ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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寿司うめー。


60話 支援終了

静岡の震災から一週間。

 

自衛隊が到着して、炊き出し任務を交代した。

 

暇なので、子供達に買い集めておいたウィンテンドウトゥイッチを配る。

 

ゲーム機数千個のたったの数千万円ほどで再生数を稼げるんだ、やっとけやっとけ。

 

はー、楽しかった。

 

災害が起きたらまたなんかするか。

 

優秀な自衛隊様は、できる範囲の救助活動を終わらせて、あとは復興に向けた活動をするらしい。

 

まあ、頑張れ。

 

そして、二週間後。

 

日本の企業と自衛隊は優秀だな。

 

取り敢えず、物資はちゃんと届くように道路は応急処置されたし、娯楽品なんかも届いている。

 

医者やら何やらも来ている。

 

たまに来る、被災地の悲惨な状況を撮りにきたマスゴミは、ネットに晒し上げだ。

 

あいつら、被災地だって言ってんのに、「自分の寝る場所はないのか」とか、「自分達の食料や物資はないのか」などと言ってくるんだよな。

 

本当にもう、何しに来たんだ?って感じだな。

 

避難所の人々も怒っていた。

 

そこに、総理大臣の跡部雄三氏と、天皇陛下夫妻が慰問にいらっしゃった。

 

もちろん、物資やら何やらを持ち込んでだ。

 

俺は基本的に、王侯貴族が大嫌いだが、日本の王室はそれなりに信頼している。

 

先代の陛下は、あれほど高齢なのにも拘らず、一年の間に千を超える書類に目を通し、二百を超える行事に参加、二十を超える祭事を執り行った。

 

俺が持ち得ない勤勉さを持っていらっしゃる。

 

今上陛下も実に勤勉な方だと伝え聞いている。

 

基本的に、俺のカンに障るようなポイントはない。

 

異世界の人間の王侯貴族は、割とシャレにならないゴミクズばかりだったが、この世界の王族は、被災地に慰問しに行ったり、公的な祭事に出たり、他国と友好的に話し合ったりと、ちゃんと頑張っているので、好感が持てる。

 

あっちの王族は本当にクズだった。

 

皇帝ネロのようなキチガイが王だったんだぞ。

 

国庫を空にして馬鹿みたいな後宮作って、足りなくなったら民を働かせろと駄々をこね、自分の馬車の前を横切ったガキを無礼だと言って虐め殺す。

 

そんなゴミ共と比べれば、この世界の王侯貴族はなんと品行方正なことか。

 

さて、総理や陛下が来れるようになったのなら、ほっといても復興は進むだろう。

 

俺は帰宅する……。

 

ん?

 

「こんにちは、鎧嶺二さん」

 

あ、総理じゃん。

 

「こんにちは、跡部総理。どうしました?我々は今日、撤収するつもりですが」

 

「まずは、津波を事前に防いだこと、そして、各地の避難所での炊き出し等の支援、本当にありがとうございます。日本国民を代表して、御礼申し上げます」

 

総理は、俺に頭を下げた。

 

「いえいえ、動画の再生数稼ぎにやっただけですから」

 

俺は本心を伝えた。

 

「そうであったとしても、多くの人々が救われたのは確かなことです。もしも、津波が発生していれば、あの東日本の大震災のように、もっと多くの被害者が出ていたでしょう。それに、自衛隊に気を遣い、救助活動を控えていただいたのもありがたいことです。鎧さんなら、救助活動も可能だったのかもしれませんが……」

 

「ああ、救助活動とかはですね、責任を負いたくないんでやりませんでした」

 

「大変結構なことです。万一、救助活動で死者が発生した場合のことを考えると、それで良かったかと思われます」

 

「それに、救助活動まで俺がやったら、自衛隊の立つ瀬がない……、ってところですかね?」

 

跡部総理は苦い顔をした。

 

「それは……、確かに、そうですね……」

 

「ああ、言っておきますが、別に自衛隊に気を遣った訳じゃあないですよ。その気になれば、この街を元通りに直すことも、死んだ人を蘇らせることも可能です。しかし、俺はやらない。それは何故か分かりますね?」

 

災害の度に頼られたりしたくないこと、別に日本の味方と言う訳ではないこと、今回の支援は本気で再生数稼ぎであること。

 

俺はそれを言外に告げた。

 

「……もちろん、理解しております」

 

跡部総理はその辺りを察するのが上手い。

 

俺の意思は伝わったようだ。

 

「で、結局何用ですかね?」

 

ハッとする跡部総理。

 

「あ、ああ、はい、実はですね、今、議会で、鎧さんに緑綬褒章を授与しようと私が提言しまして。恐らくは承認されると思いますので、秋頃に予定を空けておいていただけると幸いです、というお話を」

 

んー?

 

緑綬褒章。

 

あれだな、天皇陛下からいただけるありがたい……、勲章みたいなものだな。金銭的なあれこれは発生しないが。

 

緑の褒章は、簡単に言えば、ボランティアで凄く頑張った人がもらえるものだな。

 

でも、春と秋の年二回、八百人くらいがもらえるものなんで、そこまで凄くもない、か?

 

まあ、もらえるものはもらっておこう。

 

「分かりました、十一月三日は空けておきます」

 

「ありがとうございます。それと、今上陛下が、できれば、鎧さん達が撤退する前にお礼をしたいとのことで……」

 

まあ、それくらいならいいか。

 

「分かりました」

 

 

 

畏れ多いとは思わないが、人間的に尊敬できる人を相手にした時くらい、俺も多少は敬意を払う。

 

今上陛下に跪き、挨拶をして、軽く話をする。

 

陛下は、人文学について研究されていらっしゃったそうで、異世界の文化はとても興味深く、俺の動画の、異世界の文化を紹介するところに感銘を受けたと仰られた。

 

折角なので、亜人の国の歴史について学ぶドラマを献上しておいた。

 

ドラマ、と言うのは、もちろん音と映像がある動画だが、数冊の本に収められている。

 

どういうことかと言うと、亜人の国の映像作品は、魔導書を記録媒体として存在しているのだ。

 

このドラマ魔導書を開くと、VRでドラマが見れる。

 

陛下は大いに喜んで下さった。

 

他にも、軽くだが魔法をお教えしておいた。

 

何故か人間とは思えないほどの魔力量をお持ちだったことには驚いた。

 

魔力は、訓練でも伸びるものだが、種族による魔力量の差は生半可な努力では超えられるものではない。

 

つまり、魔力は、生まれ持った魔力量が割と重要だ。

 

人間でも突然変異的に魔力が多い奴もいるが、やはり基本的には、血統や種族によって違う。

 

時に、ご存知だろうが、天皇陛下の血筋を辿ると、始まりは天照大神だったと言われている。

 

……まさか、なあ?

 

陛下には、本当に神の血が流れている、のかもしれないな。

 

 

 

それじゃあ、帰るか。

 

避難民の人々に感謝の言葉をもらい、俺は帰宅した。

 




頑張れー負けーるなー、力の限りー、生きてやれー。

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