国連の総会は大混乱のまま終わった。
どの国も、自国の後ろ暗いところを全て握られているという事実を知って、恐れおののいた。
帰国してから、各国からのスパイは十倍、暗殺者は五倍に増えた。
もちろん全員晒し上げ。
中国共産党工作員、暗殺にはロシアのスペツナズなんかが華麗にエントリー。
特にスペツナズは覚悟完了してて、捕まえたら奥歯に仕込んだ青酸カリで自殺した。
凄えな、リアルでこんなもんが見れるとは。映画みたいだ。
なので、生き返してから顔と名前を公開してクレムリン宛に転送してる。
ヴラドレン・プチロフによろしくゥ!とロシア語で伝えて返しているので、プチロフ大統領は今頃カンカンだろう。
もちろん、家族にも刺客がたくさん来た。
ああ、うん、数えてないからな。
たくさんとしか言いようがない。
合計で数十回くらいか?
楽しいね。
他にも、外に出ればスパイ祭りだ。
例えば、道を尋ねる外国人旅行者を装ったこの女。
『あの、すいません!この、伏見稲荷大社にはどうやって行けば良いでしょうか?』
『ええと、CIAのクリスティーナ・バレットさんね。伏見稲荷大社はこっちだ、案内しましょうか?』
『………………』
『黙るのは良くないなあ?ええと、リチャード・アトキンソンの命令で日本に潜入?』
『ッ……!』
あ、逃げた。
「こんにチは、私は中国からキました、記者です。インタビューをしたいのデすが?」
「ええ、良いですよ。えっと、お名前は?」
「私は、江利民デす」
「そうですか!北朝鮮の朝鮮人民軍偵察総局のゼン・テヒさんですね!」
「………………」
「え?上司であるキ・ジョウスウからの指示で態々日本まで?大変ですね!」
「ッ!!!」
あ、逃げた。
「コンニチワ!」
「こんにちは」
「貴方は、今ウワサのMr.ヨロイですネ?サインを下さい!ワタシ、ファンなんです!」
「ええ、良いですよ。お名前は?」
「ワオ!ワタシの名前まで書いてくれますか?ラッセル・ダンです!」
ええと、MI6のアデル・ウスマン、っと。
「これでよろしいですか?」
「ッ………………?!!!」
あ、逃げた。
「ジェイムス・ボントによろしくと伝えておいて下さいねー」
「ってな訳でさ、スパイ祭りなんだよ」
俺は、対面でパンプキンパイを咀嚼しているエリーゼに話しかけた。
エリーゼは、パイを飲み込んでから、ワインで喉を潤すと、言った。
「はあ、その、楽しんでおられるようでなによりですね?」
「これっぽっちも楽しくはないがな」
正直な話、何も楽しくはない。
出先でほぼ必ず外国人に話しかけられて、そいつら全員スパイとか、楽しい要素がない。
かと言って、話しかけてくる日本人も、内調かクソみたいな野党のみ。
そうじゃなくっても、売れっ子アイドルのように、人に囲まれる。
来日したロックスターかよってくらい囲まれる。
それは良いんだが、たまに反日活動家に絡まれるのがウザいんだよなー。
別に愛国心なんてものは一切ないが、日本人は悪だと叫ばれて良い気はしないよな、普通に考えて。
基本的に、俺の気分を害した奴にはもれなく『ラックダウン』をプレゼントしてるが。
やはり、人間なんて碌なもんじゃないな。
ああ、人外達が恋しいよ。
森人族と映画を撮影したり、鉱人族と魔導具弄りしたり、淫魔族とセックスしたり、人魚族と海底を散歩したり。
争いばかりの地球は嫌だね、全く。
楽しい楽しいスパイ祭り。
まだ夏が始まるくらいの時期だと言うのに、もう夏祭りの始まりか?
早いなー。
俺は土井中村の暖かな日差しを浴びながら、おろしたての新車を、民宿勇者の車庫に入れていた。
最近は、中型免許を取ったので、十人以上乗れるようなハイエースを買ったんだよな。
これで旅行だ、などと思ったが、全員転移魔法くらいは使えるので、まるで意味がなかった。
しかし、数十億円も溜め込んどいて、まるで使わないのは経済的に良くないからな。
なるべく、日本で買えるものは買うようにしている。
適当に車を買い、本や雑誌を買い、コンピュータを買っている。
お高い絵画やら壺、彫刻なんかも買っている。
十億円くらいは無駄遣いしたな。
だが、それが限界だった。
これ以上に欲しいものが思い浮かばないんだよなあ。
食事は、良いものを食べているとは思うが、それでも一食数万円で済む。
酒も高いものを選んでいるが、大体数千万円くらい。
一番金がかかっているのが芸術品関係だろうか?
