ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あガガイのガイw


45話 統幕へ出頭 後編

「いえ、それで、ええと、鎧さんが土井中村の警備をしてくださっているとか」

 

「してるよ」

 

統幕の会議室で政治家と話をする。

 

「それについて、詳しいお話を……」

 

「詳しいも何も、問題を起こした奴は、持ち物を全て破壊して沖縄や四国に置いてきてるだけだ」

 

「それは、どうやってですか?」

 

「魔法で普通に」

 

「普通に、とは?」

 

「武装解除の魔法を応用すれば、持ち物を破壊できる。あとは転移だ」

 

「……魔法とはつまり、何ができて何ができないのか、それを明確に教えていただきたいですね」

 

ふむ。

 

「魔法とは、魔力を燃料にして行う現実の編纂だ」

 

「はあ」

 

「より現実的な現象ほど、魔力の消費は少ない」

 

「……はあ」

 

「より難しい現象ほど、消費が激しい」

 

「ええと、つまり?」

 

「魔力の量が多ければ、できないことはない。お前らが好きそうな、不老不死だろうと、死者蘇生だろうと、何でもできる」

 

「まさか……」

 

「できないことはない。しかし、ただの人間には、魔力が足りずにできないというだけの話だ」

 

「つまり……、魔法とは、魔力と呼ばれるリソースを使って、現実を変えることを指す、と」

 

メモをする渡辺外務政務官。

 

「参考までに、人間はどれほどの現実改変が可能なのでしょうか?」

 

「才能や訓練の度合いによって全く違う」

 

「では……、そうですね、平均的な才能を持った人間が、三年間、適度に訓練したとして、どれほどでしょうか?」

 

「魔法にも適性があり、火を出すのが得意なやつもいれば、水を出すのが得意なやつもいる。だが、その条件で言えば、そうだな、火を出すのが得意だとして、鋼鉄を溶かせるほどの炎を、半径二、三十メートル程にバラ撒けるだろう。火球として発射すれば、直径三十センチ程の火球を三百メートル先くらいまでに複数個同時に飛ばせて、着弾点で手榴弾程の爆発を起こすことも可能だ」

 

俺が答える。

 

渡辺政務官は、統幕長の豊臣に目を向ける。

 

「それは、戦術的に非常に価値があります。三百メートルと言えば、大体、ライフル並の射程で、鉄を溶かす程の温度があるというならば、ナパーム弾並ということになります。則ち、ライフルの射程で爆発するナパーム弾を飛ばせるというのですから、これは非常に強力です。それは、どれくらいの数を撃てますか?」

 

豊臣統幕長は、そう答えた。

 

「そうだな、魔力が満タンからゼロまで、三、四十発ってところか」

 

「となると、重さがゼロのロケット砲を三、四十本持ち歩いているようなアドバンテージがあるということになります。戦場において、重さゼロで武装をこんなにも増やせるというのは画期的という他にありません」

 

冷静な口調で告げる統幕長。

 

「また、同じ条件であれば、水が得意系統ならば、最大で500L程は水を出せるし、土が得意系統ならば、深さ二メートルの塹壕を長さ百メートルは掘れる」

 

「どちらも、戦略的に有効ですな」

 

「他にも土ならば、二トンクラスのクレイゴーレムも作れるだろう」

 

「ゴーレムとは?」

 

「ゴーレムとは、魔法で動く人形のことだ。土でできたクレイゴーレムは、二メートル程の人型で二足歩行し、二トンの重さで暴れられる。車くらいならひっくり返すパワーがあるし、物理的な盾としても使える」

 

「成る程、二メートル程の土人形ですか。それで、パワーは人間を殺傷できるほどにあると」

 

「ああ。ゴーレムはかなり便利で、オートで動かすこともできるから、労働力としても優秀だ。少なくとも、工場の工員がやるような単純な作業はできるし、畑を耕したりもできる。マニュアルで操作すれば、もっと精密な動作もできる」

 

「その、ゴーレムとは、土以外では作れないのですか?」

 

「まあ、三年も必死に修行すれば、アイアンゴーレムを作れるようになるな。同じ大きさだとしても、アイアンゴーレムはかなり格上だ。重さは八トン程に達し、戦車をひっくり返すパワーと、八トン分の鉄の塊であるという頑丈さを持つ」

