忙しい!!!!
跡部総理大臣は、俺や現地住民に迷惑をかけないように、報道陣や野次馬を退去させ、交通規制を行うように指示をした。
しかし、例によって、野党がそれを聞いて暴れ回り、それを軽率に公表して、デモ隊を扇動した。
いきり立ったデモ隊は、土井中村をパレードのように歩き回り、無茶苦茶な要求を叫び続けている。
……そして、よく見ると、デモ隊の半数ほどは日本人以外のアジア人で、韓国語や中国語で書かれたプラカードを掲げて行進している。
恐らくは、政治的なアレなんじゃねえかな、とは思う。
とにかく、日本に戦力があるかもしれないと言うのが気にくわないんだろうな。
そのうち、もっと直接的な手段に出るだろう。
まあ、だからと言って、警戒をする必要とかは皆無なんだが。
そんなある日。
雪が完全に溶けて、段々と暖かくなってきた、五月頃。
『I want to meet you』
ツブヤイターにメッセージが来た。
こいつは確か、ハロルド・チェス大統領……。
ポピュリストだと聞くが。
分かりやすい政策と、強気な姿勢、そして、「アメリカを再びナンバーワンの国にする」というスローガンを掲げる、元資本家の大統領だ。
一昨年の選挙においては、ありとあらゆるメディアから批判され、落選確実と言われつつも、労働者の票を集め、周りの予想を覆して当選し、大統領になった男だ。
まあ、そりゃそうだって感じなんだよな。
リベラルの強いエリートより、弱い労働者の方が多い。
そんな弱いが沢山いる労働者達を味方につけたチェス大統領は、リベラル派エリートの他の候補者を打ち倒し、大統領になった訳だな。
俺の印象では、良くも悪くも古典的なアメリカをやっている、と言った感じだろうか。
そんな大統領からフォローされた挙句、会いたいとリプが来た。
ふむ。
となるとこうだな。
『ok』
『I want to meet after a meeting with Mr. Yuzo』
ん、跡部総理との会談が日本であるのか。
その後に会わないか?だってよ。
『If you are in Japan, you can meet me anytime, anywhere』
国内ならどこでもいつでも良いよ、と。
『ok, I'm looking forward to meeting you』
じゃあ会う日を楽しみにしている、だとよ。
そして、一週間後。
チェス大統領が来日した。
跡部総理と貿易に関する会談があるらしい。
ツブヤイターに、跡部総理とは良い話ができたと呟いていた。
さて、俺と会いたいらしい。
出向いてみるか。
普段なら逆に呼びつけるところだが……、大統領と会ってみたいという好奇心が勝った。
果たして、俺に何を言ってくるのか。
×××××××××××××××
私は、ハロルド・チェス。
民主党の愚かなリベラル政治家共を打ち倒し、アメリカの大統領になって二年。
公約も守り、アメリカを再び世界一の大国にするのだ。
チャイナには負けられないし、ジャパンもその爆発力が恐ろしい。
特に、ジャパンの総理大臣の跡部は中々にやり手だ。少なくとも、良い手は打てないが、無難でベターな選択肢を打ち続ける印象だな。
前政権の総理大臣はアホだったから、非常にやりやすかったのだろうが……。
しかし、核を持たない分、戦力的には数段劣る。
最近、やっと、あの意味不明な憲法九条とか言う法律を改正するらしいから、少々は警戒しておくべきか?自衛隊を合法にするような話だったはずだが、自国の軍隊が非合法かもしれないとはなんなんだ?意味が分からん。同じ大戦の負け組であるドイツも軍隊を持っているのにな。
経済的にも、安い日本車を大量に売りつけてくるくせに、アメリカの車を日本人は買わない。
効率の悪い残業や、劣悪な労働環境の割に、この技術力の高さはおかしいだろう!
アメリカ人なら、あのような薄給で朝から晩まで働かせたら即座にボイコットされるぞ?!
