労働ビザを得て無事にアメリカへ。
ニューヨークのマーベラスコミック本社に乗り込む。
『こんにちは』
『あー、Mr.ヨロイですか?』
『イエスイエス』
『証明できるものは?』
ビザを見せる。
『確認しました。Mr.ヨロイには、こちらの地図の映画スタジオの方に向かって欲しいと、監督から指示がありました。お車を用意しますね』
『不要だ』
『え、その?』
地図を見て、千里眼の魔法を発動、座標指定完了、転移。
『うおっ?!!!』
『あ、どうも』
この爺さんは……、おお、あれか。
監督のステイン・リードだな。
『き、君は一体どこから……』
『よろしく、ステインさん。俺はレイジだ』
『おお、君がMr.レイジか!よろしく、魔法使い君!』
握手をする。
『まさか、本物の魔法使いに会えるとは。長生きはするものだね。さて、うちの俳優達はここの野外撮影所に全員呼んである。全員、本物のヒーローに近づけるように鍛えてやってくれないかな?ギャラは俳優と同じだけ出すよ』
『良いでしょう。そう来ると思って、ヒーロー一人一人に合わせた特訓メニューを用意しておきました』
キャプテンマーベラス、アルジュナ、スチールナイト、ギガス、ウルフマン、それとキングオブソロモン、トリトン、ジャックポット、ミスティックレディ、Dr.ビザー、ギラファマン……。
他、ヴィランズの分も訓練メニューを用意。
そりゃ日本円にして億単位の金をもらうんだから、その分仕事はキチッとやるよ。
『それは素晴らしい。まずは、俳優達と挨拶をしてくれ』
『ええ』
『それと、ついでに私にも教えてくれないか?軽くで良いんだが』
『構いませんよ。ステインさんには一般人向けコースで教えます』
体操服の俳優達の前に立つ。
『君が、魔法使いのMr.レイジかな?』
キャプテンマーベラス役のヘイデン・パークスだな。
『そうだ、よろしく』
『よろしく!スコットが本物の魔法使いになっているのを見て、本当に驚いたよ。それで、僕達の訓練をしてくれるとか?』
『まず、全員に言っておきたいことがある』
『分かった。みんな!Mr.レイジに注目してくれ!』
注目されたのを見て、言う。
『始めに言っておくが、魔法は、映画俳優がアクション演技を強化したり、CG代を削ったりする程度なら、いくらでもできる。一月も本気で訓練すれば、オリンピックの金メダルでオセロができるくらいの力は簡単に手に入る』
『ヒュウ!』
『そいつは凄い!』
『良いね!』
『だが、これは伝えておきたい。魔法の訓練は軍隊並に厳しくやる。あんた達は俺より年上で、その上ハリウッドスターだが、俺は容赦するつもりはない。そして、あんた達が魔法を悪用しても、俺に責任はない』
神妙に頷く俳優達。
『そして……、一ヶ月で魔法を極められるとも思わない方が良い。俺は、時空の狭間で千年間程訓練したが、それでも、魔法を極められてはいない。一ヶ月訓練したくらいでデカイ顔はできない訳だ。それは理解しろ』
『OK、分かったよ。それじゃあ、早速訓練を?』
『ああ、一列に並べ』
大人しく並んだ俳優達の魔力をこねくり回す。
『『『『おあ、あああ?!!』』』』
「ほー、平均値が高いな?何でだ?元から鍛えている奴は魔力も高いってのは分かってるんだが、それにしても高いぞ。身体能力の強化倍率は二倍くらいか?」
凄えな、なんか相関性とかあんのかな?
要研究だな。
『ほらお前!制御を手放すな!そっち!そう、そこ!流せ!違う、そこはこうだ!』
一時間程で、魔力の操作を覚えさせた。
『く、はっ、何だこれ、凄え!』
『見ろよ、こんなに高くジャンプできる!』
『片手で逆立ちも余裕だ!』
テンションが上がっている俳優達。
『ほら、まだ訓練中だぞ!こんなものは魔法の入り口に過ぎないんだよ!』
俺はそう呼びかける。
そして、改めて一列に並ばせて、個人メニューを配る。
主に、超能力なんかでド派手に戦うヒーローの訓練ほどきつくなっている。
『え?これ、本物?』
アルジュナ役のインド系アメリカ人俳優、アーシフ・ジャフリーが尋ねてきた。
アルジュナはその名の通り、インド神話をモチーフにしたヒーローで、選ばれしものしか使えない弓、ガーンディーヴァを唯一扱える弓の名手にして、偉大なるインドラの息子だ。
『そんな訳ないだろう。あくまでも小道具だ』
『だよね、流石に本物のガーンディーヴァみたいに光の弦と矢を出すことはできないよね』
『いや、それはできるが』
アーシフは、弦のない弓に手をかける。
すると、光の弦と矢が生成され、数百メートル飛んで行った。
『……本物じゃん!』
『いや、それはおもちゃだぞ?本物のガーンディーヴァのように、アルジュナにしか扱えない訳でもないし、弓矢の威力もゼロだ。まあ、着弾点が派手に爆発するオシャレエフェクトは出るが』
アーシフが、その辺の岩壁に矢を放つ。
『あ、本当だ、派手なエフェクトだけど、岩には穴が空いてない』
『威力はBB弾並だな』
次は、スチールナイト役のロベルト・エドワーズが尋ねた。
スチールナイトは、研究者である主人公が、超技術で作り出したパワードスーツのことだ。スチールナイトスーツに身を包み戦うヒーローだな。
『このスチールナイトスーツは本物なのか?』
『そんな訳ないだろ』
ロベルトは、専用端末をタッチした。
すると、スチールナイトスーツは、分解されて飛行し、ロベルトの身体に装着された。
『……本物だ!』
『いや、おもちゃだぞ?まあ、それなりの硬さとパワー、ジェットを噴射して空を飛べて、手首と目からBB弾並の威力のレーザーが出るだけだ』
『………………ふっ!』
おっ、空飛んだ。
『きゃっほーい!空飛んでる!楽しい!』
『防護魔法もかかってるから、飛行機と同じぐらいの高さから落ちても死にはしないぞ』
『良いね!最高だよ!』
次は、ギラファマン役のジャック・ニコルソンが尋ねてきた。
ギラファマンは、ギラファノコギリクワガタの力を持ったスーツを着て、何でも切れる二本のギラファソードという剣を持った、剣術の達人のヒーローだ。
『このギラファスーツとギラファソードは本物か?』
『そんな訳ないだろ』
ジャックは、ギラファスーツを着て、ギラファソードを振り回し、その辺の岩を切った。
『……本物じゃないか!』
『残念ながらその剣は刃を潰してあるし、切れるものは特定の無機物だけだ。生き物は虫けらだって切れない』
『いや、それでも凄えだろ?!』
次は、ギガスとウルフマンが話しかけてきた。
『あの、僕達のこれは?』
『変身魔法のスクロールだ。読めば変身魔法が覚えられる』
『……んおっ?!あ、こ、こう、かな?………………ウオオオオオオン!!!!』
おお、変身したか。
『えっ、えっ、これ、戻れるの?あっ、戻れた!本物だ!』
『いや、お遊びだぞ。身体能力は人間の五倍が限度だ。本物のウルフマンのように、素手でトラックをぶん投げたりはできない』
『いや、それでも凄いよ!』
そのようにして、小道具の提供と、しばらくの間訓練させた。
亜人大陸転移編の中弛みウオオオオオアーーーッ!!!!
どうしてもその辺の中弛みは避けられないんだよ!