そこまで金を使わないな。
うちの嫁は魔法的に価値のないただの宝石類や服飾はあまり興味がないらしい。
いや、魔法的な宝石や服飾は結構好きらしいが。特にテレジアは馬鹿みたいな浪費家だ。普段は鎧姿だが、何千何万ものドレスやアクセサリーを持っている。
それで……、店ごと下さい!なんてほど欲しい店はないし、街や豪邸も特に欲しくはない。
だって、デモンズネストの方が凄いし。
デモンズネストにはマジで何でもあるし、空間制御装置で土地は無限大。
中には、クソでかい映画館、図書館、グラウンド、牧場、海、川、山……、マジで何でもある。
欲しいものは特にない。
だから、俺と交渉することは不可能だ。
と、あの国連の総会で明言した。
それなのに、各国のスパイは俺についての情報を執拗に探っている。
俺の友達(?)からも、知らない外国人に俺のことについて聞かれたと言っていた。
念のため、友達にも防護魔法は刻んでおいたから、問題はないようだが。
まあ、とにかく、世界中が俺のことを取り合いしている。
最早、日本など眼中にないらしく、平気で外国の船が夜中にこっそり入り込み、スパイやら暗殺者やらを日本に置いていく。
日本は、お得意の遺憾の意と言う名の攻撃力ゼロのミサイルを乱射しているが、全世界が無視しているな。
ロシアなんかは、北方領土経由でスパイやら暗殺者やらを飽きもせずに送り込んでくるし、中国や韓国、北朝鮮なんかは、「漁船です!」と言い張った船がぞろぞろ送り込まれている。
欧州や米国方面も、旅行者を装ったスパイを空路から送り込んできている。
中東、アジアなんかからもちらほらと。
因みに、今のところ一番殺意が高いのはダントツでロシアだ。
狙撃から毒殺まで幅広い方法で狙われている。
俺だけじゃなく、家族と嫁の誘拐も狙っているみたいだ。
だが、ロシアは、そんなことを表にはまるで出さない。
俺がいくらスパイやら暗殺者やらを晒し上げても、否定も肯定もしない。
この話題に全く触れないのだ。
送り返したスパイやら暗殺者やらは、皆、顔も、名前も、経歴、指紋すらも変えて、別人となり、次の作戦に回されていた。
しかし、失敗したスパイやら暗殺者やらの扱いは悪く、ほぼ、死地に送られているようだ。
次に殺意が高いのは北朝鮮だろう。
普通に殺しにかかってきている。
だが、主目的はお得意の拉致行為らしく、武器はスタンロッドや暴徒鎮圧用の拳銃などが殆どだな。
俺の誘拐に失敗したら、俺の近辺の人を適当に捕まえれば良いや、などと思っているらしく、そこら辺にいる日本人を適当に拉致しようとしてくる。
まあ、俺には関係のない話なんで、スルーしているが。
だが、基本的に、最近は土井中村付近の警戒が厳重なので、大抵は失敗しているようだ。
そして、北朝鮮のスパイやらを捕まえると何故か韓国から苦情が来るという謎。
日本が非難しても否定する。
あまりにもムキになって否定するんで逆に怪しいと評判だ。
中国は軍閥によって動きが違うからなんとも。
中部戦線では暗殺が決まっているらしいが、北部や東部は誘拐したいらしい。
それを公表したら、中国全域がユウチューブやツブヤイターを遮断して、情報規制をかけた。
強制的になかったことにする気らしい。
欧州とアメリカはそうでもない感じだ。
公式ルートから攻めてきている印象だな。
一応他国もやってるし、うちもやっておこうか?みたいなノリで少数のスパイを送り込むだけで、殺しにかかってきたりとかは少なかった。
だがまあ、都合が悪くなれば消す予定らしく、暗殺者とそれに準ずるような奴らが、俺の周辺地域の調査や、スケジュールの把握など、遠巻きからの観察をしているようだ。
基本的に二枚舌だから、上辺では仲良くしましょうと言い張るのだが、裏ではどうやって殺すか考えている……。
ある意味で普通の考え方なのかもな。
他の国は……、軍事独裁政権の国は、暗殺と誘拐を半々くらいの割合で企んでいて、それ以外の国は誘拐を企んでいる感じだろうか?