だがまあ、基本的には、日本は友好国であるし、もしもチャイナと戦争になれば前線基地としても使える。
ジャパンにとっては、我らアメリカは最大の同盟国なのだから、攻撃的な態度はとらないだろうしな。
さて……、今回の会談は、貿易の関税についての話し合いだ。
近頃の円安傾向はやめさせなければならないだろう。
確かに、チャイナほど悪質ではないが、それでも、安い製品を大量に輸出されると、国内の労働者の雇用を守れない。
日本の製品はそれに付け加えて高性能であることも良くない。
何とか関税を引き上げたいところだが……。
この貿易の不均衡は良くないと提示するのみに留めたが、いずれ、均衡を保てるような協定を結びたいとは思うな。
会談を終わらせ、跡部と昼食を共に済ませた後に、今日は早めにホテルで休もうと、リムジンに乗り込もうとしたその時。
「こんにちは、ミスタープレジデント」
「なっ……?!」
リムジンの中に、若い男が一人いた。
長身、黒の長髪、鋭い目、美形、鎧とマント。
おおよそ完璧と言えるような警備の中、誰にも気付かれずに私のリムジンに乗り込むなど不可能だ。
「なっ、何者だ?!」
「と、捕らえろ!」
SPや警官達が慌てふためき、男をリムジンから引き摺り出す。
「怒るなよ、軽いジョークだろ?」
しかし、男は、数人の警官に取り押さえられつつも、全くの余裕で、自宅の中であるかのように振る舞った。
「手錠をかけろ!」
手錠をかけられ、銃を向けられているのにも拘らず、ヘラヘラと笑うこの男。
「貴様は何者だ!」
「ミスタープレジデントに会いに来た勇者だが……、随分過激な歓迎だな」
そうだ……、思い出した。
この顔は、日本にいると言う、本物の魔法使いの男だったな。
確かに、ツブヤイターで会いたいと言ったが、このような登場をするとは思わなかった。
「君は……」
「大統領、退がってください!」
私はSPに引っ張られ、引き離される。
「改めまして、こんにちは、ミスタープレジデント。中々に歓迎をしてもらえて嬉しい限りですよ」
「動くなーーーっ!!!!」
魔法使いの男は、警官の制止を無視して、私に近付いてくる。
「さて、それで、俺と会ったとして、貴方が何をするのか?それが気になって、遊びに来たのですよ」
「今すぐ手を上げて膝をつけ!!!!」
何だ、この男は。
警官隊を全く恐れていない。
「わ、私は……」
「大統領!お退がりください!早く!」
SPは、私と彼を会話させないつもりだ。
「ま、待ってくれ!私が彼を呼んだんだ!」
「大統領?!」
「警官隊は銃を下ろしてくれ!」
「し、しかし!」
「では、銃は下ろさなくても良い、せめて彼と会話をさせてくれ」
「わ、分かり、ました」
SPに両脇を固められながら、彼と握手をする。
「こんにちは、Mr.ヨロイ。私がハロルド・チェス大統領だ」
「会えて光栄です、と社交辞令を言っておきますよ、ミスタープレジデント。ご存知、俺がレイジ・ヨロイです」
「ああ、その、話したいことはたくさんあるが、道路の真ん中で話す事ではない。そうだな、大使館にしよう。大使館についてきてほしいんだが……?」
「構いませんよ」
「よし、彼を大使館に連れて行くぞ」
「し、しかし大統領!警備上それは……」
私は大統領だ。
日本の警備の警官隊がどれ程無能だとしても、大統領の為の護衛を物ともせずに、私の乗る予定のリムジンに先に乗り込んでいたと言うことは、「警備の詳細な情報」と「百人単位の人目を避ける隠密性」の両方があると言うことになる。
則ち、魔法だ。
魔法で、私の乗る予定のリムジンを知り、魔法で誰にも見つからずここに来た……。
彼がその気ならば、暗殺も可能だっただろう。
「これだけの護衛の目をかいくぐり、私のすぐ側まで来れる存在に対して、警備などどれほどの効果があると言うんだ?」
「で、ですが……」
「彼がここにいるという時点で、ありとあらゆる警備が無意味だと証明されたのだ。彼を私のリムジンに乗せるんだ」
「せ、せめて別の車に」
「だから、無意味なんだよ!魔法でどこにでも行ける存在に、物理的な距離を置いたとして、何の意味があるんだ?!」
「わ、分かりました……」
「さて、Mr.ヨロイ。乗ってくれ、君と話がしたい」
さあ、レイジ・ヨロイよ。
実りのある会談にしよう。
さてさてさてさて、旅人提督、まるで書けてないぞー!
本当にどうしよ……。