 

「それは……、今までの戦略がひっくり返りますな」

 

驚く統幕長を他所に、渡辺政務官が質問をしてくる。

 

「魔法は、人によって得手不得手があると、これは分かりました。ですが、基準が分かりません。何故、水は500Lしか出せないのに対して、塹壕は二メートルの深さのものを百メートルも掘れるのですか?」

 

うん、良い質問だ。

 

「それは、水は、そこにはないはずの水を生み出すとした時、500L程が限界だということだ。元からある水を操るなら、もっと大規模に使える。一方、土を掘るのは、既にそこにある土を動かすだけだから、消耗が少ない訳だ。基本的に、魔法は、論理的に足りない部分を魔力というリソースで補うものだ。だから、最初からないものを出そうとすると、消耗が増える」

 

「成る程、では、例えば、食料などを出すとしたら?」

 

「食料ほど複雑なものを出すには、才能がある奴が十年以上血の滲むような修行をして、初めて不味いパンが一つ出せるくらいだ」

 

「割りに合わないと?」

 

「いや、閾値がある。圧倒的に魔法が上手く、魔力も莫大にあれば、しっかりとした食事を創造でき、それを食べて生活して、休んで魔力を回復して、また食事を創造できる。つまりは、あるレベル以上の魔法使いは永久機関になれるな」

 

ざわつく政治家達。

 

誰かが質問する。

 

「か、仮に、貴方が本気で魔法を使えば、どれだけのエネルギーを出せますか?」

 

「俺の魔力の一部を電気に変換したとして、全世界に電力を供給してなお余る程にはエネルギー量が多いな」

 

「なんと……」

 

「まあ、最大で、星をいくつか吹っ飛ばせるくらいだ」

 

「馬鹿な!」

 

「ありえん!」

 

「嘘に決まっている!」

 

騒ぎ立てる政治家達。

 

「静粛にお願いします!静粛に!」

 

渡辺政務官が騒ぎを収める。

 

統幕長の豊臣が、更に質問を重ねる。

 

「魔法で星を滅ぼすとは、具体的にどのように?」

 

ふむ。

 

「色々だ。例えば、星の表面を数万度の炎で焼いたり、空気の全てを毒に変えたり、酸の雨を降らせたり、大陸が割れるほどの地震を起こしたり。時間をかけるとしたら、世界中から光を無くしたり、あらゆる食料を腐らせたり、全ての水を宇宙に飛ばしたり、人間をゾンビにして襲わせるなども可能だな」

 

「………………」

 

さて、話すことはこれくらいか。

 

「これだけは聞いておきたいのですが、日本、あるいは他国への武力による侵略行為をする意思はおありでしょうか?」

 

「ねえよ」

 

「それは何故でしょう?」

 

「はあ?お前政治家ならわかんだろ?侵略するより、国を治める方が大変なんだってこと」

 

「支配は可能でも統治が面倒だと?」

 

「お前歴史は苦手か?どこの国も、最終的には列強から独立しただろ?結局、力で押さえつけると角が立つし、面倒なんだよ」

 

「成る程、ある種、理知的な判断だと言えますね」

 

こんなもんか?

 

「じゃあ俺は帰る」

 

「いえその、まだお話が」

 

「じゃあ早くしろよ」

 

「では次に……」

 

結局、三時間ほどつまらない話に付き合わされた。

 

 

 

 

 

「……以上が、鎧嶺二氏の調査結果になります、跡部総理」

 

「ふむ……、魔法は本物だったと?」

 

「ええ。その上、極めて軍事的に価値があります」

 

「……この資料が全て真実だとした場合、戦争の火種どころの騒ぎではありませんよ」

 

「恐らくは真実かと……」

 

「どうしましょうか……」

 

「さあ……」

 

「「どうしましょうか……?」」




さ、て、と。

今現在は帰還勇者のストックが三十話くらいありますが、行き詰まってきたと言うか、世界観の説明をする場面にさしかかってきたので書けない!

なので、ポストアポカリプスダンジョンを書いてます。

ポストアポカリプスダンジョンも六話くらいできた。

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