何にせよ……。
勝手にやってろって話だ。
今、スペースオペラの続きを下さいとのことなんで、スペースオペラの続きを書いてる。
スペースオペラのプロットはこんなん。
主人公はブッチギリのソシオパス。近所の畑にミステリーサークル描いたり、ムカつく教師の机の上に児童ポルノを仕込んだり、嫌いな上司の浮気現場を激写してネットにばら撒いたりして遊んでた。スペースオペラ世界でも、他人に嫌がらせがしたくてたまらないので、更なるハーレムと優秀な子供達、巨万の富と地位と名誉を得て、他人に見せびらかし、嫉妬されることを目標にして、嫌がらせ行脚を始める……。
異世界転生、無敵艦隊ゲット。
主要三ヶ国、民主主義連邦、絶対王政帝国、共産主義同盟でそれぞれヒロインを拾う。
ここで目標設定、虐げられている、ここいらの星系の原住民こと亜人。この亜人の子供を拾いまくって、洗脳&教育し、忠誠心と有能さを併せ持つ人材に育成し、自分の企業で働かせる。
奴隷階級の亜人や、捨てられた孤児、底辺の存在達が幸せに暮らす姿を見せつけるという、世界に対する嫌がらせ。
そして起業。この世界の飯は不味い。メシマズ世界で培養食品による美食チート!チートの無駄遣いである。
会社は、メシウマな宇宙食や調理器具の販売でどんどん成長、各方面に手を伸ばし、財閥に。
そんな財閥は、会社員が全員亜人や孤児上がり。名門大学やら貴族やらの面目は丸潰れ。
連邦政府議会、帝国王侯貴族、同盟軍部は、それぞれが独自のルートで、あの手この手で主人公君を身内にしようとしてくる。
主人公君、プロのソシオパスなので、三国全てに籍を置く。
当然、三国の間では水面下の激しいバトルが始まり、主人公君にどこまでの地位を与えようか非常に悩む。
しかし、主人公君、ここでもおふざけ。連邦政府では官僚や政治家に喧嘩を売り、帝国では王侯貴族に敬意を払わず、同盟では資本主義を賛美する行為を重ねる。
キレた同盟に攻撃されたので、同盟軍部の艦隊を吹っ飛ばし、資源衛星を二、三個消し飛ばす。
それを見て竦み上がった連邦と帝国。連邦は、軍事演習への参加のお誘いを出して、十二宮艦隊の最大スペックを割り出そうとする。しかし、十二宮はブッチギリのチートスペックがあるので、連邦の技術では十二宮のスペックの1%すら把握できない。
帝国の内、時勢が見えない馬鹿貴族が主人公君に突っかかってくる。さらっと破滅させて、帝国に責任を追及。お詫びに、潰した貴族の領地と爵位をもらう。
もらった領地は悪徳貴族の運営によりボロボロだった。アレだよね、銀英伝にもそんなシーンあったよね、ほら、田舎の惑星は貧農がろくに飯も食えずに農業やってるよ、みたいな。ここで主人公君、伏せカードオープン!宝瓶宮!突貫工事で領地を整備し、貧農に施しをして、「帝国王家よりも」尊敬を集める。
その頃、連邦は、主人公君と帝国の接近を恐れて、帝国の議会のポストを空けつつ、軍部に佐官待遇で、名誉市民の称号と共に受け入れることをこっそり伝えてくる。主人公君、ソシオパス爆発し、それをネットに公開しつつ承諾する。
それを見た帝国は、折角手に入りそうな主人公君を手放したくないあまりに、ご機嫌取りに女や天然物の食品、金、美術品などなどを何かと理由をつけてこっそり渡してくる。笑顔でネットに公開しつつ受け取る主人公君。
そこに、戦力再編した同盟が、主人公君に消し飛ばされた資源衛星分の資金を確保するために、連邦の通商惑星に侵攻。
連邦は、それとなく主人公君に防衛依頼を出すが、主人公君は笑って拒否。別に名誉市民やら佐官待遇やら要らんし……。通商惑星は奪われ、同盟が支配する。連邦はこれを奪還しようとするが、頭の中お花畑な連邦議会が、奪還は諦めて本国の防衛を強化する法案を無理矢理通す。
同盟、調子に乗って帝国へも侵攻。帝国は、しっかりと主人公君に防衛依頼を出すが、バッチリ拒否。爵位とか要らんし……。帝国が領地の取り上げを仄めかしたところ、主人公君の領民は大反対。
同盟と帝国の戦闘は拮抗泥沼、帝国は質がいいが少ない、同盟は雑魚だが多い。これを見て、帝国は、大貴族の特殊部隊に出撃を依頼。これで帝国が勝てて、王家に連なる大貴族の求心力アップだぜ!と思っていたが、主人公君はそれを聞いて、やっぱ戦いますと一言残して出撃。一分で同盟の大艦隊を消滅させる。
めっちゃ嫌だけど、こんな華々しい活躍をされたら陞爵やらなんやらしなきゃならない帝国。更に増えた領地をガンガン開発して、ほんの数ヶ月で、下手したら帝国の通商惑星よりも凄い技術を持つ惑星を量産。いよいよもって帝国本国の求心力が怪しくなる。
一方で、主力艦隊の三割を消滅させられた同盟は、落とせる首を全部落としてクリーンになりましたと表明し、主人公君を軍部の要職に起用。
主人公君、同盟の要職として、後方のそれなりに使える資源惑星の管理を任される。なので、星をがっつり作り変えて、近代的な技術通商国家に改造。段々と同盟の人間が集まってきたところで、ゆっくりと資本主義的な政策を実施していく。それにより、主人公君の管理している地域は、同盟で最も豊かだとされ、脱北者みたいなノリでガンガン人が集まり、ガンガンマンパワーが確保される。
主人公君、遂に惑星を新たに創造して、同盟の他地域からの脱走者を集め、入植させる。
連邦も負けじと、主人公君を議会に入れる。主人公君、議会にはたまにしか出ないが、超技術によりあらゆる社会問題を解決できるので、いや俺の手持ちのこの技術使って社会問題解決するんでこの法案通して下さいよみたいなノリで、自分の会社に有利な法案を通しまくり。
そうやってジワジワと支配領域を増やしていって、なし崩し的に世界征服、しよう!
飽きたら別の星系にのりこめー!わぁい^ ^
こんな感じかな?