『修行は終わりだ。俺は一旦日本に帰る』
『……あっ、あっあ』
『スコット、正気に戻れ』
頬を叩く。
『あ、ああ!あー!!』
もう一発。
『あ……、終わり、なのか?』
『終わりだ、よく頑張ったな』
『おお……、神よ……』
泣き出すスコット。
まあ、俺は、スコットにやらせた修行の百倍は辛いものを、時間停止結界の中で千年程やっていたが。
『地獄だった……、本当に地獄だった』
『加減はしたんだがなあ』
『あれで?』
『あくまで、一般人向けのブートキャンプであって、俺が本気で考案したメニューならもっと強くなれるぞ。代わりに、人の心はなくなると思うが』
『それは勘弁してほしいね……』
俺は飛行機で普通に帰る。
転移で帰ったら怒られそうだからな。
どの道、入国審査やらがあるんだから、転移での移動は国内だけでしかしちゃいけないな。
法律とかはどうでも良いんだが、逮捕されたら面倒だ。
俺だけ特例で出入国フリーにならねえかなあ。
そんなことを思いつつ、土井中村に帰還。
土井中村では、クソマスゴミへの対処は嫁が俺と同じことをやってくれていた。
下心がある奴は、電車で来ようと、車で来ようと、全員、持ち物全破壊で追い返した。
例え、海外から来ていようと、どれだけの権威があろうと、馬鹿にしてやろうと言う下心ありきで、上から目線で詰問しようとしてくるメディアに対しては、どれも同じように対応した。
利に聡い一部の企業は、俺にじゃんじゃん案件を依頼してきた。俺の影響力はかなり大きくなってきている。
スポンサーになりたい、というのは断っている。スポンサーに縛られたくないからだ。だが、本当に良い商品の案件なら喜んで受けるし、広告も出す。
プライドだけ高くて、実の伴わない会社や、上から目線の会社にはボロクソに言って断る。そしてやり取りをネットに公開する。
オフィシャルサイトも作成して、メイド部隊に運営を任せる。
オフィシャルサイトでは、主に注文数が爆発的に増えている魔導具の販売を中心に、公式ブログや簡単な異世界の資料、俺と嫁の紹介文なんかがある。
流石に、ヤホオクで数千数万個の魔導具を売買するのは良くないからな。
今ではアクセサリーだけではなく、服や靴なんかも売っている。
できれば、魔剣や杖なども売りたいところだが、法律に引っかかるので無理だった。
まあ、売るとしたら最低でも五百万円は取るつもりだ。
実際に、異世界での魔剣の価値はそれくらいだった。
……亜人の国ではその辺でガチヤバな魔剣が三千円くらいで売られてたりもするのだが。
ネクロニアでは、持った奴の魂が吸われる魔剣が、樽にごそっと入れられて売られてたな。アンデット連中は自分が既に死んでるから、その手の呪いに鈍感なんだよ。
兎に角、武器は売れない。
撮り溜めしておいた、スコットのブートキャンプの様子を編集して投稿する。
ああ、本人に許可は取ってあるし、投稿前に本人に見せてから投稿したから問題はない。
数日後。
よしよし、順調に再生数が伸びたぞ。
いつもは三百万再生程だが、今回は六百万再生まで行った。
スコットがマジ泣きするシーンは、一部のファンから文句を言われたが、殆どの人にはウケた。
そしてしばらく、日本で嫁と過ごす。
今は春前くらいなので、まだ北海道は寒い。
ネタはいくらでもあるし、編集はメイドがやるので、時間もあるのだが。
最近はカエデのゲーム実況シリーズを投稿中だ。
え?何のゲームか?
あいつが好きなのを適当にやってるだけだな。
今はアイアンギア3やってるみたいだ。
本人が言うには、ファンタジーは大抵自分の方が強いからいまいちらしい。
ガンアクションは異世界にはなかったから新鮮なんだとさ。
さて、そろそろ連絡が来るかな?
メールボックスを確認する。
『marvelous comic:We want to ask for a job』
お、来てるな。
メールを読む。
内容は、要約すると、「めっちゃOKなんだけど、魔法使いを呼びますって国に言っても信じてもらえないから、O-1じゃなくてJ-1のビザで来てくれ。取り敢えず講習受けてきてね、細かいことはマーベラス社がやっておくよ」という感じか。
O-1ビザってのは、分かりやすく言えば、めちゃくちゃ凄いエキスパートを呼ぶための労働ビザで、賞をとったアーティストやらスポーツ選手向けのものだ。
ユウチューバー如きが取れるもんじゃない。
だから、J-1ビザ、インターン用のビザで来いと言われた。
J-1は比較的取りやすいし、有給インターン的な感じで、金を稼いでも怒られない。ただし、一年くらいしかいられないし、延長も難しい。
まあ、それでも、俺みたいなのが労働ビザを得るのは難しいんだが……。
「もしもし、熱海か?」
『おう、どうした嶺二!』
「俺、ちょっとJ-1ビザ取りたいんだけど、何とかならん?」
『んー……、アメリカか?受け入れ先の企業はなんて言ってる?』
「アメリカだ。受け入れ先はマーベラスコミック社で、全面的に任せろって言ってる」
『よし、分かった。俺は刑事事件が得意だから何とも言えないが、多分大丈夫だと思う。手続きの流れは……』
友達(?)の熱海弁護士に相談して、その上で割と手続きがスムーズに進み、二ヶ月後の四月半ばくらいにはインターンビザが下りた。
大使館でのインタビューも受けて割と忙しかったが、どうにかなったな。
さあ、再びアメリカに。
今回は庶務回。