ユウチューバーを始めて三ヶ月。
チャンネル登録者数は三百万人を突破し、大物ユウチューバーの仲間入りを果たした俺。
最近ではギアをさらに上げ、毎日更新へ。
まあ、動画編集はホムンクルスメイドにやらせるようになったんだけど。
それに、俺と嫁十二人なので、一日に手分けして何本か動画を撮って、それを別々の日に投稿するという、いわゆる「撮り貯め」をしているから、空いている時間はかなり多い。
国内トップユウチューバーとしては最も暇だろう。
そんな俺に、様々なお誘いがくる。
企業案件、コラボのお誘い、ユウチューバーグループへの勧誘などだ。
まあ、ほどほどに受けたり断ったりしている。
企業案件についてはこうだ。
まず、企業案件とは、ユウチューバーに企業が製品紹介をやらせたりすることを指すのは皆知っているだろう。
兎に角、色々な案件が来た。
化粧品、ゲーム、食べ物などを中心に、様々な案件が来る。
そこら辺は適当に受けている。
あらかじめ案件動画であることを明記して、動画にしている。
真面目にレビューしているので、企業側も中途半端な製品は渡してこない。
特に、とあるアウトドア用品企業が、解体用のハイモデルナイフを送りつけてきた時は、それを使ってヒグマを解体するアニエスの動画を作ったんだが、それが大いにウケて、めっちゃ売れたらしい。
他にも、オリヴィエに本のレビューさせたりとか、グロリアがなんか食ったりとかしている。
コラボのお誘いは、同じ大物ユウチューバー間でたまに、一緒になんかやりましょうという話が来る。
ドッキリの類は全部看破して逆ドッキリを仕掛けることにしている。
この前、ヤミヤミさんとカジノに行った時は、俺がルーレットのジャックポットを当てるか外すか選んでくれと聞いて、ヤミヤミさんは当ててくれと頼んできたので、普通に当てて三千万円稼いだ。なお、魔法は使っていない。単純な動体視力と演算能力である。
グループへの勧誘は断っている。
ユウチューバー事務所が言うには、グッズの販売の手伝いや企業案件を持ってきてくれることなどをメリットとして提示してきたが、うちにはホムンクルスメイドが約七百万人もいるので、手は足りている。
それに事務所のしがらみに捕らわれるのも嫌だ。
個人でやる。
グッズ第二弾の防御力が上がる指輪と火属性ダメージ半減のイヤリングを販売。
千個くらい売るが、即完売。
ツブヤイターのフォロワーは五十万人を超えた。
面白いことになってきた。
さて、今は丁度、夏の猛暑も過ぎ去り、すっかり過ごしやすい季節になってきた。これから寒くなるんだろう。
そんな中、俺は。
「オフ会やりますか」
チャンネル登録者数三百万人記念に、オフ会を企画した。
東京で、適当にデカいイベントホールを借りる。
まあまあ人来るんじゃねえか、とは思うんで、一応、二千人くらい入れるイベントホールを借りた。
まあ五百人も来たら良い方かな?
動画でもオフ会の告知をして、ホムンクルスメイド部隊にイベントホールの設営をやらせて、いざやろう、ってことに。
オフ会当日。
入退場自由、無料にしたら、二千人以上来たんだけど……?
「困った」
安定のノープランである。
どうせ五百人も来ないだろうと思い、適当に握手でもして終わろうかと思っていたので、完全に予定が崩れた。
「どうも、レイレイです」
「お狐様じゃぞー」
「「「「キャー!レイレイー!!!」」」」
「「「「お狐様ー!」」」」
「「お、おう……」」
えぇ……。
そんなに人気なのか俺……?
年齢層は若い人が多く、性別も半々ってところか?
取り敢えず、ホールの壇上に上がる。
「「「「キャー!!!」」」」
えぇ……。
「はい、どうも、レイレイと嫁です」
拡声の魔法でホール全体に声を響かせる。
「えー……、まずですね、こんなに人が来るとは思ってませんでした。皆さんの行動力舐めてました、ごめんなさい」
頭を下げる。
「サイン色紙とお土産に持ち歩くと若干良いことがある護符を用意してたんですけど、五百人分しかないんですよねー」
「「「「あー……」」」」
残念そうな声を出す観客。
「なので、今作ります。『クリエイトレッサーアイテム』」
色紙と護符を作り、魔法で書き込む。
「「「「キャー!!!」」」」
「はい、できました。まあ、コピーみたいなもんなんで、大した手間はありません。はい、もらってください、参加賞です」
魔法でサインと護符を飛ばして渡す。
「「「「キャー!!!」」」」
「まあ、正直、俺のサインとか持ってても自慢できるもんじゃないですよ」
因みに、異世界語で書いてある。
「さて……、まあ、ノープランなんですよね。何やりましょうか?国会議事堂爆破します?」
「「「「えぇ……」」」」
「いやまあ、流石にそれは冗談ですけど、マジでノープランです。握手でもしますか?」
「「「「したいでーす!!!」」」」
「えー……、魔法で俺の手首を増やして握手するのは駄目ですかね?こう、遠隔で手首飛ばして……」
「「「「駄目です」」」」
そうかぁ……。
「じゃあ普通に握手会やりますか……、メイド部隊の指示に従って動いてください。でもこれ、待ってる人は暇だと思うんで、その間、嫁の面白トークでも聞いててください」
「えっ、妾?」
「できるよな、面白トーク」
「えっ、妾そういうのは無理じゃぞ?」
「じゃあうるふと対戦ゲームでもやってろ」
俺はルシアを呼ぶ。
そして、バックスクリーンの大画面でルシアとカエデが新作の格ゲーでバチバチやり始める。
よし、間を持たせたな!
さあ、握手会だ。
……俺と握手するメリットって何?
女、大学生くらい。
「レイレイさんめっちゃ応援してます!」
「ええと、ありがとうございます?」
握手をする。
「写真いいですか?!」
「どうぞ」
男、高校生くらい。
「レイレイさん応援してます!」
「ありがとうございます」
「握手してください!」
「良いですけど」
握手をした。
親と一緒の小学生。
「レイレイー!」
「おー、元気ですねー」
握手をする。
おっさん。
「チャンネル登録者数三百万人おめでとうございます」
「ありがとうございます」
握手をする。
全員と握手をした。
これは何なの?
何の意味があるの?
俺と握手して何かメリットがあるの?
分からない。
そうして、無事、初めてのオフ会を成功させた俺。
ツブヤイターでの評価は?
『レイレイさんは思った以上にテンションが低かった。けど、魔法は本物だった』
『レイレイはローテンションだった。けどオフ会は盛り上がった』
『レイレイはあのローテンションが逆に良い』
『レイレイのあのやる気のなさがかわいい』
『レイレイさんはあの大人っぽい雰囲気がカッコいい』
なんか……、そういうことらしい。
帰還勇者、今、実は地球にも高度な古代魔法文明を築いていた古代人がいたんだよ(キバヤシ並感)!!!ってなってるけど、これ完全にアサシンクリードでは????
展開被り許して、お兄さん許して。