野党の議員が秘密保護法で捕まった。
どうやら、あの例の、魔法使いの真実という動画をネットに流したのは、民権党の議員だったようだ。
しかし、本人は、秘書が勝手にやったこと、などと言って罪を認めていない。
まあ、民権党は、国連主導で魔法の国際管理を、とか言ってるキチガイ集団だからな。
さもありなん。
キチガイを無視して、毎日だらだらと隠居生活を送る。
ユウチューブのチャンネル登録者数は、いつのまにか世界一位になっていた。
前代未聞の、一億人を超えるチャンネル登録者により、ユウチューバーランキングのトップに躍り出た俺。
ファングッズの販売も好調で、月に三億近く稼いでいる。
まあ、半分くらいは税金で持ってかれるのだが。
やはり累進課税はクソ。
そりゃ脱税をする奴も出てくるわな。
三億稼いで一億持ってかれるとか笑えねえ。
それでも、赤字覚悟で経営している民宿勇者の赤字を埋めて余りある程に稼いでいる。
トップユウチューバーとして、ギネス記録に登録された俺は、記念盾を貰い、折角なのでそれを民宿勇者の受付に飾っておいた。
だが、流石に、再生回数ナンバーワンは無理そうだ。
六十億回以上再生されているような、世界的歌手のミュージックビデオには敵わないだろう。
それでもチャンネル登録者数世界一は嬉しいな。
まあ、どちらかと言うと、内容が面白いということも当然あるが、それ以上に珍しいからという点が大きいんだろうが。
ブームが下火になれば、頂点の座も危ういだろう。
別に、永遠にユウチューバーの頂点でいたいなどとは思わないが。
どうでもいい。
遊びでやってる訳だし。
まあ、一位になって満足したかなー、って感じだ。
そうなんだよなー。
俺が人気なのは、俺が特別面白いとかじゃねえんだよなあ。
ただ単に魔法が珍しいだけだ。
魔法をしっかりと見れる情報媒体が、俺のユウチューブチャンネルしかないというだけの話なんだよ。
だから、そのうち飽きられるとは思う。
だが、当分は……。
『国連、鎧嶺二に出頭勧告』
「世界中の注目の的、だな」
さあやってまいりました、国連からの勧告。
日本はいつも通り無視する予定だったが、いかんせん、話が大きくなり過ぎた。
いつもの、難民受け入れ勧告とかなら、日本は普通にスルーするのだが、今回は話が違う。
出頭に応じない場合、国連軍の派兵もあり得るかもしれないと脅してきたのだ。
その上、俺のような巨大な戦力を国内に置いている日本はテロ国家になるのでは?みたいなことも言い始めている。
そんな勧告に対して俺は!
「馬鹿め」
と一言、返してやった。
そして、一瞬にして、まさに瞬間湯沸かし器のように沸騰した国連。
楽しいなー!
世界中のあらゆる報道機関が、まさに、俺が世界に対して叛意と言うか侵略の意思と言うか……、まあ、いかにも、テロリスト予備軍だと言わんばかりの扱いをした。
良いね。
往年のヒールレスラーとはこんな気持ちなのだろうか?
マゾではないが、他人の敵意が気持ちいい。
俺が気持ちよく世界の敵をやっていると、国連の軍隊を派遣すると脅してきた。
やってみろと俺が言い返すと更に沸き立つ。沸騰しすぎてもう蒸発寸前って感じ。
しかし、こうなると困るのは日本だ。
自国に他国の軍隊を入れる?しかもテロ容疑?
日本は、平和を謳う民主主義国家だ。
そんなことはできない。
俺を庇うのにも限界ってものがある。
いかに邦人を守ると言っても、テロ予備軍を庇い立てしているかのように言われると、反論ができない。
そもそも、常任理事国でもない日本が国連に何かを言い返すこととかはできないんだが。
さて、どうする、跡部総理。
……ん?
