日本政府は考えた。
地球を吹っ飛ばせる魔法使いの存在に、頭を悩ませた。
悩んで、悩んで、その結果が。
「これか」
『魔法使い、鎧嶺二氏、跡部雄三総理大臣との会談予定』
日本政府は、既に情報完全オープンな俺を見て、最早隠し通せる段階ではないと気付いた。
ならば、いっそのこと、盛大に俺の存在をアピールして、他国への牽制をすると同時に、俺が他国へ行かないように監視することにしよう!と言うことらしい。
跡部総理大臣らしい、少々強気の姿勢だった。
一部野党からは、魔法を国際管理すべきだと言う意見もあったが、与党はそれに反対して、多数決の原理により、封殺された。
与党の総意としては、「知識そのもの」である魔法を完全に管理することは不可能であると、現実的な観点から判断したらしい。
そりゃそうだ。
魔力が操作できるかどうかは、現代科学じゃ証明できないエネルギーの流れの話だし、魔法も知識だ。
銃や刃物のように、取り上げたり、規制することはできない。
また、魔力操作を教えることができるのも、俺の勢力だけだ。
どう考えても、俺側の方に力がある。
なので、日本政府は下手に出ることにしたようだ。
自分より強い奴にも食ってかかるのも、国のメンツなどを考えればあり得る話なのかもしれないが、日本はそう言う国じゃないからな。
確かに、舐められたら即殺すみたいな国もあるし、日本もかつてはそうだった。
だが、今の時代で、そんな好戦的な国は少数派だし、世界大戦で丸くなった日本は特にそんなことはしないだろう。
自衛隊員が一人死ぬだけで大ニュースになり大騒ぎされるような国だ。
火薬庫のような俺を突っつくような馬鹿な真似はしない。
そう言うことで、総理大臣と矢臼別演習場で会談することになった。
矢臼別演習場と言うと、北海道にある、国内最大の演習場だな。大阪の四分の三くらいデカイそうだ。
今回の会談の目的は恐らく二つ。
俺に魔法を使わせて、戦力の確認をすること。
そして、国が俺と仲良しですよと喧伝することだろう。
戦力の確認は、まあ、そのまんまだよな。
魔法がどんなものなのか実際に見ておく気だろう。
俺と国が親密だと言う宣伝はある種のプロパガンダということになるのかね?
魔法を狙っている他国に対する牽制にもなるし、もしかしたら俺を囮にして他国のスパイを捕まえようって魂胆なのかもしれない。
スパイだろうが何だろうが、どこに来るのか分かっていれば対処は可能だからな。
まあ、そうじゃなくても、副次的な目的として印象アップってのはあるだろうな。
日本は例え魔法使いだろうと何だろうと、邦人を守りますよとアピールする訳だ。
これが共産圏だと、国の為と言いつつ、永遠にタダ働きさせられるのだろうが、日本は民主的な国家だから無理矢理働かせたりはしないですよと示す訳だな。
それにより、俺に恩を着せたり、他国に、言外に「魔法使いだから捕まえて無理矢理働かせるとか、ダサいよねー!日本は民主主義的な近代国家だから強制労働とかないよ!」と告げるんだろう。
そう告げることで、「鎧嶺二は邦人なので守ります!」ってことを大声で言い、尚且つ、他所の国に俺をやらないぞと暗喩する訳だな。
日本は、魔法の力で自衛隊を強くしてくれなんて口が裂けても言えないだろう。
軍国主義でも世界の警察でもないからな。
だから、俺を他所の国にやらないことにより、他国の強化を防ぐつもりのようだ。
自国が強くなるのではなく、他国も自国も強くしないことで、世界のパワーバランスを今のまま安定させようって魂胆だろうな。
まあ、ここまで色々と考察した上で。
俺の意見は。
「どーでもいいわ」
の一言である。
いや、マジでどうでも良い。
もうね、俺はね、あっちの世界で国家間の腹芸やら何やらのドロドロしたアレを嫌ってほど体験してきたからな。
その点、日本はマシな部類じゃね?とは思う。ビビって手出しして来ねえってのは楽で良い。
最悪なのは、自分は偉いから他人は自分に従うはずだと思い込んでる馬鹿に、国益やら大義やらの為に働けと強制されることだ。
ああいうのは本当にダルい。
とにかく、俺は好き勝手やるから手出ししてくんなよってことだ。
春の某日、矢臼別演習場にて。
「こんにちは、内閣総理大臣の跡部雄三です」
「鎧嶺二です」
総理大臣と挨拶して、過去話をする。
そんな感じで、適当に総理大臣をあしらっておく。
何一つ得られるものはない。
前政権の総理大臣とは違い、今の総理大臣はそれなりにまともなので、面倒な話にはならなかった。
無能な前政権の総理大臣なら恐らく、俺のデリケートな部分にも触れただろう。
実際、デリケートな部分などないが、殺人経験や嫁の不法滞在など、その辺りを触れられると困るんだよな。
跡部総理は、その辺りを理解した上で、触れないことを選んだ。
