ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あたしゃ疲れたよ。


52話 ミスタープレジデント 後編

その後、日本で、跡部と共に観光をして、私、合衆国大統領、ハロルド・チェスは帰国した。

 

日本の食事は確かに美味いな、あの魔法使いが言う通りだ。

 

私には良さが分からないが、温泉とか言うバスや、娯楽も揃っているそうだ。

 

跡部とのゴルフは中々楽しめたぞ。

 

ゴルフ場は少々手狭に感じたがね。

 

そんな私は今、いつものように、ホワイトハウスのオーバルオフィス……、つまりは執務室に来ていた。

 

大統領の一日の始めの仕事は、日例報告といい、世界中から集められた情報の報告を聞くことから始まるのだ。

 

だが、本日の報告は少しおかしい。

 

何故か、皆、慌ただしいように感じる。

 

それに、見慣れない顔の男が数人……。

 

「朝から騒々しいな、何事かね?」

 

私は、首席補佐官のジョニー・ブラウンを非難するように言った。

 

折角の爽やかな朝が台無しじゃないか。

 

「ミスタープレジデント、貴方の爽やかな朝を台無しにしてしまったことについては謝罪します。しかし、我々はそれどころではないことをご理解いただきたい」

 

「成る程。まあ、確かに、この日例報告と比べたら、私の今朝の爽やか気持ちなど些事だろう」

 

嫌味だろうか?

 

「ミスタープレジデント、これは貴方に対する嫌味ではありません。今回の報告は、本当に大切なことなのです」

 

「それは……、国家の存亡に関わるような?」

 

私が少しおどけてみせる。

 

「ある意味ではそうでしょう」

 

真剣な表情を見せる首席補佐官。

 

ジョニーは私の友人であり、首席補佐官としても極めて有能で、いつも私の助けになってくれる。

 

そんなジョニーが、この顔をする時には、いつも大切な話をする。

 

「……分かった、報告を聞こう」

 

私は、大切な話をされるのだと覚悟を決めて、聞く体制に入った。

 

「ミスタープレジデント、今回の報告はほぼ全て、科学的な研究の結果の報告会になります。ですので、その分野における権威である、マサチューセッツ工科大学のプロフェッサーの方々をお呼びしました」

 

MITだと?

 

となると、何か新しい発明でもできたのだろうか?

 

「ミスタープレジデント、貴方が、例のあの、ジャパンの魔法使いと会談し、その時に渡された金属についての研究結果についてお話しさせていただきたいと思います」

 

「ああ、あの不思議な金属か。あれがどうかしたのかね?」

 

「率直に言います。アレらをどうにか、追加でもらえることはないのでしょうか?」

 

「いや……、それは恐らくは難しいだろう。あの金属は、あちらの言うレアメタルのようなものらしいからな」

 

「ミスタープレジデント……、結論から言えば、あれらの金属は、貴方達政治家が全員でジャパニーズドゲザをしてでも、国債を100億ドル刷っても、何をしてでも手に入れるべきものです」

 

私が、ジャパニーズドゲザだと?

 

「つまり?」

 

「我々、MITの物質工学研究チームは、これらの金属を、『ファンタズムマテリアル』と命名しました」

 

ふむ。

 

「ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、アマルガムとありますが、まあ、一つずつ説明しましょう」

 

そう言って、プロフェッサーの一人が前に出る。

 

「まずはミスリル……、これは、超伝導素材です」

 

「超伝導素材とは……、つまり、電気抵抗がゼロの金属だと?」

 

「はい。それも、常温でです」

 

「常温でだと?!」

 

馬鹿な、そんなものがあり得るのか?

 

「融点は三千度程で、加工は困難ですが、このミスリルがあれば、量子コンピュータや核融合炉の制作も可能です」

 

「オーマイゴッド……!」

 

馬鹿な、あり得ない。

 

「また、電気以外にも、熱の伝導率も百パーセントですから、内燃機関の強化にも活用可能でしょう」

 

「そう、か」

 

「次に、ヒヒイロカネです」

 

ふむ。

 

「これは……、まさに幻想としか言いようのないものです。その性質は、エネルギーの増加にあります」

 

「つまり?」

 

「例えば、ヒヒイロカネに百ボルトの電圧をかけたとしましょう。その電圧を、ヒヒイロカネは増幅し、数十数百倍の電圧にして返すのです」

 

「馬鹿な!エネルギー保存の法則はどうした?!」

 

「我々も何度も確認しました!しかし、本当に、ヒヒイロカネにエネルギーを加えると、倍加して返ってくるのです!」

 

「そ、そんな馬鹿な……」

 

「様々な増幅回路に使用できる見込みです。他にも、内燃機関の強化など、使い道は幾らでもあります」

 

次のプロフェッサーが前に出る。

 

「次は、アダマンタイトについてです」

 

「今度は何かね?」

 

「アダマンタイトは逆に、あらゆるエネルギーを通しません」

 

「あらゆるエネルギー、とは?」

 

「あらゆるエネルギーをです」

 

ふむ?

