さて、ABC通信のインタビューの続きだ。
「では次に、異世界のお話を伺いたいと思います。異世界はどのようなところでしたか?」
「場所にもよるが、人間の王国は、それはそれは酷かった。中世後期並の文化で、歪な階級制度により、王侯貴族が幅を利かせ、悪事をした。治安も地球のどの地域よりも悪く、麻薬、人身売買、殺人、追い剥ぎが横行していた」
「成る程……。異世界に誘拐されたと仰いましたが、誰にですか?」
「そのクソみたいな王侯貴族にだよ。勇者は、連中の政治のカードだ。異世界には、人間の王国以外にも、人間の帝国や共和国と言った大きな国があった。それに対する見せ札として召喚されたんだよ、俺は」
「それは……、なんと言いますか……」
「ああ、同情は要らない。王国からはすぐに出奔したからな」
「お答えしにくい質問かもしれないのですが、どのように出奔したのですか?」
「まず、盗むんだ」
「盗む?」
「魔力の操作は裏技を使ってもらってすぐに覚えた。魔法の扱いは、必死に異世界の文字を覚えて、夜な夜な図書館に通って禁書を読んだ。戦い方は、俺を殴って罵り遊ぶ騎士達から学び取った」
「………………」
「そうして、全てを盗むと、王国の魔法使いも騎士団も全て叩きのめし、出奔した」
「それは……、非常に大変な思いを……」
「同情は要らない。それに、王国は今頃滅んでいるだろうよ」
「何故ですか……?」
「さあなァ……?ククク、あの高慢ちきなクソ共が苦しんで死ぬところが見られなかったのが、唯一の心残りだな。で、次は?」
「は、はい。次に、奥様方の話についてです。失礼な言い方かもしれませんが、奥様方は何ですか?」
「ああ、俺の嫁は全員亜人だ」
「亜人とは?」
「記録によると、モンスターから進化した知的生命体とされているな」
「モンスターとは?」
「モンスターは、魔力を扱える動物のことだ」
「成る程、では、亜人とはモンスターの進化した、人間に近い生き物ということですね」
「ああ、そうだ。人間の近縁種でもあり、生殖も可能だ。まあ、俺は当分子供は作らないつもりだが」
「亜人と人間は遺伝子的にも近いのですね。では、あまり人間と変わらないんですか?」
「いや?むしろ、人間より亜人の方が上だぞ?」
「そうなんですか?」
「猿から進化した人間より、狼やドラゴンから進化した亜人の方が強いに決まってるだろ」
「では、人間は亜人より劣っていると?」
「ああ。まあ、異世界の人間共はそれを決して認めないが」
「亜人は差別の対象だと?」
「そうだ。亜人が人間に捕まれば、大半は殺される。もしくはおもちゃにされるか……、女なら犯されて、男なら奴隷か」
「それは……」
「異世界の人間はクソ蛮人だぞ?カトリックの悪いところを煮詰めたみたいな宗教が罷り通るからな」
「では……、では何故、そんな野蛮な人間の命令通りに、戦ったのですか?」
「いや、俺は亜人のみんなの為に戦ったのであって、異世界の人間の命令通りに動いた訳じゃねえよ。結果として、異世界の人間共が救われただけで」
「成る程!魔王討伐は亜人に請われて、ということですね?」
「そんな感じだな。獣王ライオネル、不死王ウラド、海王ポセイドン、狼王ロボ、妖精王オベロン、龍王ゼファー。全員、人間なんかよりずっといい奴らだった。まあ、大分荒っぽいが」
「そうですか。しかし、何故、亜人は強いのに差別の対象に?」
「強いからだよ。自分より優れた亜人のことが怖くて仕方がないんだ」
「成る程。しかし、強いのなら、戦えば良いのでは?」
「何も、亜人の全てが強いって訳じゃないからな。それに、数も少ない。だから、亜人達は、六人の王の下で、身を寄せ合って暮らしている」
「そうなんですか……」
「まあ、戦えば勝てるんだけどね」
「え?」
「でも、戦うと被害が大きいって分かっているから、亜人達は戦わないんだけど」
「では、争ってはいないと?」
「いや?人間はクソ馬鹿だから、勝てると思って亜人の国にちょっかい出してるよ?」
「えぇ……」
「まあ、適当に相手して逃してるらしいけどね」
「成る程、では次に、魔王について教えていただけますか?」
「魔王?そのまんまだよ。モンスターの王で、人間と亜人を襲う」
「魔王の何が脅威で、排除したのですか?」
「ああ、魔王は王だからだよ。普通、モンスターは無秩序に暴れるもんなんだけど、魔王は、モンスターに指示ができるんだよね」
「つまり、普段は無秩序に暴れるモンスターに、指向性を持たせることができる、と言うことですね?」
「そうね。魔王がいると、普段は手を組むことがあり得ないはずのモンスター同士が徒党を組んで襲いかかってくる……。これはマジでヤバい」
「では、魔王を直接撃破すれば、モンスターは烏合の衆になる、と」
「そんな感じだな。まあ、その前に、魔王の僕の六魔将ってのも倒したが」
「六魔将?」
「まあ、ボスキャラだな。六体の強くて賢いモンスターだよ。それぞれ、亜人の六王のところに攻め込んでいた」
「あれ?人間の国には攻め込まなかったんですか?」
「だって、人間の国、雑魚だもん。最後にプチっと潰そうとでも思われてたんじゃね?」
「は、はあ……」
「王国の国民が大体三億、亜人の国は六つ合わせて三億だ。それなのに無視されちゃう王国雑魚過ぎて笑える」
「人間は弱いんですね?」
「ああ、弱い。だがまあ、何より、亜人は基本的に、人間と争いたいとは思っていない。確かに、亜人六国家ならば、人間の国である、王国、帝国、共和国の全てを滅ぼせるだろうよ。でも、そんなことをしたら身内に犠牲者が出る。亜人は仲間意識が強いんだ、仲間が死ぬのは駄目なんだ」
「成る程……、無辜の民に犠牲が出るのを嫌い、防衛のみに専念しているのですね」
「ああ、そうだ。次の質問は?」
「では、最後に、古代兵器について教えていただけますか?」
「古代兵器?そのまんまだよ」
「というと?」
「異世界では、遥か昔……、恐らくは数百万年前、魔法と科学を極めた古代人達がいた」
「古代人……」
「古代人は、よく分かっていないが、戦争で滅びたらしい」
「戦争ですか?」
「ああ、古代人同士の内輪揉めだ。とある一人の、気の狂った古代人が古代兵器を暴走させて回り、世界を破滅させたそうだな」
「はあ……」
「そして、正気の古代人達がその企みに気づいた頃には、全てが手遅れだったらしく、自分達の技術を後世に残すために、古代遺跡を作り、そこに技術を封印した」
「それを発掘して使っているのが、レイレイさんだと?」
「そうだ。亜人達の全面的なバックアップにより、発掘は上手くいき、十二の技術を再生できた。多分、これで全てだ」
「成る程……」
「これで十分か?」
「はい、ありがとうございます」
そう言って、礼金をもらい、帰ることにした。
後日、ネットニュースサイト、ABC通信のトップの一面に俺の写真が載った。
よォーし、エジプト旅行編でラムセス二世でも蘇らせっかァー!!
もうめちゃくちゃ。