープはウサギ型モンスター、バーゲストは犬型モンスターだそうです』
そうだぞ。
『鷲眼石は標高の高い異世界の山に埋まっている鉱石で、バルカン鉄は異世界のバルカンと言うドワーフが作った鉄、だそうです』
そうなんだぞ。
『では、早速、本物かどうか試していきたいと思います!まずはこのネックレスです!体感温度を最大十度まで下げられるそうです!今日の外の気温は32度!このネックレスをつけていれば22度に感じる訳ですね!』
そう言って、ネックレスをつけたまま外に出るMERIKEN。
『あ……!暑くないです!本当に暑くないです!見てください、全然汗かいてないでしょ?』
そう言って三十分くらい外出してから帰ってきたMERIKENは、自分のシャツや肌をアップで見せる。
『ほら見てください!全然汗とか滲んでないでしょ?!使用感は、なんかこう、空気の膜みたいなのが自分の周りにできてる感じですね。本物ですよこれ!』
次に、ブレスレットのレビューに移るMERIKEN。
『まず、このルームランナーの時速20キロ設定でどれだけ走れるかで、スタミナが本当に三割増えているのかを検証したいと思います!まず、普通に走ります!』
十分ほどでダウン。
『はー、はー、はー、き、記録は4.5キロメートルです……。二時間後、ブレスレットつけて再挑戦します……、はー、運動不足だ』
暗転。
『はい!体力回復しました!では、このようにブレスレットをつけて挑戦します!』
十数分後ダウン。
『はー、はー、き、記録は?5.8キロ……、三割くらい増えてる!こ、このブレスレットも本物です!』
暗転。
『いやー……、ビックリですよね。本物の魔法のアクセサリーな訳ですからね。僕が自信を持ってオススメします、これは本物です』
そうだぞ。
『本物の魔法のアクセサリー、大事にします!レイレイさんありがとうございます!今回の動画は以上です!』
エンディングが流れる。
ふーむ、MERIKENさんに宣伝してもらったみたいな形になったな。
コメント欄にお礼を書いておくか。
『レイレイです。うちのアクセサリーの購入とレビュー、ありがとうございます!今後も頑張っていきます!また新しいアクセサリーの販売もそのうちやる予定です!』
と。
なお、100個限定で売ったアクセサリーは即座に売り切れ、追加で100個作るが即完売した。
MERIKEN効果やべー……。
今盛り上がるところじゃないんですよね。
割とあっさりとトップユウチューバーになる予定ですし、盛り上がるとこどこ……?ここ……?
異世界の亜人の国が国土ごと地球に転移してくる展開を考えてるんですけどどうなるか分からん……。
読者さんが望まない展開なのかもしれない……。
そもそもこれは読まれてるのだろうか……。
思いつきなので、プロットをそのまま公開してるくらいのもんなんだよなあ。
もしも本格的に連載するとしたら書き直すわ。