 

「確かに、持ち運ぶことは何故か可能なのですが、破壊しようと圧力をかけたり、一万五千度のアーク溶接を試みたり、超高電圧を流したり、ありとあらゆることを試しましたが、ありとあらゆるエネルギーをゼロにするのです」

 

「何だそれは……」

 

「アダマンタイトはどうやら、触れたエネルギーを消す性質があるようです」

 

「……君は、自分がおかしなことを言っている自覚はあるのかね?」

 

「私は正気ですよ、ミスタープレジデント。これが真実なのです、認めてください」

 

そんな馬鹿な……。

 

「次に、アマルガムなのですが……」

 

「何だね?」

 

「これは……、物質工学の観点からすると、あらゆる物理学に対する挑戦のような素材です」

 

「他のファンタズムマテリアルも同じようなものじゃないか。何がおかしいのかね?」

 

「はい、このアマルガムは、金属とは思えないくらいに柔らかく、軽いのです。水に浮くほどに軽いインゴットです」

 

あり得ん。

 

あり得んが……。

 

「まあ、それはいいとして、何がおかしいのかね?」

 

「はい、この金属は、普段は恐ろしく軽く、その上に軟性のゴムの様な質感で柔らかいのですが……」

 

が?

 

「……悪意をもって攻撃すると、急激に硬質化するのです」

 

「………………は?」

 

「ですから、この金属に悪意を向け、破壊しようとすると、破壊不可能なほどに硬質化するのです」

 

「……君は何を言っているんだ?」

 

「ミスタープレジデント、私はジョークを言っている訳ではありません。このアマルガムは、確かに、あらゆるダメージに対して硬質化する特性があるのです」

 

「それは、何かね?アマルガムには意思があると?」

 

「その可能性は十分にあり得ます」

 

「ジーザス……」

 

「まさに、防具となるために生まれてきたかのような素材ですね」

 

ふざけている……。

 

「最後に、このオリハルコンですが……」

 

「何だね?」

 

「現代の科学において、破壊が不可能であることがまず分かりました」

 

「単純に丈夫なだけだと?」

 

「いえ……、それだけではありません」

 

「では何が?」

 

「かの魔法使いに魔力の操作を習ったという映画俳優を呼んで、このオリハルコンについて見てもらったところ、無限に魔力を発していると……」

 

「……何だそれは?」

 

「我々には理解できなかったのですが、このオリハルコンは、常に黄金の光を発しています。これが、魔力というエネルギーなのかと思うのですが……」

 

「つまり、放射性物質のように、何らかのエネルギーを発している、と?」

 

「そうです。しかし、魔力というエネルギーを観測する手段が……」

 

「ふむ……」

 

 

 

「……報告は以上です」

 

これは……。

 

「良いですか、ミスタープレジデント。ファンタズムマテリアルの入手をどうにかして行ってください」

 

「それは……」

 

「そうでなくとも、あの魔法使いをアメリカに引き込んでください。あれはまさに、世界の覇権を握れるかどうか、という存在です」

 

「だが、アメリカには対価として渡せるものがないのだ!」

 

「何を売っても良いのです、最新の戦闘機だろうと、空母だろうと、レアメタルだろうと!何とかならないのですか?!」

 

「不可能だ!あの魔法使いは、アメリカの持つどんなものよりも価値があるものを幾らでも持っている!」

 

「……とにかく、これは一度議会に通すしかありますまい」

 

「……ああ」

 

一体、どうすれば良いのだ……?

 




ケンタッキー行ってきました。

それはさておき思い付き集の更新どうしよ……。

あと10話くらいは帰還勇者のストックがあるんだけど、書き溜めはロクにできてないです、忙しくて。

ここ最近は、何とか、核戦争ポストアポカリプスものを書いているんですけど……。

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