虎の尾を踏むような真似はしないってことだな。それだけでもまあまあ有能だと言える。
特別扱いされるのも駄目だしな。
日本は、難民の受け入れを拒否したり、亡命を認めなかったりと、その辺りには厳しくしている。
俺達だけを特別扱いして、嫁の滞在を公式に許可したりすると角が立つんだよな。
嫁の立場は、「人間じゃないので日本の法律を適応できません」で通すつもりらしい。
さて、簡単な会談の後は、共に食事を摂ってから、演習場で魔法の実演だ。
「その線から前に出たら、命の保証はないですから」
そう言って、防壁を張って。
「『サモン:デモンズギア』」
召喚魔法の使用。
くろがねの巨神が降り立つ。
『サモン承認、デモンズギア00号、サタン・エゴ、指定地点へ転移』
「『コマンド:フォトンレイ』」
『コマンド承認』
俺のデモンズギア、『サタン・エゴ』が、カメラアイから光線を放つ。
ピカッと光ると、演習場の地面を薙ぎ払い、焼き尽くした。地面はガラス化し、熱気と異臭を漂わせている。
「『コマンド:ストレート』」
『コマンド承認』
地面を軽く殴って割る。
「『コマンド:サタンブレード:ターゲット指定なし:演舞』」
『コマンド承認』
闇がサタン・エゴの手のひらに集まり、巨大な剣を形成。
サタン・エゴはそれを軽く振るって演舞する。
そしてその余波で演習場が吹き飛ぶ。
俺が飛行の魔法で空を飛び、サタン・エゴに適当な魔法を浴びせる。
サタン・エゴはそれを防御する。
そんなことを二時間ほどやった。
演習場は二度と使い物にならない程に穴だらけ、余波で近隣の自然が壊滅、震度三くらいの地震も発生、爆風で気象も変化したとのこと。
「あれぇ?俺、またなんかやっちゃいましたぁ?」
化け物を見る目でこちらを見てくる総理。
「因みに、これ、かなり手加減してるんで」
「……は、はあ」
軽く威嚇しておかねえとちょっかい出されるかもしれねーからな。
さて、演習場を直して、と。
「本日は大変有意義な時間を過ごせました」
「こちらこそ、ありがとうございました」
そう言い残して、俺と総理は解散した。
「豊臣統幕長」
「何でしょうか、総理」
「アレ……、どうすればいいと思う?」
「さあ……」
「あんなものが本気で暴れまわってみなさい。即、日本は滅びますよ」
「ごもっともです。しかし、我々自衛隊は全力で……」
「仮に自衛隊が全力で防衛したとして、あの巨大兵器に対して何分耐えられますか?無理でしょう?」
「それは……、そうですね。流石に不可能です。兵器というものは、同じくらいの大きさと能力の他の兵器と戦うものです。あのような、規格外の化け物とは、とてもじゃないですが……」
「……仮に、あれ程の兵器を開発するとして、どれ程の資産と歳月が必要ですか?」
「総理……、申し訳ありませんが、あのようなふざけた兵器は、日本の、いえ、地球の技術力では、百年先でも不可能です。もちろん、あんな量の資材もありません」
「やはり、そうですか……」
「そもそも、アレは兵器としておかしいのです。兵器を人型にする意味が分からないですね」
「それは、人型なのが魔法的に重要なことなのかもしれませんね。しかし、現状、あの巨大人型兵器を止める術はない、と……」
「はい、不可能です。音速で空を飛び、戦艦以上の防御力を持ち、地震を起こすほどのパワー、曲芸のように剣舞をする精密動作、弾道ミサイル並に長い射程……。現行兵器では、束になっても敵いますまい。アレは最早、『鉄人18号』のような、アニメーションの中の存在です」
「……ふぅ、まさか、総理大臣になって、アニメのスーパーロボットと戦って日本を守れるかなどと真剣に議論することになるとは思ってもいませんでしたよ」
「ですが、あの鉄人を本気で暴れさせられたら、日本は終わりです。総理、考えましょう。我々に何ができるのか……」
魔法より核ミサイルの方が強い?
ゼウスの雷霆は宇宙の全てを消滅させるんだぞ?
それはさておき、現在、クラス転移ものを書きたい気持ちが昂ぶり、フォールアウト的世界線に創造チート物の主人公君がチートしてチートする話書いてます。某やる夫スレとなろう小説に触発されたのです。
ポストアポカリプスダンジョンと被る……!!
でもポストアポカリプスダンジョンはローファンタジーで地球が舞台、今書いてるクラス転移ものはSFでフォールアウト的な最終戦争で滅んだ後の世界が舞台という違いがありますねえ!
内容は基本的に、自分がかつて触ったことのあるものを無制限に出せる系の主人公君が、ヒロイン三人とフォールアウト的な世界で考えなしにチートして現地民から崇められたり捕まりそうになったりして、ミュータントやらアボミネーションやらとドンパチやって、廃墟巡りしてけものフレンズ的な展開になったり、交易したり、最終的には街づくりとかうんぬんかんぬん。