ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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自殺したいが連載中のss終わらせるまで死ねねえ……。


51話 ミスタープレジデント 中編

「リムジンの乗り心地はどうかな、Mr.ヨロイ?」

 

「中々良いんじゃないですか?車を褒めるべきか運転手の腕を褒めるべきかは分かりませんがね」

 

大使館まで、リムジンで移動する。

 

私、合衆国大統領、ハロルド・チェスの乗るこのリムジンは、二千万ドル近くの資金をかけて、機銃すら通さない装甲と、ガスや放射線を通さない機密性、赤外線による暗視装置などをつけた、スペシャルなリムジンだ。

 

それを、更に囮用に一台出して、そして更に、護衛の車を複数台に前後を守られている。

 

「このリムジンは、我が国アメリカの科学力の粋を集めてカスタムされたものでね。これならば、テロも怖くないよ」

 

「へえ、確かに、テロリストくらいならこの装甲を突破できないとは思いますね」

 

そう言って、ドアを軽く叩く魔法使いの男、レイジ・ヨロイ。

 

「8インチくらいの装甲板が仕込まれてますね」

 

「あ、ああ、知っていたかな?」

 

「あ、いや、今調べました」

 

「……調べたとは?」

 

「普通に、魔法で。面白いですね、この車。衛星電話やら血液パックやら……、酸素ボンベに催涙弾、煙幕まである。まるでジェイムス・ボントの車みたいだ」

 

な、何故分かる……?

 

この車の装備については一般公開していないのだが……。

 

ああ、いや、そうか。

 

魔法か……。

 

「い、いやはや、よく分かったね。君の目から見てどうだい?」

 

「まあ、よくできた玩具だと思いますよ」

 

「なっ……?!」

 

アメリカの技術力の結晶を玩具だと……?!

 

「乗り心地はそこそこですが、いささか壊れやすいようだ」

 

「そ、そんな訳があるものか、機銃すら防ぐんだぞ?!」

 

「魔法的に防御されていないものは一律脆いですよ」

 

「では、何かね?魔法使いからすれば、大統領の乗る装甲リムジンも無意味だと?」

 

「魔法使いにも格というものがある。全ての魔法使いが優れている訳ではないですが……、まあ、それなりにできる魔法使いからすれば、この程度の車では要人の護衛などとてもとても……」

 

「君の知る要人は、もっと強固な護衛を?」

 

「そもそも、俺の知る要人は、護衛など要らないくらいには強いんでね」

 

何だと……?

 

ああ、クソ、分からないことが多過ぎる。

 

我が国は魔法に対して、どれだけの防護策が取れるのか、それを知らねばなるまい。

 

 

 

大使館に着いた。

 

大使館の中で、人払いをして、最低限の護衛と共に、Mr.ヨロイと向き合う。

 

再び、軽く挨拶を済ませ、話を切り出す。

 

「さて……、Mr.ヨロイ。例の動画は私も見たよ」

 

黒い人型の巨大兵器が暴れる様をな。

 

「はあ」

 

「これは私個人の意思とは関係なく、アメリカの大統領としての責務から聞くのだが……、君に、世界を侵略する意思はあるかね?」

 

「いえ、別に」

 

ふむ……。

 

「それは何故かな?君の持っているあの……、黒い巨大なロボット兵器を使えば、どんな国だって征服できるだろう?」

 

「そうですね」

 

「何故、やらないのかな?」

 

「侵略ねえ……。メリットもなく戦争をしますか?貴方達アメリカだって、石油欲しさに中東に介入しているでしょう?」

 

「い、いや、我々は中東諸国のテロリズムへの対応と、大量破壊兵器の不当な所持を……」

 

何てところを突いてくるんだこいつは!

 

それは公然の秘密と言うか……、少なくとも、アメリカの大統領に言うことじゃないだろう?!

 

「ああ、表向きはそうなってるんでしたっけ?まあ、つまり、俺が言いたいのは、欲しいものがある時に軍隊を動かすのが普通だって話ですよ。それが石油だろうと、領地だろうと、平和だろうとね」

 

「つまり、君には欲しいものがないから、侵略する意味がないと?」

 

「欲しいものがないと言うと語弊がありますがね……。単に、この世界の人間に、俺が欲するものを用意することができないと言っているんですよ」

 

何だと?