ホワイトハウスからメールだ。
ええと……、内容を要約すると、『アメリカって亡命OKなんだよなー、安保理の常任理事国だから拒否権もあるしー、おっとー?テキサスの田舎に土地が余ってるぞー?あー、誰か亡命してこねーかなー!家族ごと来てもらっていいんだけどなー!』とのこと。
露骨ゥ。
だが、それがアメリカのやり方か。
利益になると思ったらガンガンやるハングリー精神は凄いんじゃない?
利益とプライドを天秤にかけて、勝った方の行動を起こす。
言葉にすると簡単だが、実行するのは難しい。
利益ばかりを求めると、国際的な信用を失うし、プライドばかり高くては利益を得られない。
その辺の調整が上手いな、アメリカは。
そもそも、ミスタープレジデントは商売人だからな。
利益に繋がるなら、俺みたいな若造にも頭を下げる、か。
こんな風に適度にプライドを捨てられる奴が一番怖いぞ。
異世界でも、いつも偉そうにしている王侯貴族なんざまるで怖くなかったが、ある程度プライドを捨てられる下級貴族とかの方が厄介だった。
まあ、アメリカは亡命して来いと暗喩してきたということだな。
「……とまあ、そんな感じだな。跡部総理が何をするのか見守ろうぜ」
と、対面の席で三ポンドステーキを頬張るルシアに言ってみた。
「もぐ……、んー、それってさあ、日本に国連軍が攻めてくる……、って言うのは世論的にも難しいだろうから、脅しだとは思うけど、嶺二君を邦人だからって庇っても、素直に引き渡しても、どっちにしろ日本にはダメージがあるよね?」
「そうだな」
「んー……」
ルシアは、付け合わせのフライドポテトにステーキソースをたっぷりとつけて、口に運んだ。
「それって、裏にいるのはやっぱり中国かな?それともロシア?」
「さあな。本州は中国、北海道はロシアで仲良く分けっこする気なのかもな」
「うーん、日本がなくなるの、嫌だなー」
ふむ?
「どうして嫌なんだ?」
「え?だって、土井中村がなくなっちゃうじゃん。それに、漫画の続きも読めなくなるしー、ゲームもなくなるしー」
「そうだな」
「共産主義国家って規制が多くてやだなぁ。って言うか、あっちの世界みたいに魔法もダンジョンみたいな無限の資源もないのに、何で資本を平等に分配するとか言い始めちゃったの?人間って変だね」
「文句はあの世のマルクスに言え」
「あっちの世界の教会もそんな感じだったよね。弱者の救済とか、みんな平等とか言っておきながら、偉い人達は搾取して踏ん反り返るの」
「そうだな。まあ、人間なんてそんなもんだ。みんな平等に!大変よろしい。そういうカッコいいセリフを言うと気持ちいいんだろうよ。けど、実際は他人より贅沢したい、だから適当に理由をつけて搾取しよう……。本当に、ただそれだけの話だ」
俺は一ポンドの、血の滴るレアなステーキを切り分け、口に運んだ。
「ふーん。人間は外側を取り繕うよね。獣人はそういうのは苦手だから、よく分からないや」
パンをちぎり、口に運ぶルシア。
さて……。
「まあ、取り敢えず、国連に行ってみたら?」
「えー」
「史上初じゃない?国連に出頭命令を出された個人とか」
「あー、そりゃ多分そうだな」
「折角だし、動画のネタにでもすれば良いんじゃない?」
んー……。
「そうするか」
ネタ切れだしな、最近は。
俺は基本的に、他人が書いてるssを読みに来て、わざわざ低評価したり文句言ったり作者にDM送ったりとかはしないですし、尊敬している作者に対しても、高評価したり感想を送ったりもしません。
お互いの評価を比べたりとか、ツイッターはフォローしてるのにその人のssは読んでないとか、そういうことで争ったりしたくないからです。
ぶっちゃけ、俺も、ツイッターフォローしたけど、時間なくてまだこの人のss読んでねーや、って人いっぱいいます。
作者同士がお互いの作品を貶し合う展開とか死ぬほど嫌ですしね……。
もし俺が気まぐれで評価して、ツイッターやらDMやらで「あいつのssは10評価なのに俺のは9なのか?」みたいなこと言われたと思うと……、あああああ!