 

「技術は?コンピュータの発展は目覚しい」

 

「ああ、うちには量子コンピュータのようなものがありますから」

 

「では、車は?」

 

「マッハで空を飛ぶドラゴンより凄い車ってこの世にありますか?」

 

「鋼材や石油は?」

 

「その程度のものは、魔法的に一切価値がないので、簡単に生み出せますよ」

 

「食品は?」

 

「既にうちの城に地球の食品を生産するプラントを作りましたから、特に輸入する意味はないですね」

 

ふむ……。

 

「俺は、たまに気に入った本や映画を買うだけですかね」

 

「それでは、貿易はできないと?」

 

そんな馬鹿な。

 

それでは、貿易ができないではないか!

 

アメリカに利益がまるでない!

 

「用意できるんですか?オリハルコンは?アダマンタイトは?ミスリルは?ヒヒイロカネは?アマルガムは?魔石、龍の血、新しい魔導書、珍しい魔剣は?」

 

「そ、それは何だね?」

 

「……はぁ、サンプルを差し上げます。仮に、これらの物品がアメリカから出土するのであれば、貿易もやぶさかではありません」

 

金色の光を発する金属、紫がかった黒色の金属、青みがかかった銀色の金属、真っ赤な金属、柔らかな黒い金属、それぞれのインゴットを渡される。

 

「ど、どこから……?!」

 

今、何もない空間からぬるりと物を出していたぞ?!

 

「単なる空間魔法ですよ」

 

くっ、何のことだか分からん……!

 

大統領になって、どうしてファンタジーの勉強をしなきゃならない?!

 

「それで?話したいこととは?」

 

「……侵略の意思はない、それは理解したよ。では、次に聞きたいのは、先日のMr.跡部との会談で何を話したのかな?」

 

「ふむ」

 

「日本に軍事的な協力をする協定などは?」

 

「成る程」

 

ど、どうなんだ?

 

お前が力を貸せば、その国は一瞬にして世界一の軍事大国になるんだぞ?!

 

「跡部総理とは、何の話もしませんでした」

 

「何の話もしていない?」

 

「ええ、何の話も」

 

「それは……」

 

いや、待て、考えろ。

 

何の話もしていないだと?

 

そんな訳はない。

 

仮に、我が国にこれほどまでに戦力を持つ個人がいたとしたら、放っておかれる訳が……。

 

あ、ああ!

 

そう言うことか、跡部!

 

何も話していない、つまり、相互不干渉で行くと言う内諾ということか?!

 

ジャパンに滞在していても文句を言わない、それにより、こちらから手は出さないからそちらも手を出すなということだろう。

 

この魔法使いを他の国にやらないが、自国で使うようなこともしない。

 

確かに、侵略の意思がない強大な力の塊であるこのヨロイからすれば、日本以上に過ごしやすい国はないだろう。

 

あの跡部が考えそうな手だ。

 

「成る程、よく分かった。何の話もしなかった、そうだね?」

 

「ええ、そうです」

 

となると……。

 

「現在、日本にいるのは、過ごしやすいからなのかね?」

 

「ええ。日本の田舎は良い。空気が綺麗で、飯が美味い。少し都会の方に行けば、コミックブックやテレビゲームも手に入る」

 

「それは、アメリカでも言えることではないかね?」

 

「その通り。イギリスのウェールズの片田舎でも、スペインのアンダルシアでも、フランスのプロヴァンスでも、タイのカンチャナブリでも、どこだって良い。俺は隠居しているんだから、空気が綺麗で、飯が美味ければ、どこへ行ったって良い」

 

日本にいることに、特に理由はないのか。

 

「だが、俺は日本人です。外国に住むには、役所に行って、真面目に働いて、帰化申請をする必要があります。それは非常に面倒だ」

 

ふむ……。

 

「それに、日本はあくまで、遊ぶ場所に過ぎないでしょう。日本には色々なものがあるし、先進国だから、大抵のものは手に入る。現状に満足しているのに、わざわざ移住など、面倒でやってられませんね」

 

となると、引き込むのであれば、それなりのメリットを提示しなければならない、か。

 

これは、アメリカの威光が通用する相手じゃないな。

 

となると、せめて、友好関係を示して、他国への牽制をするのが一番……、結局、跡部のやり方が一番正しい訳だ。

 

クソ、跡部め、やるな。

 

「では、最後に、私と写真を撮ってくれんかね?ツブヤイターに載せたいんだ」

 

「構いませんよ」

 

だが、忘れるなよ跡部。

 

我が国、アメリカこそが、世界で一番、ナンバーワンの国なんだ。

 

魔法の力も、やがて我が国が手にしてみせるぞ。

 




面白いss書きたい!

実力も努力もない!

めっちゃやむ!

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